EQ-5Dの評価方法と解釈
EQ-5Dは、現在の健康状態を5つの次元とEQ VASで捉える汎用的な健康関連QOL(HRQOL)尺度です。短時間で実施しやすく、初回評価、経時変化の確認、多職種間の情報共有などに活用できます。
臨床運用では、EQ-5D-3LとEQ-5D-5Lを混在させず、実施方法と評価時点をそろえ、5桁の健康状態プロファイルとEQ VASを一緒に記録することが重要です。本記事では、3Lと5Lの違い、実施手順、結果の読み方、index値の扱い、記録・再評価のポイントを整理します。
重要:EQ-5DはEuroQol Research Foundationが著作権および商標を管理する尺度です。使用する場合は、目的や実施方法に応じて事前登録と許諾条件を確認し、公式に提供された質問票を使用してください。本記事や配布物は、公式質問票の代替ではありません。
EQ-5Dとは
EQ-5Dは、健康状態を共通の枠組みで記述する「記述システム」と、本人が現在の健康状態を評価する「EQ VAS」から構成されます。疾患を限定しない汎用尺度であり、異なる疾患や対象集団でも健康状態を共通の形式で整理できる点が特徴です。
評価結果は、5つの次元を並べた健康状態プロファイル、EQ VAS、必要に応じて算出するEQ-5D valueの3つに分けて考えると理解しやすくなります。
| 結果 | 示す内容 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 健康状態プロファイル | 5次元で選択したレベルを順番に並べた5桁の状態 | どの次元に問題があり、どこが変化したかを確認する |
| EQ VAS | 本人が評価した現在の健康状態 | 本人が感じている健康状態の全体像を確認する |
| EQ-5D value | 健康状態プロファイルをvalue setに基づいて数値化した値 | 研究、集団比較、医療経済評価などで使用する |
使用前に登録・利用条件を確認する
EQ-5Dを使用する場合は、EuroQol公式サイトから利用登録を行い、研究、診療、教育、電子入力などの目的に合った質問票を取得します。非商用利用では登録後にライセンス料が発生しない場合がありますが、登録や利用条件の確認が不要になるわけではありません。
公式質問票、その翻訳、画面表示、回答選択肢などをウェブサイトや独自ツールに転載・改変する場合は、別途許諾が必要になる可能性があります。院内資料や電子システムへ組み込む場合も、使用前に公式条件を確認してください。
EQ-5Dを構成する5つの次元
EQ-5Dの記述システムでは、移動、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み・不快感、不安・抑うつの5次元を確認します。回答者は、公式質問票に示された選択肢から、評価時点の健康状態に最も近いレベルを選びます。
| 次元 | 確認する内容 | 臨床での確認例 |
|---|---|---|
| 移動 | 歩行や移動に関する健康状態 | 屋内外の移動、歩行補助具、移動距離など |
| 身の回りの管理 | 洗身や更衣など、自分の身の回りを管理する状態 | 更衣、整容、入浴などの負担 |
| ふだんの活動 | 仕事、学業、家事、家族活動、余暇などの遂行状態 | その人が普段担っている役割への影響 |
| 痛み・不快感 | 痛みや身体的不快感の状態 | 安静時と活動時の負担、持続時間、生活への影響 |
| 不安・抑うつ | 不安や気分の落ち込みに関する状態 | 心理的負担、活動回避、生活への影響 |
EQ-5Dは本人の自己評価を基本とするため、医療者が動作能力だけを見て回答を決めるものではありません。観察結果と本人の回答が一致しない場合も、まずは本人がどのように健康状態を捉えているかを確認します。

EQ-5D-3LとEQ-5D-5Lの違い
EQ-5Dには、各次元を3段階で回答するEQ-5D-3Lと、5段階で回答するEQ-5D-5Lがあります。5Lは、3Lと比較して感度を高め、天井効果を軽減することを目的として開発されました。
同じ対象者を経時的に評価する場合は、原則として同じ版を使用します。途中で3Lと5Lを変更すると、健康状態の変化と回答レベルの違いを分けて解釈しにくくなるためです。
| 比較項目 | EQ-5D-3L | EQ-5D-5L |
|---|---|---|
| 回答レベル | 各次元を3段階で回答する | 各次元を5段階で回答する |
| 健康状態の数 | 243通り | 3,125通り |
