- GLIM 診断の記録と介入デザイン【判定アルゴリズム・記録シート付き】
- 配布物( A4 )| PDF を開く(ダウンロード)+プレビュー
- 現場の詰まりどころ|「期間・条件・具体要因」が揃わないと運用が崩れます
- 7 ステップ|スクリーニング陽性から「診断→介入→再評価」まで迷わない
- 記録シートの書き方|フェノタイプは “ 数値+期間 ”、病因は “ 具体要因 ”
- そのまま転記できる| GLIM 記録テンプレ(カルテ補助の型)
- 介入デザイン|病因(エティオロジー)から “ 優先順位 ” を決める
- カンファで迷子にならない|60 秒共有テンプレ(読み上げ用)
- よくある失敗|見落とし・過大評価・記録ブレを先に潰す
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手|全体像に戻す → すぐ実装する → 環境も点検する
- 参考文献
- 著者情報
GLIM 診断の記録と介入デザイン【判定アルゴリズム・記録シート付き】
結論: GLIM は「診断して終わり」ではなく、重症度判定 → 介入方針 → 再評価まで “ 1 本の線 ” にすると現場で回ります。本ページは、スクリーニング陽性後の GLIM をアルゴリズムと記録シートで標準化し、病棟カンファ/リハ栄養カンファでそのまま共有できる形に整理する実務ガイドです。
詰まりやすいのは “ 手順 ” そのものより、期間・測定条件・病因(エティオロジー)の粒度が揃っていないときです。まず記録の前提を固定すると、解釈のズレが減り、介入の優先順位と再評価が決めやすくなります。
配布物( A4 )| PDF を開く(ダウンロード)+プレビュー
現場の詰まりどころ|「期間・条件・具体要因」が揃わないと運用が崩れます
結論:判断が割れる原因は、知識不足よりも記録の前提がバラバラなことです。下の 3 点だけ先に揃えると、カンファの迷子が減ります。
特に “ 期間 ” と “ 測定条件 ” は後から修正しづらいので、最優先で固定します。
- ページ内:よくある失敗(先に潰す)
- ページ内:迷わない 7 ステップ(順番を固定)
- 関連:原因が抽象的なら GLIM の判定枠組み(総論)で “ 何を根拠にするか ” を揃える
7 ステップ|スクリーニング陽性から「診断→介入→再評価」まで迷わない
結論:運用の要は「診断の正しさ」より、同条件で追える記録を作ることです。フローを固定し、各ステップで “ 一言メモ ” まで残すと、スタッフ交代や施設間連携でも判断根拠が追えます。
下の表を部署の “ 標準の流れ ” として使い、まずは体重変化(%)と摂取状況を揃え、次に BMI ・筋量・炎症の根拠を上書きしていくと現実的です。
| 順番 | やること | 最低限の記録 | 詰まりどころ | 一言メモ例 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | スクリーニング(陽性/境界を拾う) | 実施日、ツール名、結果(陽性/境界/陰性) | ツールが部署で混在 | 「病棟標準:〇〇で統一」 |
| 2 | フェノタイプの確認(体重・ BMI ・筋量など) | 数値+期間、測定条件(時間帯・衣服・機器・浮腫) | 期間が曖昧、体重条件がバラバラ | 「 3 か月で − 7.7 %、午前・同秤」 |
| 3 | エティオロジーの整理(摂取不足/吸収不良・炎症など) | 原因を “ 具体要因 ” まで分解(介入に直結) | 「食べない」で止まる | 「嚥下+食形態不一致で摂取不足」 |
| 4 | GLIM 診断(フェノタイプ ≥ 1 + エティオロジー ≥ 1 ) | 診断の一文(結論+根拠が追える形) | 結論だけ書いて根拠が残らない | 「フェノタイプ 2 + 病因 1 →低栄養」 |
| 5 | 重症度(表現型の “ 程度 ” で整理) | 中等度/重度、根拠(体重変化・ BMI 等を 1 行) | 重症度が “ 未記載 ” | 「根拠:体重減少率+期間」 |
| 6 | 介入デザイン(栄養療法 × リハ栄養) | 誰が/何を/いつまでに(期限) | 役割と期限が決まらない | 「栄養:補食、PT:負荷調整、 2 週で再評価」 |
| 7 | 再評価(同条件で) | 再評価日、指標(体重・摂取量・活動量など) | 再評価が先送り | 「 2 週後:体重・摂取量・歩行量」 |
記録シートの書き方|フェノタイプは “ 数値+期間 ”、病因は “ 具体要因 ”
結論:記録のコツは 2 つだけです。①フェノタイプは数値と期間をセットで書く、②エティオロジーは病名ではなく具体要因まで落とす。この 2 点が揃うと、重症度と介入が “ 自動で ” つながります。
