【SARA】運動失調の評価法|8項目・総点0–40の読み方と運用

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評価
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SARA とは?(目的と使いどころ)

SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)は、運動失調の重症度を 8 項目で評価する臨床スケールです。総点は 0–40(数値が大きいほど重い)。評価のねらいは、初期評価経過観察介入効果の把握を共通の物差しで行うことにあります。診断名を付ける検査ではなく、機能障害の重症度指標として活用します。
最終更新:2025-10-09

臨床を底上げする学び方(PTキャリアガイド)

要点早見表(構成とスコア範囲)

SARA の構成と上限(総点 0–40)
項目番号 上限
SARA-18
SARA-26
SARA-34
SARA-46
SARA-54
SARA-64
SARA-74
SARA-84

※ 元の項目記述・採点基準の原文は著作権保護のため掲載しません。実施時は正規資料をご参照ください。

スコア記録シートのダウンロード

項目本文は含みません(著作権保護)。下のプレビューで内容を確認できます。
PDFが必要な場合は、別タブで開く → 印刷 → PDFに保存で作成してください。

別タブで開く(印刷 → PDFに保存)

準備・安全チェック(チェックリスト)

  • 環境:十分なスペース、滑りにくい床。必要に応じて平行棒・手すり。
  • 安全管理:転倒リスク評価を事前確認。歩行・立位は見守り/補助者を配置。
  • 装具・杖:ふだんの用具は原則そのまま。再評価時も条件を統一
  • 疲労・痛み:休憩を適宜挿入。実施時間の目安は10–15分
  • 説明:目的と手順を簡潔に説明し、中断の合図を共有。

評価フロー(手順の全体像)

  1. 前準備:上記チェック完了、同意取得。
  2. 実施:各項目を標準化した順で実施(詳細基準は正規資料)。
  3. 得点記録:各項目 0〜上限を記録シートに転記。
  4. 合計:8項目の合計(0–40)。
  5. 所見:姿勢・協調・代償動作・疲労など自由記載にメモ。
  6. フィードバック:患者・家族へ概要を伝え、再評価計画を共有。

スコアの読み方(臨床での使い分け)

  • 縦比較:同一個人の経時変化を見る用途が主(入退院、介入前後、外来フォロー)。
  • 同条件原則:靴・装具・環境・実施順・休憩などをできるだけ揃える。
  • 報告書:総点だけでなく、バランス系 / 上肢協調 / 歩行など臨床的クラスターで所見を補足。
  • “カットオフ”より文脈:疾患や研究ごとに基準が異なるため、固定の重症度区分は置かない前提で記述。

評価導線の設計は 臨床導線の作り方(#flow) も参考にしてください。

スコアリングの考え方(共通)

  • 同条件の徹底:靴・装具・補助具・場所・説明文言・実施順・休憩の入れ方を固定。
  • 観察語彙で所見化:「軌跡のぶれ/リズムの乱れ/反復回数のばらつき/過大・過小運動/代償動作」などで記録。
  • 練習→本番:学習効果を避けるため、短い練習→本番。再評価も同手順。
  • 左右差・疲労:左右別の差、前半⇔後半の質の変化をメモ欄に。
  • 安全最優先:歩行・立位では見守り/補助者を配置し、中断の合図を事前に共有。

各領域の「観察ポイント」と「解釈のコツ」

歩行(観察項目)

  • 観察:速度、ステップ均等性、歩幅、接地安定、方向転換のふらつき。
  • 代償例:広い歩隔、上肢の過度な振り、視線の落ち込み。
  • 解釈:速度上昇やターンで不安定さが増すかを比較。補助具の有無は明記。

立位保持(観察項目)

  • 観察:静止時の体幹揺れ、足圧移動、閉眼の影響、狭い足位での耐性。
  • 安全:壁/手すり近くで実施、補助者配置。
  • 解釈:感覚入力の差(開眼安定・閉眼不安定など)を所見化。

座位バランス(観察項目)

  • 観察:体幹揺れ、自己修正の速さ、微小ずれからの復帰。
  • 解釈:上肢協調課題追加で体幹が崩れるか。

発話の明瞭さ(観察項目)

  • 観察:リズム、強弱、分節、言い直し頻度。
  • 記録例:「モノトーン傾向/語の切れ目不明瞭/長文で乱れ増加」など。

上肢ターゲット追従(観察項目)

  • 観察:過大/過小運動、減速の仕方、到達直前の震え。
  • 記録:左右差、試行間ばらつき、視覚注視の使い方。

指先—鼻先の協調(観察項目)

  • 観察:往路/復路の軌跡、終末振戦、リズムの一定性。
  • 解釈:速度変化や疲労で質が落ちるか。

交互反復運動(観察項目)

  • 観察:切り替えの速さ・規則性・持続性。
  • 記録:「開始良好→20秒で失速」「左右でリズム差」など時間経過の変化。

下肢協調(踵—脛滑走など)(観察項目)

  • 観察:軌跡の直線性、目標からの逸脱、速度と正確性のトレードオフ。
  • 安全:臥位・座位で実施し、転落リスク回避。

記録・レポートの書き方テンプレ

項目記入例
実施条件平行棒内、靴あり、補助具なし。説明統一、練習後に本番。
SARA 総点18/40(高いほど重い)。
所見の要約歩行ターンで不安定、立位で閉眼影響大。上肢は右で過大運動、交互反復は持続性低下。
安全配慮歩行・立位は2名見守り。適宜休憩。
次回計画2週間後に同条件で再評価。体幹安定化練習と歩行訓練を継続。

再評価の目安(フォローアップ)

  • 急性期:数日〜1週間単位で変化を確認。
  • 回復期・外来:2–4週間に1回を目安に、同条件で再評価。
  • レポート:総点の推移と臨床所見を併記(例:18 → 14 へ改善、歩行安定性向上)。

よくある誤差と対策

  • 学習効果:練習を短く固定、本番は別カウント。
  • 疲労の混入:休憩タイミングを標準化、後半の質低下は所見へ。
  • 介助の揺らぎ:触れる/触れないの基準を事前合意。
  • 記録の省略:自由記載欄に「左右差」「時間経過」「代償」を最低3点書く。

患者・家族への説明(例文)

「この検査は、運動の協調性やバランスを8つの観点で見て、0〜40点で“今の状態”を数字にします。数字は高いほど症状が強いことを示します。同じ条件で繰り返して、変化の方向を見ていきます。」

参考文献

  1. Schmitz-Hübsch T, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (SARA): development and validation. Neurology. 2006.
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