MNA(本式)の使い方|何が決まる評価か
MNA(本式)は、高齢者の栄養状態を 18 項目・ 0–30 点で整理し、介入の優先順位を決めるための評価です。この記事で答えるのは、本式 MNA をいつ実施するか、どう採点を読み、点数のあと何をするかです。現場で迷いやすい「再評価条件の固定」「問診の補完」「点数後の初動」までまとめて整理します。
一方で、MNA-SF の採点細目の深掘りや、GLIM の診断基準そのものは別記事に譲ります。本記事はあくまで full MNA の実施と運用に絞ります。採点細目は公式票に従い、本文では解釈と実務のコツを中心に扱います。
MNA(本式)のやり方|流れを固定する 6 ステップ
- 対象と準備:主に 65 歳以上を想定し、体重、身長(または推定値)、既往、服薬、嚥下状況、食事形態、生活背景を先に確認します。
- 一次判定:MNA-SF を先に行い、11 点以下なら本式 MNAへ進みます。 12–14 点は栄養状態良好の目安です。
- 本式の実施:18 項目を順に確認し、合計 0–30 点で整理します。本人の回答が不安定なときは、家族や介護者の情報で補完します。
- 分類:24–30 点=栄養状態良好、17–23.5 点=低栄養のおそれあり、17 点未満=低栄養の目安です。
- 初期対応:摂取量、食事内容、口腔・嚥下、活動量、炎症、抑うつ、社会要因を見直し、介入の優先順位を決めます。
- 再評価:入院では 1–2 週、在宅・外来では 2–4 週を目安に、できるだけ同じ条件で追跡します。
判定の早見表|点数ごとの見方
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| 合計点( 0–30 ) | 分類 | 初期対応の例 |
|---|---|---|
| 24–30 | 栄養状態良好 | 経過観察、食事の質と多様性の維持、活動量の確保、再評価時期の設定 |
| 17–23.5 | 低栄養のおそれあり | 摂取量の把握、間食や補助食品の検討、食事形態の調整、口腔・嚥下評価、短期再評価 |
| < 17 | 低栄養 | 原因評価を急ぎ、多職種連携で集中的に介入。炎症、嚥下、抑うつ、社会要因も確認 |
MNA の点数は介入の優先順位を決める材料として有用ですが、低値だけで原因まで確定するわけではありません。摂取低下、炎症、口腔・嚥下、服薬、認知・抑うつ、生活環境を整理し、必要に応じて診断の枠組みへつなげます。
現場の詰まりどころ|先に決める 3 つ
MNA(本式)は、点数を付けること自体よりも、測定条件と聞き取り条件が毎回ぶれることで使いにくくなります。先に よくある失敗 と 点数後の動き を固定すると再評価が安定します。一次判定から流れで見直したい場合は MNA-SF の使い方 を先に確認しておくと迷いにくいです。
よくある失敗と対策
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| よくある失敗 | 起きる理由 | 対策(記録ポイント) |
|---|---|---|
| 体重変化の期間が混ざる | 入院前後で参照期間や測定条件が変わる | 「いつからいつまでの変化か」を固定して明記し、衣類、時間帯、車椅子計測の有無も残します。 |
| 身長推定法が毎回違い BMI が動く | 高齢者では立位身長が取りにくい | 過去身長、膝高など推定法を固定し、「推定値」と明記します。次回も同じ方法で追跡します。 |
| 周囲径が浮腫で過大評価される | 下腿浮腫や左右差の影響を受ける | 左右、浮腫の有無、測定肢位、メジャー位置を併記し、次回も同条件で測ります。 |
| 問診が本人の主観だけで偏る | 認知機能低下、抑うつ、失語などで情報が不十分になる | 家族、介護者、配食状況、摂取割合などの客観情報で補完します。 |
18 項目の見方|原文転載なしで運用ポイントを整理
以下は採点表の全文ではなく、項目の見方と運用のコツです。短縮版と重なる観点も含め、再評価しやすい記録ポイントに絞って整理します。
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| 区分 | 項目 | 見る意味 | 実務での見方 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|---|
| A 人体計測 | 食事量の変化 | 最近の摂取低下を把握する | 持続的な摂取低下はリスク上昇とみなします。 | いつから減ったか、原因が嚥下・疼痛・消化器症状のどれかを短く残します。 |
| A | 体重変化 | 非意図的な減少の有無を見る | 短期間の体重減少は警戒が必要です。 | 参照期間、測定条件、推定値の有無を固定して記録します。 |
| A | BMI | やせの程度を把握する | 低 BMI は合併症や予後不良のサインになります。 | 身長が推定か実測かを明記し、次回も同法で追跡します。 |
| A | 上腕周囲径(MAC) | 筋量低下の簡便な目安 | 低値ほどやせや筋量不足を疑います。 | 利き手、浮腫、測定位置をそろえます。 |
| A | ふくらはぎ周囲径(CC) | 下肢筋量の目安 | 低値はサルコペニアや活動量低下を示唆します。 | 左右差、浮腫、測定姿勢を併記します。 |
| B 全身状況 | 移動能力 | 活動量と自立度をみる | 外出可、屋内のみ、ベッド・椅子中心でリスク感が変わります。 | 歩行補助具、転倒歴、離床時間を残します。 |
| B | 心理的ストレス・急性疾患 | 代謝亢進や摂食不良の背景をみる | 感染、発熱、入院、喪失体験などは要注意です。 | 発症時期と摂取低下の時系列をセットで書きます。 |
| B | 認知・抑うつ | 食事継続と自己管理のしづらさをみる | 軽度でも食事量や意欲に影響します。 | 見当識、意欲、既存評価の結果を補助情報として残します。 |
| B | 生活の自立度 | 食事を準備・継続できるかをみる | 買い物や調理が難しいと摂取低下につながりやすいです。 | 配食、同居者、欠食頻度、調理負担を確認します。 |
| B | 常用薬の数 | 多剤併用の影響をみる | 眠気、口渇、便秘、悪心は摂取低下につながります。 | 薬剤数だけでなく、副作用症状も併記します。 |
| B | 褥瘡・皮膚潰瘍 | 炎症と栄養需要増大をみる | 創があると蛋白需要が増えます。 | 部位、重症度、感染徴候、滲出量を整理します。 |
