- てんかん発作を目撃したら、危険排除・計時・禁忌回避を優先します
- 最初の30秒|押さえず、口に物を入れず、開始時刻を記録します
- 一次対応のDo/Don’tを場面別に整理します
- 119番通報・院内緊急連絡を検討する基準
- けいれん停止後は呼吸と意識を確認し、必要時に側臥位へ整えます
- 配布用PDF|発作の観察・記録を同じ順番にそろえます
- 訓練前は発作そのものではなく、発生時の外傷リスクを減らします
- 患者ごとの発作対応プランを1枚で共有します
- てんかん発作・失神・PNESは観察所見で整理します
- 観察・記録は開始から回復までを時系列で残します
- 発作後の訓練再開は意識・呼吸・外傷・神経症状で判断します
- FAQ|てんかん発作の一次対応でよくある質問
- まとめ|危険排除・開始時刻・けいれん停止後の呼吸確認を固定します
- 参考文献
- 著者情報
てんかん発作を目撃したら、危険排除・計時・禁忌回避を優先します
てんかん発作を目撃したときは、発作型の判断よりも、周囲の危険を除く、頭部を保護する、開始時刻を記録する、押さえつけない、口に物を入れないことが優先です。全身のけいれんが続いている間は無理に体位を変えず、けいれん停止後に呼吸を確認し、必要に応じて側臥位へ整えます。
救急要請を判断する際は、発作が5分以上続く、短時間に反復して意識が戻らない、呼吸状態が回復しない、初回発作、外傷や溺水を伴うといった赤旗を確認します。医療機関内では院内緊急連絡を優先し、地域・施設・在宅では119番通報を含めて対応してください。
この記事では、PT・OT・STなどのリハビリスタッフ向けに、最初の30秒の一次対応、119番通報の目安、発作後の対応、失神・PNESとの違い、観察・記録の順番を整理します。
最初の30秒|押さえず、口に物を入れず、開始時刻を記録します
発作が始まったら、訓練を中止して応援を呼び、周囲の危険物を除き、頭部を保護しながら開始時刻を記録します。全身のけいれん中に身体を押さえつけたり、口へ物や指を入れたり、無理に水や薬を飲ませたりしてはいけません。

最初に固定する順番:中止・応援要請 → 危険排除・頭部保護 → 計時 → けいれん停止後の呼吸確認 → 連絡・救急要請判断
一次対応の5ステップ
- 訓練を中止して応援を呼ぶ:一人で対応を抱えず、院内や施設内の緊急連絡手順に沿って周囲へ知らせます。
- 周囲の危険を除く:家具、歩行器、車椅子のフットサポート、訓練機器など、身体がぶつかる可能性のある物を移動します。
- 頭部を保護する:頭の下にタオルや衣類など柔らかい物を置きます。身体全体を押さえつけることは避けます。
- 開始時刻を記録する:時計やタイマーを確認し、発作が始まった時刻と持続時間を記録します。
- けいれん停止後に呼吸を確認する:呼吸、皮膚色、反応を確認し、必要に応じて側臥位へ整えます。呼吸がない、または正常な呼吸ではない場合は、院内手順や119番の指示に沿って対応します。
やってはいけないこと
押さえつけない
けいれんを力で止めようとすると、本人と介助者の外傷につながります。
口に物を入れない
箸、タオル、指などを口へ入れると、歯の損傷、誤嚥、介助者の受傷につながります。
発作中に飲ませない
意識や嚥下が安定する前に、水、食物、内服薬を口から与えないでください。
一次対応のDo/Don’tを場面別に整理します
一次対応では、発作を止めることではなく、二次外傷を防ぎ、発作時間と回復経過を正確に残すことが重要です。発作中と発作後の対応を混同しないように整理します。
| 場面 | 行うこと | 行わないこと | 記録項目 |
|---|---|---|---|
| 発作開始時 | 訓練中止、応援要請、危険物除去、頭部保護 | 身体を押さえる、立位のまま支え続ける | 開始時刻、発生時の体位、転倒の有無 |
| けいれん中 | そばで見守り、頭部と周囲の安全を確保する | 口に物や指を入れる、無理に体位を変える | 運動の特徴、左右差、眼球・頭位、皮膚色 |
| けいれん停止後 | 呼吸と反応を確認し、必要時に側臥位へ整える | すぐに起こす、歩かせる、水や薬を飲ませる | 停止時刻、呼吸、皮膚色、反応、嘔吐 |
| 回復期 | 安静を保ち、会話・指示理解・運動麻痺を再評価する | 本人の希望だけで訓練をすぐ再開する | 回復までの時間、傾眠、混迷、麻痺、言語症状 |
119番通報・院内緊急連絡を検討する基準
発作が5分以上続く、発作を反復して意識が戻らない、呼吸状態が回復しない場合は、救急要請を検討します。ただし、初回発作、外傷、溺水、妊娠中などでは、5分未満でも慎重な対応が必要です。