フェノタイプの例は「 3 か月前 52 kg → 現在 48 kg( − 7.7 % )」のように、いつからどれだけ変化したかが一目で分かる形にします。体重や周囲長は測定条件(時間帯・衣服・機器・浮腫)を短く添えると、後日の見直しで迷いません。
エティオロジーは「嚥下障害による摂取不足」「食形態の不適合」「呼吸苦で食事が進まない」「慢性疾患で炎症が続く」など、介入に直結する言葉に置き換えます。診断欄は「フェノタイプ ≥ 1 + エティオロジー ≥ 1 で低栄養あり」のように、一文で結論+根拠が追える形にしておくと、多職種の解釈のズレが減らせます。
そのまま転記できる| GLIM 記録テンプレ(カルテ補助の型)
結論:文章を頑張るより、埋める枠を固定した方が回ります。下のテンプレをそのまま記録シートやカンファ用メモに転記すると、診断から再評価まで 1 本でつながります。
ポイントは「根拠は 1 行」「担当と期限は必ず書く」です。ここが揃うと “ 介入したのに振り返れない ” が減ります。
| 欄 | 書くこと | 例(短く) | コツ |
|---|---|---|---|
| 評価日 | 判断の “ 日付 ” | 2026/03/03 | 再評価日もセットで決める |
| スクリーニング | ツール・結果 | 〇〇:陽性 | 部署で統一(混在させない) |
| フェノタイプ | 数値+期間+条件 | 3 か月で − 7.7 %(午前・同秤) | 期間が書けないと重症度が崩れる |
| エティオロジー | 具体要因(介入に直結) | 嚥下+食形態不一致で摂取不足 | 病名ではなく “ 何が起きているか ” |
| 診断 | 一文(結論+根拠) | フェノタイプ 2 + 病因 1 →低栄養 | 多職種の読み違いが減る |
| 重症度 | 中等度/重度+根拠 | 根拠:体重変化+期間 | 根拠は 1 行で十分 |
| 介入方針 | 担当・内容・期限 | 栄養:補食、PT:負荷調整、 2 週 | 担当と期限がないと回らない |
| 再評価 | 日付・指標・条件 | 2 週後:体重・摂取量・歩行量(同条件) | 同条件で比較する |
介入デザイン|病因(エティオロジー)から “ 優先順位 ” を決める
結論:介入は「低栄養だから栄養」ではなく、エティオロジーに合わせて優先順位を決めると設計がブレません。摂取不足が主なら “ 入る量を増やす ”、炎症・疾患負荷が主なら “ 負荷を下げつつ筋量低下を止める ” を軸に組み立てます。
下の表を “ 方針の下書き ” として使い、記録シートの介入欄に「誰が・いつまでに」を短く書いてカンファで合意すると、次回の再評価がしやすくなります。
| 主なエティオロジー | まず見る(観察) | 介入の方向性 | 関わる職種の例 | 再評価の軸 |
|---|---|---|---|---|
| 摂取不足が主体 | 喫食量、時間、姿勢、食形態、嚥下・口腔、食環境 | 食形態調整、補食、食環境整備、嚥下・口腔ケア、運動負荷の微調整 | ST/看護/管理栄養士/PT・OT | 摂取量、体重、活動量 |
| 急性炎症・疾患負荷が主体 | 循環・呼吸、疼痛、発熱、治療経過、離床可否 | 原疾患治療優先+早期離床、廃用予防、栄養投与の見直し(方針共有) | 医師/看護/管理栄養士/PT | 状態安定化、離床量、体重推移 |
| 慢性炎症が主体 | 長期の体重・筋量変化、活動性、増悪要因、服薬・通院状況 | 長期の高蛋白・高エネルギー方針+レジスタンス、増悪要因の整理 | 医師/管理栄養士/PT・OT | 筋力・歩行、体重、生活活動 |
| 社会的要因が主体 | 独居、買い物・調理、経済、介助体制、サービス利用 | 配食・サービス導入、環境調整、支援体制づくり(役割分担) | MSW/ケアマネ/看護/PT・OT | 継続率(食事・サービス)、体重、生活範囲 |
カンファで迷子にならない|60 秒共有テンプレ(読み上げ用)
結論:議論が長引くときは、共有の順番が揃っていないことが原因です。①診断と重症度 → ②病因 → ③方針(担当・期限)→ ④再評価の順で読み上げると、短時間でも合意形成が進みます。
下のテンプレを “ そのまま読み上げ ” にすると、情報の抜け漏れが減ります。
| 項目 | 言うこと(短く) | 例 |
|---|---|---|
| 診断・重症度 | 結論+根拠 1 行 | 「フェノタイプ 2 + 病因 1 →低栄養、根拠:体重変化+期間」 |
| 病因(優先) | 具体要因を 1 つに絞る | 「摂取不足:嚥下+食形態不一致が主」 |
| 介入(担当・期限) | 誰が/何を/いつまでに | 「栄養:補食、ST:食形態、PT:負荷調整、 2 週」 |
| 再評価 | 日付+指標+条件 | 「 2 週後:体重・摂取量・歩行量(同条件)」 |
よくある失敗|見落とし・過大評価・記録ブレを先に潰す
