GLIM基準の使い方|診断フロー・重症度・記録シート【低栄養】

栄養・嚥下
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GLIM 基準の使い方|診断フロー・重症度・記録シート(この記事の結論)

この記事は、スクリーニング陽性後の GLIM による低栄養の確定診断 に絞って整理したページです。何をそろえれば診断に進めるのか、どこで重症度を決めるのか、どう記録に残すのかを、臨床でそのまま回せる順番でまとめました。

まず押さえたい結論は、表現型 1 つ+病因 1 つ で低栄養を確定し、重症度は表現型で決めることです。現場で止まりやすいのは「筋量をどう取るか」「炎症をどう書くか」「アジア人の Stage 2 をどう運用するか」の 3 点なので、本記事では PT / OT がそろえる最小セットと、A4 記録シート / クイック計算 PDF まで一続きで示します。

現場の詰まりどころ(よくある迷い)

GLIM が止まりやすいのは、「筋量が測れない」「炎症の根拠がぶれる」「重症度の書き方が施設で統一されていない」ときです。ここが曖昧だと、診断までは進んでも、介入の優先順位と再評価の間隔が決まりません。

実務では、①筋量の優先順位を決める ②炎症は “ 検査値だけ ” ではなく疾患負荷も書く ③アジア人の Stage 2 は施設採用値を併記する、の 3 点を先に固定すると回りやすくなります。先に流れを見たい方は 10 分フロー、重症度で迷う方は 重症度 を先に確認してください。スクリーニングの入口整理は MNA-SF・MUST・GNRI の違いと使い分け にまとめています。

GLIM 運用で詰まりやすい点と、院内で先に決める軸
詰まりポイント 先に決めること 記録の最小セット
筋量が測れない / 測り方がばらばら 第一選択( BIA / DXA / CT / 超音波 )と代替( 下腿周囲長 / 上腕計測 / 身体所見 )の優先順位 方法、測定側、浮腫の有無、再検条件
炎症の定義があいまい 急性 / 慢性のどちらで拾うか、疾患名・活動性・検査値のどれを根拠にするか 疾患名、発症 / 増悪時期、 CRP などの補助所見
Stage 2 の書き方が人によって違う アジア人の低 BMI / 低筋量は施設採用値を明記して運用 採用 cut-off、参照元、更新日

GLIM 基準とは(このページで答えること)

GLIM は、低栄養を “ それらしい状態 ” ではなく 診断 として扱うための国際的な枠組みです。原則は、検証済みのスクリーニングで栄養リスクを拾ったあとに、表現型 3 項目と病因 2 項目を評価し、両方から少なくとも 1 つずつ満たしたときに低栄養と判断します。

このページで答えるのは、診断フロー・重症度・記録の型 です。答えないのは、スクリーニング各ツールの細かい比較や、必要エネルギー量の詳細計算、疾患別の個別栄養計画です。そこまで広げると役割がぼやけるため、本記事では “ GLIM をどう回すか ” に論点を固定します。

GLIM を 10 分で回す 3 ステップ(全体像)

運用は 3 ステップに分けると、担当が変わってもブレにくくなります。①スクリーニングでリスクを拾う ②表現型をそろえる ③病因をそろえて重症度を書く、の順です。

PT / OT の役割は、診断名を独断で付けることよりも、診断に必要な要素を時系列と根拠つきで 1 枚にまとめること です。これがそろうと、医師 / 管理栄養士 / NST と次アクションを決めやすくなります。

GLIM の最短フロー(現場で迷わない 10 分版)
順番 やること 目安 アウトプット
Step 1 栄養スクリーニングでリスクを拾う 3 〜 5 分 陽性 / 境界の判断
Step 2 表現型 3 項目( 体重減少 / 低 BMI / 低筋量 )を確認する 3 〜 5 分 該当項目と根拠
Step 3 病因 2 項目( 摂取低下 / 吸収不良、炎症 / 疾患負荷 )を確認する 2 〜 3 分 低栄養の確定材料+ Stage

Step 1:スクリーニング(入口をそろえる)

GLIM はスクリーニングの代わりではありません。まずは検証済みツールで “ 栄養リスクあり ” を拾い、そのあとに GLIM の診断へ進みます。代表例として、 MUST は成人全般に使いやすく、 NRS-2002 は急性期入院で使われやすく、 MNA-SF は高齢者で回しやすい入口です。

カットオフの目安は、 MUST は 1 点以上でリスク、 NRS-2002 は 3 点以上でリスク、 MNA-SF は 12 〜 14 点が正常、 8 〜 11 点がリスク、 0 〜 7 点が低栄養 です。入口の選択で迷ったら、ツール比較の記事で整理してから本ページに戻ると運用が安定します。

