RSST と MWST の違い【比較】|使い分け・順番・次の一手

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RSST と MWST の違い【比較】|使い分け・順番・次の一手

嚥下評価は「どちらが正しいか」ではなく、「何を先に見るか」を固定すると判断がぶれにくくなります。 ST の働き方・学び方ガイドを見る

RSST と MWST は、どちらもベッドサイドで行いやすい嚥下スクリーニングですが、見ているものは同じではありません。 RSST は 水を使わずに空嚥下の成立・惹起性・連続性をみる入口評価、 MWST は 3 mL の少量飲水でむせや湿性嗄声などの危険徴候をみる安全域評価 と整理すると、現場での迷いが減ります。

迷いやすいのは「どちらが優れているか」ではなく、どちらを先に行うか、どこで止めるか、陽性のあとに何をつなぐかです。嚥下評価の全体像は 摂食嚥下評価(総論) で整理できますが、本記事では比較検索に絞って、 RSST と MWST の違い・使い分け・順番・次の一手を実務目線でまとめます。

RSST と MWST の違いは「水を使わない入口評価」か「少量飲水の安全域評価」かです

RSST と MWST のいちばん大きな違いは、水を使うかどうかだけではありません。 RSST は 30 秒間に何回空嚥下できるかを触診で数え、嚥下反射の起こりやすさや動作の連続性を入口で捉える評価です。まず低負荷で始められるため、初回評価や再評価の最初の一手として使いやすいのが特徴です。

一方の MWST は、 3 mL の冷水を使って、嚥下直後のむせ、湿性嗄声、呼吸の変化などを観察する評価です。つまり、 RSST は「空嚥下の入口が作れるか」、 MWST は「少量飲水で危険徴候が出ないか」をみています。両者は競合する検査ではなく、役割の違う 2 段階の確認として理解すると運用が安定します。

まず比較表|RSST と MWST の違いを 1 分で整理

スマホでは表を横スクロールできます。

RSST と MWST の違いと使い分けの早見表
項目 RSST MWST
主な目的 空嚥下の成立、惹起性、連続性の確認 少量飲水時の安全域の確認
使うもの 唾液のみ 3 mL の冷水
何を見るか 嚥下反射の起こりやすさ、続けて飲み込めるか むせ、湿性嗄声、呼吸変化、追加嚥下の可否
向いている場面 まず低負荷で入口を見たいとき 経口の入口判断を少量で試したいとき
代表的な問題所見 30 秒で空嚥下が進まない、回数が少ない むせ、湿性嗄声、呼吸切迫、低スコア
結果の受け止め方 単独で安全判断しない 単独で食上げを決め切らない
次の一手 MWST や他の所見と束ねる 共有と精査の要否を判断する

この表で大事なのは、 RSST が良いから MWST も安全とは限らないこと、逆に RSST が低いから即 NG と決め切るのも早いことです。入口評価と少量飲水評価は役割が違うため、点数だけで白黒をつけるより、何を見た結果なのかを分けて考えるほうが実務では使いやすくなります。

RSST が向いている場面|まず水を使わず嚥下反射の入口を見たいとき

RSST が向いているのは、いきなり飲水試行に進む前に、まず空嚥下の入口を見たい場面です。たとえば、覚醒に揺れがある、指示理解に不安がある、口腔乾燥が強い、前日より反応が鈍い、という場面では、水を使う前に空嚥下がどの程度まとまるかを確認したほうが入りやすいです。低負荷で始められるため、初回介入の最初の 30 秒や条件固定後の再評価にも向いています。

ただし、 RSST は 誤嚥の有無そのものを直接みる検査ではありません。見ているのは、あくまで空嚥下の惹起性と連続性です。そのため、 RSST だけで「大丈夫そうだから食事へ進める」と判断すると、少量飲水時のむせや湿性嗄声を拾えないことがあります。 RSST は、安全確認を完結させる検査ではなく、次の判断につなぐ入口として使うのが基本です。

MWST が向いている場面|少量飲水で安全域を確かめたいとき

MWST が向いているのは、空嚥下の入口だけでは足りず、少量の水に対して安全に処理できるかを確認したい場面です。 RSST では実際の液体摂取時のむせや湿性嗄声までは分かりません。そこで MWST を行うと、少量水での危険徴候を短時間で確認でき、経口の入口判断や共有の根拠をそろえやすくなります。

一方で、 MWST は負荷をかける評価です。少量とはいえ水を使うため、「飲めるかどうかを一発で決める検査」ではなく、「少量飲水の安全域を小さく試す検査」として扱うのが大切です。体位、一口量、介助量、観察項目を固定し、むせや湿性嗄声、呼吸変化が出たら、その場で止めて共有につなげる運用が向いています。

先にやる順番|迷ったら RSST → MWST でそろえると判断が安定します

順番に迷ったら、基本は RSST → MWST でそろえると判断が安定します。先に RSST を行うと、水を使わずに空嚥下の入口を確認できるため、覚醒、指示理解、惹起性、連続性の土台を低負荷で把握できます。そのうえで MWST に進めば、少量飲水時の安全域を追加で確認でき、段階がはっきりします。

