GLIM基準の使い方|診断・重症度・記録シートを実務で整理

栄養・嚥下
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GLIM基準では、検証済みの栄養スクリーニングでリスクが確認された成人に対し、表現型基準から1項目以上、病因基準から1項目以上を満たした場合に低栄養と診断します。診断後の重症度は、病因ではなく表現型基準の最も重い所見で判定します。

この記事では、GLIM基準を使う順番、体重減少・低BMI・低筋量の見方、摂取低下・炎症の確認方法、アジア人のStage 2で施設設定が必要な部分を整理します。さらに、PT・OTが測定条件と判断根拠を多職種へ共有するための記録項目と、A4記録シート・計算補助PDFも掲載しています。

GLIM基準の要点

  • 最初に検証済みツールで栄養リスクを確認する
  • 表現型1項目以上+病因1項目以上で低栄養を診断する
  • 重症度は表現型の最も重い所見で決める
  • 使用した基準値、測定方法、条件、評価日を記録する

GLIM基準による診断は3ステップで進める

GLIM基準は、スクリーニング、低栄養診断、重症度判定の順に進めます。MNA®-SFなどで「低栄養」や「リスクあり」と判定されても、それだけでGLIM低栄養が確定するわけではありません。

GLIM基準による低栄養診断の流れ。栄養リスクを確認し、表現型と病因を評価して診断・重症度判定・記録へ進む図
GLIM基準では、表現型1項目以上と病因1項目以上を確認し、重症度は表現型の最も重い所見で判定します。
GLIM基準による低栄養診断の流れ
順番 確認すること 判断・記録
Step 1 検証済みの栄養スクリーニングを実施する 栄養リスクあり/なし
Step 2 表現型3項目と病因2項目を確認する 表現型1項目以上+病因1項目以上で低栄養
Step 3 該当した表現型の重症度を確認する Stage 1/Stage 2、判定根拠、使用した基準値

スクリーニングにはMUST、NRS-2002、MNA®-SFなどの検証済みツールを使用します。各ツールの対象や使い分けは、MNA-SF・MUST・GNRIの違いと使い分けで確認してください。

低栄養の診断条件|表現型1項目+病因1項目

GLIM低栄養の診断には、表現型だけ、または病因だけでは不十分です。表現型と病因の両方から、少なくとも1項目ずつ該当する必要があります。

表現型基準:体重減少・低BMI・低筋量

GLIMの表現型基準と確認する情報
項目 診断時に確認する基準 記録する情報
意図しない体重減少 過去6か月以内に5%超、または6か月を超える期間で10%超 過去体重、現在体重、減少率、比較した期間、測定条件
低BMI アジア人は70歳未満で18.5kg/m²未満、70歳以上で20kg/m²未満 年齢、身長、体重、実測・推定の別、採用した基準
低筋量 妥当な測定方法と、対象者・測定法に合ったカットオフ値で判定する 測定法、値、単位、測定側、姿勢、浮腫・体液変動、使用した基準

筋肉量は、CT・MRI・DXA・BIAなどの体組成評価に加え、施設環境に応じて下腿周囲長や上腕筋囲長などの身体計測を使用できます。ただし、使用する方法とカットオフ値を明記し、再評価でも同じ条件をそろえる必要があります。

握力や下肢筋力の低下は、低筋量そのものの代用にはしません。筋力は機能面の重要な所見ですが、GLIMの表現型基準では「筋肉量減少」と区別して記録します。

病因基準:摂取・吸収低下と炎症・疾病負荷

GLIMの病因基準と確認する情報
項目 確認する内容 記録する情報
食事摂取量減少/消化吸収能低下 必要量の50%以下が1週間を超えて続く、何らかの摂取低下が2週間を超える、または吸収へ影響する慢性消化管疾患など 摂取率、期間、食形態、補食、経口・経腸・静脈栄養、消化器症状
疾病負荷/炎症 炎症活動を伴う急性・慢性疾患、感染、外傷、手術などを臨床経過から確認する 疾患・病態、発症・増悪時期、急性・慢性、症状、CRPなどの補助所見

炎症の判定にCRP測定は必須ではありません。通常、炎症活動を伴う疾患・感染・外傷などは、診断名、症状、経過を踏まえて臨床的に判断できます。一方、炎症を伴わない嚥下障害や食道狭窄などは、それだけで疾病負荷/炎症へ該当させず、摂取量減少や消化吸収能低下として評価します。

