仙骨部の予防ドレッシングとは?骨突出が強い患者への追加対策

臨床手技・プロトコル
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仙骨突出が強い患者では、基本的な予防だけでリスクが残ることがあります

極度の痩せや仙骨部の骨突出が強い患者では、体圧分散マットレスやポジショニングを適切に行っていても、仙骨周囲に圧力・摩擦・ずれが集中することがあります。このような場合は、基本的な褥瘡予防を継続したうえで、未損傷皮膚を守る「予防的ドレッシング」を追加する方法があります。本記事では、予防的ドレッシングの役割、検討しやすい患者、使用時の注意点、まもろーるとの違い、仙骨部に使用される代表的な製品例を整理します。

この記事の結論

予防的ドレッシングは、マットレスやポジショニングの代わりではありません。基本的な予防策を実施しても仙骨部のリスクが残る患者に対して、局所の外力や皮膚への負担を軽減するために追加する選択肢です。

マットレスやポジショニングだけでは防ぎきれない場合があります

体圧分散マットレスやポジショニングを実施していても、仙骨部への外力を完全に取り除けない患者はいます。

特に、皮下脂肪や筋肉量が著しく減少している患者では、仙骨と皮膚表面の間にある軟部組織が薄くなります。仙骨が鋭く突出していると、仰臥位や半側臥位で局所に圧力が集中しやすくなります。

また、ベッド上で身体が下方へ移動する、背上げによって仙骨部にずれが加わる、体位変換時に皮膚が寝具と擦れるなど、圧力以外の外力も褥瘡発生に関係します。

  • 皮下脂肪や筋肉量が少ない
  • 仙骨が鋭く突出している
  • 自力で体位を変えられない
  • 背上げによる身体のずり下がりがある
  • 失禁、発汗、発熱などで皮膚が湿潤している
  • 栄養状態や循環状態が低下している

このような患者では、マットレスの機種や設定を調整し、ポジショニングを見直しても、仙骨部だけに発赤や圧痕が生じることがあります。

それでもリスクが残る場合は予防的ドレッシングを追加します

予防的ドレッシングは、褥瘡のない皮膚にあらかじめ貼付し、局所に加わる圧力・摩擦・ずれや皮膚への刺激を軽減するために使用します。

日本褥瘡学会は、骨突出部の皮膚保護として、ポリウレタンフィルムドレッシング材、すべり機能付きドレッシング材、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコンドレッシング材を貼る方法を紹介しています。

仙骨部では、クッション性を持つ多層フォームと、皮膚への負担に配慮したシリコーン粘着層を組み合わせた製品が使用されます。仙骨周囲の形状に合わせて設計された製品もあります。

予防的ドレッシングの位置づけ

体圧分散マットレス、ポジショニング、体位変換、摩擦・ずれ対策、スキンケア、栄養管理を継続しながら追加する補助的な対策です。

仙骨部の予防ドレッシングを説明するA4ポスターPDF

仙骨突出が強い患者に予防的ドレッシングを検討する理由を、院内で共有しやすいA4ポスターにまとめました。

褥瘡対策委員会、病棟カンファレンス、新人教育、ナースステーションでの掲示などにご活用ください。

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マットレスやポジショニングだけではリスクが残る理由、基本的な予防策、予防的ドレッシングの役割、代表的な製品例をA4一枚に整理しています。

A4ポスターPDFを開く・ダウンロードする

※PDFが画面内に表示されない場合は、上の「A4ポスターPDFを開く・ダウンロードする」からご確認ください。

予防的ドレッシングを検討しやすい患者

予防的ドレッシングは、仙骨部の褥瘡リスクが高い患者全員へ一律に貼るのではなく、基本的な予防を実施しても局所リスクが残る患者で検討します。

仙骨部への予防的ドレッシングを検討する視点
確認項目 具体的な状態
体格 BMIが低い、著しいるいそうがある、皮下脂肪や筋肉量が少ない
骨突出 仙骨が鋭く突出し、接触面積が狭い
活動性 自力で除圧や体位変換ができない
皮膚所見 消退する発赤、圧痕、乾燥、脆弱性などがみられる
外力 背上げ、ずり下がり、移乗、体位変換時の摩擦やずれが多い
基本予防 マットレスやポジショニングを調整しても仙骨部のリスクが残る
全身状態 低栄養、浮腫、循環状態の低下、発熱、終末期など褥瘡リスクを高める要因がある

