身体拘束具の種類と使い分け|11例・代替・解除【Excel・PDF】

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身体拘束具の種類と使い分け|ミトン・4点柵・車いすテーブル

身体拘束具の種類を確認するときは、用具名だけでなく、その使い方によって本人の行動の自由を制限しているかを見ることが重要です。厚生労働省は、ベッドを柵で囲む、ミトンで手指の機能を制限する、腰ベルトや車いすテーブルで立ち上がりを防ぐなど、身体拘束廃止・防止の対象となる11の具体例を示しています。

この記事では、まず公式の11例を確認し、そのうえでミトン・抑制帯・4点柵・車いすテーブル・介護衣について、身体拘束に当たる場面、先に確認したい原因、代替案、解除・縮小へ向けた観察を整理します。病棟や施設で「これは拘束か」「何から代替するか」に迷う医療・介護職向けの記事です。

身体拘束は11項目が例示されている|判断の中心は「行動の自由」

身体拘束に該当するかを考えるときの中心は、本人の行動の自由を制限しているかどうかです。厚生労働省の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」では、身体拘束廃止・防止の対象となる具体的な行為として11項目が例示されています。

重要なのは、この11項目が「身体拘束具の11種類」という意味ではないことです。薬剤による行動制限や隔離も含まれており、11項目はあくまで具体例です。用具名だけで結論を出さず、実際に本人のどの行動を、どのように制限しているかを確認します。

厚生労働省が示す身体拘束廃止・防止の対象となる11の具体例
No. 具体例の要点 主な用具・行為
1 一人歩きをさせないため、車いす・椅子・ベッドで体幹や四肢を固定する ひも・抑制帯など
2 転落を防ぐため、ベッド上で体幹や四肢を固定する ひも・抑制帯など
3 自分でベッドから降りられないよう、ベッドを柵で囲む サイドレール・4点柵など
4 点滴・経管栄養などのチューブを抜かないよう、四肢を固定する ひも・抑制帯など
5 チューブ抜去や皮膚の掻きむしりを防ぐため、手指の機能を制限する ミトン型手袋など
6 車いす・椅子からのずり落ちや立ち上がりを防ぐ Y字型拘束帯、腰ベルト、車いすテーブル
7 立ち上がる能力がある人の立ち上がりを妨げる 立ち上がりを制限する椅子
8 脱衣やオムツ外しを制限する 介護衣(つなぎ服)
9 他人への迷惑行為を防ぐため、ベッドなどで体幹や四肢を固定する ひも・抑制帯など
10 行動を落ち着かせる目的で向精神薬を過剰に使用する 薬剤による行動制限
11 本人が自分の意思で開けられない居室などへ隔離する 隔離・施錠

たとえばベッド柵では、「4点だから拘束、3点なら拘束ではない」と本数だけで判断するのではなく、本人が自分でベッドから降りられない状態をつくっているかを確認します。同じように、車いすテーブルやミトンも、用具名だけではなく使用目的と実際に制限されている行動を確認することが重要です。

身体拘束か迷ったときの判断フロー。厚生労働省の11例を確認し、行動の自由、使用目的、原因、代替方法、継続・縮小・解除の再評価へ進む流れを示す図
身体拘束か迷ったときは、11例の確認だけで終わらず、目的・原因・代替方法・再評価まで順に整理します。

ミトン・抑制帯・4点柵などは5群で整理すると判断しやすい

11の具体例のうち、病棟や施設で「身体拘束具」として判断に迷いやすいものは、ミトン、抑制帯・腰ベルト、ベッド柵、車いすテーブル・椅子、介護衣の5群に整理できます。見るべきなのは、何を防ぐために使用し、本人のどの行動を制限しているかです。

身体拘束具5群:該当する場面・先に見る原因・代替案
用具 身体拘束の具体例に当たる使い方 先に確認すること 代替案の方向性 解除・縮小へ向けた観察
ミトン型手袋 チューブ抜去や掻きむしりを防ぐため、手指の機能を制限する 触る時間帯・場面、疼痛や違和感、覚醒・せん妄、ライン配置 ライン整理、固定方法の見直し、疼痛・せん妄への対応、見守り方法の調整 原因への介入後に行動がどう変わったか、常時の制限が必要か
抑制帯・腰ベルト 立ち上がりやずり落ちなどを防ぐため、体幹や移動を制限する 立ち上がる理由、移乗・立位能力、ふらつき、排泄、疼痛、不安 見守り方法、離床計画、排泄調整、シーティング、環境調整 より制限の少ない方法で安全を確保できるか
ベッド柵・4点柵 本人が自力でベッドから降りられないよう、サイドレールで囲む 起き上がり・端座位、離床時間帯、排泄、柵を乗り越える行動 低床、床マット、部分柵、動線整理、離床・排泄支援 囲い込みを減らしても安全を確保できる環境になったか
車いすテーブル・椅子 立ち上がりやずり落ちを防ぐ目的で行動を制限する 立ち上がる理由、座位保持、骨盤位置、足底接地、疼痛、排泄 座面・フットサポート調整、骨盤支持、活動・排泄・疼痛への対応 姿勢・環境調整後に行動制限を減らせるか
介護衣(つなぎ服) 脱衣やオムツ外しを防ぐ目的で行動を制限する 皮膚状態、排泄、不快感、温熱、衣類素材、脱衣する時間帯 スキンケア、排泄支援、衣類・オムツの見直し、環境調整 原因への対応後も衣類による制限が必要か

