二重同時刺激( DSS )のやり方と判定【図解・PDF付き】

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二重同時刺激( DSS )のやり方と判定: USN の消去現象を短時間でみる

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関連:高次脳機能評価ハブ
代表:抹消課題の判定と記録

二重同時刺激( double simultaneous stimulation: DSS )は、左右に刺激が同時に入ったときに、対側の刺激だけ報告が落ちる「消去( extinction )」を観察するための簡易テストです。机上課題が軽く見えても、会話しながら移動すると崩れるタイプを拾いやすく、安全管理と課題設計に直結します。

このページで答えるのは、DSS をどう実施し、どう判定し、どう記録に残すかです。 USN 評価全体の順番や ADL 観察の使い分けは親記事へ分け、このページは「単独 → 同時」の手順と記録の型に絞って整理します。

このテストの位置づけ: DSS は「単独は通るのに同時で落ちる」をみる

DSS は、単独刺激(片側提示)では反応できるのに、両側同時提示になると対側だけ抜けるパターンを拾うテストです。つまり「見えていない」よりも、「同時に来ると処理しきれない(選択的注意の偏り)」を疑う入口になります。

実務では、転倒・衝突が起きやすい場面(会話しながら移動、物品探索しながら歩行、混雑、方向転換)と結びつけて読むのがコツです。 DSS 単独で USN 全体を決めるのではなく、二重課題で崩れる条件を見つける各論として使うと役割がぶれません。

準備( 30 秒 ):結果がブレる原因を先に潰す

  • 姿勢:座位(体幹支持を確保)。頭部と体幹の向きを整える。
  • 視線:正中の目標(検者の鼻先、固定点)を決める。
  • 刺激:指・点刺激・簡単なカードなど院内資材で OK。左右で同じ見え方にそろえる。
  • 提示位置:左右とも同程度の距離・高さ(同じ条件)で提示する。
  • 記録:単独(左/右)と同時(左右)を分けて残せる枠を用意する。

手順( 1〜2 分 ):単独 → 同時の順で観察する

ステップ 1:単独刺激(左のみ/右のみ)を先に確認

まず左右それぞれの単独刺激で、見落としがないかを確認します。ここで片側が大きく落ちる場合、 DSS の「消去」と断定しない運用が安全です。視力、覚醒、理解、注視の問題が混ざるためです。

ステップ 2:両側同時刺激(左右同時)で「対側が落ちるか」をみる

左右を同時に提示し、報告(指差し、口頭、うなずきなど)が片側に偏るかをみます。ポイントは、提示の同時性条件固定です。毎回の言い回しや提示位置が変わると、結果が検者依存になります。

おすすめの最小セット(忙しい日の型)

  • 単独:左 5 回/右 5 回
  • 同時:左右同時 10 回
  • メモ:見落とし側、修正可能性(声かけで戻るか)、疲労で悪化するか
二重同時刺激( DSS )の見方 4 ステップを示した図版
図:二重同時刺激( DSS )は「単独は通る → 同時で落ちる → 消去を疑う」の流れでみると整理しやすいです。

判定の考え方: DSS は「同時だと対側が落ちる」を確認する

臨床では、 DSS の所見を「現象」と「使いどころ」に分けると共有しやすくなります。消去( extinction )は、両側同時提示で対側の刺激が報告されにくくなる現象として説明されます。単独刺激の成立を前提に、同時で落ちるパターンを拾うのがコツです。

DSS 所見の読み方(病棟運用の目安)
所見 まず確認すること 解釈の方向性 次の一手(安全・介入)
単独は OK、同時で対側が落ちる 提示条件(距離・高さ・同時性)が一定か 消去(注意容量の偏り)を疑う 二重課題で悪化しやすい場面を先に制限/「止まって確認」を型にする
単独から対側が不安定 注視・覚醒・理解、視野のスクリーニング DSS だけで結論を出しにくい 条件を整えて再評価(姿勢・視線固定・環境)
同時で両側とも不安定 疲労・鎮静・注意の持続 注意資源低下の影響が大きい 短時間・休憩込みで再評価、観察場面(移動等)で補う

記録の型:チーム共有で迷わない「 3 行まとめ」

  • 条件:姿勢(座位 / 車椅子)、視線固定の方法、提示位置(距離・高さ)
  • 結果:単独(左 / 右)と同時(左右)の正答数、落ちた側
  • 解釈:二重課題で悪化しやすい(注意容量)/声かけで修正できるか/危険場面

記載例( 3 行 )

