呼吸評価の基本|観察・聴診・運動耐容の押さえ方

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呼吸評価の基本|観察・聴診・運動耐容をベッドサイドで使いこなす

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結論:① 安全確認(RR / SpO₂ / 症状)→ ② 基本評価(視診・触診・打診・聴診/スパイロ)→ ③ 運動耐容(6MWT / ISWT)で最低 SpO₂ と回復時間を次の処方へ。

中止基準:SpO₂ 急低下/胸痛・強い息切れ/失神前駆など(STOP カード)。

記録:条件(体位・酸素)→ 数値/所見 → 症状 → 次アクションの順で統一。

本稿はベッドサイドでの呼吸評価を「安全 → 基本 → 実践」の順に最短ルート化しました。まずフィジカルと安全(病歴・併存症、バイタル、呼吸パターン、視触打聴診、SpO₂ 監視)を押さえ、機能・活動(スパイロ、呼吸困難、ADL・歩数、フィールド歩行、握力、栄養)へ展開。必要に応じて筋力・ QOL・高度評価へ段階づけます。詳細の体系整理は 呼吸評価ハブ も参照。閾値や中止基準は施設 SOP と主治医指示を優先してください。

代表的な呼吸評価項目(実践リファレンス)

現場で迷いやすい「どこを見る/どう解釈し次アクションに繋ぐか」を、必須 → 望ましい → 可能なら の順に整理しました。閾値や中止基準は施設 SOP/主治医指示を優先してください。

必須|フィジカル/安全

フィジカル・安全確認:見る指標と次アクション
項目 何を見る 実施のコツ 中止・注意
病歴・併存症 呼吸器/心血管/代謝/腎、服薬、急性増悪因子、喫煙歴、手術歴 看護サマリ・退院サマリで裏取り。救急来院時記録も確認 抗凝固中・感染症は処置/体位移動の安全配慮
バイタル HR, BP, RR, 体温、意識レベル 安静 3–5 分の基準値。RR は 1 分実測 急変兆候は即座に中止し共有
呼吸パターン 胸腹運動の同期性、補助筋使用、奇異呼吸、口すぼめ呼吸 安静/会話/軽運動で比較。体位で変わるかを見る 増悪疑い時は無理な負荷を避ける
視・触・打・聴診 努力呼吸、痰性状、打診(過共鳴/濁音)、聴診(wheeze/crackle/air entry) 左右対称に比較。衣類・体毛の擦過音を抑える 著明な左右差・新規ラ音は医療者間で即共有
SpO₂ 監視 安静/体位変換/歩行時の最低値と回復時間 末梢冷感時は指先以外も検討。プローブ密着を確認 急低下・症状増悪で中止(施設 STOP 基準に準拠)
胸部 X 線 透過性、無気肺、浸潤影、心拡大、うっ血所見 直近像と比較。体位や撮影条件の違いに注意 新規無気肺/大量胸水は体位・運動の組み立てを変更
心電図 リズム、不整脈、虚血所見 運動負荷前に確認。既往との比較が有用 新規不整脈や胸痛出現で中止

必須|機能・活動

機能・活動:測る理由と解釈の要点
項目 何を見る 解釈の要点 実務メモ
スパイロ(FVC/FEV₁/FEV₁%) 努力性肺活量、1 秒量、比 FEV₁/FVC 低下→閉塞性示唆、FVC 低下→拘束性示唆(基準は施設/GL 準拠) 鼻クリップ使用。3 回の再現性を確保
呼吸困難(mMRC/Borg) 症状の重みと活動時変化 安静 ⇄ 運動の差分が処方の根拠 公式配布物を用い、項目本文の転載は避ける
ADL 自立度・介助量(食事/整容/移動) 酸素・デバイス併用下での実用性を評価 同一条件(時間帯/体位/導線)で追跡
歩数 平日/休日の平均歩数、最大連続歩数 低活動は再増悪リスク。増加傾向が重要 ポケット装着位置を固定。週単位で評価
フィールド歩行(6MWT/ISWT) 運動耐容、最低 SpO₂、症状スコア 最低 SpO₂ と回復時間を処方に反映 コース規格・補助具・声掛けを統一。中止基準は SOP
握力 上肢筋力の簡便指標 低下は予後・再増悪と関連。栄養/活動と併せ解釈 左右各 2–3 回で最大値採用
栄養(BMI/%IBW/%LBW) 栄養状態と体重推移 BMI と %IBW/%LBW を総合判断。急激な減量は要注意 BMI=体重/身長²、%IBW=実測/基準体重 × 100(施設基準)

望ましい|筋力・ QOL

筋力・ QOL:追加で押さえると良い項目
項目 何を見る 解釈の要点 実務メモ
四肢筋力 MMT またはハンドヘルドダイナモ 下肢近位筋低下は歩行耐容を制限 安全な体位固定。疼痛・痙縮に配慮
健康関連 QOL(CAT/SGRQ 等) 症状負担・活動制限・健康感 総合点と下位領域の変化でフォロー 公式配布物を使用。転載は不可
日常生活での SpO₂ 歩行/階段/入浴などの最低値と回復 低下場面の特定 → 体位/休息/処方へ反映 自覚症状も同時に記録

可能なら|高度評価

高度評価:実施環境が整えば
項目 何を見る 解釈の要点 実務メモ
身体活動量(加速度計) 1–2 週の平均歩数・活動時間 増加傾向が重要。曜日差も確認 装着位置・時間帯を統一し欠損を回避
呼吸筋力(PImax/PEmax) 最大吸気/呼気口腔内圧 低値は咳・換気の限界を示唆 マウスピース密閉、再現性の確保
栄養詳細 質問票・体成分(筋/脂肪)・代謝・生化学 炎症や浮腫の影響を加味し総合判断 同一条件・同一機器で追跡
動脈血液ガス(ABG) pH, PaCO₂, PaO₂, HCO₃⁻ 換気/酸素化/代償の方向性を確認 穿刺は要件を満たす者が実施。止血と疼痛配慮

よくある質問(要点だけ)

Q. 呼吸数の正常値は? A. 成人で概ね 12–20 回/分。様相(努力呼吸/会話困難)も併せて判断。

Q. 聴診の順番は? A. 左右対称に、前胸 → 側胸 → 背部(上葉 → 中/舌区 → 下葉)。

Q. 6MWT の要点は? A. コース規格化・声掛け統一・最低 SpO₂ と回復時間を記録。中止基準は施設 SOP。

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FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

呼吸数の正しい測り方は?(成人の正常値は?)

安静坐位で 1 分間の胸腹部運動を観察してカウント(会話や意識で変化しないよう自然に)。成人の目安は概ね 12–20 回/分。苦悶・会話困難・努力呼吸があれば数値より「様相」を優先して評価します。

聴診部位と順番は?(聴こえにくい時のコツ)

前胸部・側胸部・背部を左右対称に比較(上葉 → 中/舌区 → 下葉)。衣類・髪・体毛の擦過音を最小化、口呼吸でやや深めに。雑音が強いときは体位を変え、数呼吸待って再評価します。

評価を中止すべき基準は?

SpO₂ の急低下、著しい頻脈/徐脈、強い呼吸困難、眩暈や失神前駆、失語/意識変容など。STOP カードを併用し、記録に残します。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:呼吸リハ、嚥下・栄養、脳卒中、褥瘡・創傷、シーティング

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