Braden Scaleなどのリスク評価は判断材料になりますが、合計点だけで貼付の要否を決めるものではありません。仙骨の突出、皮膚所見、体位、ずれ、栄養状態などを併せて判断します。

予防的ドレッシングにできること・できないこと

予防的ドレッシングは局所の負担を軽減しますが、仙骨部の圧力を完全になくすものではありません。

予防的ドレッシングの役割と限界
期待される役割 代替できない対策
局所に加わる外力の緩衝・分散 患者に適した体圧分散マットレスの選択
摩擦・ずれによる皮膚への負担軽減 体位変換やポジショニング
寝具や衣類との直接的な接触の軽減 背上げ時のずり下がり対策
皮膚周囲の微小環境への配慮 失禁管理、洗浄、保湿などのスキンケア
皮膚の保護 栄養、循環、全身状態の管理

ドレッシング材を貼っていることで安心し、体位変換や皮膚観察が減ってしまうと、本来必要な予防策が不十分になる可能性があります。

貼付前に確認したい皮膚状態

貼付前には、仙骨部が未損傷皮膚なのか、すでに褥瘡や皮膚障害が生じているのかを確認します。

  • 発赤が圧迫解除後に消退するか
  • 紫色や暗赤色の変色がないか
  • 硬結、熱感、冷感、浮腫、疼痛がないか
  • 表皮剝離、水疱、びらんがないか
  • 失禁や発汗による浸軟がないか
  • 真菌症、接触皮膚炎、失禁関連皮膚炎などが疑われないか

持続する発赤、暗赤色・紫色の変色、水疱、表皮剝離などがある場合は、単なる予防ではなく、褥瘡または他の皮膚障害として評価が必要です。創傷がある場合は、創の深さ、滲出液、感染徴候、周囲皮膚などを評価し、治療目的の創傷被覆材を選択します。

使用中はドレッシングの上からではなく、皮膚を直接確認します

予防的ドレッシングを使用している間も、製品の使用方法に従って皮膚を直接観察する必要があります。

  1. 貼付前に皮膚を清潔にする
    汚染や余分な水分を除去し、十分に乾燥させます。
  2. 仙骨部の位置を確認する
    骨突出部とドレッシングの保護部分が適切に重なるようにします。
  3. 皮膚を伸ばさずに貼付する
    ドレッシングを引っ張った状態で貼ると、皮膚へ緊張が加わることがあります。
  4. しわや浮きを確認する
    端のめくれやしわは、摩擦やずれの原因になります。
  5. 皮膚を直接観察する
    発赤、圧痕、浸軟、発汗、ずれ、表皮剝離、粘着剤による刺激を確認します。
  6. 基本的な予防策を継続する
    体圧分散、体位変換、ポジショニング、栄養管理を中断しないようにします。

注意点

貼付期間、交換時期、貼り直しの可否、使用できない皮膚状態は製品ごとに異なります。必ず最新の添付文書、取扱説明書、施設の手順を確認してください。

仙骨部の予防に使用される代表的な製品例

仙骨部には、身体の形状に追従しやすい多層フォームやソフトシリコーン粘着を採用した製品があります。

以下は選択肢を理解するための製品例です。特定製品の使用を一律に推奨するものではありません。院内採用品、患者の皮膚状態、製品の使用目的、添付文書、費用を確認して選択してください。

仙骨部の皮膚保護に使用される製品例
製品例 主な特徴 確認したい点
メピレックス ボーダー サクラム 仙骨部の形状に合わせた自己粘着性・吸収性のあるソフトシリコーンフォームドレッシング 国内で流通する販売名・規格、添付文書、使用目的を確認する
アレビン ライフ 皮膚の保護に使用される多層構造のポリウレタンフォーム保護パッド材 採用規格、貼付部位、交換時期、施設での費用区分を確認する
バイアテン シリコーンシリーズ 柔軟性のあるフォームとシリコーン粘着層を備えたドレッシング材 製品ごとの使用目的、規格、仙骨部への適合性を公式資料で確認する

