- S/F比とは?まず計算式と315・235・148の見方
- S/F比の計算方法|FiO₂は%から小数へ変換する
- S/F比315・235・148とは?Global Definition of ARDSの見方
- 非挿管ARDSでもS/F比が使われる|HFNO・NIVの条件を確認
- なぜS/F比はSpO₂ 97%以下で使う?98〜100%では頭打ちになる
- S/F比とP/F比の違い|採血なしで評価できるが完全な代替ではない
- S/F比とROX indexの違い|ROXはさらに呼吸数を加える
- S/F比を比較するときはSpO₂・FiO₂の測定条件をそろえる
- ケースで練習|S/F比を計算してどう読む?
- S/F比は経時変化も見る|FiO₂変更を含めて評価する
- S/F比の記録例|SpO₂だけでなくFiO₂と呼吸補助まで残す
- S/F比でよくある間違い|315・235・148だけを丸暗記しない
- S/F比のFAQ
- まとめ|S/F比は315・235・148とSpO₂ 97%以下をセットで覚える
- 参考文献
- 著者情報
S/F比とは?まず計算式と315・235・148の見方
S/F比(SpO₂/FiO₂ ratio)は、パルスオキシメータで測定したSpO₂を吸入酸素濃度(FiO₂)で割り、酸素化の程度を非侵襲的に整理する指標です。動脈血ガスを必要とするP/F比に対して、S/F比はSpO₂を用いるため、ベッドサイドで繰り返し確認しやすい特徴があります。
計算式はシンプルですが、最も重要なのはFiO₂を%ではなく小数で計算することです。たとえばFiO₂ 40%なら「40」ではなく「0.40」を使用します。
S/F比の計算式
S/F比 = SpO₂(%)÷ FiO₂
例:SpO₂ 94%、FiO₂ 40%
FiO₂ 40% = 0.40
94 ÷ 0.40 = S/F比 235
2024年のGlobal Definition of ARDSでは、SpO₂が97%以下の場合にS/F比を酸素化評価へ使用でき、侵襲的人工呼吸中のARDS重症度では315・235・148が境界として用いられます。
まず覚えたい3つの境界
235超〜315以下:軽症ARDSの酸素化範囲
148超〜235以下:中等症ARDSの酸素化範囲
148以下:重症ARDSの酸素化範囲
ただし、S/F比だけでARDSを診断するわけではありません。ARDSの診断では、発症時期、胸部画像、肺水腫の原因、呼吸補助条件など、ほかの定義項目も確認する必要があります。
呼吸数、SpO₂、呼吸パターンなど呼吸評価全体の見方は、
呼吸理学療法の評価項目|順番・使い分け
でも整理しています。
S/F比の計算方法|FiO₂は%から小数へ変換する
S/F比の計算で最も多い間違いは、FiO₂ 40%を「40」のまま式に入れてしまうことです。FiO₂は割合なので、小数へ変換して計算します。
| FiO₂ | 計算に使う値 |
|---|---|
| 21% | 0.21 |
| 30% | 0.30 |
| 40% | 0.40 |
| 50% | 0.50 |
| 60% | 0.60 |
| 80% | 0.80 |
| 100% | 1.00 |
例1|SpO₂ 96%・FiO₂ 0.40
96 ÷ 0.40
= S/F比 240
例2|SpO₂ 92%・FiO₂ 0.60
92 ÷ 0.60
= S/F比 約153
同じSpO₂でも、必要なFiO₂が高いほどS/F比は低下します。つまり、「SpO₂が保たれているか」だけでなく、「どのFiO₂でそのSpO₂を維持しているか」を数値化できるのがS/F比の利点です。
S/F比315・235・148とは?Global Definition of ARDSの見方
2024年のGlobal Definition of ARDSでは、SpO₂が97%以下の場合、P/F比の代わりにS/F比を用いて酸素化障害を評価できるようになりました。
侵襲的人工呼吸を受けているARDS患者では、S/F比による酸素化の重症度は次のように分類されます。

| 重症度 | S/F比 | P/F比の範囲 |
|---|---|---|
| 軽症 | >235〜≤315 | >200〜≤300mmHg |
| 中等症 | >148〜≤235 | >100〜≤200mmHg |
| 重症 | ≤148 | ≤100mmHg |
たとえばS/F比235は、中等症側の上限に該当します。一方、236であれば軽症側の範囲です。境界値を扱うときは「以上」「以下」「超える」の違いまで確認します。
注意:315・235・148は「S/F比だけでARDSを診断する基準」ではありません。ARDSの酸素化基準の一部であり、発症時期、両側肺陰影、肺水腫の原因、呼吸補助条件などを含めて診断します。