条件:車椅子座位、正中注視あり、肩幅外側で左右同距離に提示。
結果:単独 L 5 / 5、R 5 / 5、同時 10 回中 6 回で左刺激の報告漏れ。
解釈:同時処理で左側の消去あり。会話しながらの移動で左側衝突リスクを考慮。

現場の詰まりどころ/よくある失敗( OK / NG 早見 )

DSS は「同時性」と「条件固定」が崩れると、所見が簡単にひっくり返ります。下の OK / NG を先にそろえるだけで、検者差が減ります。迷ったときは、まず 手順記録の型 を見直し、全体の順番は 親記事 に戻ると整理しやすいです。

DSS で結果がブレる典型パターン(成人・病棟運用)
観点 OK(推奨) NG(起こりがち) 対策
提示の同時性 左右を同時に提示(毎回同じリズム) 左右の出すタイミングが毎回ズレる 検者の動きを固定(カウントや合図を決める)
視線の固定 正中の固定点を先に決める 視線が動いたまま開始 「ここを見る」を最初に 1 回だけ確認
単独→同時の順番 単独で最低限の反応を確認してから同時 いきなり同時だけで判定 単独が崩れる日は条件調整して別枠で記録
回数 単独 10 回前後、同時 10 回前後 同時を 2〜3 回で結論 忙しい日でも「最小セット」を固定
声かけ介入 教示は短く一定、介入は記録に残す 途中から誘導が増えて記録なし 介入したら「介入あり」で別扱いにする

ダウンロード(印刷用 PDF )

印刷してそのまま使える「二重同時刺激( DSS )記録シート( A4 縦・ 1 ページ )」です。単独( L / R )と同時( LR )を分けて記録し、消去( extinction )の有無、固定条件、合計、再評価メモまで 1 枚で残しやすい構成にしています。

二重同時刺激( DSS )記録シート( A4 ・ 1 ページ )

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よくある質問(FAQ)

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Q1. 「半盲」と「消去」はどう見分けますか?

A. まず単独刺激(片側提示)で反応が安定しているかを確認し、そのうえで同時提示で対側だけ落ちる場合に「消去」を疑います。単独から不安定な場合は、視線固定・姿勢・覚醒・理解などの条件を整えた再評価が先です。

Q2. 失語や注意障害が強いとき、どう記録すればよいですか?

A. 口頭報告が難しい場合は、指差し・うなずき・視線移動など、反応様式を先に決めて「その条件で実施した」と記録します。反応様式が変わった回は、同じ点数として比較しないのが安全です。

Q3. 何回くらい実施すればよいですか?

A. 忙しい日でも、単独(左 5/右 5)+同時( 10 )の最小セットを固定すると、検者差が減ります。疲労で変動する場合は、同条件で別日に再評価して推移をみます。

Q4. 視覚だけでなく、触覚や聴覚も必要ですか?

A. 可能なら有用です。視覚と触覚で所見が一致しないこともあるため、生活上の危険場面(更衣、車椅子操作、移乗など)と結びつけて「どの感覚で問題が出やすいか」を整理すると介入に落ちます。

Q5. DSS のあと、次に何を見ればよいですか?

A. DSS は「同時処理で崩れる」入口です。次は、机上テストで探索の偏りを補うか、 ADL 観察で危険場面を拾うかを決めます。机上で軽く見えても病棟で崩れるときは、観察場面の比重を上げると判断しやすくなります。

次の一手(次に読む)


参考文献

  1. Zebhauser PT, Vernet M, Unterburger E, et al. Visuospatial Neglect – a Theory-Informed Overview of Current and Emerging Strategies and a Systematic Review on the Therapeutic Use of Non-invasive Brain Stimulation. Neuropsychol Rev. 2019;29:397-420. doi: 10.1007/s11065-019-09417-4
  2. Rorden C, Jelsone L, Simon-Dack S, Baylis LL, Baylis GC. Visual extinction: the effect of temporal and spatial bias. Neuropsychologia. 2009;47(2):321-329. doi: 10.1016/j.neuropsychologia.2008.09.004
  3. Terruzzi S, Albini F, Massetti G, et al. The Neuropsychological Assessment of Unilateral Spatial Neglect Through Computerized and Virtual Reality Tools: A Scoping Review. Neuropsychol Rev. 2024;34:363-401. doi: 10.1007/s11065-023-09586-3
  4. Chen P, Hreha K, Fortis P, Goedert KM, Barrett AM. Functional Assessment of Spatial Neglect: A Review of the Catherine Bergego Scale and an Introduction of the Kessler Foundation Neglect Assessment Process. Top Stroke Rehabil. 2012;19(5):423-435. doi: 10.1310/tsr1905-423

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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