【JST-IC】JST 版活動能力指標の評価方法と見方(高次生活機能 16 項目)

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JST-IC(JST 版活動能力指標)とは?(高次生活機能を 16 項目で点検)

評価 → 介入 → 再評価の組み立てを 5 分で確認する

JST-IC( JST 版活動能力指標:Japan Science and Technology Agency Index of Competence )は、地域在住高齢者の「高次生活機能」を 4 領域 × 16 項目で捉えるスクリーニング指標です。ADL や基本的 IADL が保たれていても、現代的な生活様式(情報機器の扱い、情報の集め方、生活の段取り、社会参加など)で差が出る場面を拾いやすいのが特徴です。

臨床では「退院後に生活が回るか」「支援導入の優先順位は何か」を、点数と領域の“どこが落ちているか”で短時間に共有できます。評価の全体像(どの指標をどこで使うか)は、親記事の生活範囲・社会参加の評価ハブに戻しておくと、LSA/FAI/TMIG-IC との位置づけが整理しやすいです。

いつ使う?(ADL は保たれるのに生活が回らない場面で強い)

JST-IC は、BI や FIM、歩行テストだけでは見えにくい「生活の段取り」「情報の扱い」「社会参加」の抜けを拾いたいときに役立ちます。たとえば、退院前カンファで「身体機能は戻っているのに、家に戻ると閉じこもりそう」「通院・買い物・手続きが不安」といった違和感が出た場面が使いどころです。

もう 1 つの使いどころは、TMIG-IC で点数が高く差が出にくい(天井効果が疑わしい)ケースです。JST-IC は“より上位の生活機能”を見にいく設計のため、介入の焦点を「筋力」「歩行」だけで終わらせず、生活実行・参加まで落とし込む材料になります。

構成(4 領域 × 4 項目)と見方

JST-IC は、4 因子( 4 領域 )で 16 項目から構成され、合計は 0〜16 点です。領域は、テクノロジーの利用、情報の取り扱い、生活のマネジメント、社会参加といった“現代的な生活行動”をカバーします。点数は高いほど高次生活機能が保たれていることを示します。

臨床では、合計点よりも「どの領域が落ちているか」を先に見ます。たとえば情報領域が弱ければ、受診・服薬・サービス利用の情報取得が詰まりやすく、社会参加が弱ければ活動の場づくり(役割・外出機会)が必要になりやすい、というように“次の質問”が決まります。

採点と解釈(カットオフより「領域の弱点」と縦断変化)

採点は各項目を 0/1 で扱い、領域別は 0〜4 点、合計 0〜16 点で整理します。JST-IC は一律のカットオフで判定するよりも、年齢層・性別での分布を踏まえて相対的に読むほうが現実的です(同じ点数でも生活背景が異なるためです)。

運用のコツは、①領域別の弱点を抽出する、②支援・環境・代替手段(家族同伴、配食、送迎など)を短くメモする、③同条件で再評価する、の 3 点です。縦断では「合計が 1〜2 点下がった」だけでなく、「どの領域が落ちたか」で介入の優先順位を更新します。

実施手順(聞き取りがブレない 5 分フロー)

JST-IC は質問紙として自己記入でも運用できますが、臨床では面接で補足しながら進めると解釈のズレが減ります。ポイントは「できるか」ではなく「普段の生活で実際にやっているか」を軸にすることと、支援条件(誰が、どの程度、代替しているか)をセットで確認することです。

流れは、①本人の生活状況(独居/同居、移動手段、外出頻度)を先に確認、② 16 項目をテンポよく聴取、③迷った項目だけ“具体例で確認”、④領域別に弱点を 1 行で要約、⑤次回の再評価条件(時期・支援条件)を固定、でまとめます。退院支援では、この要約が家族説明や多職種連携の共通言語になります。

関連スケールとの使い分け(何を見たいかで選ぶ)

生活機能の評価は「生活圏(どこまで行けるか)」と「生活実行(何をどれくらいしているか)」と「能力(できるか)」が混ざると、解釈ミスが起きやすいです。JST-IC は“高次生活機能”を広く拾う入口として使い、必要に応じて LSA や FAI で深掘りすると整理しやすくなります。

下の表は、退院前後で迷いやすいポイントを「評価の焦点」で分けた早見です。まず 1 本を決め、次に不足している情報(生活圏なのか、頻度なのか、能力なのか)を補完する形にすると、評価が増えすぎずに済みます。

生活範囲・社会参加の評価:JST-IC/TMIG-IC/LSA/FAI の使い分け早見(成人高齢者・在宅想定)
尺度 主に見るもの 点数レンジ 強い場面 注意点
JST-IC 高次生活機能(現代的生活行動) 0–16 ADL/IADL は保たれるが生活が回らない 合計より領域別弱点・縦断変化を重視
TMIG-IC 高次生活機能(従来型:IADL など) 0–13 退院後の IADL の抜けを素早く拾う 高得点だと差が出にくい場合あり
LSA 生活範囲(生活圏)+頻度+自立度 0–120 閉じこもり/外出機会低下の可視化 参照期間(例:過去 4 週間)を固定
FAI IADL の実施頻度(活動の中身) 0–45 在宅で“やれている行動”の具体化 基準期間(過去 3–6 か月など)を統一

