いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「JST 版活動能力指標:JST-IC」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
IADLの評価尺度としてポピュラーなものの1つとして、老健式活動能力指標を挙げることができると思います。老健式活動能力指標は高齢者が地域で自立して活動的に日常生活を送る上で必要な機能(高次生活機能)を評価するものとして、現在でも広く使用されております。
しかし、時代の変化と高齢者のライフスタイルの変更により評価尺度のアップデートが求められているということも事実であります。
そして、まさに老健式活動能力指標がアップデートされた評価尺度が JST 版活動能力指標:JST-ICになります。比較的新しい指標になるため、使用方法などわからないこともあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!
こちらの記事で JST 版活動能力指標における理解を深め、臨床における生活機能評価の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺
JST 版活動能力指標とは
これまで、高齢者が地域で自立して活動的に日常生活を送る上で必要な機能(高次生活機能)を評価するものとして、老健式活動能力指標が広く活用されてきました。
しかし、生活環境の変化に伴い、昔よりも元気で活動的なライフスタイルを持った高齢者が増加しています。
健康度が以前より高くなっている現代の高齢者の姿に合わせて、現代そして近い将来日本の高齢者の「一人暮らしでも自立して、より活動的に暮らす」ことができるかどうかを測定する指標の開発が進められてきました。
その結果、開発された指標が「JST 版活動能力指標」になります。
JST 版活動能力指標(JST-IC)とは、Japan Science and Technology Agency Index of Competence の略称になります。
老研式活動能力指標については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【老研式活動能力指標の評価方法についての記事はこちらから】
高次生活機能とは
ロートン(Lawton)は、高齢者が自立した生活を送る上で必要となる活動能力について、「生命維持」「機能的健康度」「知覚・認知」「身体的自立」「手段的自立」「状況対応」「社会的役割」の 7 つの水準からなると階層モデルを提唱しています。
また、その中でもより高度な能力(高次生活機能)が「手段的自立」「知的能動性」「社会的役割」であると述べております。
これらは単に身のまわりのことができるというだけではなく、地域で自立して活動的に日常生活を送るために必要な能力とされています。
この高次生活機能を評価する尺度である 「老研式活動能力指標」は信頼性・妥当性が確立された世界的にも認められた指標になります。
しかしながら近年、急速な高齢化や生活環境の変化、高齢者の健康状態、ライフスタイルの変化に応じた高次生活機能の中でもより高い能力を測定可能な尺度の開発が求められてきました。
こうした状況を踏まえ「JST 版活動能力指標(JST-Index of Competence:JST-IC)」 は、老研式活動能力指標を基盤としつつ、 現代そして近い将来の日本の高齢者における高次生活機能の中でもより高い能力、すなわち「一人暮らし高齢者が自立し活動的に暮す」ために必要な能力を測定する尺度として開発されたものになります。
JST 版活動能力指標 評価方法
16項目の質問により構成され、それぞれの質問に対し、「はい」か「いいえ」で回答してもらい、得られた回答により各領域の得点および合計点を算出します。
「はい」を1点、「いいえ」を0点として採点します。合計点の得点範囲は0点〜16点となり、得点が高いほど高次生活機能が優れているという評価になります。
領域は「新機器利用」「情報収集」「生活マネジメント」「社会参加」の4領域に分類されております。
各領域ごとに質問が4問用意されております。そのため、各領域の得点範囲は0点〜4点となります。得点が高いほど、それぞれの領域の活動能力が高く、積極的に活動していることを意味しております。
領域別の評価の視点は以下の通りになります。
- 新機器利用:生活に使う新しい機器を使いこなす能力
- 情報収集:より良い生活を送るため自ら情報収集し活用する能力
- 生活マネジメント:自分や 家族、周辺の人々の生活を見渡し管理(マネジメント)する能力
- 社会参加:地域の活動に参加し地域での役割を果たす能力
JST 版活動能力指標 評価項目
- 携帯電話を使うことができますか
- ATM を使うことができますか
- ビデオや DVD プレイヤーの操作ができますか
- 携帯電話やパソコンのメールができますか
- 外国のニュースや出来事に関心がありますか
- 健康に関する情報の信憑性について判断できますか
- 美術品、映画、音楽を鑑賞することがありますか
- 教育・教養番組を視聴していますか
- 詐欺、ひったくり、空き巣等の被害にあわないように対策をしていますか
- 生活の中でちょっとした工夫をすることがありますか
- 病人の看病ができますか
- 孫や家族、知人の世話をしていますか
- 地域のお祭りや行事などに参加していますか
- 町内会・自治会で活動していますか
- 自治会やグループ活動の世話役や役職を引き受けることができますか
- 奉仕活動やボランティア活動をしていますか
どの質問がどの領域に該当するかについては以下の通りになります。
- 新機器利用:1〜4
- 情報収集:5〜8
- 生活マネジメント:9〜12
- 社会参加:13〜16
JST 版活動能力指標 評価用紙
JST 版活動能力指標(JST-IC)の評価表をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
JST 版活動能力指標 カットオフ値
現状では、カットオフ値は定められておりません。得点が高いほど高次生活機能が優れているという評価になります。
得点が低下している場合には、どの領域の活動能力の減弱により高次生活機能の低下を引き起こしているのかを考察しアプローチに繋げることが重要となります。
JST-ICと老研式活動能力指標の比較
これまで JST-IC については、65 歳から 84 歳までの全国サンプルを用いて、尺度の信頼性、4 因子構造(因子的妥当性)が確認されています。
また、このサンプルの同一対象者で老研式活動能力指標と JST-IC との分布を比較したところ、老研式活動能力指標では 13 点満点の者が 48.9%と強い天井効果を示していたのに対して、JST-IC は満点よりも低い点の者が最も多く、天井効果が回避され、老研式活動能力指標よりも難易度が高く、より高いレベルで高次生活機能が測定できる指標であることが確認されております。
加えて JST-ICは、高齢期の健康を構成する身体的側面、社会的側面、心理的側面といずれも中程度以上の相関を示しており、高齢期の健康を包括的に簡便にとらえる指標としても使用可能となっています。
JST-ICを使用することにより測定することができる高齢者の高次生活機能は以下の3つになります。
- 健康度の高い高齢者の活動能力が測定できる
- 包括的な健康度の向上も間接的に測定でき る
- 比較的高度な社会参加の側面も測定できる
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「JST版活動能力指標:JST-IC」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事でがJST 版活動能力指標における理解力向上をもたらし、臨床における生活機能評価に少しでもお力添えになれば幸いです!
参考文献
- 佐々木八千代,白井みどり.地域在住高齢者の社会活動と JST 版活動能力指標の関連.保健医療社会学論集.第32巻,1号,2021,p64-73.