舌苔スコア( TCI )の評価方法| 9 分割と前後比較

栄養・嚥下
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舌苔スコア( TCI )の評価方法| 9 分割の見方と口腔ケア前後の記録

TCI( Tongue Coating Index )は、舌苔を 9 区画で観察し、口腔衛生の状態を点数化する評価です。誤嚥性肺炎のリスクが気になる場面では、「何を優先してケアするか」の判断材料になり、ケア前後の変化も追えます。

本記事では、 9 分割の見方( 0/1/2 点 )、計算方法、 50% を目安にした解釈、よくある迷いどころの統一ルール、症例ベースの前後比較まで整理します。

TCI( Tongue Coating Index )とは?

舌苔は、細菌・剥離上皮・食渣などが舌背に付着したもので、口臭や口腔内細菌叢、口腔乾燥と関係します。TCI は、舌背を区画化して「厚さ(付着の程度)」を観察し、主観を減らして記録できる点が利点です。

どんなときに使う?(臨床での使いどころ)

TCI が役立つ場面(成人・臨床向け)
場面 ねらい 見たい変化 次アクション例
病棟・施設 口腔衛生とリスクの把握 舌苔の減少、乾燥の改善 清掃手順の見直し、保湿、摂食前ケア
周術期・誤嚥リスク ケア優先度の判断 厚い舌苔が残る部位の特定 頻度・方法の最適化、専門職連携
訪問・在宅 セルフケア指導の効果判定 前後比較、家族介助の質 道具選定、ルーティン化

採点方法:舌を 9 分割して 0/1/2 点

TCI は舌背を 9 区画に分け、各区画を 0 / 1 / 2 点で評価します。観察は「照明」と「乾燥」の影響が大きいので、可能なら同じ環境・同じ姿勢で行います。

TCI の採点ルール(迷いを減らす運用)
点数 状態 現場での言い換え 注意
0 舌苔なし 赤い舌が見える 乾燥で白く見えることがある
1 薄い舌苔 うっすら白い、まだ舌が見える 「薄い膜」レベルは 1 に寄せる
2 厚い舌苔 白〜黄白で厚く、舌が見えにくい 厚さが主体。色だけで決めない

計算:合計点から % を出す

合計点は最大 18 点( 9 区画 × 2 点 )です。TCI( % )は一般に(合計点 ÷ 18)× 100で算出します。現場運用では「合計点」も併記すると、電卓なしでも共有しやすくなります。

TCI の算出例(記録の形)
合計点 TCI( % ) メモ例
6 約 33% 薄い舌苔が散在
9 50% 衛生不良の目安として扱いやすい
12 約 67% 厚い舌苔が広範囲

解釈: 50%(合計 9 点)を一つの目安にする

TCI は「絶対値」より、ケア前後の変化(反応)経時変化(再発)を見える化する目的で強い指標です。現場では TCI 50%(合計 9 点)前後を「衛生不良の目安」として、ケアの優先度を判断しやすくなります。

一方で、口腔乾燥が強いと舌が白く見えたり、食直後に付着が増えたりします。観察タイミング(食前/食後、ケア前/後)を固定すると、解釈のブレが減ります。

現場の詰まりどころ

TCI が運用で崩れる原因は、点数の知識不足よりも条件の不統一です。先に失敗パターンを潰すと、前後比較が実務で使えるデータに変わります。

よくある迷いどころと統一ルール(表)

TCI がブレる原因と、現場での統一ルール
迷い 起きやすい理由 統一ルール 記録ポイント
白いけど舌苔?乾燥? 乾燥で舌背が白く見える 湿潤を整えて再観察(保湿後) 乾燥の有無
薄い膜は 1 か 2 か 「厚さ」の判断が主観 迷ったら 1 に寄せ、経時で追う 部位(どこが残るか)
区画が曖昧 見慣れていない 中央 3 × 左右 3 のイメージで固定 写真(可能なら)
ケア直後は 0 になりやすい 短期反応が大きい 「ケア前」と「次の食前」をセットで記録 タイミング

TCI を「介入の道具」にする:前後比較の型

TCI は「現状把握」だけでなく、口腔ケアの効果判定に使うと価値が上がります。おすすめは、

  • ケア前 TCI → ケア後 TCI → 次の食前 TCI(再付着の速さも見える)
  • 厚い舌苔が残る区画を特定して、手技・道具・保湿を調整する

同じ患者でも日内変動があるため、評価タイミングを固定して比較するのがコツです。

症例ベースで見る:介入前後の TCI 推移( 1 ケース )

ここでは、「ケア前 → ケア後 → 次の食前」の 3 点で TCI を追った例を示します。ポイントは、単発の改善ではなく再付着の速さまで確認して、次の介入に反映することです。

