JST-IC( JST 版活動能力指標 )の評価方法と見方
JST-IC( JST 版活動能力指標:Japan Science and Technology Agency Index of Competence )は、地域在住高齢者の高次生活機能を 4 領域 × 16 項目で捉える指標です。ADL や基本的 IADL が保たれていても、情報の扱い、生活の段取り、テクノロジーの利用、社会参加といった “ 生活が回る力 ” に抜けがないかを短時間で整理できます。
臨床では、退院前後の支援設計や生活期の見直しで使いやすい尺度です。特に「歩けるし身の回りもできるのに、家に戻ると生活が回らないかもしれない」という違和感を、合計点だけでなく領域別の弱点として共有できる点が強みです。
いつ使う?( ADL は保たれるのに生活が回らない場面で強い )
JST-IC が活きるのは、BI や FIM、歩行テストだけでは退院後の生活像が見えにくい場面です。たとえば、移動は自立に近いのに「通院の段取りが不安」「情報収集が苦手」「役割が減って閉じこもりそう」といったケースでは、身体機能だけでは次の一手が決まりません。
もう 1 つの使いどころは、TMIG-IC で大きな問題が見えにくいケースです。JST-IC はより現代的な生活行動まで視野に入るため、支援の焦点を「筋力」「歩行」で終わらせず、情報の扱い・生活管理・社会参加まで落とし込みやすくなります。
構成( 4 領域 × 4 項目 )と見方
JST-IC は 4 領域・計 16 項目で構成され、各項目を 0 / 1 で整理します。領域は、テクノロジーの利用、情報の取り扱い、生活のマネジメント、社会参加です。合計は 0〜16 点で、高いほど高次生活機能が保たれていると読みます。
ただし、実務では合計点だけを先に見ないほうが安全です。重要なのは「どの領域で止まっているか」です。情報の扱いが弱ければ受診・服薬・サービス利用で詰まりやすく、社会参加が弱ければ外出や役割づくりの支援が必要になりやすい、というように “ 次に確認すること ” を決める材料として使います。
質問項目の見方( 4 領域で何を見ているか )
検索では「質問項目」を知りたい読者も多いですが、現場では項目文の丸暗記よりも “ その質問が何を見ているか ” を押さえる方が使いやすいです。JST-IC は、現代的な生活を成り立たせる 4 つの側面を、短い Yes / No 形式で確認していくイメージで捉えるとブレにくくなります。
下の表は、各領域で何を確認しているかを実務寄りに言い換えた早見です。面接では「できるか」ではなく「普段の生活で実際にやっているか」を軸に聞くと、点数と生活像がつながりやすくなります。
| 領域 | 主に確認する内容 | 聴取でずれやすい点 | 介入につながる見方 |
|---|---|---|---|
| テクノロジーの利用 | 機器やサービスを生活の中で使えているか | 「触れたことがある」と「日常で使っている」が混ざりやすい | 機器操作の練習、代替手段、家族支援の要否を整理する |
| 情報の取り扱い | 必要な情報を集め、活用できているか | 理解力の問題か、情報源が乏しいだけかが混ざりやすい | 受診・服薬・制度利用の情報支援に落とし込む |
| 生活のマネジメント | 日々の段取りや自己管理が回っているか | 家族代行が本人の能力として扱われやすい | 見守り、役割分担、手順の簡素化を検討する |
| 社会参加 | 外とのつながりや役割を保てているか | 外出能力と参加実績が混在しやすい | 通いの場、役割づくり、外出機会の設計につなげる |
採点と解釈(カットオフより「領域の弱点」と縦断変化 )
採点は各項目を 0 / 1 で扱い、領域別は 0〜4 点、合計は 0〜16 点で整理します。JST-IC は、単一のカットオフで白黒をつけるよりも、対象者の背景や生活環境を踏まえて相対的に読む方が実務に合います。同じ 12 点でも、独居か同居か、外出環境があるか、支援導入の有無で意味は変わるためです。
運用のコツは、①領域別の弱点を 1 つ決める、②支援条件や代替手段を短くメモする、③同条件で再評価する、の 3 点です。縦断では「合計が何点変わったか」だけでなく、「どの領域が下がったか」「その変化は能力低下か環境変化か」を分けて読むと、介入の優先順位がぶれにくくなります。
記録シート PDF と自動計算ツール
JST-IC を現場で回しやすくするために、記録シート PDF と自動計算ツールを置いています。PDF は紙や PDF 記入用の下書きに、自動計算ツールは合計点と 4 領域の小計確認に向いています。
ページを重くしすぎないよう、どちらも「開く」導線を先に置き、必要なときだけこの場でプレビューできる形にしています。スマホではまず開くボタン、PC では必要時のみプレビューを使う運用が見やすいです。
2.JST-IC 自動計算ツール
16 項目を入力すると、4 領域の小計と合計点( 0〜16 点 )を自動で整理できます。未入力が 1 項目でもある場合は結果を確定表示しない仕様です。
自動計算ツールを開くこの場でプレビューする
実施手順(聞き取りがブレない 5 分フロー )
JST-IC は自己記入でも使えますが、退院支援や生活期の実務では面接で補足しながら進める方が解釈のズレを減らせます。ポイントは「できるか」ではなく「普段の生活で実際にやっているか」を基準にすることと、支援条件を必ずセットで確認することです。
短時間で回すなら、次の 5 ステップが実用的です。
