クリニカルクラークシップ(CCS)受け入れ側の回し方

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クリニカルクラークシップ(CCS)とは?受け入れ側の回し方

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クリニカルクラークシップ(CCS)は、学生を診療チームの一員として位置づけ、指導者の監督下で診療業務へ段階的に参加させる臨床実習の考え方です。受け入れ側は、学生に患者を単独で任せるのではなく、同意、安全条件、実施可能な行為、監督方法、報告・記録のルートを先にそろえて運用します。

本記事は、PT・OTの診療参加型臨床実習を中心に、受け入れ前の確認事項、1日の標準フロー、見学・協同参加・実施の進め方、短時間フィードバック、記録と評価を整理します。STでも運用の型は参考になりますが、現行の言語聴覚士養成所指導ガイドラインでは診療参加型実習に限定されていないため、養成校と施設の方針を優先してください。

クリニカルクラークシップと診療参加型臨床実習の違い

この記事では、検索で使われやすい「クリニカルクラークシップ(CCS)」と、PT・OTの制度文書や手引きで使われる「診療参加型臨床実習」を併記します。名称より重要なのは、学生が診療チームに参加し、指導者の監督下で安全に経験を積む仕組みがあることです。

なお、「見学・協同参加・実施」は学生の参加段階を表す運用上の言葉です。一方、日本理学療法士協会の手引きに示される水準Ⅰ〜Ⅲは、行為の侵襲性やリスク、対象者の状態に応じて実施範囲を分ける考え方です。両者を同じ基準として扱わないようにします。

用語の整理:検索語・制度語・運用語の使い分け
表現 意味・使われ方 受け入れ側の扱い
クリニカルクラークシップ(CCS) 診療参加型の臨床実習を指す一般的な呼称 検索語や院内説明で併記する
診療参加型臨床実習 PT・OTの制度文書や教育の手引きで用いられる表現 本文の基準語として扱う
見学・協同参加・実施 学生が診療へ参加する段階 当日の役割と到達状況を共有する
水準Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 行為のリスクや対象者の状態に応じた実施範囲 養成校・施設の基準と手引きに沿って判断する

受け入れ前に同意・安全・守秘・報告ルートを固定する

診療参加型臨床実習は、学生の参加段階を決める前に、患者同意と安全管理の前提をそろえる必要があります。受け入れ初日までに、学生が関与できる範囲、直接監督が必要な行為、中止時の報告先、記録方法を養成校と確認します。

患者・家族には、学生の立場、実習の目的、関与する範囲、拒否や途中撤回が可能であることを施設手順に沿って説明します。守秘については、写真・録音・SNS投稿・個人情報の持ち出しを施設ルールで明文化し、電子カルテの閲覧や学生記録の扱いも事前に決めておきます。

受け入れ前チェック:同意・安全・守秘・感染・報告の最小セット
場面 確認すること 決めておく記録・対応
同意 目的、学生の立場、関与範囲、拒否・撤回の扱い 同意確認の方法と、学生が関与した範囲
安全 禁忌、注意事項、中止条件、対象者ごとのリスク 中止時の初期対応、報告先、再開判断者
守秘 カルテ閲覧、メモ、写真、録音、SNS、持ち出し 保存場所、閲覧者、回収・廃棄方法
感染 手指衛生、個人防護具、曝露時対応 オリエンテーション実施日と理解確認
報告 通常時、判断に迷う時、急変時の連絡順 担当指導者、代行者、責任者の連絡ルート

1日の運用は5ステップで固定する

日々の実習は、申し送り、同意確認、安全チェック、診療参加、記録・振り返りの5ステップに固定すると、指導者が交代しても運用がぶれにくくなります。当日の役割を増やしすぎず、観察する場面と学生が担当する部分を始業時に決めます。

患者の状態や学生の習得状況は毎日変わるため、前日に実施できた行為でも自動的に任せません。その日のリスク、学生の説明内容、報告行動を確認し、必要なら見学や協同参加へ戻します。

診療参加型臨床実習を回す5ステップ。申し送り、同意確認、安全チェック、診療参加、記録・振り返りの順に示した図版
診療参加型臨床実習は、5つの流れを固定し、参加段階と行為水準を分けて判断します。
診療参加型臨床実習の1日運用例
ステップ 学生の行動 指導者の確認 残す記録
① 申し送り 患者背景、当日の変化、リスクを短く要約する 不足情報と優先して確認する点を補足する 注意事項と本日の観察テーマ
② 同意確認 学生の立場と本日の関与範囲を説明する 患者・家族の意思と施設手順を確認する 同意の事実と関与範囲
③ 安全チェック 禁忌、注意事項、中止条件を口頭報告する 対象者の状態と行為水準が合っているか判断する 安全フラグ、中止条件、報告先
④ 診療参加 見学、協同参加、実施の決められた範囲で参加する 直接監督し、危険時は直ちに介入する 実施条件、患者反応、指導者の介入
⑤ 記録・振り返り 事実、学び、次回課題、質問を整理する 記録を確認し、次回の行動を1つ決める 良かった点、修正点、次回課題