スクリーニングの代表例(場面と次アクションの目安)
ツール 向きやすい場面 判定の目安 次アクション
MUST 成人汎用( 病棟 / 外来 / 施設 / 在宅 ) 1 点以上でリスク 陽性なら GLIM の表現型 / 病因へ進む
NRS-2002 急性期入院、疾患負荷が強い場面 3 点以上でリスク 早期に多職種へ連携し、診断と介入を急ぐ
MNA-SF 高齢者( 回復期 / 在宅 / 施設 ) 12 〜 14 正常 / 8 〜 11 リスク / 0 〜 7 低栄養 再評価間隔までセットで決める

Step 2:表現型(体重減少・低 BMI ・低筋量)

表現型は 3 項目のうち、どれか 1 つ満たせば診断要素になります。まず取りやすいのは体重減少と BMI です。体重は “ 何 kg 減ったか ” だけでなく、何か月で何 % 減ったか までそろえると、 GLIM の判定と再評価の両方に使えます。

日本の臨床では BMI をアジア人 cut-off で見るのが実務的です。筋量は DXA / BIA / CT / 超音波が優先ですが、使えない場面では下腿周囲長や上腕計測、栄養フォーカス身体診察で代替して構いません。重要なのは、方法と条件を固定して、次回も同じ軸で追えるようにすること です。

GLIM 表現型 3 項目(診断に使う根拠のそろえ方)
表現型 まず確認すること 実務メモ 重症度メモ
体重減少 非意図的か、期間は何か月か、減少率は何 % か 過去体重の時点を必ず書く 6 か月以内なら 5 〜 10 % / > 10 %、 6 か月超なら 10 〜 20 % / > 20 % で整理
低 BMI 年齢と人種を踏まえた cut-off を使う アジア人の目安は 70 歳未満で 18.5 未満、 70 歳以上で 20 未満 Stage 2 の低 BMI は施設採用値を明記する
低筋量 測定法( DXA / BIA / CT / 超音波 / 周囲径 / 身体所見 )を明記 浮腫、肥満、体液変動は解釈に影響する cut-off は性別・機器・人種に合わせる

なお、筋力低下は重要な所見ですが、 GLIM の “ 筋量 ” の代用にはしません。握力や下肢筋力は、診断後の機能評価やサルコペニア評価として並行して追う位置づけです。

Step 3:病因(摂取低下 / 吸収不良・炎症 / 疾患負荷)

病因は 2 項目のうち、どれか 1 つ満たせば診断要素になります。摂取低下は「どれくらい食べられていないか」「どれくらい続いているか」を残すと判断しやすくなります。吸収不良は、慢性の消化管疾患や術後の吸収障害など、持続性を言葉で補うのがコツです。

炎症は、 CRP だけで決めるよりも、急性 / 慢性の疾患負荷を臨床経過ごと書く ほうが共有しやすくなります。 CRP は補助指標として役立ちますが必須ではなく、感染・術後・外傷・活動性の高い慢性疾患など、臨床判断で炎症 / 疾患負荷を扱って構いません。

GLIM 病因 2 項目(診断に使う根拠のそろえ方)
病因 見るポイント 根拠の例 メモ欄(記録)
摂取低下 / 吸収不良 摂取率、期間、消化器症状、食形態、経口 / 経腸 / 静脈の別 必要量の 50 % 以下が 1 〜 2 週、または 2 週超の継続的低下など __________
炎症 / 疾患負荷 急性か慢性か、活動性があるか、臨床経過はどうか 感染、術後、外傷、 COPD / HF / CKD / がん の活動性、 CRP 上昇など __________

重症度( Stage 1 / Stage 2 )の決め方

重症度は、低栄養と診断されたあとに 表現型の最も重い所見 で決めます。複数の表現型があるときは、いちばん重いものに全体の Stage を合わせると迷いません。

日本で迷いやすいのは、アジア人における Stage 2 の低 BMI / 低筋量 です。体重減少の重度基準は比較的整理されていますが、低 BMI と低筋量は施設採用値を明記して運用するのが実務的です。院内ルールがない場合は、まず “ 中等度基準より 1 段深い値 ” を仮採用し、見直し時期まで決めておくと止まりにくくなります。

GLIM 重症度の整理(アジア人運用メモ付き)
表現型 Stage 1 / 中等度 Stage 2 / 重度 実務メモ
体重減少 6 か月以内に 5 〜 10 %、または 6 か月超で 10 〜 20 % 6 か月以内に > 10 %、または 6 か月超で > 20 % もっとも普遍的に使いやすい重症度指標
低 BMI アジア人の目安: 70 歳未満で 18.5 未満、 70 歳以上で 20 未満 施設採用値を明記( 例: 70 歳未満 17.0、 70 歳以上 17.8 ) “ 例 ” をそのまま使うより、施設ルール化が重要
低筋量 採用した測定法の中等度 cut-off 施設採用値を明記( 例:下腿周囲長なら中等度 cut-off より約 10 % 低い値 ) 性別・機器・人種に合わせてそろえる

