Hoffer 座位能力分類(JSSC 版)とは?(結論:30 秒×手支持で 3 段階にそろえる)
Hoffer 座位能力分類(JSSC 版)は、「この人はどこまで安全に座れるか?」を30 秒と手の支持の有無で 3 段階にそろえ、チームで共有するための簡易スクリーニングです。判定がそろうと、車椅子選定やシーティング介入の出発点(何を優先するか)が速く決まります。
本記事では、評価条件(環境)と判定基準(表)を先に固定し、次に「記録のコツ」「レベル別の次の一手」「よくある失敗」をまとめます。シーティング全体像(評価→調整→運用→再評価)を先に押さえたい場合は、関連:シーティングハブを併せて参照してください。
評価・手順を「伝わる説明」にするコツ(新人指導にも)
評価を“測って終わり”にしないために、申し送りの型と再評価の回し方を 5 分で整理できます。
PT の臨床フロー(評価→介入→再評価)を見るいつ使う?(適応:座位の“入口”をそろえたい場面)
Hoffer は、座位バランスを精密に測るテストではなく、座位の“入口”をそろえる指標です。たとえば、車椅子導入前後、離床開始直後、姿勢保持装置の検討前など、「まず安全に座れるか」を短時間で共有したい場面に向きます。
一方で、リーチ量や動的バランス、ADL の実用性そのものは直接は評価しません。Hoffer の結果は「判定のメモ」で終わらせず、次の一手(支持具・座位時間・試適の優先度)までつなげると価値が上がります。
評価条件(環境)を固定する:ここがズレると判定もズレる
判定は“本人の座位能力”で行い、環境や介助の条件を混ぜないことが前提です。転倒を防ぐ見守りは行いますが、ベッド柵・手すりの使用、検者の支持は「判定の材料」に入れない運用が基本です。
評価条件は、しっかりした座面で端座位を取り、足底が床に接地する高さを作ります。日内変動や短期間での変動が疑われる場合は、同条件で再評価し、低いほうを採用するルールにしておくとブレが減ります。
評価手順( 60 秒で終わる型 )
- 準備:安定した座面に端座位。足底接地。転倒防止の見守り。
- 合図:「手すりは使わず、普段どおりに座ってください」。
- 観察:上肢が“支持”として使われているか(座面を押す・体幹を支える)。
- 計時:30 秒保持できるかで判定。
- 記録:判定+「崩れ方(骨盤・体幹・頭位)」を 1 行で残す。
判定基準(JSSC 版):30 秒×手支持で 3 段階
判定は「手の支持なしで 30 秒保持できるか」「手の支持があれば 30 秒保持できるか」「外部支持がないと保持できないか」で 3 段階にそろえます。ここでいう“手支持”は、腕を置いているだけではなく、姿勢を保つために座面を押す・体幹を支えるなど、支持として機能している状態を指します。
| レベル | 判定(30 秒) | 観察の目安 | 次の一手(方向性) |
|---|---|---|---|
| 1 | 手の支持なしで座位保持可能 | 会話・軽い上肢動作でも大きく崩れない | 標準〜セミモジュラー中心。長時間ならクッション含め微調整 |
| 2 | 手の支持があれば座位保持可能 | 片手/両手で座面を支持。骨盤後傾・側方倒れが目立つことが多い | モジュラー中心。骨盤・体幹サポートを追加し、座位時間も設計 |
| 3 | 外部支持がなければ座位保持困難 | 体幹・頭頸部の保持が難しく、傾斜や滑りが強い | 姿勢変換(ティルト/リクライニング)も選択肢。皮膚保護を最優先に設計 |
記録のコツ(再評価で差が出る 3 点)
Hoffer はシンプルな分、記録が薄いと「同じレベルだけど、何が違う?」が見えなくなります。再評価で役立つのは、①座位条件(座面・高さ・足底接地)、②崩れ方(骨盤・体幹・頭位)、③疲労/日内変動の 3 点です。
おすすめは、判定の横に「崩れ方を 1 行」で残すことです(例:「レベル 2:右手支持、骨盤後傾+左側方倒れ」)。この 1 行が、支持具の方向性(骨盤か体幹か)と、次の介入の仮説を作ります。
レベル別:その場で決める「次の一手」
Hoffer の価値は、判定後の行動がそろうことです。レベルごとに「まず何を優先するか」を決めておくと、担当者が変わっても迷いにくくなります。
| レベル | 優先 | 車椅子/支持の方向性 | 運用(座位時間・再評価) |
|---|---|---|---|
| 1 | 快適+活動 | サイズ最適化、必要に応じてクッション調整 | 長時間座位なら皮膚と疲労を確認。条件固定で再評価 |
| 2 | 安定化 | モジュラー+骨盤/体幹サポート(側方・前滑り対策) | 座位時間を設計(短時間×回数→延長)。 1〜2 週で再評価 |
| 3 | 安全+皮膚保護 | 姿勢変換(ティルト/リクライニング)も含め検討 | 座位許容量を短く刻んで記録。褥瘡リスクを前提に再評価 |