症例:TCI の前後比較( 3 日間 )
測定タイミング 合計点( /18 ) TCI( % ) 所見 対応
Day 1 ケア前 11 61% 舌中央〜後方に厚い付着、口腔乾燥あり 保湿後に舌清掃、道具を軟毛に変更
Day 1 ケア後 7 39% 直後は改善 次の食前で再評価を予約
Day 2 次の食前 9 50% 再付着あり(特に後方) 就寝前ケア追加、保湿頻度を増加
Day 3 次の食前 6 33% 再付着の減少、後方残存が軽減 現行手順を継続、週次モニタへ移行

この症例の読み方(実務で使う要点)

  • ケア後だけで判断しない:Day 1 は改善しても Day 2 で戻るため、次の食前の再評価が必須です。
  • 戻る部位を記録する:「どこが残るか」を追うと、手技・道具・保湿の調整がしやすくなります。
  • 目標は“安定して下がること”:単回の低下より、2〜3 日で再付着が鈍るかを重視します。

記録テンプレ(コピペ用)

TCI:ケア前 ____ 点( ____ % )/ケア後 ____ 点( ____ % )/次の食前 ____ 点( ____ % )
乾燥:あり・なし 残存部位:前方・中央・後方(右・中央・左)
本日の調整:保湿(頻度)/清掃手技/道具変更/介助方法(家族・スタッフ)

在宅版症例で見る:家族介助を含む TCI 運用( 1 ケース )

在宅では、道具や介助者が日によって変わるため、「同じタイミングで測る」「同じ言葉で共有する」ことが効果判定の鍵です。ここでは、家族介助を含む 4 日間の推移を示します。

在宅症例:家族介助を含む TCI の前後比較( 4 日間 )
測定タイミング 合計点( /18 ) TCI( % ) 所見 対応
Day 1 朝食前(ケア前) 10 56% 中央〜後方に付着、口唇乾燥あり 保湿ジェル導入、家族へ手順説明
Day 1 朝食前(ケア後) 7 39% 直後は改善、後方に薄く残存 後方は「強くこすらない」を指導
Day 2 朝食前(次回評価) 9 50% 再付着あり、就寝中の乾燥影響 就寝前保湿を追加、加湿を提案
Day 3 朝食前(次回評価) 7 39% 再付着の範囲が縮小 介助手順をチェックリスト化
Day 4 朝食前(次回評価) 6 33% 後方残存が軽減、安定傾向 現行手順を継続、週 2 回で追跡

在宅で失敗しやすいポイントと回避策

在宅 TCI 運用の OK / NG 早見表
場面 NG(ブレる) OK(安定する) 記録ポイント
測定タイミング 日によって食前・食後が混在 毎回「朝食前」に固定 実施時刻
介助の方法 家族ごとに手技が異なる 手順を 3 ステップで統一 介助者名
乾燥対応 清掃だけで保湿を省略 保湿→清掃の順を固定 乾燥の有無
評価の見方 合計点だけを見る 残存部位(前・中・後)も記録 残存部位

家族と共有しやすい 3 ステップ

  1. 保湿:舌背を湿らせてから開始する
  2. 清掃:痛みが出ない圧で前方から後方へ、残存部位を意識する
  3. 再評価:同じタイミングで TCI を取り、前回との差分を共有する

在宅記録テンプレ(コピペ用)

TCI:朝食前(ケア前)____ 点( ____ % )/ケア後 ____ 点( ____ % )/翌日朝食前 ____ 点( ____ % )
乾燥:あり・なし 残存部位:前方・中央・後方(右・中央・左)
介助者:本人・家族(続柄) 調整:保湿頻度/道具/手技/実施時間

よくある質問(FAQ)

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TCI はどのくらいの頻度で観察すべき?

誤嚥性肺炎リスクが高い場面では、少なくとも 1 日 1 回は「同じタイミング」で記録すると変化が追いやすいです。口腔ケアの介入中は「ケア前後」を短期で取り、手技の最適化に使うと効率が上がります。

TCI が高いとき、まず何を優先する?

「乾燥」と「付着」がセットで悪化しやすいので、保湿 → 清掃の順で整えると取りやすいことが多いです。摂食前のケアや、水分・唾液の状況も合わせて見ます。

口腔ケア直後は良く見えるのに、すぐ戻ります

再付着の速さは、乾燥・摂食状況・セルフケアの質などの影響を受けます。「ケア直後」だけでなく、次の食前も同じ条件で取り、戻りやすい区画を中心に介入を調整します。

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参考文献

  1. Minakuchi S, Tsuga K, Ikebe K, et al. Oral hypofunction in the older population: Position paper of the Japanese Society of Gerodontology in 2016. Gerodontology. 2018;35(4):317-324. doi: 10.1111/ger.12347(PubMed: 29882364
  2. Hatanaka Y, Ogami K, Iwasaki M, et al. Regular Oral Health Management Improved Oral Function in Older Dental Outpatients with Oral Hypofunction. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(4):2154. doi: 10.3390/ijerph19042154(PubMed: 35206410

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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