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この記事は「口腔機能の評価方法」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるようにしたいと思います。是非、最後までご覧になってください!

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
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医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
高齢者と口腔機能について
高齢化社会が進む日本において、口腔機能の低下は健康寿命に大きく影響する重要な問題の 1 つになります。日本老年歯科医学会は 2016 年に「口腔機能低下症」という概念を提唱し、2018 年には保険収載されています。
口腔機能低下症は、オーラルフレイル概念図の「第3レベル:口の機能低下」に位置づけられています。

このレベルは、地域の歯科医院での対応が求められており、口腔機能低下症と診断された場合は、検査結果に基づき個々の口腔状況に応じて口腔機能管理を行う必要があります。
口腔機能低下症とは、加齢や疾病により口腔の機能が複合的に低下している状態を指します。具体的には、「口腔衛生状態不良」「口腔乾燥」「咬合力低下」「舌口唇運動機能低下」「低舌圧」「咀嚼機能低下」「嚥下機能低下」の 7 項目から評価されます。
これらの機能低下は、単に歯科領域の問題だけでなく、全身の健康状態や栄養状態、生活の質(QOL)にも大きく影響します。
口腔機能の評価方法

前項にて口腔機能の重要性を述べさせていただきましたが、続いて口腔機能の評価方法についてご紹介します。
口腔機能の評価方法にはいくつか種類があり、中には特別な検査機器が必要となる評価方法、そもそも歯科医師ではないと行うことができないものもあります。
しかし、臨床で求められているものは、特別な器具を必要とせず、侵襲性が低く、知識を有していれば職種に関係なく評価することができる指標になります。
そこで、上述した条件に当てはまる 5 種類の口腔機能の評価方法について解説します。いずれの評価も口腔機能の指標として有用であり、リハビリテーションの場面でも大変役立つものとなっています。
OF-5(オーラルフレイルチェックリスト)
口腔機能低下症については前述した通りですが、近年、口腔機能低下症の前段階に該当する「オーラルフレイル」という概念も重要視されています。
オーラルフレイルは、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなど、比較的早期から現れる口腔の衰えになります。口腔機能低下症の前段階であることから、適切な介入により改善できる可能性が高い状態になります。
オーラルフレイルを簡便に評価する方法として、「オーラルフレイル簡易スクリーニング法(Oral Frailty Index-5:OF-5)」があります。これは日本老年歯科医学会が開発した評価法であり、以下の 5 項目から構成されています。
- 自身の歯は、何本ありますか?
(さし歯や金属をかぶせた歯は、自分の歯として数えます。インプラントは、自分の歯として数えません。) - 半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?
- お茶や汁物等でむせることがありますか?
- 口の渇きが気になりますか?
- 普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?

5 つの項目のうち該当項目が 2 項目以上ある場合にはオーラルフレイルとなります。
OF-5 は特別な機器を必要とせず、問診のみで実施できるため、地域の健診や介護予防の現場で広く活用されています。
舌苔スコア(TCI)
舌苔スコア(Toung Coating Index:TCI)は口腔衛生状態および舌運動を評価する指標となります。
舌苔とは舌の表面に付着する白色または黄白色の苔状の物質であり、細菌、剥離上皮細胞、食物残渣などから構成されています。口腔衛生状態の低下や唾液分泌量の減少により増加する傾向があります。
【舌苔スコアの評価方法】
- 舌を軽く前方に出してもらう
- 舌の表面を観察する
- 舌表面を 9 区画に分け、それぞれの区画での舌苔の付着状況(スコア 0 or 1 or 2)を評価する