| C 食事 | 食事回数 | 食事パターンの安定性をみる | 3 食が基本ですが、少量頻回も実務では有効です。 | 朝食欠食、時間帯の偏り、間食の有無を記録します。 |
| C | たんぱく質摂取 | 筋量維持に必要な摂取状況をみる | 主菜不足は改善優先度が高いです。 | 肉・魚・卵・大豆・乳製品の取り方を確認します。 |
| C | 果物・野菜の摂取 | 微量栄養素と食物繊維の確保をみる | 摂れていない場合は調理形態の工夫が必要です。 | 刻み、軟菜、ピュレなどの代替方法も残します。 |
| C | 水分摂取量 | 脱水や便秘の背景をみる | 低摂取は食欲低下や全身状態悪化につながります。 | 嚥下、利尿薬、心不全など制限の有無も一緒に書きます。 |
| C | 食事の自立度 | 摂食動作の実行可能性をみる | 介助量が増えるほど摂取量も落ちやすいです。 | ポジショニング、食具、トレイ配置の工夫を残します。 |
| D 主観 | 自己評価:栄養状態 | 本人の気づきと受療行動をみる | 「最近食べられていない」の自覚は重要な手がかりです。 | 食欲、体重変化の自覚、疲れやすさを短く記録します。 |
| D | 自己評価:健康状態 | 全体的な健康観をみる | 同年代より悪いという主観は栄養問題と重なりやすいです。 | 受診歴、入院歴、ADL・IADL の困難を添えます。 |
点数後の次の一手|対応表
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| 点数帯 | まず見ること | 初期介入の例 | 再評価の目安 |
|---|---|---|---|
| 24–30 | 食事の質、活動量、食環境 | たんぱく質の確保、食事の多様性維持、経過観察 | 4–8 週 |
| 17–23.5 | 摂取量低下の原因、食事形態、間食の余地 | 間食や補助食品の導入、口腔・嚥下評価、食事形態の最適化 | 2–4 週 |
| < 17 | 炎症、嚥下、抑うつ、社会要因、多剤併用 | 原因評価を急ぎ、多職種で集中的に介入。必要時は補助栄養も検討 | 1–2 週 |
ケースでイメージする
回復期病棟:食事摂取 6 割、体重減少あり。MNA 本式 21 点で「低栄養のおそれあり」。間食導入、高エネルギー主菜への調整、口腔ケア強化を行い、 2 週後に摂取 8 割、点数も改善しました。
在宅独居:主食偏重で調理負担が大きく、MNA 本式 16.5 点。宅配弁当、栄養補助食品、訪問看護との連携を開始し、短期再評価で体重減少の停止を確認しました。
ダウンロード(印刷/運用に)
記録シート PDF のプレビューを開く
自動計算ツール
MNA(本式)の合計点と判定をその場で確認したいときは、自動計算ツールも併用できます。未入力がある場合は確定表示しない仕様なので、入力漏れの確認にも使いやすい構成です。
MNA 本式 自動計算ツールのプレビューを開く
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
本式 MNA はいつ使いますか?
基本は MNA-SF を先に行い、11 点以下のときに本式 MNAで詳細評価へ進みます。本式は「点数を付ける」だけでなく、どこを介入優先にするかを整理するために使います。
自動計算ツールは何に使えますか?
合計点の確認、未入力の見落とし防止、再評価時の入力補助に使えます。ただし、選択肢の意味づけや臨床判断までは自動化できないため、公式票と併用して解釈してください。
所要時間の目安はどれくらいですか?
初回は 10 分前後、再評価は条件がそろっていればもう少し短く回しやすいです。問診が難しいときは、家族や介護者の情報を使って補完します。
点数が低かったら、そのまま低栄養の診断でよいですか?
MNA の低値は重要なサインですが、背景の原因整理が必要です。摂取低下、炎症、嚥下、口腔、認知・抑うつ、社会要因を確認し、必要に応じて診断の枠組みへつなげます。
次の一手
MNA を現場で回しやすくするには、一次判定 → 本式評価 → 点数後対応を記事単位で分けて理解すると整理しやすいです。続けて確認するなら次の 2 本が相性良好です。
参考文献
- Mini Nutritional Assessment. 簡易栄養状態評価表(日本語版). 公式 PDF
- Mini Nutritional Assessment. Nutrition Screening and Assessment Guide. 公式ガイド
- Vellas B, Guigoz Y, Garry PJ, et al. The Mini Nutritional Assessment (MNA) and its use in grading the nutritional state of elderly patients. Nutrition. 1999;15(2):116-122. doi:10.1016/S0899-9007(98)00171-3
- Rubenstein LZ, Harker JO, Salvà A, et al. Screening for undernutrition in geriatric practice: developing the short-form Mini Nutritional Assessment (MNA-SF). J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(6):M366-M372. PubMed
- Kaiser MJ, Bauer JM, Ramsch C, et al. Validation of the Mini Nutritional Assessment short-form (MNA-SF): a practical tool for identification of nutritional status. J Nutr Health Aging. 2009;13(9):782-788. doi:10.1007/s12603-009-0214-7
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: a consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


