シーティング身体計測|座幅・奥行き・座面高の測り方と決め方

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シーティング身体計測は「測定→仮設定→試座→記録」が基本

シーティング全体から確認したい方へ

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シーティングの身体計測では、まず座位臀幅・座底長・下腿長を同じ条件で測り、座幅・座面奥行き・座面高/フットサポート条件の候補を決めます。ただし、身体寸法だけで最終寸法を決めるのではなく、試座で骨盤位置、膝窩圧、大腿支持、足底、駆動・移乗などを確認して微調整することが重要です。

この記事では、座位での測り方から仮設定、座位が難しい場合の代替計測、試座、最終記録までを一つの流れで整理します。記事後半には、測定→仮設定→試座→最終設定→再評価をA4・1ページで記録できるPDFとExcelも用意しています。

身体計測3項目と車椅子寸法へのつなげ方
身体計測 主につなげる寸法 仮設定の考え方 試座で確認すること
座位臀幅 座幅 最も広い部分を基準に必要な余裕を加える 側方圧迫・左右差・駆動性
座底長 座面奥行き 膝窩前に余裕を残して短くする 膝窩圧・大腿支持・骨盤位置
下腿長 フットサポート長・座面高 靴・クッション・使用目的を含めて調整する 足底・踵・クリアランス・移乗・駆動

身体計測値は完成寸法ではなく、試座を始めるための仮設定値です。測定値と車椅子寸法を機械的に一致させず、実際の座位と活動を確認して最終設定を決めます。

測定条件と基準点をそろえる

身体計測の再現性を高めるには、数値より先に「どの姿勢・どの基準点・どの使用条件で測ったか」をそろえることが重要です。同じ人でも、骨盤位置、衣服、靴、装具、クッションなどが変われば測定値や適合状態は変わります。

  • 座位臀幅:臀部や大腿を含め、座位で最も広くなる部分の左右幅を確認します。
  • 座底長:臀部後方から膝窩付近までの前後方向の長さを確認します。左右差がある場合は左右を分けて記録します。
  • 下腿長:膝窩付近から足底までの距離を確認します。普段使用する靴や装具の条件も残します。

測定姿勢は、可能な範囲で骨盤と体幹を整え、股関節・膝関節がおおむね90°となる座位を基本にします。拘縮や変形などでこの姿勢が取れない場合は無理に矯正せず、実際に目標とする座位姿勢と測定条件を記録してください。

シーティング身体計測で確認する座位臀幅、座底長、下腿長と車椅子寸法の対応を示した図
図.シーティング身体計測の基準点と車椅子寸法への対応

座位での身体計測手順

座位保持が可能であれば、姿勢を整える→座位臀幅→座底長→下腿長→条件を記録するの順に進めます。数値だけを残すのではなく、その数値を測ったときの条件もセットで記録します。

準備するもの

  • メジャー
  • 直角定規やL尺
  • 記録用紙
  • 普段使用する靴・装具
  • 使用予定のクッション
  • 必要に応じて測定姿勢を保持する補助者

測定面やクッションが変わると身体の沈み込みや姿勢も変わります。再評価を想定し、衣服・靴・装具・クッション・介助量を記録しておくと比較しやすくなります。

測定の5ステップ

  1. 目標とする座位を整える:骨盤・体幹・股関節・膝関節・足部の位置を確認します。
  2. 座位臀幅を測る:臀部や大腿を含めた最も広い部分を確認し、左右方向の幅を測ります。
  3. 座底長を左右で測る:臀部後方から膝窩付近までを測り、左右差がある場合は別々に記録します。
  4. 下腿長を測る:膝窩付近から足底までを確認し、靴・装具の条件を記録します。
  5. 測定条件を残す:姿勢、衣服、靴、装具、クッション、介助量を記録します。

座幅・座面奥行き・座面高を仮決定する

身体寸法を測ったら、車椅子寸法の候補へつなげます。ここでの目的は一度の計算で完成寸法を決めることではなく、試座を始めるための仮設定を作ることです。

座幅は座位臀幅を基準にする

座幅は、座位臀幅を基準に必要な余裕を加えて仮決定します。公益財団法人テクノエイド協会の既製車いす選定資料では、シート幅の目安として座位臀幅+0〜30mmが示されています。

ただし、衣服、軟部組織、側方支持、サイドガード、体重変動などによって必要な余裕は変わります。数値だけでなく、実際の圧迫と操作性を確認してください。

  • 狭すぎる場合:大転子部や大腿外側の圧迫・摩擦が生じていないか確認する
  • 広すぎる場合:骨盤が左右へ移動しやすくないか、ハンドリムへのリーチが悪くなっていないか確認する

