LSA( Life-Space Assessment )とは?生活空間の広がりと QOL をみる評価

評価
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LSA とは?(4 週間の生活空間の広がりと QOL を数量化)

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LSA( Life-Space Assessment )は、過去 4 週間に「どこまで」「どのくらいの頻度で」「どれだけ自立的に」移動したかを聴取して、生活空間( Life-Space )の広がりと QOL を 0〜120 点で定量化する評価法です。レベルは L1(室内)〜 L5(市外・町外)までの 5 段階で、各レベルの 到達 × 頻度 × 自立度 を合算します。LSA 評価は、歩行テストや ADL 尺度だけでは捉えにくい「実生活での外出・生活範囲( LSA 生活範囲 )・社会参加」の度合いを補完でき、在宅復帰や外出機会の拡大を目標にしたリハビリでも有用です。

評価の実施手順(初めてでも迷わない運用プロトコル)

以下は逐語的な設問ではなく、原法の構造に沿った 実務フロー です(患者さんへの声かけは施設文脈に合わせて調整してください)。LSA 評価の標準化にそのまま使えるレベル感を意図しています。

LSA 実施フロー(標準化のための手順書)
段階 要点(話し方の例・記録のコツ)
準備
  • 対象期間は 過去 4 週間。カレンダーを一緒に見ながら回想を助けます(祝日や通院日を手掛かりに)。
  • 代理回答(家族等)も可。ただし実際の移動実績を優先(できる / できた可能性ではなく実際に行ったか)。
導入

例:「この 4 週間に、実際にどこまで出かけたか、どのくらいの頻度か、誰かの手助けや道具は必要だったかを順番にお聞きします。」

レベル確認
  • L1 室内の別室L2 敷地内(玄関先・庭・駐車場)L3 近隣(敷地外の近所)L4 町内(市区町村内)L5 町外の順で「到達の有無」を確認。
  • 到達なしはそのレベルの得点は 0。到達ありなら次へ(頻度・自立度)。
頻度

過去 4 週間の実績を週平均で選択:毎日 = 4 /週 4–6 回 = 3 /週 1–3 回 = 2 /週 1 回未満 = 1

自立度

そのレベルへ行く際の最小限必要な支援を選択:人的介助あり = 1.0 /補装具のみ = 1.5 /介助・補装具なし = 2.0
同一レベルで複数の方法(例:独歩と家族介助の両方)が混在する場合は、研究比較の一貫性を保つため、より依存度の高い状況(人的介助 > 補装具のみ > 自立)で統一して記録する運用を推奨します。

確認
  • 最大到達レベル(補助あり可)と自立で到達した最大レベルもメモ(サブスコアの把握に有用)。
  • 天候・体調・交通手段など解釈に影響する事情を備考に残す。

評価スケールの全体像や他の歩行評価については、評価ハブの記事もあわせて確認しておくと整理しやすくなります。

採点方法(0〜120 点)と計算例

LSA 評価 表・計算の基本は次の通りです。元データがあれば電卓や簡単なスプレッドシートで LSA 評価 計算が可能です。

スコアリングの定義
項目 選択肢 点(係数)
レベル L1 室内/L2 敷地内/L3 近隣/L4 町内/L5 町外 L1 = 1, L2 = 2, L3 = 3, L4 = 4, L5 = 5
頻度 毎日/週 4–6 回/週 1–3 回/週 1 回未満 4 / 3 / 2 / 1
自立度 人的介助あり/補装具のみ(介助なし)/補助なし 1.0 / 1.5 / 2.0

各レベル得点 = レベル係数 × 頻度点 × 自立度点。5 レベルの合計が総合点( 0〜120 )です。最大は Σ(1〜5)×4×2 = 120 となります。

計算例(サンプル)
レベル 到達 頻度 自立度 レベル得点
L1 室内あり毎日( 4 )補助なし( 2.0 )1×4×2.0 = 8
L2 敷地内あり毎日( 4 )補助なし( 2.0 )2×4×2.0 = 16
L3 近隣あり週 1–3( 2 )補助なし( 2.0 )3×2×2.0 = 12
L4 町内なし0
L5 町外あり週 1 未満( 1 )人的介助( 1.0 )5×1×1.0 = 5
総合点 8 + 16 + 12 + 0 + 5 = 41 点

解釈のポイント(目安と経時変化)

  • 固定カットオフは原法に規定なし。研究では文脈により60 点未満を「生活空間の制限あり」とみなす報告もあり、LSA 評価 カットオフとして用いられることがありますが、施設・地域・交通環境で変動します。経時的な推移と合わせて判断してください。
  • 臨床の変化量の目安として、およそ 10 点の変化が「意味のある変化」と解釈される場面があります。
  • 歩行速度・ TUG ・ IADL 等との関連が多数報告されており、外出範囲の拡大や通所頻度の改善を具体的な介入目標として設定しやすいのが LSA の強みです。E-SAS などの指標と比較すると、LSA は「生活範囲( Life-Space )」そのものにフォーカスして QOL を反映しやすい点が特徴です。

LSA リハビリの導入は、在宅高齢者の生活空間の広がりと QOL を可視化し、理学療法士が介入の優先順位を整理するのに役立ちます。病棟・外来・通所・訪問など、それぞれの場で「どこまで広げたいか」を具体的な目標として共有しておくと、チーム内での評価の位置づけも明確になります。