任せ方は「参加段階」と「行為水準」を分けて決める

学生への任せ方は、参加段階行為水準の2軸で判断します。見学から実施へ進んでいても、対象者の状態が不安定な場合や行為のリスクが高い場合は、指導者の補助または見学へ戻します。

PTの手引きでは、水準Ⅰは指導者の直接監視下で実習生が実施する項目、水準Ⅱは指導者の補助として実施する項目・状態、水準Ⅲは見学にとどめる項目・状態として整理されています。具体的な行為の可否は、養成校の実習要項、施設基準、対象者の状態、学生の準備状況を合わせて決めます。

参加段階と監督方法を決めるときの整理例
参加段階 学生が行うこと 指導者が確認すること 進める・戻す判断
見学 目的、手順、安全確認、患者反応を観察して言語化する 観察の焦点が合っているか確認する 要点を説明できれば協同参加を検討する
協同参加 行為の一部を指導者と一緒に担当する 条件確認、声かけ、危険察知、報告を直接見る 安全に反復できれば実施範囲を広げる
実施 許可された行為を直接監督下で行い、反応を報告する 対象者の状態、行為水準、指導者の介入時機を確認する 状態変化や不十分な報告があれば段階を戻す

EPAは、この判断を「どの業務を、どの条件で、どこまで任せるか」という仕事単位でそろえる補助枠組みです。制度上の行為水準そのものではないため、院内で使う場合も、先に養成校・施設の実施可能範囲を確認します。

短時間の直接観察とフィードバックを固定する

忙しい現場では、1日を通して漠然と評価するより、観察場面を1つ決めて短時間で直接見る方が具体的な指導につながります。フィードバックは、良かった行動1つ、修正する行動1つ、次回行うこと1つに絞ります。

mini-CEXは患者対応を直接観察してコメントする型、OMPは学生の判断と根拠を短い問いかけで引き出す型として使えます。詳しい評価項目や運用方法は、mini-CEXの回し方で確認できます。

短時間フィードバックの使い分け
向いている場面 指導者が見る・聞くこと 残す記録
mini-CEX 説明、安全確認、評価・介助、報告を直接観察するとき 事前に観察テーマを1つ決め、実際の行動を見る 良かった行動1つ、修正行動1つ
OMP 判断の根拠や次の一手を引き出すとき 結論、根拠、一般化できる学び、次の行動を問う 次回試す行動1つ

記録は学生が行った事実と指導者の判断を分ける

学生の記録は、学校・施設の様式に従い、学生が観察・実施した事実と、自分の考察を区別して残します。診療録へ記載する場合は、学生が行った内容を明確にし、指導者が内容を確認して施設の承認手順に従います。

安全に関する出来事は、「いつ、どのような状態で、何が起き、誰へ報告し、どう対応したか」を時系列で残します。感想だけの記録や、患者を特定できる情報を個人メモへ転記する運用は避けます。

診療参加型臨床実習の記録シート(A4 PDF)

受け入れ前の6項目と、当日の申し送り、同意、安全確認、参加内容、記録、振り返りを1枚で確認できるデイリー記録シートです。院内運用メモとして使用し、患者情報の記載方法、保管場所、回収・廃棄は施設ルールに合わせてください。

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評価は点数より監督レベルと根拠をそろえる

実習評価は、「できた・できない」だけで終わらせず、どの条件と監督方法なら実施できたかを記録します。評価軸を増やしすぎず、安全確認、説明・同意、記録など、実際に観察できる行動へ絞ると指導者間で共有しやすくなります。

同じ学生でも、対象者の状態や場面が変われば必要な監督は変わります。点数を能力の固定評価として扱わず、観察した事実と次回の課題をセットで残します。

簡易ルーブリックの例:観察可能な行動と次回課題を残す
項目 確認する行動 根拠として残すこと 次回課題の例
安全確認 対象者のリスクと中止条件を実施前に説明できる 確認した情報、見落とし、指導者の補足 実施前報告を30秒でまとめる
説明・同意 学生の立場と関与範囲を分かりやすく説明できる 患者の反応、説明の不足、修正した表現 拒否・撤回時の対応を説明する
記録・報告 事実と考察を分け、変化を短く報告できる 報告内容、時機、記録修正の理由 患者反応と次の確認を1文で示す

院内で用意する運用ツール

受け入れ側の負担を減らすには、資料を増やすより、誰が担当しても同じ判断ができる最小限の様式をそろえます。養成校の実習要項や評価票を優先し、院内様式は重複しない範囲で補助的に使います。