4点柵・車いすテーブル・ミトンで迷うときの判断ポイント

特に判断が分かれやすいのは、同じ用具が安全確保や活動の補助にも使われる一方、使い方によっては本人の行動を制限する点です。迷ったときは、用具の名称より「本人は何をしようとしていて、この用具によって何ができなくなっているか」へ戻って確認します。

4点柵・高柵:自分でベッドから降りられないよう囲っているか

厚生労働省が具体例として示しているのは、本人が自分でベッドから降りられないよう、ベッドを柵(サイドレール)で囲む行為です。したがって、「4点柵」という名称や本数だけでなく、その配置によって本人の離床という行動が実際に制限されているかを確認します。

転落リスクがある場合も、離床の時間帯や理由、起き上がり・端座位能力、排泄、環境を確認し、低床、部分柵、床マット、動線調整など、より制限の少ない方法で安全を確保できないか検討します。

車いすテーブル:作業の補助か、立ち上がりを止める目的か

車いすテーブルは、食事や作業の支持面として使用する場面と、立ち上がりやずり落ちを防ぐために使用する場面を分けて考えます。厚生労働省の具体例では、ずり落ちたり立ち上がったりしないように車いすテーブルをつける行為が示されています。

立ち上がりが問題になっている場合は、その背景に排泄、疼痛、不安、座位不良、足底接地不良などがないかを確認します。シーティング調整は「立たせないため」ではなく、本人が安定して過ごせる条件を整え、行動制限を減らせるかを検討するために行います。

ミトン:片手か両手かではなく、手指の機能を制限しているか

ミトンは「両手なら拘束、片手なら拘束ではない」と本数だけで判断するものではありません。厚生労働省は、点滴・経管栄養などのチューブ抜去や皮膚の掻きむしりを防ぐために、手指の機能を制限するミトン型手袋などを装着する行為を具体例として示しています。

使用を検討する場面では、チューブへ触る時間帯や場面、疼痛・違和感、せん妄、ラインの位置などを確認します。原因への対応後も同じ範囲・時間の制限が必要なのかを再評価し、必要性が低下した場合は縮小・解除を検討します。

抑制帯・腰ベルト:立ち上がりを止める前に理由を確認する

腰ベルトや抑制帯を使う場面では、「立ち上がると危ない」という結果だけでなく、なぜ立ち上がろうとしているのかを確認します。排泄、疼痛、不安、長時間の座位、姿勢不良など、背景が変われば必要な対応も変わります。

PT・OTは、移乗能力、立位・歩行時の介助量、座位姿勢、足底接地、ふらつきなどの機能情報を共有し、見守り方法や環境調整など、より制限の少ない方法へ変更できないか検討します。

介護衣(つなぎ服):脱衣やオムツ外しの背景を確認する

介護衣は、脱衣やオムツ外しを制限するために使用する場合、身体拘束の具体例として示されています。衣類そのものだけを見るのではなく、脱衣やオムツ外しにつながっている不快の原因を確認します。

皮膚トラブル、排泄のタイミング、オムツの不快感、暑さ、衣類素材などを確認し、スキンケア、排泄支援、衣類・オムツの見直しなどで行動制限を減らせないか検討します。

代替案は「目的 → 原因 → より制限の少ない方法」で考える

身体拘束の代替案は、用具ごとに決まった方法を当てはめるのではなく、まず何を防ごうとしているのかを具体化し、その行動が起きる原因を評価してから選びます。

たとえば、チューブへ手を伸ばす場合はライン配置、疼痛・違和感、せん妄などを、立ち上がる場合は排泄、疼痛、姿勢、活動、不安などを確認します。脱衣やオムツ外しでは、皮膚状態、排泄、温熱、不快感などが手掛かりになります。

代替案を考えるときの「目的 → 原因 → 置換」
防ぎたいこと 先に確認する原因 代替案の例
チューブ抜去 疼痛・違和感、ライン配置、せん妄、覚醒状態 ライン整理、固定方法の見直し、疼痛・せん妄への対応、見守り調整
転落・離床 排泄、起き上がり能力、夜間覚醒、環境、ふらつき 低床、部分柵、床マット、動線整理、離床・排泄支援
立ち上がり 排泄、疼痛、不安、座位不良、活動不足 シーティング、排泄調整、活動機会、見守り方法の見直し
脱衣・オムツ外し 皮膚、排泄、温熱、不快感、衣類・オムツ スキンケア、排泄支援、衣類・オムツの変更、環境調整

介護領域の厚生労働省手引きでも、「非代替性」を検討するときは、まず身体拘束を行わずに対応する方法の可能性を検討し、身体拘束を行う場合にも本人の状態に応じて最も制限の少ない方法とする考え方が示されています。

