栄養計算に使う体重の選び方| IBW ・ AdjBW

栄養・嚥下
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栄養計算に使う「体重」の選び方(この記事の結論)

体重は「そのまま使う」より、まず“何が増減しているか”を分けると迷いが減ります。 PT キャリアガイドを見る(全体の流れ)

必要エネルギー量( kcal/日 )を計算するときの “体重” は、いつも実測体重( BW )でよいわけではありません。特に 肥満(脂肪量が多い)浮腫・腹水(体水分が多い)では、同じ「 1 kg 」でも意味が変わり、式や kcal/kg の結果が過大・過小になりやすいです。

結論としては、①まず「増えたのは脂肪か水分か」を見立て、②計算に使う体重( BW / 乾燥体重 / IBW / AdjBW )を決め、③同条件で再評価できる記録に落とす——この順にすると、栄養とリハの調整が回ります。

先に結論:どの体重を使うかは 3 分で決められます

実務では、次の 3 つだけ押さえるとほぼ迷いません。①浮腫・腹水・大量輸液などで “水分” が上乗せされていないか、②肥満で “脂肪” が大きい割合を占めていないか、③短期間(数日〜 2 週)で体重が動いているなら “栄養” ではなく “水分” の影響を疑う、です。

ここまで整理できたら、あとは「どの計算に使うか」を決めます。推定式( MSJ / HB )でも kcal/kg 法でも、体重の選び方がズレると結論がズレるため、まず “体重の定義” を揃えるのが重要です。

体重の使い分け早見(成人・必要エネルギー計算の前提)
状況 まず疑うこと 計算に使う体重(例) 記録の一言(例)
全身状態が安定(体重変動が小さい) 大きな浮腫なし 実測 BW 「 BW を使用(条件安定)」
浮腫・腹水・大量輸液がある 体水分増加 乾燥体重(推定)または補正 BW 「浮腫あり。乾燥体重を推定して計算」
肥満(体脂肪が多い) 脂肪量が結果を押し上げる IBW または AdjBW(施設運用に合わせる) 「肥満のため IBW/AdjBW で計算」
短期間で体重が急増・急減 水分・便通・摂取率・離床量 “いまの体重” で固定せず再評価前提 「日内/週単位で変動。条件固定で再評価」

用語整理: BW / 乾燥体重 / IBW / AdjBW

BW(実測体重)は、その日に測れた体重です。状態が安定しているほど使いやすい一方、浮腫・腹水・輸液・便秘などで “水分や内容物” が乗ると、栄養計算が過大になりやすいです。

乾燥体重は「余分な水分が抜けたときの体重」を指します。透析や心不全、急性期の水分管理では、実測 BW よりも “乾燥体重の推定” を前提に計算した方が、栄養目標がブレにくい場面があります。

IBW(理想体重)は、施設で使う定義を固定するのがコツです。日本では “ BMI 22 を基準にした体重” を IBW として運用することが多く、式は 身長( m )² × 22 がよく使われます。

AdjBW(調整体重)は、肥満で “実測 BW をそのまま使うと過大” になりやすいときに、IBW と実測 BW の中間に寄せる考え方です。代表的な式は AdjBW=IBW+0.25×(実測 BW−IBW)などで、係数( 0.25 )は施設や領域で運用が分かれるため、チームで “どれを採用するか” を固定すると再現性が上がります。

判断フロー: PT が 1 分でやる「体重の見立て」

現場で詰まりやすいのは「正しい体重を当てる」ことではなく、同じ条件で再評価できる形に落とせないことです。PT の強みは、離床量(直前に歩行していないか)、末梢浮腫、呼吸努力、倦怠感、食事量の変動など、体重の “中身” を推定できる点にあります。

体重を決める “ 3 ステップ ”(成人・実務用)
ステップ 見るポイント 判断の目安 次にやること
① 水分が乗っていないか 浮腫・腹水・輸液、体重の急増 水分影響が強いほど BW は過大 乾燥体重(推定)で計算し、同条件で再評価
② 脂肪が大きいか 肥満、体格と活動性 肥満ほど BW は過大になりやすい IBW or AdjBW を採用(施設運用を固定)
③ 条件が揃っているか 測定時刻・姿勢・直前離床 条件が揃わないと比較できない 条件固定(同時刻・同条件)で再評価

現場の詰まりどころ(よくある失敗と対策)

いちばん多い失敗は、「体重の増減=栄養の成果」として判断してしまうことです。短期間の増減は、水分・便通・摂取率・活動量の影響が大きく、栄養目標( kcal/日 )の見直しを急ぐとブレます。まず “体重の中身” を言語化し、同条件で再評価する前提を作ると失敗が減ります。