製品名が似ていても、健常皮膚の保護を目的とした衛生材料と、皮膚欠損部の治療を目的とした創傷被覆材では、製品区分や使用目的が異なる場合があります。

また、未損傷皮膚への予防目的で使用した材料が、創傷治療用の特定保険医療材料として算定できるとは限りません。購入方法や費用の扱いは、施設の医事・材料管理部門と確認してください。

まもろーるは創傷被覆材ではなく、外力低減を目的とした保護材です

まもろーるは、医療機器や自重による外力を低減するためのポリウレタンフォームであり、創傷治療を目的とする一般的な創傷被覆材とは位置づけが異なります。

白十字の公式情報では、まもろーるは医療機器や自重による外力を低減するポリウレタンフォームとして紹介され、MDRPUの好発部位への貼付が使用場面として挙げられています。

まもろーると仙骨用フォームドレッシングの整理
比較項目 まもろーる 仙骨用フォームドレッシング
主な役割 医療機器や自重による外力の低減 仙骨部の皮膚保護、圧力・摩擦・ずれへの追加対策
形状 ロール状で必要な大きさに調整しやすい 仙骨周囲に合わせた形状の製品がある
創傷への使用 創傷治療用の創傷被覆材として使用する製品ではない 製品によって健常皮膚の保護と創傷治療の両方に使用されるものがある
選択の考え方 医療機器との接触部や局所的な外力への対策として検討する 仙骨部の形状に合わせて広い範囲を保護したい場合に検討する

まもろーるを仙骨突出部へ使用する場合も、皮膚状態、粘着剤による刺激、しわ、端のめくれ、ずれを観察する必要があります。仙骨部に適した形状や多層構造を重視する場合は、仙骨用に設計された予防的ドレッシングの方が運用しやすいことがあります。

現場では「基本予防を見直してから追加する」と判断しやすくなります

予防的ドレッシングを検討するときは、最初から貼付材だけで解決しようとせず、皮膚の直接観察と基本予防の見直しから始めます。

仙骨部の予防ドレッシングを検討する流れ。皮膚状態の観察、基本予防の見直し、予防的ドレッシングの追加、貼付後の再評価を示した図版
仙骨部の予防ドレッシングを検討する流れ
  1. 仙骨部の皮膚を直接観察する
    持続する発赤、紫色・暗赤色の変色、水疱、表皮剝離などがないか確認します。
  2. 皮膚障害があれば原因と創傷を評価する
    予防目的の貼付だけで対応せず、褥瘡や他の皮膚障害として評価します。
  3. マットレスの種類と設定を確認する
    患者の体格、活動性、体位、底付きの有無などを確認します。
  4. 仰臥位、側臥位、背上げ時の仙骨部への荷重を確認する
    ポジショニング後も仙骨部へ負担が残っていないかを確認します。
  5. ずり下がり、摩擦、移乗方法を確認する
    背上げ角度や介助方法を含め、ずれが生じる場面を見直します。
  6. 失禁、発汗、栄養、循環などの全身要因を確認する
    局所対策だけでなく、皮膚耐久性を低下させる要因にも対応します。
  7. 基本予防を修正しても局所リスクが残る場合に、予防的ドレッシングを追加する
    未損傷皮膚への追加対策として、患者と部位に適した製品を選択します。
  8. 貼付後も皮膚所見を再評価する
    発赤、圧痕、浸軟、剝がれ、しわなどを確認し、継続・変更・中止を判断します。

「貼って終わり」ではなく、貼付前後の皮膚所見と、マットレス・体位・ずれの状況を記録しておくと、多職種で効果を共有しやすくなります。

記録に残したい内容

予防的ドレッシングを開始した理由と、開始後の皮膚変化を記録します。

  • 仙骨突出の程度
  • 貼付前の皮膚色、発赤、圧痕、硬結、疼痛
  • 使用中の体圧分散マットレスと設定
  • 主な体位とポジショニング方法
  • ドレッシング材の製品名、規格、貼付日
  • 皮膚観察日と観察結果
  • 剝がれ、しわ、浸軟、粘着剤による刺激の有無
  • 継続、変更、中止の判断理由