まず必要なのは、受け入れ前オリエンテーション、当日の役割、短時間フィードバック、緊急時の報告ルートを確認できる資料です。様式を作成した後は、記入量が増えすぎて診療参加の時間を圧迫していないか見直します。

院内でそろえる運用ツールと最小項目
ツール 目的 最小項目
受け入れ前オリエンテーション票 実習開始前の前提をそろえる 同意、守秘、感染、安全、禁止事項、報告先
デイリー記録 当日の参加内容と次回課題を共有する 役割、安全確認、実施内容、振り返り
短時間フィードバック票 印象評価を避ける 観察事実、良かった行動、修正行動、次回課題
同意説明のひな型 患者説明のばらつきを減らす 学生の立場、関与範囲、拒否・撤回の扱い
体制・連絡ルート表 指導者不在時や急変時の迷いを減らす 担当者、代行者、責任者、緊急連絡先

現場で詰まりやすい5つのポイント

運用が止まりやすい原因は、学生の能力だけではありません。受け入れ側の基準が共有されていない、参加段階と行為水準が混同されている、フィードバックの論点が多すぎるといった設計上の問題を先に見直します。

よくある失敗

診療参加型臨床実習で起きやすい失敗と修正点
失敗 起きること 最初の修正
任せる範囲が日替わり 学生と指導者で許可範囲の認識がずれる 始業時に本日の参加段階と担当部分を1行で共有する
参加段階と行為水準を混同 学生の成長だけで高リスク行為まで任せてしまう 対象者の状態と行為水準を毎回確認する
中止条件が指導者ごとに違う 判断と報告が遅れ、学生が動けなくなる 施設基準、対応、報告先をセットで共有する
フィードバックが長い 次回変える行動が分からなくなる 良かった行動1つ、修正行動1つへ絞る
記録が目的化する 診療参加や振り返りの時間が減る 養成校の様式と重複する院内記録を減らす

詰まりを減らす5ステップ

受け入れ前から当日の振り返りまでの回避手順
順番 行うこと 確認点
① 前提をそろえる 同意、守秘、実施範囲、中止条件、報告先を確認する 養成校と施設のルールが一致しているか
② 本日の役割を決める 見学、協同参加、実施の範囲を明示する 対象者の状態と行為水準に合っているか
③ 観察テーマを絞る 短時間の直接観察で見る行動を決める 安全、説明、報告など1テーマに絞れているか
④ 次回行動を決める 改善点を具体的な行動で伝える 次回に観察できる表現になっているか
⑤ 記録して引き継ぐ 観察事実と次回課題を短く残す 次の指導者が同じ基準で開始できるか

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

クリニカルクラークシップと診療参加型臨床実習は同じですか?

近い意味で使われます。本記事では、一般的な呼称として「クリニカルクラークシップ(CCS)」を使い、PT・OTの制度文書に合わせて「診療参加型臨床実習」を基準語としています。ただし、職種ごとに指定規則や指導ガイドラインが異なるため、同じ運用を一律に当てはめないことが重要です。

学生にどこまで任せてよいですか?

養成校の実習要項、施設ルール、行為の水準、対象者の状態、学生の準備状況を合わせて決めます。学生の習得が進んでいても、リスクが高い行為や状態では補助または見学へ戻します。学生単独で判断・実施させる運用にはしません。

同意が得られない、または途中で撤回された場合はどうしますか?

患者・家族の意思を優先し、その対象者への学生関与を中止します。見学を含めてどこまで関与を停止するかは施設手順に従い、別の患者やシミュレーションなどの代替学習へ切り替えます。

フィードバックは毎回長く行う必要がありますか?

長さよりも、観察した事実と次回の行動が明確であることが重要です。短時間の直接観察後に、良かった行動1つ、修正行動1つ、次回行うこと1つを伝える方法でも継続しやすくなります。

写真、録音、個人メモはどのように扱いますか?

施設の許可と明確な手順がない限り、写真・録音・SNS投稿は行わせません。メモや記録は、患者を特定できる情報、保管場所、持ち出し、回収・廃棄方法を施設ルールで定め、初日に確認します。

次の一手

実習全体の設計と関連する教育手法は、EPAで実習の任せ方と監督レベルを決める方法へ進むと整理できます。


参考文献

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  • 厚生労働省.理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインの一部改正について.2022.PDF
  • e-Gov法令検索.理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則.本文
  • 日本理学療法士協会.臨床実習教育の手引き.第6版.2020.公式ページ
  • 厚生労働省.言語聴覚士養成所指導ガイドラインについて.2024.PDF
  • 厚生労働省.診療参加型臨床実習実施ガイドライン(平成28年度改訂版・医学生向け).PDF
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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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