既存の 不顕性誤嚥の 10 分スクリーニング でも、 RSST で入口をみてから MWST で少量飲水時の安全域をみる流れが採られています。もちろん、対象者の状態や施設 SOP によって例外はありますが、迷った場面では「まず低負荷、次に少量飲水」という順番に固定したほうが、スタッフ間で判断がぶれにくくなります。

どこで止めるか|中止の目安と陽性後の次の一手

RSST と MWST は、どちらも 陽性か陰性かを出して終わる評価ではなく、止めどころと次の一手まで決める評価です。 RSST では、空嚥下がほとんど成立しない、明らかに惹起が弱い、指示理解が成り立たない、といった場合に、その後の飲水試行を機械的に進めないことが大切です。空嚥下がまとまらないという所見自体が、次を慎重にする根拠になります。

MWST では、むせ、湿性嗄声、呼吸切迫、明らかな呼吸変化が重要な止めどころです。少しでも危険徴候が出たときは、その場で止めて「もう一度やって確かめる」より、共有と精査の要否を考えるほうが安全です。実務では、 RSST で入口が弱ければ MWST を慎重化し、 MWST で陽性なら経口継続を急がず ST ・医師へ共有する、という形にしておくと運用しやすくなります。

よくある失敗|RSST と MWST を“点数だけ”で選ばない

スマホでは表を横スクロールできます。

RSST と MWST のよくある失敗と修正ポイント
場面 NG OK 理由
結果の解釈 点数だけで安全・危険を決める 何を見た点数なのかを分けて解釈する RSST と MWST は見ている対象が違うため
順番 いきなり MWST から始める 迷ったら RSST → MWST にそろえる 低負荷で入口を確認してから負荷を上げるほうが安全なため
条件固定 体位や一口量が毎回ばらつく 体位・量・介助量・観察項目を固定する 再評価と申し送りの精度が上がるため
陽性後 所見が出ても繰り返して確認する その場で止めて共有と次アクションへ進む 負荷を重ねるより、安全線を先に守るほうがよいため

現場で多いのは、 RSST が良いから大丈夫、 MWST が陰性だから食上げしてよいと単純化してしまうことです。実際には、両者は別の角度からリスクを拾う検査なので、単独で決め切るより、周辺所見や他の評価と束ねて解釈したほうが安全です。比較記事では、点数の暗記よりも役割の違いを共有言語にすることが価値になります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

RSST が陰性なら MWST は不要ですか?

不要とは言い切れません。 RSST は空嚥下の入口評価であり、実際の少量飲水時の危険徴候までは直接見ていないからです。 RSST が保たれていても、必要に応じて MWST で少量飲水時の安全域を確認するほうが安全です。

MWST の前に RSST を飛ばしてもいいですか?

対象者の状態や施設 SOP によってはあり得ますが、迷ったら RSST を先に行う運用のほうが安定します。水を使わずに覚醒、指示理解、空嚥下のまとまりを確認できるため、その後の MWST をより慎重に組み立てやすくなります。

認知機能低下や指示理解が不安定なときはどちらを優先しますか?

まずは入口評価を慎重に扱うのが基本です。無理に回数や点数だけで結論を急がず、検査の成立可否そのもの、覚醒、体位、呼吸、口腔内所見など周辺情報を束ねて判断したほうが実務的です。

MWST で陽性だったら、その場で経口を中止すべきですか?

少なくとも、その結果だけで経口継続を急いで決めないほうが安全です。むせ、湿性嗄声、呼吸変化などが出た場合は、その場で止めて ST ・医師へ共有し、必要に応じて VFSS / FEES などの精査につなげます。

次の一手|比較のあとに単体記事とハブで全体像をつなげる

比較で役割の違いがつかめたら、次は単体手順と全体フローをつなぐと理解が定着します。まず全体像を 1 本で整理したい場合は 栄養・嚥下ハブ、ベッドサイド評価の順番を確認したい場合は 摂食嚥下評価(総論) が入口になります。

そのうえで、触診位置や 1 回の定義を確認したいときは RSST の評価方法、少量飲水と連続飲水の流れまで含めて整理したいときは MWST ・ WST の手順、不顕性誤嚥を 10 分でどう拾うかをまとめて見たいときは 不顕性誤嚥の 10 分スクリーニング を続けて読むのがおすすめです。


参考文献

  1. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会. 摂食・嚥下障害の評価(簡易版)2015. 学会 PDF
  2. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会. 摂食嚥下障害の評価 2019. 学会 PDF
  3. Persson E, Wårdh I, Östberg P. Repetitive Saliva Swallowing Test: Norms, Clinical Relevance and the Impact of Saliva Secretion. Dysphagia. 2019;34(2):271-278. doi: 10.1007/s00455-018-9937-0PubMed
  4. Baba Y, Teramoto S, Hasegawa H, et al. [Characteristics and limitation of portable bedside swallowing test in elderly with dementia: comparison between the repetitive saliva swallowing test and the simple swallowing provocation test]. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2005;42(3):323-327. doi: 10.3143/geriatrics.42.323PubMed
  5. Oguchi N, Yamamoto S, Terashima S, et al. The modified water swallowing test score is the best predictor of postoperative pneumonia following extubation in cardiovascular surgery: A retrospective cohort study. Medicine (Baltimore). 2021;100(4):e24478. doi: 10.1097/MD.0000000000024478PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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