非挿管ARDSでもS/F比が使われる|HFNO・NIVの条件を確認
Global Definition of ARDSでは、従来のBerlin Definitionでは十分に含まれていなかった非挿管患者のARDSも定義に組み込まれました。
非挿管ARDSでは、急性低酸素性呼吸不全の患者がHFNO(高流量鼻カニュラ酸素療法)またはNIV・CPAPなどの呼吸補助を受け、酸素化基準を満たす場合が対象になります。
非挿管ARDSの酸素化基準で確認
S/F比:≤315(SpO₂ ≤97%の場合)
HFNO:流量30L/分以上
NIV・CPAP:呼気終末陽圧5cmH₂O以上
つまり「S/F比が300だからARDS」と単独で判断するわけではありません。どの呼吸補助を、どの設定で使用しているかまで確認します。
なぜS/F比はSpO₂ 97%以下で使う?98〜100%では頭打ちになる
S/F比を使う際の重要な条件が、SpO₂ 97%以下です。SpO₂が98〜100%に近づくと、酸素解離曲線の上側で飽和度が頭打ちになり、PaO₂が大きく変化してもSpO₂には差が出にくくなります。
たとえば、次の条件を考えます。
SpO₂ 99%、FiO₂ 0.50
99 ÷ 0.50
= S/F比 198
数値だけを見ると中等症ARDSの範囲に見えます。しかしSpO₂が97%を超えているため、Global DefinitionのS/F比による重症度判定には使用しません。
覚え方:S/F比をARDSの酸素化基準として使うときは、計算する前にまず「SpO₂ ≤97%か」を確認します。
S/F比とP/F比の違い|採血なしで評価できるが完全な代替ではない
S/F比とP/F比は、どちらも吸入酸素濃度に対する酸素化を整理する指標ですが、分子に使う値が異なります。
| 項目 | S/F比 | P/F比 |
|---|---|---|
| 計算式 | SpO₂ ÷ FiO₂ | PaO₂ ÷ FiO₂ |
| 測定 | パルスオキシメータ | 動脈血ガス |
| 侵襲性 | 非侵襲的 | 採血が必要 |
| 繰り返し | 行いやすい | 採血が必要 |
| 主な注意 | SpO₂測定誤差・高値で頭打ち | 採血時点の値 |
成人ARDS患者を対象としたRiceらの研究では、S/F比315がP/F比300、S/F比235がP/F比200に対応することが示されました。これらの関係が、S/F比を酸素化評価へ利用する根拠の1つとなっています。
S/F比はP/F比と関連しますが、SpO₂とPaO₂は同じものではありません。特に高いSpO₂領域やパルスオキシメータの測定精度に問題がある場面では、S/F比をP/F比と完全に同一視しないことが重要です。
P/F比そのものの計算と300・200・100の見方は、
P/F比とは?計算方法・FiO₂・数値の見方
で詳しく解説しています。
S/F比とROX indexの違い|ROXはさらに呼吸数を加える
S/F比はROX indexにも使われています。ROX indexの式は、S/F比をさらに呼吸数で割ったものです。
2つの式を比較
S/F比 = SpO₂ ÷ FiO₂
ROX index =(SpO₂ ÷ FiO₂)÷ 呼吸数
S/F比は主に酸素化を見る指標です。一方、ROX indexは呼吸数も含めることで、HFNC使用患者における呼吸状態や治療失敗リスクの評価へ利用されます。
そのため、S/F比が同じ患者でも呼吸数が増えていればROX indexは低下します。両者は似た式ですが、目的は同じではありません。
S/F比を比較するときはSpO₂・FiO₂の測定条件をそろえる
S/F比を経時的に比較する場合は、SpO₂とFiO₂を同じ時点の値として扱うことが基本です。FiO₂を変更した直後のSpO₂と、変更前のFiO₂を組み合わせると意味のない値になります。
SpO₂の測定状態を確認する
体動、末梢循環不良、センサー装着不良などによってSpO₂が不安定な場合、その値から計算したS/F比も信頼性が低下します。数値だけでなく波形や測定状況を確認します。
FiO₂を正しく確認する
人工呼吸器、HFNC、NIVなど設定FiO₂が明確な機器では、その設定値を使用します。一方、低流量鼻カニュラなどでは患者の呼吸パターンによって実際のFiO₂が変動するため、設定流量から推定したFiO₂を厳密な値として扱わないようにします。
体位や治療条件の変化を記録する
腹臥位、吸引、呼吸器設定変更などの前後でS/F比を比較するときは、その条件も記録します。数値が改善していてもFiO₂増量後であれば、単純に酸素化が改善したとは判断できません。
S/F比を比較するときの確認
SpO₂測定状態 / FiO₂ / 呼吸補助方法 / 体位 / 設定変更 / 測定時刻
ケースで練習|S/F比を計算してどう読む?