| 特徴 | 回答レベルが少なく、構造が簡潔 | 健康状態をより細かく区分できる |
| 経時評価 | 同じ対象者では、原則として同じ版を継続して使用する | |
| valueの算出 | 使用した版と対象地域に対応するvalue setを確認する | |
3Lと5Lのどちらを選ぶかは、既存研究との比較、施設内の運用、対象者、使用目的、対応するvalue setなどを踏まえて決定します。「簡単だから3L」「細かいから必ず5L」と一律に決めるのではなく、施設や研究計画の中で使用する版を統一してください。
EQ-5Dの実施手順
実施時は、公式に提供された質問票とUser Guideに従います。経時比較を行う場合は、版だけでなく、回答方法、評価時点、実施環境も可能な範囲でそろえます。
- 使用する版と質問票を確認する
- 対象者に公式質問票を提示する
- 5次元について、評価時点の健康状態に最も近い回答を選んでもらう
- EQ VASを記入してもらう
- 未回答や複数回答がないか確認する
- 実施日、版、回答方法、健康状態プロファイル、EQ VASを記録する
自己記入で実施する場合
本人が質問票を読み、回答できる場合は自己記入で実施します。医療者が回答内容を誘導したり、観察結果から回答を置き換えたりしないことが基本です。
回答後は、各次元とEQ VASに未記入がないかを確認します。意味が分からない項目がある場合は、独自の例を追加するのではなく、公式User Guideや施設で定めた手順に沿って対応します。
面接で実施する場合
視覚、上肢機能、識字、疲労などの理由により自己記入が難しい場合は、登録時に取得した適切な面接用バージョンを使用します。自己記入用紙を医療者が独自に読み替えて使用するのではなく、実施方法に対応した公式バージョンを確認してください。
記録には、自己記入か面接かを残します。再評価でも可能な範囲で同じ実施方法を維持すると、条件差を小さくできます。
回収時に確認する項目
EQ-5Dは項目数が少ない一方、未回答や二重回答があると健康状態プロファイルを確定できません。回収時にその場で確認する仕組みを作ることが重要です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 使用した版 | 3Lまたは5Lのどちらを使用したか |
| 5次元の回答 | 未回答や複数回答がないか |
| EQ VAS | 回答が記入されているか |
| 回答方法 | 自己記入、面接などの実施方法 |
| 評価条件 | 評価日、評価時点、治療や介入との前後関係 |
5桁の健康状態プロファイル
5つの次元で選択されたレベルを、質問票の順番に並べたものが健康状態プロファイルです。例えば、すべての次元でレベル1を選択した場合は「11111」と表します。
各桁は異なる次元を表しているため、合計点として扱うものではありません。経時比較では、数字全体の大小だけを見るのではなく、どの桁が変化したかを確認します。
| 手順 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | 使用した版が3Lか5Lかを確認する |
| 2 | 5桁を各次元に対応させる |
| 3 | 問題が大きい次元を確認する |
| 4 | 前回評価から変化した次元を確認する |
| 5 | EQ VASや生活状況と合わせて解釈する |
EQ VASの見方
EQ VASは、本人が評価時点の健康状態を垂直の尺度上で示す自己評価です。健康状態プロファイルが5つの次元別に状態を示すのに対し、EQ VASは本人が感じている健康状態を全体として捉えます。
EQ VASの変化は重要ですが、数値だけで改善や悪化の理由を断定することはできません。5桁プロファイル、症状、生活状況、介入内容などと合わせて確認します。
記録の最小セット
使用した版/実施日/回答方法/5桁プロファイル/EQ VAS
EQ-5D valueとindex値の考え方
健康状態プロファイルに、国や地域ごとの社会的選好を反映したvalue setを適用すると、EQ-5D valueを算出できます。文献や解析ソフトでは、index、index score、utilityなどと表記されることがあります。
value setは、3Lと5L、国や地域によって異なります。日本で評価したデータを数値化する場合は、使用した版に対応する日本のvalue setと正式な算出方法を確認してください。