重症度は表現型の最も重い所見で決める

低栄養と診断した後、体重減少・低BMI・低筋量のうち、最も重い所見に合わせてStage 1またはStage 2を判定します。病因基準の数や炎症の強さだけでStageを決めるものではありません。

GLIM重症度判定とアジア人における注意点
表現型 Stage 1/中等度 Stage 2/重度 運用上の注意
体重減少 6か月以内に5〜10%、または6か月を超える期間で10〜20% 6か月以内に10%超、または6か月を超える期間で20%超 過去体重の日付と減少期間を併記する
低BMI アジア人は70歳未満で18.5kg/m²未満、70歳以上で20kg/m²未満 アジア人の統一された重度カットオフはなく、施設で設定する 施設採用値、根拠資料、制定・更新日を記録する
低筋量 使用した測定法のカットオフ値で筋量減少を確認する アジア人の統一された重度カットオフはなく、施設で設定する 測定法ごとに基準を統一し、異なる方法を単純比較しない

Stage 2の例示値は全国共通基準ではありません

日本栄養治療学会が紹介する施設運用例には、重度低BMIを70歳未満17.0kg/m²未満、70歳以上17.8kg/m²未満とする方法や、下腿周囲長を男性27.0cm未満、女性26.0cm未満とする方法があります。ただし、これらは特定施設で検証された運用例です。自施設で採用する場合は、参照元と採用理由を明記してください。

GLIM基準で迷いやすい3つの境界

筋肉量を測定する機器がない場合

機器がないことだけを理由に、筋肉量の項目を握力へ置き換えることはできません。下腿周囲長、上腕筋囲長など、自施設で実施可能な方法とカットオフ値を決め、測定条件を記録します。

BIA・DXAがない施設での優先順位、浮腫がある場合の扱い、記録例は、GLIM基準で筋肉量が測れない場合の対応で詳しく整理しています。

CRPが正常・未測定の場合

CRPは炎症判断の補助になりますが、必須条件ではありません。疾患や病態が通常炎症を伴うものか、発症・手術・感染・増悪からどの程度経過しているかを確認します。

疾患名だけで一律に該当させず、炎症活動の有無と臨床経過を記録してください。判断が難しい場合は、医師・管理栄養士・NSTと確認します。

施設にStage 2の基準がない場合

アジア人では、重度の体重減少を除き、低BMIと低筋量の全国共通カットオフは示されていません。個々の評価者がその場で値を決めるのではなく、施設で採用値、参照元、対象、見直し時期を決めて運用します。

GLIMの記録で残すべき項目

記録では、該当・非該当だけでなく、判断に使用した数値、期間、測定方法、条件を残します。測定できなかった項目は空欄にせず、測定不能の理由と次に確認する方法を記載します。

PT・OTは、体重推移、身体計測、活動・ADL、摂取へ影響する動作や嚥下所見など、担当範囲で得られた情報を整理します。最終的な診断・記録方法は、施設の手順と職種ごとの責任範囲に従って多職種で共有してください。

GLIM診断・連携時にそろえる記録項目
項目 数値・所見 条件・期間 判断根拠
スクリーニング 使用ツール・結果 実施日 栄養リスクあり/なし
体重減少 過去__kg → 現在__kg、__%減少 __週/__か月 意図しない減少か、測定条件
BMI __kg/m² 年齢__歳 身長の実測・推定、採用基準
筋肉量 方法__、値__ 側・姿勢・機器__ 浮腫、体液変動、使用したカットオフ
摂取・吸収 摂取率__% __日/__週 食形態、補食、消化器症状、投与経路
疾病負荷・炎症 疾患・病態__ 急性/慢性、発症・増悪日__ 臨床経過、症状、CRPなど
GLIM診断 該当/非該当/判定保留 評価日__ 表現型__+病因__
重症度 Stage 1/Stage 2 施設採用値__ 最も重い表現型__
次の対応 共有先__/追加評価__/介入__/再評価予定__

GLIM記録シート・クイック計算PDF

診断根拠を1枚で共有する記録シートと、体重減少率・BMI・FFMIを整理する計算補助シートを用意しています。PDFは判定を自動確定するものではないため、使用した基準値や測定条件を本文・院内ルールと照合してください。

GLIM低栄養 診断・記録シート(A4)

表現型、病因、重症度、測定条件、次の対応を1枚で整理する記録用シートです。

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GLIMクイック計算(体重減少率・BMI・FFMI)

現在体重、過去体重、期間、身長、除脂肪量から、診断に必要な数値を整理する補助シートです。

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GLIM基準のよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

MNA-SFなどで低栄養なら、GLIM低栄養も確定ですか?