現場の詰まりどころ(よくある失敗と修正ポイント)

JST-IC は短時間で全体像をつかめる一方、聴取の軸がブレると点数が“その日の気分”や“家族の代行”に引っ張られます。特に、退院前後は環境が変わるため、能力の変化なのか支援条件の変化なのかが混ざりやすいです。

失敗を減らすコツは、①「普段やっているか」で判定する、②代替(家族・サービス)を必ずメモする、③再評価条件を固定する、の 3 つです。点数を上げることが目的ではなく、「どこが詰まるか」を同定して次の介入(支援導入/環境調整/練習)に繋げるために使います。

JST-IC のよくある間違い:原因と対策、記録の残し方
よくある間違い なぜ起きる? 対策 記録ポイント
「できる」で答えてしまう 能力と実行(頻度)が混在する 「普段、実際にやっていますか?」で聞き直す 直近の生活状況(外出頻度、役割)を 1 行で残す
家族代行を本人の能力として扱う 支援条件が見えない 代替の有無(誰が/どの程度)を必ず確認 「同伴」「代行」「見守り」など条件を短くメモ
再評価で条件が変わって比較できない 退院・転居・サービス導入で環境が変化 再評価の時期と条件(同居状況、移動手段)を固定 再評価条件(時期・支援・環境)をセットで残す
合計点だけ見て介入が止まる 領域別の弱点に落とせていない 領域別に「弱い 1 つ」を次回目標に変換 領域別まとめ(強み/弱み/次アクション)を 1 行ずつ

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. JST-IC は誰に使う評価ですか?

A. 主に地域在住の高齢者を想定した高次生活機能の指標です。臨床では、ADL/IADL の点数だけでは生活像がつかみにくいケース(閉じこもり、生活の段取り不安、社会参加の低下など)で、追加の入口として使うと整理しやすいです。

Q2. 何点以下が「要支援」ですか?

A. 一律のカットオフで判定するより、年齢層・性別の分布を踏まえた相対比較と、領域別の弱点抽出に向きます。合計点の上下だけでなく、どの領域が落ちているかを見て、支援導入や生活指導の焦点を決める使い方が現実的です。

Q3. TMIG-IC とどう使い分けますか?

A. TMIG-IC は従来型の高次生活機能(IADL など)を短時間で点検でき、退院後の抜けの拾い上げに強いです。一方、TMIG-IC が高得点で差が出にくい場合や、現代的な生活行動(情報機器、情報の扱い、社会参加など)まで整理したい場合に JST-IC を併用(または置換)すると、介入の焦点が作りやすくなります。

Q4. 退院前後で点数が下がったとき、どう解釈しますか?

A. まず「能力低下」なのか「支援条件・環境変化」なのかを分けます。退院後は家族代行やサービス導入で生活の回り方が変わるため、点数だけで結論を出さず、領域別の変化と支援条件のメモをセットで見直すと、次の介入(練習/環境調整/支援設計)が決めやすいです。

おわりに

JST-IC は「安全の確保 → 生活の詰まりどころを領域で特定 → 支援条件をそろえて記録 → 同条件で再評価」というリズムで使うと、点数がそのまま次の一手に変わります。退院支援や生活期で“生活が回る設計”に迷ったときは、面談準備チェックと職場評価シートも使えるこちらのまとめを、次の行動の整理に活用してみてください。

合計点だけで終わらせず、領域別の弱点を 1 つだけ具体行動に落とし込むと、介入と再評価がつながりやすくなります。評価は増やすほど良いのではなく、「説明できる形で残す」ことが成果につながります。

参考文献

  1. Iwasa H, Masui Y, Inagaki H, et al. Assessing competence at a higher level among older adults: development of the Japan Science and Technology Agency Index of Competence (JST-IC). Aging Clin Exp Res. 2018;30(4):383-393. doi: 10.1007/s40520-017-0786-8 / PubMed: 28646250
  2. Iwasa H, Masui Y, Inagaki H, et al. Assessing competence at a higher level among older adults: development of the Japan Science and Technology Agency Index of Competence (JST-IC). Gerontol Geriatr Med. 2015;1:2333721415609490. doi: 10.1177/2333721415609490
  3. Kawai H, Imamura K, Ejiri M, et al. Association of Aging Trajectories in the Japan Science and Technology Agency Index of Competence With Instrumental Activities of Daily Living Among Community-Dwelling Older Japanese Adults: The Otassha Study. Geriatr Gerontol Int. 2025;25(12):1894-1902. doi: 10.1111/ggi.70232 / PubMed: 41117499
  4. Koyano W, Shibata H, Nakazato K, Haga H, Suyama Y. Measurement of competence: reliability and validity of the TMIG Index of Competence. Arch Gerontol Geriatr. 1991;13(2):103-116. doi: 10.1016/0167-4943(91)90053-S
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  6. Schuling J, de Haan R, Limburg M, Groenier KH. The Frenchay Activities Index. Assessment of functional status in stroke patients. Stroke. 1993;24(8):1173-1177. doi: 10.1161/01.STR.24.8.1173 / PubMed: 8359036

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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