S/F比は計算そのものより、SpO₂ 97%以下という条件と315・235・148の境界を合わせて解釈することが重要です。
ケース1|SpO₂ 96%・室内気
室内気のFiO₂を0.21として計算します。
96 ÷ 0.21
= S/F比 約457
整理:S/F比からはGlobal DefinitionのARDS酸素化基準に該当する低値ではありません。ただし、S/F比だけで呼吸器疾患の有無を判断するものではありません。
ケース2|SpO₂ 94%・FiO₂ 0.40
94 ÷ 0.40
= S/F比 235
整理:SpO₂は97%以下です。侵襲的人工呼吸中で他のARDS診断条件も満たす場合、235は中等症の酸素化範囲の上限に該当します。
ケース3|SpO₂ 92%・FiO₂ 0.60
92 ÷ 0.60
= S/F比 約153
整理:148を超え235以下なので、中等症ARDSの酸素化範囲です。S/F比だけではなく人工呼吸条件とARDSの他の診断項目を確認します。
ケース4|SpO₂ 88%・FiO₂ 0.80
88 ÷ 0.80
= S/F比 110
整理:148以下であり、侵襲的人工呼吸中に他のARDS診断条件を満たしていれば重症ARDSの酸素化範囲です。数値だけでなく、患者の呼吸・循環状態を速やかに評価します。
ケース5|SpO₂ 99%・FiO₂ 0.50
99 ÷ 0.50
= S/F比 198
整理:計算自体はできますが、SpO₂が97%を超えています。Global DefinitionにおけるARDS重症度判定には、このS/F比を使用しません。
S/F比は経時変化も見る|FiO₂変更を含めて評価する
S/F比は採血を必要としないため、同じ条件で繰り返し確認しやすい指標です。単一の値だけでなく、酸素条件とともに推移を見ると臨床で使いやすくなります。
たとえば、
FiO₂ 0.60・SpO₂ 90% → S/F 150
FiO₂ 0.50・SpO₂ 94% → S/F 188
FiO₂ 0.40・SpO₂ 95% → S/F 238
のように、FiO₂を下げながらS/F比が上昇していれば、酸素化が改善している方向の情報になります。
一方、SpO₂が同じ94%でも、FiO₂が0.40から0.70へ上がればS/F比は235から約134へ低下します。SpO₂だけでは見えにくい酸素需要量の増加を把握できる点がS/F比の利点です。
S/F比の記録例|SpO₂だけでなくFiO₂と呼吸補助まで残す
S/F比を記録するときは、「S/F比180」のみではなく、計算に使用したSpO₂・FiO₂と呼吸補助条件を残します。
記録例
HFNC 40L/min、FiO₂ 0.50。安静時SpO₂ 93%、RR 26回/分。S/F比=93÷0.50=186。前回FiO₂ 0.60、SpO₂ 92%、S/F比153から上昇。呼吸数・努力呼吸・酸素条件と合わせて継続評価する。