臨床記録では、valueだけを残すと、どの次元に変化があったのか分からなくなります。5桁プロファイルとEQ VASを基本情報として残し、研究や集団比較などで必要な場合にvalueを追加する方法が実務的です。
| 指標 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 5桁プロファイル | 問題がある次元とレベル | 合計点として扱わない |
| EQ VAS | 本人が感じる健康状態の全体評価 | 変化の理由を数値だけで断定しない |
| EQ-5D value | value setに基づく健康状態の数値 | 版と国・地域に対応したvalue setを使用する |
結果を臨床で解釈する手順
EQ-5Dの結果は、単一の数値だけで判断せず、次元ごとの変化、EQ VAS、生活状況の順に確認します。介入前後でvalueが変化していても、どの次元が変化したかによって臨床的な意味は異なります。
- 前回と今回で同じ版・同じ実施方法か確認する
- 5桁プロファイルで変化した次元を確認する
- EQ VASの変化を確認する
- 症状、ADL、役割、生活環境の変化と照合する
- 次回評価の時期と確認する次元を決める
記録例
EQ-5D-5Lを自己記入で実施。健康状態プロファイルは前回評価から移動とふだんの活動のレベルが改善し、EQ VASも上昇した。屋内移動範囲と家事参加が拡大しており、次回は退院後の生活環境で再評価する。
記録では、数字を並べるだけでなく、「どの次元が変化したか」「生活上の何と対応しているか」「次にいつ確認するか」まで残すと、多職種で共有しやすくなります。
EQ-5Dで起こりやすい失敗
EQ-5Dは短時間で実施できますが、版や実施条件が統一されていないと、経時比較が難しくなります。特に、3Lと5Lの混在、EQ VASの未記入、valueだけの記録に注意が必要です。
| 失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 3Lと5Lを途中で変更する | 健康状態の変化と回答レベルの違いを分けにくい | 同じ対象者では原則として同じ版を継続する |
| 実施方法を記録しない | 自己記入と面接による条件差を確認できない | 回答方法を評価結果と一緒に残す |
| EQ VASを確認しない | 本人が感じる健康状態の全体評価が抜ける | 回収時に5次元とEQ VASを確認する |
| valueだけを記録する | どの次元が変化したのか分からない | 5桁プロファイルとEQ VASも一緒に残す |
| 独自の説明を追加する | 回答を誘導する可能性がある | 公式User Guideと施設内手順に沿って実施する |
EQ-5DとSF-36の使い分け
EQ-5DとSF-36は、どちらも健康関連QOLを評価する汎用尺度ですが、質問数や結果の構成が異なります。評価目的、回答負担、必要な情報の詳しさに応じて選択します。
| 比較項目 | EQ-5D | SF-36 |
|---|---|---|
| 特徴 | 5次元とEQ VASで健康状態を簡潔に捉える | 複数の健康概念をより詳しく捉える |
| 回答負担 | 比較的小さい | EQ-5Dより質問数が多い |
| 向く目的 | 短時間の評価、経時比較、医療経済評価 | 健康関連QOLの詳細なプロフィール把握 |
| 選び方 | 評価目的、既存研究、対象者、回答負担を踏まえて選択する | |
SF-36の構造や評価方法については、SF-36の評価方法と読み方で解説しています。
EQ-5Dの実務記録シートPDF
以下のPDFは、患者ID、評価日、使用した版、実施方法、5桁プロファイル、EQ VAS、再評価予定などを1枚に整理するための実務記録シートです。
公式質問票ではないため、この記録シートだけでEQ-5Dを実施することはできません。公式質問票で回答を取得した後、結果と評価条件を整理する補助資料として使用してください。
| 記録項目 | 目的 |
|---|---|
| 患者情報・評価日 | 誰の、いつの評価かを明確にする |
| 版・実施方法 | 3L・5L、自己記入・面接などの条件を残す |
| 5桁プロファイル | 各次元の回答結果を整理する |
| EQ VAS | 本人が感じる健康状態を記録する |
| 解釈・再評価予定 | 変化した次元と次回の確認時期を共有する |
PDFの埋め込みプレビューを開く
プロファイル・EQ VAS入力整理ツール
入力整理ツールでは、公式質問票で決定した各項目のレベル番号とEQ VASを入力し、5桁プロファイルとして整理できます。使用した版、実施日、実施方法、評価時点、メモも一緒に残せるため、評価後の転記や多職種共有を補助します。