評価用ワークシート(LSA 評価用紙/A4/印刷ボタン付き)

当ブログ用に作成した LSA 評価用紙(原法の構造・得点式に準拠、逐語転載なし)を埋め込みます。右上の「印刷」ボタンでそのまま A4 出力できます。E-SAS 評価用紙など他のチェックシートと併用する場合も、記録様式を統一しておくとカンファレンスで共有しやすくなります。

うまく表示されない場合は、ブラウザのアドレスバーに /wp-content/uploads/2025/10/lsa-a4-form.html を入力して直接開いてください。

現場の詰まりどころ(線引き・代理回答・環境要因)

LSA 導入時に詰まりやすいポイントと押さえどころ
詰まりどころ 考え方(運用のヒント)
L3 と L4 の線引きがあいまい 行政区画よりも「生活圏」としての感覚に合わせると迷いがちです。LSA では、原則として「自宅の近所か」「町内の中心部や商業施設まで出たか」といった具体例を施設内で決めておき、同じ患者さんは同じ基準で追跡することを優先します。
施設内・病棟内でほぼ完結しているケース 病棟内移動が中心の方は、L1〜L2 だけでスコアが決まります。外出が少ないからといって評価対象外にせず、「今は L2 まで、退院に向けて L3 を目標にする」といった形で、生活空間の広がりをリハ目標に組み込むイメージが重要です。
認知症・回想困難で本人回答が不安 家族や介護者からの代理回答は認められていますが、「可能性ベース」ではなく実際に行ったかどうかに絞って聴取します。通所や訪問サービスの記録と照らし合わせることで、過大・過小評価を防ぎやすくなります。
天候や一時的な体調不良の影響 豪雨や酷暑の時期など、環境要因で外出が抑えられているケースでは、一見スコアが悪化していても実際には能力低下とは限りません。LSA の数値だけでなく、「なぜその 4 週間は出られなかったのか」を備考に記録し、次回の測定時に併せて解釈することがポイントです。

こうした詰まりどころは、あらかじめチーム内で「うちの施設ではこう扱う」とルール化しておくと、評価者が変わっても LSA のスコアがぶれにくくなります。詳細なケースごとの扱いは、下の「よくある質問」もあわせて確認しておくと安心です。

よくある質問(運用の悩みどころ)

現場で迷いやすいケースと運用のヒント
ケース 考え方(記録ルール)
自動車で家族が運転 「人的介助」とみなす扱いが国際的に一般的です。運転を他者に依存するため 自立度 = 1.0 を推奨します。
杖・歩行器・車いす 道具のみで介助者を伴わない場合は 自立度 = 1.5。電動車いすの自操も同様とします。
同一レベルで自立と介助が混在 研究比較の一貫性確保のため、より依存度の高い状況(人的介助 > 補装具のみ > 自立)で統一して採点する運用を推奨します。
一度だけの遠出 「週 1 回未満 = 1 点」で頻度を記録します。交通手段や付き添いの有無は備考に残しておきましょう。
悪天候・一過性の体調不良 スコアは実績ベースで算出し、背景事情は必ず備考に記録します。次回以降の LSA と並べて解釈することが重要です。
電話での実施 電話聴取でも信頼性は報告されていますが、聞き漏れを防ぐためにチェックリストや LSA 評価用紙を手元に置いて実施することを推奨します。

おわりに(LSA を日常業務にどう組み込むか)

日常のリハビリでは、「安全の確認 → 評価 → 記録 → 再評価」というリズムをどう現場に根付かせるかが鍵になります。LSA は、その中でも「生活空間の広がり」という視点から QOL を補足する評価として位置づけられるため、歩行速度や TUG・ IADL などの評価とセットでルーチン化しておくと、退院後の生活像を共有しやすくなります。

また、LSA を導入すると「どこまで外に出られるようになったら退院か」「どのくらい通所に参加できれば安心か」といった目標設定も具体化しやすくなります。評価そのものを目的化するのではなく、患者さんや家族と「どんな生活範囲を目指すか」を対話するための道具として活用していくことが、最終的にはチーム全体のケアの質向上につながります。転職や職場環境の見直しも視野に入れている方は、面談準備チェックと職場評価シートをまとめたマイナビコメディカルの資料ダウンロードも併せて活用していただくと、学びの時間を確保しやすくなります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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参考文献(原著・解説・エビデンス)

  1. Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring life-space mobility in community-dwelling older adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51(11):1610-1614. PubMed, DOI
  2. Peel C, Sawyer Baker P, Roth DL, Brown CJ, Brodner EV, Allman RM. Assessing Mobility in Older Adults: The UAB Study of Aging Life-Space Assessment. Phys Ther. 2005;85(10):1008-1119. Link
  3. McCrone A, et al. The Life-Space Assessment Measure of Functional Mobility… Phys Ther. 2019;99(12):1719-1727. PMCID
  4. Chere ML, et al. Life-Space Assessment in Urogynecology… 2009.(おおよそ 10 点の変化を臨床的に意味ある変化の目安と言及)PMCID
  5. Bowling CB, et al. Community Mobility… Am J Kidney Dis. 2013.(電話聴取の信頼性・スコア安定性の記載)PDF
  6. Iyer AS, et al. COPD 研究(UAB LSA は著作権なし・複製許可不要の記載)。PMCID
  7. Lindeman K, et al. 2024(文脈により 60 点未満を制限ありと扱う例)。Link
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