- 生活背景を先に確認する(独居/同居、移動手段、外出頻度、役割)
- 16 項目をテンポよく聴取する
- 迷う項目だけ具体例で確認する
- 領域別に「強み 1 つ・弱み 1 つ」を要約する
- 再評価の時期と条件(支援・環境)を固定する
この 5 分フローで残した要約は、そのまま家族説明や多職種連携に使えます。JST-IC は点数だけを出す尺度ではなく、「生活のどこで詰まりそうか」を短い言葉で共有するための尺度として使うと活きます。
関連スケールとの使い分け(何を見たいかで選ぶ )
生活機能の評価では、「生活圏(どこまで行けるか)」「実施頻度(どれくらいやっているか)」「高次生活機能(生活を回す力)」を混ぜると、解釈ミスが起きやすくなります。JST-IC は “ 高次生活機能の入口 ” として使い、必要に応じて LSA や FAI、TMIG-IC を足す流れにすると、評価が増えすぎずに済みます。
下の表は、退院前後で迷いやすいポイントを「何を主に見たいか」で分けた早見です。まず 1 本を決め、足りない情報だけを別尺度で補う考え方にすると、実装しやすくなります。
| 尺度 | 主に見るもの | 点数レンジ | 強い場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| JST-IC | 高次生活機能(現代的生活行動) | 0–16 | ADL / IADL は保たれるが生活が回らない | 合計より領域別弱点と縦断変化を重視する |
| TMIG-IC | 高次生活機能(従来型:IADL など) | 0–13 | 退院後の IADL の抜けを素早く拾う | 高得点だと差が出にくい場合がある |
| LSA | 生活範囲(生活圏)+頻度+自立度 | 0–120 | 閉じこもり、外出機会低下の可視化 | 参照期間と同伴条件を固定する |
| FAI | IADL の実施頻度(活動の中身) | 0–45 | 在宅で “ やれている行動 ” の具体化 | 基準期間をそろえて比較する |
現場の詰まりどころ(よくある失敗と修正ポイント )
JST-IC は短時間で全体像をつかみやすい一方、聴取の軸がぶれると「その日の気分」や「家族代行」の影響を受けやすい尺度です。特に退院前後は、能力の変化なのか、環境や支援条件の変化なのかが混ざりやすいため、記録の型をそろえておくことが大切です。
先に見返す場所:よくある間違い / 回避手順 / TMIG-IC の記録の型
失敗を減らすコツは、①「普段やっているか」で判定する、②代替(家族・サービス)を必ずメモする、③再評価条件を固定する、の 3 つです。点数を上げることが目的ではなく、「どこが詰まるか」を明確にして次の介入へつなげることを優先します。
| よくある間違い | なぜ起きる? | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 「できる」で答えてしまう | 能力と実行が混在する | 「普段、実際にやっていますか?」で聞き直す | 直近の生活状況を 1 行で残す |
| 家族代行を本人の能力として扱う | 支援条件が見えない | 誰が、どの程度、代替しているかを確認する | 「同伴」「代行」「見守り」など条件を短くメモする |
| 再評価で条件が変わって比較できない | 退院、転居、サービス導入で環境が変化する | 時期と条件(同居状況、移動手段)を固定する | 再評価条件を時期・支援・環境でセット記録する |
| 合計点だけ見て介入が止まる | 領域別の弱点に落とせていない | 領域別に「弱い 1 つ」を次回目標へ変換する | 強み・弱み・次アクションを 1 行ずつ残す |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. JST-IC はどんな対象に向いていますか?
A. 主に地域在住高齢者の高次生活機能をみる尺度です。臨床では、ADL / IADL の点数だけでは生活像がつかみにくいケース、たとえば閉じこもり、情報収集の弱さ、生活の段取り不安、役割低下などが疑われる場面で使いやすいです。
Q2. JST-IC の質問項目は、何を見ているのですか?
A. 大きくは、テクノロジーの利用、情報の取り扱い、生活のマネジメント、社会参加の 4 領域です。実務では、設問文を丸暗記するよりも「この質問は生活のどの側面を見ているか」を理解して聞く方が、記録と介入につながりやすくなります。
Q3. 何点以下なら要支援と考えますか?
A. 一律の固定カットオフで決めるより、対象者の年齢、生活背景、支援条件を踏まえて相対的に読み、領域別の弱点を拾う使い方が現実的です。合計点だけでなく、どの領域が落ちているかを見て支援導入の優先順位を決めます。
Q4. TMIG-IC とどう使い分けますか?
A. TMIG-IC は従来型の高次生活機能を素早くみるのに向き、JST-IC はより現代的な生活行動まで整理したいときに向きます。TMIG-IC で差が出にくいケースや、情報機器・情報収集・社会参加まで含めて見たいケースでは JST-IC が使いやすいです。
次の一手
JST-IC は、合計点を出して終わるよりも「どの領域で生活が止まりやすいか」を言語化して、支援設計と再評価条件までつなげたときに価値が出ます。次は、全体像を固定するか、比較記事で不足情報を補うかのどちらかに進むと、評価設計が回りやすくなります。
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


