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この記事は「反復唾液嚥下テスト(RSST)」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
反復唾液嚥下テストは、1990年代に日本で開発された機能的嚥下障害のスクリーニング法になります。脳卒中治療ガイドライン:2015年「嚥下障害のリハビリテーション」では、スクリーニング検査の実施がグレードAで推奨されています。
また、2005年度からは「介護予防のための生活機能評価」の1項目としても反復唾液嚥下テストが採用されています。
反復唾液嚥下テストは、環境や職種を選ばず実施可能であり、医療機関以外の様々なシチュエーションでも実施することができます。これは大きなメリットであり、言語聴覚士が不在の職場や、在宅でも評価することができるためスクリーニング検査として、うってつけと言えるでしょう。
臨床では初期評価から経過観察、治療効果判定まで幅広く使用されています。急性期入院での初期評価から、経口摂取の帰結予測を検討した報告もあります。こちらの記事でRSSTの方法と意義および特徴についてまとめさせて頂きます!
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
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医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
反復唾液嚥下テスト スクリーニング検査の意義
嚥下反射は spontaneous swallow(自発嚥下)と voluntary swallow(不随意嚥下)に大別されます。
反復唾液嚥下テスト(RSST)は随意嚥下の惹起性を定量評価しています。カウントするのは咽頭期の嚥下反射ですが、空嚥下の反復は咽頭期以前の運動・認知も含まれる課題となります。
簡便性や安全性も大きな利点でありますが、回数・時間という間隔尺度であることも大きな利点です。反復唾液嚥下テスト(RSST)は統計的処理を容易に行うことが可能であり、対象集団の嚥下機能の特徴を分析しやすいことも利点になります。
摂食嚥下の 5 期モデルについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下の5期モデルについての記事はこちらから】
反復唾液嚥下テスト 測定方法
測定は原則、座位で行うことが推奨されています。
「30 秒間にできるだけ多く(ゴックンと)唾を飲み込んでみてください」と指示し、嚥下反射の回
数を計測します。
嚥下反射は第 2 指で喉頭隆起を、第3指で舌骨を触れ、喉頭挙上・下降運動を確認します。
口腔内乾燥が著明な場合は 1 ml 程度の水で口腔内を湿らせてから実施しても問題ないとされています。
反復唾液嚥下テスト 測定における留意点
実施前に留意点を説明します。「30秒間テストに集中し途中で発語しないこと」「口腔内に唾液がなくなっても続けること」を説明します。
カウントにおける注意点としては、簡便な検査であるからこそ、嚥下の回数をいかに正確に数えることができるかどうかになります。
検査時には、対象者の喉頭隆起(甲状軟骨)と舌骨を触診しながら、嚥下をしてもらいます。第 2 指で喉頭隆起を、第 3 指で舌骨を触れ、喉頭隆起が第 2 指を十分に超えた場合のみ、1 回の嚥下と数えます。
人によっては、嚥下の際に喉頭隆起があまり動かないことや、二段階に動くために数えにくいこともあります。また、嚥下をしかけたまま、未然に終わることもあります。
回数だけでなく嚥下反射までの所要時間を記録しておくと、より詳細な変化が評価できるので良いと思います。
反復唾液嚥下テスト 判定基準 評価基準
30 秒間に 3 回をカットオフ値とし、2 回以下を陽性とします。実施を試みたけど 0 回だったパターンと、そもそも測定自体が不能であったパターンは『0 回と実施不能』で区別して記録します。
リハビリテーションで嚥下障害を疑われ、嚥下造影検査を実施した患者において、RSST 3 回は誤嚥のスクリーニングとして感度 0.98、特異度 0.66 であり感度が非常に高い結果になっております。すなわち偽陰性は少ないですが、偽陽性が多い点に注意が必要になります。
反復唾液嚥下テスト 実施できない条件