このツールは公式質問票ではなく、EQ-5D valueやindex値を算出するツールでもありません。回答の取得には登録後に提供される公式質問票を使用し、valueが必要な場合は使用した版と地域に対応する正式なvalue setを確認してください。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| できること | 版の選択、5項目のレベル番号入力、EQ VAS入力、5桁プロファイル表示、実施条件の記録、結果コピー、印刷 |
| できないこと | 公式質問票としての回答取得、EQ-5D valueやindex値の自動算出、診断や治療方針の決定 |
公式情報の確認先
質問票、実施方法、利用条件、User Guide、value setは更新される可能性があります。使用時は、個人ブログや二次資料だけで判断せず、EuroQol公式サイトで最新情報を確認してください。
よくある質問
質問をタップすると回答が開きます。
EQ-5Dを無料で使用できますか?
非商用の研究、教育、公衆衛生などでは、登録後にライセンス料が発生しない場合があります。ただし、使用前の登録や利用条件の確認は必要です。電子化、ウェブ掲載、質問票の転載・改変などは追加確認が必要になる可能性があるため、公式サイトで使用目的に合った条件を確認してください。
EQ-5D-3LとEQ-5D-5Lは途中で変更できますか?
同じ対象者を経時評価する場合は、原則として同じ版を継続します。途中で版を変更すると、健康状態の変化と回答レベルの違いを分けて解釈しにくくなります。変更が避けられない場合は、変更時点と理由を記録し、単純な前後比較は避けます。
5桁の数字は合計して評価しますか?
合計しません。各桁は異なる次元の回答レベルを表します。どの次元に問題があり、前回からどの次元が変化したかを確認します。単一の数値が必要な場合は、対応するvalue setを用いてEQ-5D valueを算出します。
EQ VASとEQ-5D valueは同じものですか?
異なります。EQ VASは本人が評価した現在の健康状態です。EQ-5D valueは、5桁の健康状態プロファイルにvalue setを適用して算出します。臨床では、5桁プロファイル、EQ VAS、必要に応じたvalueを分けて記録します。
家族や医療者が代わりに回答できますか?
本人による自己評価と代理回答は同じものではありません。本人の回答が難しい場合は、対象者、年齢、実施方法に対応した公式バージョンや代理回答の扱いをUser Guideで確認してください。代理回答を使用した場合は、その事実と回答者を記録します。
入力整理ツールだけでEQ-5Dを実施できますか?
できません。入力整理ツールは、公式質問票で決定したレベル番号とEQ VASを整理する補助ツールです。回答の取得には、利用登録後に提供された適切な公式質問票を使用してください。
次に確認したい評価
EQ-5Dは、健康状態を簡潔に整理する汎用的なHRQOL尺度です。評価目的によって必要な尺度は異なるため、疾患特異的尺度や詳細なHRQOL尺度も含めて選択します。
参考文献
- EuroQol Group. EuroQol—a new facility for the measurement of health-related quality of life. Health Policy. 1990;16(3):199-208. doi:10.1016/0168-8510(90)90421-9
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- EuroQol Research Foundation. EQ-5D-3L User Guide. Version 6.0. Rotterdam: EuroQol Research Foundation; 2018.
- EuroQol Research Foundation. EQ-5D-5L User Guide. Version 4.0. Rotterdam: EuroQol Research Foundation; 2025.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門分野
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