最低限記録したい項目
- SpO₂
- FiO₂
- S/F比
- 酸素療法・呼吸補助方法
- HFNC flowや人工呼吸器設定など必要な条件
- 呼吸数・努力呼吸
- 測定時刻
- 前回値からの変化
S/F比でよくある間違い|315・235・148だけを丸暗記しない
S/F比は簡単に計算できますが、FiO₂の単位やSpO₂ 97%以下という条件を見落とすと、誤った解釈につながります。
| よくある間違い | 問題 | 修正 |
|---|---|---|
| FiO₂ 40%を40で割る | 計算を誤る | 0.40で計算する |
| SpO₂ 99%でもARDS分類する | Global Definitionの適用条件外 | SpO₂ ≤97%を確認 |
| S/F≤315=ARDSと断定 | 診断の他条件を無視 | 画像・時期・原因等も確認 |
| 低流量酸素のFiO₂を固定値扱い | 実際のFiO₂とずれる可能性 | デバイスと呼吸条件を確認 |
| P/F比と完全に同一視 | SpO₂特有の限界を無視 | 目的と測定条件で使い分け |
S/F比のFAQ
S/F比で特に迷いやすい、計算方法、315・235・148、SpO₂ 97%、P/F比との関係を整理します。
Q. S/F比の計算式は?
S/F比=SpO₂÷FiO₂です。SpO₂ 94%、FiO₂ 40%なら、94÷0.40=235となります。FiO₂は40ではなく0.40として計算します。
Q. S/F比315とは何ですか?
成人ARDS研究ではS/F比315がP/F比300に対応する値として報告されました。Global Definition of ARDSでも、SpO₂が97%以下の場合にS/F比315以下が酸素化基準として使用されます。
Q. S/F比235は軽症ですか?中等症ですか?
Global Definitionの侵襲的人工呼吸中の分類では、軽症は235を超えて315以下、中等症は148を超えて235以下です。そのため235ちょうどは中等症側の範囲です。
Q. SpO₂が98%でもS/F比を使えますか?
計算自体はできますが、Global Definition of ARDSの酸素化基準としてS/F比を使用する条件はSpO₂ 97%以下です。高いSpO₂領域ではPaO₂の変化がSpO₂へ反映されにくいため、ARDS重症度の分類には使用しません。
Q. S/F比が低ければARDSですか?
S/F比低値だけでARDSとは診断できません。S/F比は酸素化障害を示す指標であり、ARDSの診断には発症時期、胸部画像、肺水腫の原因、呼吸補助条件などほかの要件も必要です。
Q. S/F比とROX indexは同じですか?
同じではありません。S/F比はSpO₂÷FiO₂で酸素化を評価します。ROX indexはこのS/F比をさらに呼吸数で割り、主にHFNC使用患者の経過評価へ利用します。
まとめ|S/F比は315・235・148とSpO₂ 97%以下をセットで覚える
S/F比は、SpO₂をFiO₂で割って酸素化を非侵襲的に評価する指標です。計算時にはFiO₂を%から小数へ変換し、たとえばFiO₂ 40%なら0.40として計算します。
2024年Global Definition of ARDSでは、SpO₂が97%以下の場合にS/F比を酸素化基準として使用できます。侵襲的人工呼吸中の重症度は、235超〜315以下が軽症、148超〜235以下が中等症、148以下が重症の酸素化範囲です。
ただしS/F比だけでARDSを診断したり、P/F比を完全に置き換えたりするものではありません。SpO₂の測定状態、FiO₂、呼吸補助条件、経時変化、患者の呼吸状態を合わせて評価します。
S/F比を使う3つのポイント
1. SpO₂ ÷ FiO₂(小数)で計算する
2. ARDS評価では315・235・148とSpO₂ ≤97%を確認する
3. P/F比・呼吸補助条件・臨床所見と合わせて判断する
参考文献
S/F比の計算、P/F比との関係、ARDSにおける酸素化基準について、原著論文およびGlobal Definition of ARDSを中心に参照しました。
-
Matthay MA, Arabi Y, Arroliga AC, et al. A New Global Definition of Acute Respiratory Distress Syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2024;209(1):37-47. doi:10.1164/rccm.202303-0558WS.
PubMed -
Rice TW, Wheeler AP, Bernard GR, et al. Comparison of the SpO₂/FiO₂ ratio and the PaO₂/FiO₂ ratio in patients with acute lung injury or ARDS. Chest. 2007;132(2):410-417. doi:10.1378/chest.07-0617.
PubMed -
Chen W, Janz DR, Shaver CM, et al. Clinical characteristics and outcomes are similar in ARDS diagnosed by oxygen saturation/FiO₂ ratio compared with PaO₂/FiO₂ ratio. Chest. 2015;148(6):1477-1483.
PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)です。rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。本記事ではS/F比を単なる「P/F比の代用」として扱わず、315・235・148、SpO₂ 97%以下という適用条件、P/F比・ROX indexとの役割の違いまで実務で使える形に整理しました。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
