
こんにちは!リハビリくんです!
今回は、反復唾液嚥下テスト(RSST)について解説させて頂きます!
反復唾液嚥下テストは、1990年代に日本で開発された機能的嚥下障害のスクリーニング法になります。脳卒中治療ガイドライン:2015年「嚥下障害のリハビリテーション」では、スクリーニング検査の実施がグレードAで推奨されています。
また、2005年度からは「介護予防のための生活機能評価」の1項目としても反復唾液嚥下テストが採用されています。
反復唾液嚥下テストは、環境や職種を選ばず実施可能であり、医療機関以外の様々なシチュエーションでも実施することができます。これは大きなメリットであり、言語聴覚士が不在の職場や、在宅でも評価することができるためスクリーニング検査として、うってつけと言えるでしょう。
臨床では初期評価から経過観察、治療効果判定まで幅広く使用されています。急性期入院での初期評価から、経口摂取の帰結予測を検討した報告もあります。こちらの記事でRSSTの方法と意義および特徴についてまとめさせて頂きます!

【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く1児の父です!
3学会合同呼吸療法認定士/認知症ケア専門士/透析技術認定士/糖尿病療養指導士/終末期ケア専門士等の医療系資格の勉強はアステッキをご利用するのも良いと思います。独自のeラーニング講座と専用アプリが搭載されており、隙間時間に学習を進めることができます!
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検査の意義
嚥下反射はspontaneous swallow(自発嚥下)とvoluntary swallow(不随意嚥下)に大別されます。