反復唾液嚥下テスト(RSST)は指示理解が困難だと、実施不能となります。改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いた報告によると 2 点以上で 50 %以上、12 点以上で 90 %以上の症例が実施可能と報告されています。また、CDR(Cliical Dementia Rating)を用いた報告によると、CDR2 では 77 %の症例で実施可能、CDR3 では全員実施不能という結果になっております。
両報告のとおり、認知症であっても程度により実施は可能になります。入院中は、病態改善とともに認知機能も改善し、初回は評価不能であったが、評価可能となる場合もあります。
RSSTに限らずスクリーニングテストは、簡便に繰り返し評価できることが強みとなります。スクリーニングテストにより日々の病態変化を捉え、適切な時期に精密検査や目標設定ができるようにするのが望ましいと考えます。
CDR(Cliical Dementia Rating)については、他の記事で詳しくまとめています!《【CDRとは:認知症スコアの判定方法】臨床的認知症尺度の評価用紙》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
改訂水飲みテストも併せることで評価の質は向上する
嚥下機能評価を行うときには、複数の評価法を組み合わせ、包括的に判断することが必須になります。
反復唾液嚥下テスト(RSST)の実施後には、改訂水飲みテストやフードテスト、結果によっては更なる精密検査が必要になることもあります。
反復唾液嚥下テスト(RSST)は誤嚥リスクの判断、経時的変化の評価項目、さらには水飲みテストの嚥下前運動として効果的です。
については、他の記事で詳しくまとめています!《改訂水飲みテストとは?3ml、30ml、100mlを使い分け評価》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
反復唾液嚥下テスト(RSST)陽性の患者に対して、経口負荷テストを実施する際は、量や粘度などの調整、酸素飽和度のモニタリング、直ぐに吸引できるようにする等のリスク管理が必要になります。
反復唾液嚥下テスト(RSST)の課題難易度を安全性や誤嚥リスクから捉えると反復唾液嚥下テスト(RSST)は他テスト(水飲みテスト、フードテスト)より難易度が低い課題となります。
一方、嚥下運動から捉えると経口負荷なしで嚥下反射を複数回惹起することは、難易度の高い課題になります。高難易度の課題はスクリーニングの感度を上げるとともに、嚥下機能の予備能をみることにも繋がります。
高齢者が反復唾液嚥下テスト(RSST)の回数が少なくなることは、多くの論文で報告されています。過去の報告によると、RSST 6 回以上の割合は 40 代:約 60 %、50 〜 60 代:約 50 %、80 代以上:約 30 %となります。RSST が加齢に伴う機能低下を捉えていることが分かります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では、反復唾液嚥下テスト(RSST)についてまとめさせて頂きました!
RSST開発から20年、日本の高齢化率は2000年の17%から2022年28.9%へと急速に上昇しています。また、平均寿命も着々と伸びつつあり、2021年度の平均寿命は男性81.47歳、女性は87.57歳となっています。
当然、入院することになる患者の平均年齢も上がるわけですが、その結果、嚥下機能が低下し誤嚥性肺炎を発症するケースが生じております。
そこで、重要になるのが今回紹介した反復唾液嚥下テストになります。環境や職種を選ばず実施可能であり、医療機関以外の様々なシチュエーションでも実施することができます。これは大きなメリットであり、言語聴覚士が不在の職場や、在宅でも評価することができるためスクリーニング検査として優秀といえます。
私自身にも言える話にはなりますが、是非とも測定方法や測定における留意点を正しく理解し、臨床で活かせるようにしていきましょう!
RSST以外にもスクリーニング検査は様々なものがあります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【嚥下障害におけるスクリーニングテストについての記事はこちらから】
参考文献
- 小口和代,才藤栄一,水野雅康,馬場尊,奥井美枝,鈴木美保.機能的嚥下障害スクリーニングテスト 「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討.リハビリテーション医学.2000,37,p375-382.
- 戸原玄,下山和弘.反復唾液嚥下テストの意義と実施上の要点.老年歯学.2006,第20巻,第4号,p373-375.