時間にかかわらず、早めの連絡・通報を検討する状況
- 発作が5分以上続いている
- 短時間に発作を反復し、発作間に意識が戻らない
- 呼吸が戻らない、呼吸が明らかに乱れている、チアノーゼが強い
- 初めて確認された発作、または普段と明らかに異なる発作
- 転倒や頭部打撲など、強い外傷を伴う
- 水中や入浴中に発生し、溺水の可能性がある
- 妊娠中、糖尿病、重い基礎疾患など、追加リスクがある
- 発作後の意識や反応が極端に戻りにくい
院内と地域では連絡先を分けて考えます
| 発生場所 | 最初の連絡 | 補足 |
|---|---|---|
| 病院・入院施設 | 院内緊急コール、看護師、主治医、RRS・RRT | 施設の起動基準と指示を優先します。 |
| 通所・介護施設 | 看護職・管理者への連絡と119番通報判断 | 個別の発作対応計画と施設手順を確認します。 |
| 訪問・在宅・屋外 | 119番、家族、主治医・訪問看護への連絡 | 通報時は発生場所を正確に伝えます。 |
連絡時は開始時刻から順に伝えます
院内緊急連絡や119番通報では、診断名の推測より、観察した事実を時系列で伝えることが重要です。
- 開始時刻と現在の持続時間
- 発生時の状況と体位
- けいれんの特徴と左右差
- 呼吸、皮膚色、意識状態
- 外傷、嘔吐、溺水などの有無
- 実施した対応と患者の反応
連絡例:「13時12分に歩行練習中に倒れ、全身の強直後に間代性のけいれんが始まりました。現在4分経過しています。頭部打撲は確認できず、呼吸はありますが反応はありません」
けいれん停止後は呼吸と意識を確認し、必要時に側臥位へ整えます
側臥位への変更は、全身の強いけいれん中に無理に行うのではなく、けいれんが停止した後に呼吸と安全を確認して実施します。嘔吐や分泌物がある、意識が十分に戻らないといった場合は、気道を保ちやすい側臥位が選択肢になります。
発作後に確認する4項目
- 呼吸:胸郭の動き、呼吸音、皮膚色、SpO2を使用できる環境ではその値を確認します。
- 意識:開眼、呼名反応、会話、簡単な指示への反応を時間経過で確認します。
- 外傷:頭部、顔面、舌、肩、上肢、下肢などの打撲・出血・疼痛を確認します。
- 神経症状:新たな麻痺、左右差、失語、視野症状などを確認します。
呼吸が確認できない、または正常な呼吸ではない場合:反応と呼吸を再確認し、直ちに院内緊急連絡または119番通報を行い、施設の手順や通信指令員の指示に従ってください。
配布用PDF|発作の観察・記録を同じ順番にそろえます
発作対応では、後から思い出して書くより、開始時刻から回復までを固定した順番で記録した方が、申し送りの抜けを減らせます。詳細な観察項目と記録シートは、以下の関連記事で確認できます。
訓練前は発作そのものではなく、発生時の外傷リスクを減らします
リハビリ場面のリスク管理では、「発作を起こさせない」と断定するのではなく、体調変化を確認し、発作が起きた場合の転倒・外傷・溺水リスクを減らすことが現実的です。睡眠、服薬、発熱、摂取状況、最近の発作パターンを確認し、危険の大きい訓練条件を調整します。
開始前の60秒チェック
| 確認項目 | 確認内容 | 訓練の調整 | 相談・延期を考える変化 |
|---|---|---|---|
| 睡眠・疲労 | 寝不足、夜間覚醒、強い日中傾眠 | 強度を下げ、休憩を早めに入れる | 反応低下、著しい眠気、ふらつき増悪 |
| 服薬状況 | 内服の遅れ、飲み忘れ、変更の有無 | 高リスク訓練を後回しにする | 飲み忘れが明確、発作パターンの変化 |
| 発熱・感染 | 発熱、悪寒、咳、痰、全身倦怠感 | 短時間・低負荷へ変更する | 発熱に意識・呼吸変化を伴う |
| 摂取・代謝 | 食事摂取、脱水、低血糖を疑う症状 | 起立・歩行を段階化する | 冷汗、動悸、反応低下、著しい脱水 |
| 最近の発作 | 頻度、持続、回復時間の変化 | 見守りと環境設定を慎重側へ変更 | 群発傾向、回復遷延、外傷の合併 |
発作が起きた場合に危険が大きい訓練
| 訓練・場面 | 主なリスク | 事前調整 | 慎重側の代替案 |
|---|---|---|---|
| 起立・立位 | 転倒、頭部打撲 | 手すり、ベッド、介助位置を先に決める | 端座位での重心移動、短時間反復 |
| 歩行練習 | 転倒、二次外傷 | 広い直線区間、介助者、休憩場所を確保 | 平行棒、歩行器、短距離反復 |
| 階段・段差 | 高所からの転落、骨折 | 手すり、介助者数、疲労条件を固定 | 低いステップ台での練習 |
| 浴室・水場 | 溺水、滑倒 | 単独を避け、役割と緊急連絡を共有 | 乾いた環境で動作手順を練習 |