RSSTは随意嚥下の惹起性を定量評価しています。カウントするのは咽頭期の嚥下反射ですが、空嚥下の反復は咽頭期以前の運動・認知も含まれる課題となります。
簡便性や安全性も大きな利点でありますが、回数・時間という間隔尺度であることも大きな利点です。RSSTは統計的処理を容易に行うことが可能であり、対象集団の嚥下機能の特徴を分析しやすいことも利点になります。
摂食嚥下の5期モデルについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下の5期モデルについての記事はこちらから】
測定方法
測定は原則、座位で行うことが推奨されています。
「30秒間にできるだけ多く(ゴックンと)唾を飲み込んでみてください」と指示し、嚥下反射の回
数を計測します。
嚥下反射は第2指で喉頭隆起を、第3指で舌骨を触れ、喉頭挙上・下降運動を確認します。
口腔内乾燥が著明な場合は1m/程度の水で口腔内を湿らせてから実施しても問題ないとされています。
測定における留意点
実施前に留意点を説明します。「30秒間テストに集中し途中で発語しないこと」「口腔内に唾液がなくなっても続けること」を説明します。
カウントにおける注意点としては、簡便な検査であるからこそ、嚥下の回数をいかに正確に数えることができるかどうかになります。
検査時には、対象者の喉頭隆起(甲状軟骨)と舌骨を触診しながら、嚥下をしてもらいます。第2指で喉頭隆起を、第3指で舌骨を触れ、喉頭隆起が第2指を十分に超えた場合のみ、1回の嚥下と数えます。
人によっては、嚥下の際に喉頭隆起があまり動かないことや、二段階に動くために数えにくいこともあります。また、嚥下をしかけたまま、未然に終わることもあります。
回数だけでなく嚥下反射までの所要時間を記録しておくと、より詳細な変化が評価できるので良いと思います。
判定基準
30秒間に3回をカットオフ値とし、2回以下を陽性とします。実施を試みたけど0回だったパターンと、そもそも測定自体が不能であったパターンは『0回と実施不能』で区別して記録します。
リハビリテーションで嚥下障害を疑われ、嚥下造影検査を実施した患者において、RSST3回は誤嚥のスクリーニングとして感度0.98、特異度0.66であり感度が非常に高い結果になっております。すなわち偽陰性は少ないですが、偽陽性が多い点に注意が必要になります。
実施不能率
RSSTは指示理解が困難だと、実施不能となります。認知症においては、改訂長谷川式簡易知能評価スケール2点以上で50%以上、12点以上で90%以上が実施可能と報告されています。また、CDR(Cliical Dementia Rating)を用いた報告によると、CDR2では77%実施できたが、CDR3では全員実施不能という結果になりました。
両報告のとおり、認知症であっても程度により実施は可能になります。入院中は、病態改善とともに認知機能も改善し、初回は評価不能であったが、評価可能となる場合もあります。
RSSTに限らずスクリーニングテストは、簡便に繰り返し評価できることが強みとなります。スクリーニングテストにより日々の病態変化を捉え、適切な時期に精密検査や目標設定ができるようにするのが望ましいと考えます。
臨床的認知症尺度(CDR)
前述した臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)とは、認知症の重症度を評価するためのスケールの1つになります。
このスケールの特徴は、認知機能や生活状況などに関する6つの項目を診察上の所見や家族など周囲の人からの情報に基づいて評価する「観察法」であることになります。
それぞれの項目は「健康」な状態から「重度認知症」まで5つの段階に分類されています。評価表に基づいて分類することで認知症の程度だけでなく、特に障害されている機能を把握し、予後の見通しを立てるのに役立ちます。
臨床的認知症尺度(CDR)では、記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味・関心、介護状況の6項目について、評価表に基づいて「健康(CDR0)」「認知症疑い(CDR0.5)」「軽度認知症(CDR1)」「中等度認知症(CDR2)」「重度認知症(CDR3)」の5段階に分類します。
課題難易度
嚥下機能評価を行うときには、複数の評価法を組み合わせ、包括的に判断することが必須になります。
RSSTの実施後には、改訂水飲みテストやフードテスト、結果によっては更なる精密検査が必要になることもあります。
RSSTは誤嚥リスクの判断、経時的変化の評価項目、さらには水飲みテストの嚥下前運動として効果的です。
RSST陽性の患者に対して、経口負荷テストを実施する際は、量や粘度などの調整、酸素飽和度のモニタリング、直ぐに吸引できるようにする等のリスク管理が必要になります。
RSSTの課題難易度を安全性や誤嚥リスクから捉えるとRSSTは他テスト(水飲みテスト、フードテスト)より難易度が低い課題となります。
一方、嚥下運動から捉えると経口負荷なしで嚥下反射を複数回惹起することは、難易度の高い課題になります。高難易度の課題はスクリーニングの感度を上げるとともに、嚥下機能の予備能をみることにも繋がります。
高齢者がRSSTの回数が少なくなることは、多くの論文で報告されています。過去の報告によると、RSST6回以上の割合は40代:約60%、50〜60代:約50%、80代以上:約30%となります。RSSTが加齢に伴う機能低下を捉えていることが分かります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では、反復唾液嚥下テスト(RSST)についてまとめさせて頂きました!
RSST開発から20年、日本の高齢化率は2000年の17%から2022年28.9%へと急速に上昇しています。また、平均寿命も着々と伸びつつあり、2021年度の平均寿命は男性81.47歳、女性は87.57歳となっています。
当然、入院することになる患者の平均年齢も上がるわけですが、その結果、嚥下機能が低下し誤嚥性肺炎を発症するケースが生じております。
そこで、重要になるのが今回紹介した反復唾液嚥下テストになります。環境や職種を選ばず実施可能であり、医療機関以外の様々なシチュエーションでも実施することができます。これは大きなメリットであり、言語聴覚士が不在の職場や、在宅でも評価することができるためスクリーニング検査として優秀といえます。
私自身にも言える話にはなりますが、是非とも測定方法や測定における留意点を正しく理解し、臨床で活かせるようにしていきましょう!
RSST以外にもスクリーニング検査は様々なものがあります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【嚥下障害におけるスクリーニングテストについての記事はこちらから】

参考文献
- 小口和代,才藤栄一,水野雅康,馬場尊,奥井美枝,鈴木美保.機能的嚥下障害スクリーニングテスト 「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)の検討.リハビリテーション医学.2000,37,p375-382.
- 戸原玄,下山和弘.反復唾液嚥下テストの意義と実施上の要点.老年歯学.2006,第20巻,第4号,p373-375.