座幅は「保持のために狭くする」「皮膚保護のために広くする」と単純化せず、圧迫・姿勢・駆動性を試座でまとめて確認して最終設定を決めます。

座面奥行きは座底長より短くする

座面奥行きは、座底長より短くして膝窩前にクリアランスを確保するのが基本です。ただし、差し引く長さは資料によって異なるため、一つの数字を絶対基準にはしません。

座面奥行きの目安として示されている例
資料 示されている考え方 使用時の注意
WHO Wheelchair Service Training Package 中級 座底長から30〜50mm差し引く 試座で適合を確認する
テクノエイド協会 座底長から50〜70mm差し引く 既製車いす選定時の目安として扱う

このように目安には幅があります。施設で採用する基準や使用する車椅子を確認したうえで候補値を出し、試座では膝窩圧・大腿支持・骨盤が後方まで収まるかを確認します。

  • 長すぎる場合:座面前縁が膝窩へ当たる、深く座れない、骨盤が前方へ移動するなどがないか確認する
  • 短すぎる場合:大腿支持が不足していないか確認する

「座底長から何mm引くか」だけで完成させず、膝窩と大腿、骨盤の3点を見て調整することが重要です。

座面高は下腿長だけで決めない

下腿長は、フットサポート長や座面高を検討する重要な身体寸法ですが、下腿長をそのまま座面高へ置き換えるわけではありません。

テクノエイド協会の資料でも、レッグサポート長では座位下腿長とクッション厚を考慮し、クッションについては座ったときの沈み込みへ配慮することが示されています。

実際の設定では、次の条件を合わせて確認します。

  • 靴や装具
  • クッションと沈み込み
  • フットサポート位置
  • 足底・踵の支持
  • 床面とのクリアランス
  • 上肢・下肢での駆動方法
  • 移乗方法

フットサポートが高すぎて大腿が浮いていないか、低すぎて足部支持やクリアランスに問題がないかを確認し、本人の使用目的まで含めて最終設定します。

肘掛け高・背支持高も必要に応じて測る

座幅・座面奥行き・座面高に加えて、実際の車椅子調整ではアームサポート高や背支持高も確認します。

  • 座位肘頭高:アームサポート高を検討する基準として使用します。肩を過度に挙上せず、上肢を支持できるか確認します。
  • 背支持高:体幹コントロールと必要な支持範囲を確認して決めます。高くすること、低くすること自体を目的にしません。

これらも測定値だけで決めず、座位保持と上肢活動への影響を試座で確認します。

座位が難しい場合は臥位計測を仮値として使う

疼痛、易疲労、筋緊張、座位保持能力などの理由で安全な座位計測が難しい場合は、臥位で身体寸法や関節可動性、左右差を確認し、車椅子寸法の候補値を作ります。

ただし、臥位では実際の座位で生じる骨盤位置、軟部組織の広がり、クッションへの沈み込み、重力による姿勢変化を十分に再現できません。したがって、臥位計測だけで最終寸法を確定せず、可能になった段階で実際の座位または車椅子上で適合を確認します。

座位と臥位で値が異なる場合は、どちらか一方を正しい値として処理するのではなく、測定姿勢と左右差を記録し、試座時の判断材料として扱います。

試座では9項目を確認する

試座では、身体計測値が合っているかではなく、その設定で本人の姿勢と活動が成立しているかを確認します。本記事の記録シートでは、次の項目をそのまま記録できます。

身体計測後の試座チェック
確認項目 見るポイント
骨盤位置 後傾、回旋、左右への偏りなどがないか
膝窩圧 座面前縁が膝窩へ強く当たっていないか
大腿支持 大腿が適切に支持され、支持不足や過度な圧迫がないか
足底・踵 足底と踵が安定し、必要な支持が得られているか
側方圧迫 臀部や大腿外側に局所的な圧迫がないか
駆動 上肢・下肢による駆動を妨げていないか
移乗 座面高やフットサポートが移乗を妨げていないか
皮膚反応 試座後に発赤や局所的な圧迫所見がないか
目的活動 食事、操作、作業など目的とする活動が行いやすいか

変更が必要な場合は、最終寸法だけでなく「何を見て、なぜ変更したか」を記録します。この情報が残っていると、次回の再評価や担当者間・多職種間の共有がしやすくなります。

測定から最終設定までの5ステップ

身体計測は、測定→仮設定→試座→最終設定→再評価までを一つの流れとして考えます。

  1. 測定条件を決める:姿勢、衣服、靴、装具、クッション、介助量を確認する。
  2. 身体寸法を測る:座位臀幅、座底長、下腿長などを測定する。
  3. 車椅子寸法を仮設定する:座幅、座面奥行き、フットサポート長、座面高などの候補を決める。
  4. 試座する:骨盤、膝窩、大腿、足部、皮膚、駆動、移乗、目的活動を確認する。
  5. 最終設定と変更理由を記録する:必要に応じて再評価日と次回確認項目も残す。