- スコア 0:舌苔は認められない
- スコア 1:舌乳頭が認識可能な薄い舌苔
- スコア 2:舌乳頭が認識不可能な厚い舌苔
【舌乳頭とは】舌の表面にある小さな突起、味覚や食物の保持、咀嚼、嚥下に役立っている
舌苔スコア(TCI)は舌苔の付着度をパーセンテージで算出することで最終的な判定とします。計算式は以下の通りになります。
舌苔スコア = スコアの合計点 ÷ 18 × 100
舌苔スコア(TCI)が 50 %以上(合計スコアが 9 以上)のときに口腔衛生状態不良と判定します。
例:合計点 12 の場合
舌苔スコア(TCI)= 12 ÷ 18 × 100 ≒ 67 %(口腔衛生状態不良)
舌苔の増加は口臭の原因となるだけでなく、誤嚥性肺炎のリスク因子にもなります。舌苔スコア(TCI)はリハビリテーション専門職や歯科衛生士、看護師や介護職など、歯科医師以外でも簡単に実施できる評価法として、日常的なケアの現場で活用されています。
オーラルディアドコキネシス
オーラルディアドコキネシス(Oral Diadochokinesis:OD)とは、舌口唇運動機能(巧緻性および速度)の評価方法の 1 つになります。
特定の音節を一定時間にどれだけ速く、正確に繰り返し発音できるかを測定する検査であり、特別な機器を必要とせず、評価することができます。
【評価方法】
- 「パ」「タ」「カ」の各音節それぞれを 10 秒間にできるだけ速く、はっきりと繰り返し発音してもらう
- 被験者に無理をさせないために、評価時には途中で息継ぎをしてもよいことを事前に伝える
- 各音節について、10 秒間に何回発音できるのかをカウントする
- 10 秒間で発音することができた回数を 10 で割り、1 秒あたりの発音回数(回/秒)を算出する
【評価基準】
正常値は以下の通りになります。
- 「パ」:6.4 回 / 秒
- 「タ」:6.1 回 / 秒
- 「カ」:5.7 回 / 秒
「パ」「タ」「カ」それぞれの音節について評価を行い、いずれかの音節の値が 6.0 回 / 秒未満の場合を「舌口唇運動機能低下」と判断します。
「パ」は口唇の運動機能、「タ」は舌前方部の運動機能、「カ」は舌奥部の運動機能をそれぞれ反映します。
「パ」が「マ」、「タ」が「ナ」「カ」が「ンガ」となる場合、鼻咽腔閉鎖不全の可能性を示唆しています。特に「カ」の発音が低下している場合は、嚥下機能低下のリスクが高いとされています。
オーラルディアドコキネシスは、歯科医師だけでなく、理学療法士、言語聴覚士、看護師、ケアマネージャーなど多職種が簡単に実施できる評価法になります。また、訓練としても活用でき、毎日「パタカラ体操」として取り入れることで、舌口唇の運動機能の維持・向上に役立ちます。
より正確な評価を行うためには、専用の口腔機能測定機器(健口くん)等を使用する場合もありますが、基本的には機器がなくてもストップウォッチや時計があれば実施可能となります。評価が簡便であるため、地域の介護予防教室や施設での集団スクリーニングにも適した評価方法といえます。
舌圧測定
舌圧とは、高齢者の口腔機能を客観的に評価するため指標として提案され、Hayashi らによると「口に取り込んだ食物を舌が口蓋前方部との間で潰す力」と定義されています。
咀嚼から送り込みや嚥下のプロセスにおいて、舌は重要な役割を担っています。咀嚼時には舌で食べものを口腔内にまとめ、咽頭への送り込む際には舌で食塊に圧力をかけて送り込みます。
舌圧を測定する舌圧計は、上述したように重要な役割を担う舌の力を簡易的に数値化し測定する機器になります。
臨床では株式会社ジェイ・エム・エス製の JMS 舌圧測定器が広く用いられており、特別な訓練を必要とすることなく比較的簡便に使用することができます。
【測定方法】
- 舌圧プローブを患者の口腔内に挿入し、患者に舌圧プローブの硬質リングを前歯で軽く把持するように指示します。
- 患者に硬質リングを前歯で軽く把持させたまま、口蓋皺壁に対して最大の力で舌を拳上するように指示し、患者は数秒間(約 7 秒間)バルーンを押し潰します。
- 測定者の合図で押し潰しを終了し、デジタル舌圧計の「最大圧」表示に表示された数値を最大舌圧として記録します。
【判定基準】
- 20 kPa 未満:舌の運動機能に問題がある
- 30 kPa 未満:口腔機能低下症の基準に該当する
- 30 kPa 以上:正常
舌圧測定は、口腔機能の評価において重要な役割を果たします。舌の筋力を定量的に測定することで、嚥下機能や発音、咀嚼能力などの口腔機能の状態を把握できます。また、舌圧が低下している場合、嚥下障害や口腔内の健康問題が示唆されるため、早期の問題発見や適切な介入に繋がります。
EAT-10(簡易嚥下状態評価票)
最後に、口腔機能および嚥下機能の評価方法となる EAT-10(10-item Eating Assessment Tool)について紹介します。
EAT-10 とは、自己記入式の質問票であり、非侵襲的に口腔内のトラブルや嚥下障害の症状および重症度を評価することができます。
EAT-10 は以下の 10 項目の質問から内容が構成されています。
- この 3 ヵ月の間に、飲み込みの問題が原因で、体重が減少しましたか?
- この3ヵ月の間に、飲み込みの問題が原因で、自宅や病院/施設での食事以外は食べたくないと思ったことはありますか?
- 液体を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
- 固形物を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
- 錠剤を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
- 飲み込むことが苦痛だ
- 食べる喜びが飲み込みによって影響を受けている
- 飲み込む時に、食べ物がのどに引っかかる
- 食べる時に咳が出る
- 飲み込むことはストレスが多い
各項目について、「0:問題なし」から「4:ひどい問題がある」の 5 段階で評価し、合計点数(0 ~ 40 点)で判定します。3 点以上で嚥下障害の可能性があるとされています。


EAT-10 は特別な機器や専門的な技術を必要とせず、問診形式で実施できるため、歯科医師以外の医療従事者や介護職も活用することができます。
主目的は嚥下機能のアセスメントになりますが、間接的に口腔機能のアセスメントにも繋がっており、嚥下障害の早期発見や、治療の効果を追跡するための簡便で効果的なツールとして臨床で使用されています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
こちらの記事では「口腔機能の評価方法」をキーワードに内容を構成させて頂きました。
口腔機能の評価には様々な方法がありますが、特別な機器を必要とせず、歯科医師以外でも簡単に実施できる評価法を活用することで、オーラルフレイルや口腔機能低下症の早期発見・早期介入が可能となります。
多職種連携のもと、これらの評価を日常的なケアや診療に取り入れることが、高齢者の口腔機能維持・向上、更には健康寿命の延伸に貢献すると考えられます。この記事を読むことで「口腔機能の評価方法」についての理解が深まり、医療や福祉への一助へとなれば幸いです。
参考文献
- 森田晃司,津賀一弘.舌圧検査応用のポイント.
日補綴会誌.Ann Jpn Prosthodont.Soc 9,p181-185,2017. - 矢野実郎,福永真哉.舌圧測定.ディサースリア臨床研究.13(1),p63-67,2023.
- 栢下淳.誤嚥性肺炎予防のための嚥下機能評価法 :舌圧測定.JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION.33(7),p635-639,2024.