
嚥下5相の観察とは?(安全+再現+連携)
PTが現場で行う嚥下観察は、安全確認を最優先に、5相(予備期・口腔準備期・口腔期・咽頭期・食道期)の所見を系統立てて集め、姿勢・呼吸・活動と結び付けて介入や専門職(ST・医師・看護)の連携へ繋げることが目的です。
本ページは観察のやり方・チェック項目・中止基準・記録テンプレを1枚に集約しました(スクリーニング用途・施設手順優先)。
実施前の安全チェック(中止基準を先に)
- 中止:SpO₂低下/呼吸苦・努力性呼吸/著明な湿性嗄声・湿性ラ音/むせ・持続咳嗽/チアノーゼ/意識レベル低下/強い倦怠・疼痛。
- 事前確認:座位角度30–45°以上(可能なら90°)・頭頸中間位、吸引/酸素・ライン牽引の有無、口腔衛生(被覆物・義歯・乾燥)。
- 連携:評価手順と提供テクスチャは施設プロトコル・ST指示を厳守。迷えば実施せず報告。
標準フロー(5分で回す)
- 準備:座位確保(骨盤→体幹→頭頸)/吸引・ティッシュ/ストップウォッチ/水・ゲル等(施設規定)。
- 嚥下前:声質・呼吸・咳の自発性・口腔清潔・唾液管理を観察。
- 観察:下表の5相の視点で所見をチェック(むせ等があれば中止)。
- 直後:声の濡れ・喘鳴・呼吸数・SpO₂・意識化に変化がないか確認。
- 記録/連携:テンプレに転記し、必要に応じてST・医師へコンサルト。
相 | 主な観察 | 気になる所見(要配慮/中止検討) |
---|---|---|
予備期(嚥下前) | 姿勢(骨盤〜頭頸のアライメント)/意識・注意/呼吸様式/声質/口腔衛生・唾液 | 覚醒低下・呼吸苦・湿性嗄声・口腔乾燥/残渣・義歯不適合 |
口腔準備期 | 取り込み/口唇閉鎖/頬圧/咀嚼リズム/食塊形成 | 口角漏れ・貯留・咀嚼リズム不良・ポケット形成 |
口腔期 | 舌前後運動/食塊送り込み速度・一貫性 | 送り込み遅延・舌運動低下・口腔残留 |
咽頭期 | 喉頭挙上の触診/嚥下反射のタイミング/嚥下時の呼吸パターン | むせ・湿性嗄声・咳発作・嚥下反射遅延・呼吸数増 |
食道期 | 胸部つかえ感/逆流感/食後の咳・嗄声・咽頭クリア | 逆流症状・持続する湿性嗄声・食後咳 |
姿勢調整(PTの強み)
- 基本:骨盤中間→体幹伸展→頭頸軽度前屈(個別化)。足底接地・左右対称。
- 環境:トレー高さ/肘前方支持/視覚・注意入力の整理。
- 禁忌・注意:一律の顎引き指示はNG。施設手順/ST指示に従い個別化。
記録テンプレ(コピペして穴埋め)
【座位】背もたれ __°/骨盤中間/足底接地(有・無)/頭頸:中間〜軽度前屈 【嚥下前】声:乾・湿/呼吸:安定・努力/咳:自発あり・なし/口腔清潔:良・可・不良 【5相】予備:__/準備:__/口腔:__/咽頭:__/食道:__ 【イベント】むせ(有・無)/湿性嗄声(有・無)/SpO₂最低 __% 【対応】中止・姿勢修正・ST依頼・医師連絡・介助量調整 【指導】食後座位 __ 分/吸引手順 __ /家族指導 __ 再評価:__ 日・同条件
よくあるミスと対策
- 「飲ませながら様子見」:むせ・湿性嗄声・呼吸苦があれば即時中止→報告(再実施しない)。
- 姿勢が崩れたまま評価:骨盤→体幹→頭頸の順で先に整える。座面・背張り・フットサポート調整。
- 所見の散逸:5相の見出しで整理して書く。テクスチャや介助量は語句+数値で固定。