身体拘束の種類・代替・再評価チェックシート【Excel・PDF】

身体拘束の11例、今回使用している用具と目的、代替方法、継続・縮小・解除に向けた再評価をA4縦1ページで整理できるチェックシートを用意しました。Excelは院内運用に合わせて編集する原本として、PDFは印刷・確認用として利用できます。

身体拘束の種類・代替・再評価チェックシート

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PDFプレビューが表示されない場合は、上のPDFリンクから直接開いてください。

解除・縮小は一律の数値ではなく、必要性を再評価して決める

身体拘束の解除条件に、すべての患者・利用者へ共通する「立位保持○秒」「夜間離床○回」「○時間後に解除」といった一律の数値基準があるわけではありません。何が危険なのか、原因への介入後に何が変わったのか、より制限の少ない方法へ置き換えられるかを個別に再評価します。

介護領域では、緊急やむを得ない場合に身体拘束を行うには、切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たすことが求められます。

緊急やむを得ない場合の3要件
要件 確認すること 解除・縮小へ向けた再評価
切迫性 本人または他者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いか 危険の程度が低下していないか
非代替性 身体拘束などの行動制限以外に代替する方法がないか 環境・ケア・見守りなどへ置き換えられないか
一時性 身体拘束などの行動制限が一時的なものか 現在も同じ時間・範囲の制限が必要か

3要件のいずれかを満たさなくなった場合は、漫然と継続せず解除を検討します。また、拘束を一時的に解除して本人の状態を観察し、継続の必要性を再検討することも重要です。

なお、3要件は介護保険制度に基づく運営基準を踏まえた整理です。病院では、現行の診療報酬上の身体的拘束最小化の基準と、各医療機関の身体的拘束最小化指針・手順に沿って判断してください。

身体拘束の記録は施設・病院の正式な要件を優先する

身体拘束の記録は、独自の「5項目」だけで完結させず、施設・事業所・病院で定められた正式な様式と基準を優先します。介護領域の厚生労働省手引きでは、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合、その態様および時間、本人の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録することが示されています。

さらに、切迫性・非代替性・一時性を満たすと判断した具体的な根拠、再検討した内容、今後のケア、本人の状態や家族の意見などを逐次記録し、関係者で共有していくことが求められます。

病院についても、令和8年度診療報酬改定における身体的拘束最小化の基準では、身体的拘束を行う場合に、その態様・時間、患者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録することなどが示されています。

身体拘束の記録で確認したい主な内容
項目 確認・記録する内容
態様・時間 どの方法を、いつ、どの時間帯に実施したか
本人の状態 実施時の心身の状況、行動、危険の具体的内容
理由 なぜ緊急やむを得ないと判断したのか
代替方法 拘束以外に検討・実施した方法と、その結果
再評価 継続・縮小・解除をどう判断したか、その後の変化

当日の記録項目や書き方まで具体的に確認したい場合は、身体拘束の当日記録テンプレ【PDF付き】で整理しています。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 4点柵は身体拘束に当たりますか?

厚生労働省は、自分でベッドから降りられないようにベッドを柵(サイドレール)で囲む行為を、身体拘束の具体例として示しています。「4点」という本数だけで判断するのではなく、実際に本人の離床という行動の自由を制限しているかを確認します。

Q2. 車いすテーブルは身体拘束になりますか?

食事や作業の支持面として使用する場合と、立ち上がりやずり落ちを防ぐために行動を制限する場合は分けて考えます。厚生労働省は、立ち上がり等を防ぐ目的で車いすテーブルをつける行為を、身体拘束の具体例として示しています。

Q3. ミトンは片手だけなら身体拘束ではありませんか?

片手か両手かだけでは判断できません。チューブ抜去や皮膚の掻きむしりを防ぐために手指の機能を制限し、本人の行動の自由を制限している場合は、片側であっても身体拘束に該当する行為として検討する必要があります。

Q4. 緊急やむを得ない場合なら身体拘束を続けてもよいですか?

漫然と継続するものではありません。介護領域では切迫性・非代替性・一時性をすべて満たすかを継続して再評価し、要件を満たさなくなった場合には解除することが重要です。病院では、現行の身体的拘束最小化の基準と院内指針に沿って判断してください。

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参考文献

  1. 厚生労働省老健局. 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き. 令和7年3月. PDF
  2. 厚生労働省保険局医療課. 令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】. 令和8年6月30日版. 2026. PDF
  3. 厚生労働省老健局高齢者支援課ほか. 高齢者施設等における高齢者虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化のための措置の徹底並びに周知に関する取組の実施について. 2025. PDF
  4. Chou MY, Hsu YH, Wang YC, Chu CS, Liao MC, Liang CK, et al. The adverse effects of physical restraint use among older adult patients admitted to the internal medicine wards: a hospital-based retrospective cohort study. J Nutr Health Aging. 2020;24(2):160-165. PubMed / DOI
  5. Abraham J, Hirt J, Richter C, Köpke S, Meyer G, Möhler R. Interventions for preventing and reducing the use of physical restraints of older people in general hospital settings. Cochrane Database Syst Rev. 2022;8(8):CD012476. PubMed / DOI

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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