結論:失敗は「知識不足」より、条件が揃っていない/原因が抽象的/再評価が未定で起きます。最初に “ NG パターン ” を表で潰すと、運用が安定します。
特に体重の測定条件と “ 期間 ” は、後から修正できないことが多いので、最優先で揃えます。
| よくある失敗 | 何が起きる | 対策 | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 期間が書けない | 重症度と経過が追えない | 「いつからいつまで」を必ず記入 | 「 3 か月で − 7.7 %」 |
| 体重条件がバラバラ | 変化が “ ノイズ ” になる | 時間帯・衣服・機器・浮腫をメモ | 「午前・同秤・浮腫あり」 |
| 病因が抽象的 | 介入が決まらない | 嚥下・呼吸・疼痛・環境・体制へ分解 | 「嚥下+食形態不一致」 |
| 担当と期限がない | 実行と振り返りができない | 誰が/何を/いつまでにを固定 | 「 2 週で再評価」 |
| 再評価が未定 | 単発で終わる | 再評価日を先に書く | 「〇/〇 再評価」 |
よくある質問( FAQ )
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Q1. GLIM はスクリーニングと何が違いますか?
A.スクリーニングは “ リスクの拾い上げ ”、 GLIM は “ 診断(確定)と重症度 ” の枠組みです。実務では、スクリーニング陽性を起点にして、 GLIM の診断・重症度 → 介入 → 再評価まで 1 本でつなげると迷いが減ります。
Q2. 筋肉量( FFMI など)が測れないときはどうしますか?
A.測れる範囲の情報(体重変化、 BMI 、周囲長、視診触診、臨床所見など)で “ いま何が起きているか ” を整理し、根拠を残すことが重要です。測定できない項目は「未測定」と明記し、次回以降に測定できる体制(機器・担当)も含めて検討すると再現性が上がります。
Q3. 炎症( disease burden )はどう残すと共有しやすいですか?
A.原疾患・感染・外傷・術後など “ 炎症が想定される状況 ” を具体的に書き、補助所見があれば併記します。数値そのものより「どう解釈したか」が追える形にすると読み違いが減ります。
Q4. 介入方針はどう書けば共有しやすいですか?
A.「誰が/何を/いつまでに」を 1 行で書くのが一番強いです。病因に紐づけて “ 優先順位 ” を明確にし、再評価日とセットで記録すると振り返りがスムーズになります。
次の一手|全体像に戻す → すぐ実装する → 環境も点検する
結論:このページは「陽性後の運用」に特化しています。入口(スクリーニング)と戻り先(総論)をセットにすると、チームで迷いにくくなります。
参考文献
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002 / PubMed: 30181091
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr. 2025;49:11-20. doi: 10.1016/j.clnu.2025.03.018 / PubMed: 40222089
- Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. doi: 10.1016/j.clnu.2022.02.001 / PubMed: 35450768
- Jensen GL, Cederholm T, Ballesteros-Pomar M, et al. Guidance for assessment of the inflammation etiologic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition: A modified Delphi approach. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2024;48(2):145-154. doi: 10.1002/jpen.2590 / PubMed: 38221842
- Cederholm T, Bosaeus I, Barazzoni R, et al. Diagnostic criteria for malnutrition – An ESPEN Consensus Statement. Clin Nutr. 2015;34(3):335-340. doi: 10.1016/j.clnu.2015.03.001 / PubMed: 25799486
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