| 屋外歩行 | 交通事故、転倒、対応の遅れ | 同行者、連絡手段、休憩地点を決める | 屋内での歩行・二重課題から段階化 |
| 機器・エルゴ | 転落、機器からの離脱困難 | 緊急停止、乗降介助、固定具を確認 | 通常椅子での反復運動 |
患者ごとの発作対応プランを1枚で共有します
発作対応は、その場にいたスタッフの経験だけに依存させず、普段の発作型、救急要請基準、指示薬、連絡先をあらかじめ共有しておくことが重要です。施設の様式や主治医の指示に沿って、患者ごとの対応計画を整えます。
| 項目 | 記載内容 | 主な共有先 |
|---|---|---|
| 普段の発作 | 発作の特徴、平均的な持続時間、普段の回復時間 | PT・OT・ST・看護・介護 |
| 起こりやすい状況 | 睡眠不足、発熱、内服の遅れなど | 関係スタッフ |
| 訓練条件 | 単独を避ける場面、介助者数、実施を控える条件 | リハ・看護・介護 |
| 指示薬 | レスキュー薬の有無、投与条件、実施者 | 医師・看護 |
| 緊急連絡基準 | 5分超、群発、呼吸異常、外傷、普段との違い | 関係者全員 |
てんかん発作・失神・PNESは観察所見で整理します
てんかん発作、失神、PNESの最終的な鑑別は医師が行います。リハビリスタッフは「失神らしい」「てんかんらしい」と断定するのではなく、発生時の姿勢、誘因、運動、舌咬傷、回復までの経過を具体的に記録します。
| 観察項目 | てんかん発作でみられること | 失神でみられること | PNESでみられること |
|---|---|---|---|
| 発生前の状況 | 誘因がない場合もあり、睡眠不足や発熱などが関連することがあります。 | 起立、排尿、疼痛、情動、長時間立位などが手掛かりになります。 | 心理社会的背景や場面との関連がみられることがあります。 |
| 運動 | 強直から間代へ移行する律動的な運動などがあります。 | 短時間の不規則なミオクロニーを伴うことがあります。 | 非律動的、変動性、長時間化などがみられる場合があります。 |
| 舌咬傷 | 舌の側縁の咬傷が手掛かりになることがあります。 | 舌先付近の損傷がみられることがあります。 | 単独では鑑別できません。 |
| 回復 | 傾眠や混迷が続くことがあります。 | 比較的速やかに意識が戻ることがあります。 | 回復経過や反応に変動がみられる場合があります。 |
これらはあくまで観察上の手掛かりであり、単独の所見で診断を決めることはできません。PNESは本人の作為によるものと決めつけず、否定的な表現を避け、観察した事実を共有します。
観察・記録は開始から回復までを時系列で残します
リハビリスタッフが担うのは診断ではなく、発作時にしか得られない所見を、医師やチームが再構成できる形で残すことです。「けいれんあり」「意識消失あり」だけではなく、以下の順番で記録します。
- 開始時刻と総持続時間
- 発生時の体位、訓練内容、転倒・外傷
- 眼球偏倚と頭位回旋
- 運動の種類と左右差
- 呼吸、皮膚色、発汗、嘔吐
- 舌咬傷の有無と部位
- 実施した介入と実施時刻
- けいれん停止後の反応と回復時間
- 発作後の麻痺、言語、理解、視野などの変化
- 院内連絡、主治医連絡、119番通報の有無と時刻
記録のコツ:「意識が悪い」「失神っぽい」などの解釈語だけで終わらせず、「13時12分開始」「呼名に反応なし」「右上肢優位に間代性運動」「13時15分にけいれん停止」のように、時刻と観察語を組み合わせます。
発作後の訓練再開は意識・呼吸・外傷・神経症状で判断します
発作後に会話ができるようになっても、直ちに歩行や高負荷訓練へ戻すことは避けます。傾眠、混迷、疲労、頭痛、筋痛、Todd麻痺などが残る可能性があるため、当日は安全を優先して段階的に判断します。
再開前の確認項目
- 普段に近い意識状態へ戻っている
- 会話や簡単な指示への反応が安定している
- 呼吸状態と皮膚色が安定している
- 頭部打撲や強い疼痛などの外傷がない
- 新たな麻痺、失語、著しい左右差がない
- 立位や移乗を行う場合の転倒リスクが許容できる
- 看護師・医師など必要な職種と情報共有できている
回復が確認できた場合でも、同日の訓練はベッド上や座位での軽負荷、短時間の再評価などに変更します。発作が普段と違う、回復が遅い、外傷や神経症状がある場合は、訓練を終了して医学的評価を優先します。
FAQ|てんかん発作の一次対応でよくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
Q1.5分未満でも119番通報を検討する状況はありますか?