記録テンプレ( 1 枚で渡すための書き方)

GLIM は、情報が散ると使いにくくなります。おすすめは「体重の時系列」「表現型」「病因」「 Stage 」「次アクション」を 1 枚にまとめることです。診断そのものを独断で完結させるのではなく、診断の根拠をチームに渡せる状態にする のが狙いです。

測定不能だった項目も、空欄で終わらせず “ なぜ測れないか ” と “ 次にどう埋めるか ” を書くと、再評価の質が落ちません。特に体重条件、浮腫、摂取率、炎症根拠、再評価日を固定しておくと、次回比較がしやすくなります。

GLIM 連携メモ( PT / OT がそろえる最小セット)
項目 数値 / 所見 期間 / 条件 根拠(メモ)
体重推移 __ kg → __ kg __週 / __か月 非意図的 / 意図的、測定条件
BMI __ 身長 __ cm 実測 / 推定、四捨五入ルール
筋量 / 代替 方法:__ / 値:__ 浮腫:有 / 無 機器なし等の制約
摂取状況 摂取率 __ % __日 / __週 食形態、補食、嚥下所見
炎症 / 疾患負荷 疾患:__ 急性 / 慢性 CRP 等:__ / 臨床経過:__
重症度 Stage 1 / Stage 2 根拠項目:__ 施設採用値:__
次アクション 管理栄養士 / 医師へ共有:__ / 再評価日:__ / 追加測定:__

ダウンロード( A4 ・印刷可)

このページでは、本文の理解だけで終わらせず、実際に使える形までそろえました。下の 2 つは、記録用クイック計算用 を分けた A4 PDF です。最初は記録シートだけでも十分で、慣れてきたらクイック計算を併用すると運用が安定します。

院内で使うときは、体重条件・参照期間・浮腫の扱い・再評価日だけは施設内で固定してから使うのがおすすめです。そこがそろうと、診断の一致率と再評価の再現性が上がります。

GLIM 低栄養 診断・記録シート( A4 )

表現型・病因・ Stage ・次アクションを 1 枚で渡すための記録用シートです。

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GLIM クイック計算( 体重減少率 / BMI / FFMI )

体重減少率、 BMI 、 FFMI を短時間で整理するための補助シートです。

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よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

GLIM は「表現型 1 つ+病因 1 つ」で本当に確定ですか?

原則はその通りです。スクリーニングで栄養リスクを拾ったあと、表現型( 体重減少 / 低 BMI / 低筋量 )から 1 つ以上、病因( 摂取低下 / 吸収不良、炎症 / 疾患負荷 )から 1 つ以上を満たすと低栄養と判断します。重症度は表現型の最も重い所見で整理します。

筋量が取れない現場ではどう運用すればいいですか?

DXA / BIA / CT / 超音波が使えない場合は、下腿周囲長や上腕計測、栄養フォーカス身体診察などの代替法を施設で 1 本化して使います。大切なのは “ 何を使ったか ” と “ どんな条件だったか ” を残すことです。後日、条件が整った時点で上位の方法に上書きすれば問題ありません。

炎症の根拠は CRP だけで良いですか?

CRP は補助として有用ですが、必須ではありません。感染、術後、外傷、活動性の高い慢性疾患など、疾患負荷 / 炎症は臨床判断でも扱えます。実務では、急性 / 慢性の区分、疾患名、発症 / 増悪時期、検査値の補助所見をセットで書くと共有しやすくなります。

アルブミンだけで低栄養を判断して良いですか?

おすすめしません。アルブミンは炎症や体液変動の影響を受けやすく、 GLIM の診断指標そのものではありません。アルブミン単独で判断するより、体重減少、 BMI 、筋量、摂取状況、炎症 / 疾患負荷をそろえて判断するほうが、診断と再評価の一貫性が高くなります。

再評価はどれくらいの頻度が現実的ですか?

急性期・増悪期は週次、回復期・在宅は 2 〜 4 週ごとが目安です。体重、摂取率、筋量の代替指標、歩行 / ADL などを同じ条件で追い、変化が乏しければ介入内容と再評価期限を更新します。

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参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
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  5. 日本栄養治療学会. 重症度判定に関する Q&A / GLIM よくあるご質問. 重症度 Q&AFAQ
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著者情報

rehabilikun(理学療法士) rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関 / 介護福祉施設 / 訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養( リハ栄養 )、シーティング、摂食・嚥下

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