記録例:著明なるいそうと仙骨突出あり。体圧分散マットレス使用および30度側臥位を実施しているが、仰臥位後に仙骨部へ消退する発赤を認める。基本的予防策を継続し、局所の外力軽減を目的として仙骨用予防ドレッシングを開始。皮膚観察時に発赤・圧痕・浸軟・剝がれの有無を確認する。

仙骨部の予防ドレッシングに関するよくある質問

予防的ドレッシングを貼れば体位変換は不要になりますか?

不要にはなりません。予防的ドレッシングは外力を軽減する追加対策であり、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニング、摩擦・ずれ対策を継続する必要があります。

発赤がある皮膚にも予防目的で貼ってよいですか?

まず発赤が消退するか、暗赤色や紫色の変色、硬結、疼痛、熱感、水疱などがないかを確認します。消退しない発赤や深部損傷を疑う所見がある場合は、予防ではなく褥瘡としての評価と対応が必要です。

毎日交換する必要がありますか?

交換時期は製品、皮膚状態、失禁、発汗、剝がれ、汚染の程度によって異なります。毎日交換するとは限りませんが、皮膚を直接観察できるよう、製品の手順に従って定期的に確認します。

まもろーるを仙骨部に使用してもよいですか?

まもろーるは外力を低減する保護材として使用されますが、創傷治療用の創傷被覆材ではありません。仙骨部全体を保護したい場合や、身体形状への追従性を重視する場合は、仙骨用フォームドレッシングも選択肢になります。

未損傷皮膚への予防貼付は保険算定できますか?

創傷治療を目的とする特定保険医療材料と、未損傷皮膚への予防使用では扱いが異なる可能性があります。予防目的で使用する場合の費用や請求方法は、施設の医事部門、材料管理部門、メーカーへ確認してください。

まとめ

仙骨突出が強い患者では、体圧分散マットレスやポジショニングを適切に行っても、局所の褥瘡リスクが残ることがあります。

そのような場合は、基本的な褥瘡予防を継続しながら、予防的フォームドレッシングを追加する方法があります。予防的ドレッシングは圧力を完全になくすものではなく、圧力・摩擦・ずれや皮膚への負担を軽減する補助的な対策です。

対象患者を一律に決めるのではなく、仙骨突出、皮膚所見、自力体位変換能力、ずれ、栄養・循環状態、現在のマットレスとポジショニングを総合的に評価します。貼付後も皮膚を直接観察し、継続・変更・中止を判断することが重要です。

参考文献・公式情報

  1. 日本褥瘡学会.褥瘡の予防について.日本褥瘡学会公式サイト(参照2026-08-05).
  2. 日本褥瘡学会.褥瘡の治療について.日本褥瘡学会公式サイト(参照2026-08-05).
  3. Mölnlycke Health Care.Mepilex Border Sacrum.メーカー公式サイト(参照2026-08-05).
  4. Smith & Nephew.アレビン ライフ.メーカー公式サイト(参照2026-08-05).
  5. Smith & Nephew.ウンドマネジメント製品検索.メーカー公式サイト(参照2026-08-05).
  6. 白十字株式会社.まもろーる.メーカー公式サイト(参照2026-08-05).

免責事項

本記事は医療従事者への情報提供を目的としています。実際の製品選択や使用方法は、患者の皮膚状態、創傷の有無、施設の方針、各製品の最新の添付文書・取扱説明書に基づいて判断してください。

著者情報

rehabilikun

療養病院に勤務する理学療法士です。褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、脳卒中認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士として、臨床での評価や褥瘡予防、多職種連携に携わっています。

当サイトでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師などの医療従事者に向けて、評価方法、記録、判断基準、院内で活用できる資料を発信しています。

  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 脳卒中認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級