次に多いのが、肥満や浮腫で “体重を補正すべき” 状況でも、実測 BW 固定で計算し続けることです。結果として目標が過大になり、摂取が追い付かず、現場では「食べられない」「増えない」だけが残ります。体重の定義を揃えるだけで、計画が現実的になります。

体重選びの失敗パターン(原因→対策→記録)
失敗パターン 起きやすい原因 対策(最短) 記録の一言(例)
浮腫なのに BW で計算して過大 水分増加を見落とす 乾燥体重(推定)で再計算 「浮腫あり。乾燥体重で算出」
肥満で BW を使い目標が上がる 脂肪量の影響 IBW / AdjBW に切替(運用固定) 「肥満のため IBW/AdjBW を採用」
週ごとに計算条件が変わり比較できない 測定時刻・直前離床がバラバラ 同時刻・同条件で測定 「条件固定で再評価」
体重だけで介入を判断して迷走 摂取率・浮腫・活動量を見ない 体重+摂取率+浮腫+離床量で判断 「体重は水分影響を含む」

計算例: IBW / AdjBW を使うと結果がどう変わる?

例として、身長 160 cm で “ BMI 22 を IBW とする” 場合、IBW は 1.60²×22=約 56.3 kgです。実測 BW が 80 kg の肥満で、AdjBW を IBW+0.25×( BW−IBW )とすると、AdjBW は 56.3+0.25×(80−56.3)=約 62.2 kgになります。

同じ「 30 kcal/kg/日 」でも、BW 80 kg なら 2,400 kcal/日、AdjBW 62.2 kg なら 1,866 kcal/日と大きく変わります。ここで大事なのは “どれが正しいか” より、どの体重定義で計算したかを明示し、同じ定義で見直すことです。

記録の型:チームで迷いを減らす 3 行テンプレ

体重の使い分けは、記録が曖昧だと次回の計算がズレます。おすすめは、次の 3 行で残すことです。

  • 体重定義:BW / 乾燥体重(推定) / IBW / AdjBW(採用式を併記)
  • 判断理由:浮腫あり/肥満のため/条件安定 など
  • 見直し条件:同時刻・同条件で再評価(いつ、何を見るか)

必要エネルギー量の全体像(推定式・係数・レンジ運用)とセットにすると、計画がブレにくくなります。関連:エネルギー必要量の計算式と係数の考え方

よくある質問( FAQ )

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浮腫があるとき、乾燥体重はどう決める?

“正解の 1 値” を狙うより、乾燥体重を 仮置きして計算し、摂取率・浮腫・離床量・呼吸循環の変化で同条件にて見直すのが実務的です。まずは「浮腫が乗った BW を固定して目標が過大になる」失敗を避けることを優先します。

肥満は IBW と AdjBW、どっちがいい?

施設運用を固定するのが最優先です。IBW はシンプルで再現性が高く、AdjBW は BW と IBW の中間に寄せて “過大” を緩和しやすい考え方です。どちらを採用しても、採用した体重定義(式)を記録し、同じ定義で見直すことが重要です。

体重が増えないとき、目標 kcal をすぐ上げるべき?

短期間の体重変化は水分の影響が大きいので、まずは摂取率、浮腫、便通、離床量を確認します。次に “計算に使っている体重が適切か” を見直し、それでも不足が疑われる場合にレンジ調整を検討すると迷走しにくいです。

推定式( MSJ / HB )でも体重の選び方は同じ?

基本の考え方(浮腫=乾燥体重の発想、肥満=IBW/AdjBW の検討)は同じです。ただし推定式は体重以外(年齢・身長・性別)も効くため、体重だけで結論を決めず、条件固定で再評価できる運用が大切です。

参考文献

  1. Jensen GL, Cederholm T, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002
  2. Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2019;38(1):48-79. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.037
  3. Chumlea WC, Guo SS, Kuczmarski RJ, et al. Body composition estimates from NHANES III bioelectrical impedance data. Int J Obes. 2002;26(12):1596-1609. doi: 10.1038/sj.ijo.0802167
  4. Delsoglio M, Dupertuis YM, Oshima T, van der Plas M, Pichard C. Indirect calorimetry in clinical practice. J Clin Med. 2019;8(9):1387. doi: 10.3390/jcm8091387
  5. World Health Organization. Obesity: preventing and managing the global epidemic. WHO Technical Report Series. 2000;894:i-xii,1-253. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

体重の選び方は、水分の見立て→体重定義の固定→計算→同条件で再評価の “リズム” で回すと、栄養とリハの調整が止まりません。迷ったときほど、体重を 1 つに決め打ちせず、条件を揃えて比較できる形で残すのが最短です。

現場の進め方(棚卸し→意思決定)が詰まるときは、面談準備チェックと職場評価シートで「条件の整理」を先にやっておくと進みやすいです。マイナビコメディカルの無料ダウンロードから使えます。

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