よくある失敗(判定がブレる原因と対策)
Hoffer で起きやすいミスは、条件がズレることと、「手支持」の解釈が曖昧なことです。失敗パターンを先に潰すと、評価者間のブレが一気に減ります。
| 失敗 | 起こりやすい場面 | なぜダメ? | 対策(現場での一言) |
|---|---|---|---|
| 座面/高さが毎回違う | 病棟・リハ室・車椅子で条件が混在 | 足底接地と骨盤位置が変わり、保持の難易度が変わる | 「座面と足底接地を固定してから判定する」 |
| 手すり・ベッド柵を使ってしまう | 転倒が怖い、介助者が多い | 本人能力ではなく“環境”で座れてしまう | 「見守りはするが、支持は判定に入れない」 |
| 手支持の解釈が曖昧 | 腕を置いているだけか、押しているかが不明 | レベル 1 と 2 の境界がブレる | 「姿勢保持のために座面を“押している”なら支持」 |
| 疲労・日内変動を無視 | 午前は安定、午後に崩れる | 実運用(座位時間設計)が外れる | 「変動があるなら低いほうを採用し、条件をメモする」 |
現場の詰まりどころ(評価が“回らない”原因と対策)
Hoffer は簡単ですが、現場では「忙しくて条件がそろわない」「記録が薄くて再評価につながらない」が詰まりやすいです。対策は、①条件(座面・足底接地)をテンプレ化、②崩れ方を 1 行で残す、③次の一手をレベル別に固定する、の 3 点です。
新人教育や申し送りの型を整えると、評価が回り始めます。面談準備チェックなど“説明を整える型”も、院内の標準化に使えます(関連:無料ダウンロード)。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 30 秒に満たないけど、明らかに危ない場合はどうしますか?
安全を最優先し、転落リスクが高い場合は途中で中止します。その場合も「どこで崩れたか(骨盤・体幹・頭位)」「支持が必要になったタイミング」を短く記録し、次回は条件(座面・足底接地)を整えたうえで再評価します。
Q2. 片麻痺で上肢が置かれている場合、手支持とみなしますか?
“支持として機能しているか”で判断します。腕が置かれていても、姿勢保持のために座面を押していない、体幹を支えていない場合は支持とみなさないことがあります。迷うときは「支持の有無」より「崩れ方」を 1 行で残すと、次の介入に直結します。
Q3. レベル 2 の人は、まず何から調整すべきですか?
多くは骨盤の後傾・側方倒れ・前滑りが絡みます。いきなり高機能クッションに飛ばず、骨盤が“座れる”条件(座面高さ、奥行き、フットサポート)を整え、必要なら体幹・側方サポートを足して、短時間の座位を回して再評価します。
Q4. Hoffer だけで車椅子選定まで決めていいですか?
Hoffer は入口のそろえ方であり、最終決定は「皮膚リスク」「疼痛」「嚥下・呼吸」「活動課題」「生活環境」も合わせて行います。Hoffer は“最初の候補を外さない”ための材料として使うのがおすすめです。
ダウンロード(PDF)
院内共有用に、印刷して使える A4 PDF を用意しました。まずはクイックリファレンスで判定の基準をそろえ、記録シートで条件と崩れ方を残す運用がおすすめです。
プレビュー:クイックリファレンス(A4)
プレビュー:評価記録シート(A4)
次の一手(関連)
参考文献
- 日本シーティング・コンサルタント協会. 座位能力分類(Hoffer 座位能力分類 JSSC 版). https://seating-consultants.org/hofferzainouryoku/
- 太田記念病院. 車椅子シーティングって何?(Hoffer 座位能力分類 JSSC 版の紹介を含む). https://www.ota-hosp.or.jp/about/hope/pickup/topics26.php
- 廣瀬秀行. 者へ の 理学療法(座位能力分類:Hoffer 座位能力分類(JSSC 版)を含む). 理学療法学 2013. https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/40/4/40_KJ00008722988/_pdf
- テクノエイド協会. シーティング入門資料(Hoffer の座位能力分類 JSSC 版の記載を含む). https://www.techno-aids.or.jp/research/vol24.pdf
- 古賀洋. Hoffer 座位能力分類(JSSC 版)の評価者間頼性の検証. リハビリテーションエンジニアリング. 2009;24(2):92-96. https://cir.nii.ac.jp/crid/1570854176159763840
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