あります。初回発作、短時間に反復して意識が戻らない、呼吸状態が回復しない、強い外傷、溺水、妊娠中、普段と明らかに異なる発作などでは、5分未満でも救急要請を検討します。院内では施設の緊急連絡基準を優先してください。
Q2.けいれん中に側臥位へ変えた方がよいですか?
全身の強いけいれんが続いている間は、無理に体位を変えず、周囲の危険物を除いて頭部を保護します。けいれんが停止した後に呼吸と安全を確認し、意識が十分に戻らない、嘔吐や分泌物があるなどの場合に、必要に応じて側臥位へ整えます。
Q3.舌をかまないように、口へタオルを入れた方がよいですか?
入れません。タオル、箸、スプーン、指などを口へ入れると、歯や口腔内の損傷、誤嚥、窒息、介助者の受傷につながります。口を無理に開けず、周囲の安全確保と計時を優先します。
Q4.初めての発作は受診が必要ですか?
初回の発作や普段と異なる発作では、てんかん以外に、失神、低血糖、感染、代謝異常、脳血管障害などの可能性も含めた医学的評価が必要です。状態に応じて救急要請、院内診察、早期受診を判断します。
Q5.発作後はいつからリハビリを再開できますか?
普段に近い意識、安定した呼吸、外傷がないこと、新たな神経症状がないことを確認し、医師・看護師など必要な職種と共有して判断します。再開する場合でも、当日は短時間・軽負荷へ変更し、高所、水場、階段、単独歩行などは避けます。
まとめ|危険排除・開始時刻・けいれん停止後の呼吸確認を固定します
てんかん発作を目撃したら、まず訓練を中止し、応援を呼び、危険物を除去して頭部を保護し、開始時刻を記録します。けいれんを押さえつけたり、口に物を入れたり、発作中に無理に体位を変えたりしてはいけません。
全身のけいれんが停止した後に呼吸と反応を確認し、必要に応じて側臥位へ整えます。5分以上続く、発作を反復して意識が戻らない、呼吸が回復しない、初回発作、外傷・溺水などを伴う場合は、院内緊急連絡または119番通報を検討してください。
現場で迷わないためには、個人の記憶に頼るのではなく、一次対応の順番、救急要請基準、観察項目、患者ごとの発作対応プランをチームで共有しておくことが重要です。
参考文献
- Fisher RS, Acevedo C, Arzimanoglou A, et al. ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia. 2014;55(4):475-482. doi:10.1111/epi.12550
- Trinka E, Cock H, Hesdorffer D, et al. A definition and classification of status epilepticus: report of the ILAE Task Force on Classification of Status Epilepticus. Epilepsia. 2015;56(10):1515-1523. doi:10.1111/epi.13121
- Epilepsy Foundation. First Aid for Seizures. https://www.epilepsy.com/recognition/first-aid-resources
- 公益社団法人日本てんかん協会. 発作の介助と観察. https://www.jea-net.jp/epilepsy/spasm
- National Institute for Health and Care Excellence. Transient loss of consciousness (‘blackouts’) in over 16s. NICE guideline CG109. https://www.nice.org.uk/guidance/cg109
- Brignole M, Moya A, de Lange FJ, et al. 2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope. Eur Heart J. 2018;39(21):1883-1948. doi:10.1093/eurheartj/ehy037
- Brigo F, Nardone R, Bongiovanni LG. Value of tongue biting in the differential diagnosis between epileptic seizures and syncope. Seizure. 2012;21(8):568-572. doi:10.1016/j.seizure.2012.06.005