確定ではありません。MNA®-SFなどは栄養リスクを拾うスクリーニングとして使用し、その後にGLIMの表現型基準と病因基準を確認します。両基準から少なくとも1項目ずつ該当した場合に、GLIM低栄養と診断します。

表現型1項目と病因1項目があれば診断できますか?

はい。栄養スクリーニングでリスクが確認された成人について、表現型基準から1項目以上、病因基準から1項目以上が該当すれば低栄養と診断します。重症度は、該当した表現型のうち最も重い所見で判定します。

筋肉量を測定できない場合は握力で代用できますか?

握力を低筋量そのものの代用にはしません。CT・MRI・DXA・BIAが使えない場合は、下腿周囲長や上腕筋囲長など、施設で採用した身体計測を検討します。使用した方法、測定条件、カットオフ値を記録してください。

炎症の判定にCRPは必須ですか?

必須ではありません。疾患、感染、外傷、手術などが通常炎症活動を伴うかを、症状と臨床経過から判断できます。CRPは判断を補助する情報として使用します。疾患名だけで判断が難しい場合は、医師や管理栄養士と確認してください。

アルブミンだけで低栄養を診断できますか?

アルブミン単独ではGLIM低栄養を診断できません。アルブミンは炎症や体液状態などの影響を受けるため、体重減少、BMI、筋肉量、摂取・吸収、疾病負荷・炎症を組み合わせて判断します。

GLIM基準はどのくらいの頻度で再評価しますか?

GLIMが一律に定める再評価間隔はありません。病期、栄養介入の開始・変更、体重や摂取量の変化、感染・手術などのイベントに合わせて施設で設定します。次回評価日と、同じ条件で測定する項目を記録しておくことが重要です。

次に確認する記事

A.栄養評価から介入・再評価までの全体像

リハ栄養の進め方|ケアプロセス5段階と記録シート

B.下腿周囲長を同じ条件で測定する

下腿周囲長の測定方法|位置・基準値・浮腫の見方


参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
  2. Jensen GL, Cederholm T, Correia MITD, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr. 2025;49:11-20. doi:10.1016/j.clnu.2025.03.018. PubMed
  3. Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. doi:10.1016/j.clnu.2022.02.001. PubMed
  4. Cederholm T, Jensen GL, Ballesteros-Pomar MD, et al. Guidance for assessment of the inflammation etiologic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition: A modified Delphi approach. Clin Nutr. 2024;43(5):1025-1032. doi:10.1016/j.clnu.2023.11.026. PubMed
  5. 日本栄養治療学会. GLIM基準について. 2024年10月10日改訂版. 公式ページ
  6. 日本栄養治療学会. 重症度判定に関するQ&A. 公式ページ
  7. 日本栄養治療学会. GLIMよくあるご質問. 公式ページ
  8. Kondrup J, Rasmussen HH, Hamberg O, Stanga Z. Nutritional Risk Screening (NRS 2002): a new method based on an analysis of controlled clinical trials. Clin Nutr. 2003;22(3):321-336. doi:10.1016/S0261-5614(02)00214-5. PubMed
  9. Stratton RJ, Hackston A, Longmore D, et al. Malnutrition in hospital outpatients and inpatients: prevalence, concurrent validity and ease of use of the ‘Malnutrition Universal Screening Tool’ (MUST) for adults. Br J Nutr. 2004;92(5):799-808. doi:10.1079/BJN20041258. PubMed
  10. Kaiser MJ, Bauer JM, Ramsch C, et al. Validation of the Mini Nutritional Assessment short-form (MNA-SF): a practical tool for identification of nutritional status. J Nutr Health Aging. 2009;13(9):782-788. doi:10.1007/s12603-009-0214-7. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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