「測って終わり」にせず、「試して、直して、理由を残す」までを固定手順にすると、再評価時にも同じ条件へ戻りやすくなります。

シーティング身体計測・試座記録シート

身体計測から最終設定までを同じ流れで記録できるよう、シーティング身体計測・試座記録シート v6を用意しました。A4縦・1ページで、測定条件、身体寸法、仮設定、試座結果、最終設定、変更理由、再評価、多職種への申し送りまで記録できます。

シーティング身体計測・試座記録シート v6

PDFは印刷して記入する場合、Excelは施設内で編集・保存しながら運用する場合に使えます。

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記録シートで残せる内容

  • 評価日・評価者・主な目的
  • 座位/臥位などの測定姿勢
  • 衣服・靴・装具・クッション・介助量
  • 座位臀幅・座底長・下腿長・座位肘頭高・背支持高
  • 座幅・座面奥行き・フットサポート長・座面高・アームサポート高・背支持高
  • 仮設定と最終設定
  • 採用した目安・基準/参照資料
  • 試座チェックと調整内容
  • 最終判断・再評価日・再評価理由
  • 申し送り・多職種共有

施設内で共通様式として使用する場合は、採用する寸法基準や記録方法をあらかじめ統一しておくと、測定者が変わった場合も比較しやすくなります。

身体計測がぶれるときのチェックポイント

測定値が毎回変わる場合は、測り方を細かく修正する前に体位・衣服・靴・装具・クッション・介助量が同じかを確認します。

シーティング身体計測で起こりやすい失敗と修正方法
項目 よくある失敗 修正方法 記録すること
座位臀幅 最も広い部分を捉えていない 臀部・大腿外側を確認して最大幅を測る 衣服・側方支持条件
座底長 左右差を確認せず1つの値だけ残す 左右を分けて測定する 左右値・骨盤位置
下腿長 靴や装具条件が変わっている 実際の使用条件をそろえる 靴・装具・クッション
仮設定 計算した値をそのまま完成寸法にする 試座して姿勢と活動を確認する 変更前後の寸法・変更理由
再評価 前回の測定条件が分からない 同じ条件へ戻せるよう記録する 姿勢・介助量・使用物品

特に左右差や拘縮がある場合は、数値だけで「安全側」を決めるのではなく、左右それぞれの膝窩圧、大腿支持、骨盤位置、足部条件を試座所見とセットで残すことが重要です。

よくある質問

座面奥行きは座底長から何mm引けばよいですか?

一つの値に固定はできません。WHO Wheelchair Service Training Package中級では30〜50mm、公益財団法人テクノエイド協会の既製車いす選定資料では50〜70mm差し引く方法が示されています。採用する基準を確認したうえで、最終的には膝窩圧、大腿支持、骨盤位置を試座で確認して調整します。

仰臥位で測れば車椅子寸法を最終決定できますか?

臥位計測は候補値を作るために使用できますが、実際の座位で生じる骨盤位置、軟部組織の広がり、クッションへの沈み込みなどを十分に再現できません。可能になった段階で実際の座位または車椅子上で適合を確認します。

左右の座底長が違う場合はどちらを採用しますか?

まず左右を別々に記録し、差が生じる姿勢や骨盤・下肢の状態を確認します。一方の数値だけで最終設定せず、試座で左右それぞれの膝窩圧と大腿支持を確認して調整します。

下腿長を測れば座面高を決められますか?

下腿長だけでは決まりません。靴、装具、クッション、フットサポート、足底接地、駆動方法、移乗方法などを含めて調整します。下腿長は重要な出発点ですが、最終的な座面高は使用目的との適合まで確認して決めます。

再評価では何を同じ条件にしますか?

可能な範囲で、測定姿勢、衣服、靴、装具、クッション、介助量をそろえます。条件が変わった場合は、その違いを記録したうえで前回値と比較してください。

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参考文献

  1. World Health Organization. Wheelchair provision guidelines. Geneva: World Health Organization; 2023. WHO
  2. World Health Organization. Wheelchair Service Training Package – Intermediate Level. Geneva: World Health Organization; 2013. WHO
  3. World Health Organization. Wheelchair Service Training Package – Intermediate Level: Participants Workbook. Geneva: World Health Organization; 2013. WHO PDF
  4. 公益財団法人テクノエイド協会. 身体寸法と車いす寸法の合わせ方. テクノエイド協会
  5. International Organization for Standardization. ISO 7250-1:2017. Basic human body measurements for technological design — Part 1: Body measurement definitions and landmarks. Geneva: ISO; 2017. ISO
  6. World Health Organization. Wheelchair Service Training Package: Training of Trainers Card Deck. Geneva: World Health Organization; 2013. WHO PDF
  7. Owens J, Davis DD. Seating and Wheelchair Evaluation. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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