退院後の運動指導|PT・OTが決める活動量・強度・中止条件

臨床手技・プロトコル
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退院後の運動指導は「家で再現できる条件」まで決める

退院後の運動指導で大切なのは、「できるだけ歩きましょう」「無理のない範囲で運動しましょう」で終わらせないことです。患者さん・家族が自宅へ戻ったあとも迷わないように、何を・週何日・1回何分・どのくらいの強さで行い、どんな症状が出たら止めるかまで具体化します。

退院直後は、健康づくりの推奨量をいきなり達成することより、退院時の活動量、身体機能、疾患、疼痛・息切れ、転倒リスク、医師からの指示などを踏まえて、現在より少し増やせる活動を1つ決めることが実践的です。

この記事では、PT・OTが退院前に使いやすいように、活動を決める → 中止・相談条件 → 現在量 → 頻度・時間・強度 → 理解確認 → フォローの6ステップで整理します。

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強度設定を詳しく確認する:運動強度の決め方

退院後の運動指導で最初に決めること
確認項目 退院時に決めること 曖昧な伝え方
活動 屋外歩行、屋内移動、家事など、まず増やす活動を1つ決める 「なるべく動きましょう」
量 週何日、1回何分、1日何回かを具体化する 「できるだけ歩きましょう」
強度 会話できる程度など、本人が判断できる言葉にする 「無理のない強さで」
安全 中止する症状と、その後に相談する条件を共有する 「具合が悪ければ休む」
フォロー いつ、何を見て増量・維持・減量するかを決める 「様子を見ながら増やす」

退院時の運動指導は6ステップで組み立てる

退院時の指導は、運動メニューをたくさん渡すより、自宅で実行できる1つの活動を、安全条件とセットで具体化する方が整理しやすくなります。本記事では、次の6ステップを基本の型とします。

退院時の運動指導6ステップ。増やす活動、中止・相談条件、現在の活動量、頻度・時間・強度、本人・家族による説明、7日後の見直しを整理した図版
退院後の運動指導は「何をするか」だけでなく、中止条件と見直し方法までセットで決めます。
退院時の運動指導6ステップ
ステップ 決めること 確認例
1. 活動を決める 退院後に増やしたい活動を1つ選ぶ 屋外歩行、屋内移動、家事など
2. 中止条件を決める 運動を止める症状と相談先を共有する 胸痛、めまい、強い息切れなど
3. 現在量を確認する 今どれくらい動けているかを把握する 歩行時間、歩数、外出頻度など
4. 条件を具体化する 頻度・時間・強度を決める 週4日、10分、会話できる程度など
5. 説明し返してもらう 自宅での実施方法を本人・家族の言葉で確認する 「家ではどうやりますか?」
6. 見直す 実施量と身体反応から次の条件を調整する 増やす・維持・下げる

まず「現在どれくらい動いているか」を確認する

運動量を決める前に必要なのは、退院時点の現在量です。同じ10分歩行でも、もともと病棟内を何度も歩いている人と、離床時間が短い人では負荷の意味が異なります。

また、病院内で歩ける距離をそのまま自宅へ当てはめるのではなく、自宅の環境と生活の中で実行できるかを確認します。屋内の動線、段差、階段、屋外路面、歩行補助具、家族の見守り、トイレや食事への移動などを踏まえて設定します。

退院後の運動量を決める前に確認する最小セット
項目 確認する内容 指導へのつなげ方
現在の活動量 歩行時間、歩数、離床時間、外出頻度 現在量から大きく離れた目標を避ける
症状 疲労、疼痛、息切れ、めまいなど 負荷を上げにくい要因を先に確認する
移動能力 補助具、介助量、歩行距離、休憩の必要性 安全に反復できる活動を選ぶ
生活環境 屋内動線、階段、屋外路面、家族の支援 実生活で継続できる方法へ調整する
医学的条件 疾患、治療経過、医師指示、運動制限 一般的な目安より個別指示を優先する

「歩く時間を増やす」だけでなく、トイレまで自分で移動する、食後に屋内を1周する、立って行う家事を増やすなど、生活そのものを活動量アップの手段にする方法もあります。

中止・相談条件は運動を始める前に共有する

退院後の運動では、本人・家族が「続けてよい反応」と「止めるべき異変」を判断できることが重要です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、運動中に胸痛、動悸、めまい・ふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節・筋肉の強い痛みなどを認めた場合は、運動を中止するよう示されています。

退院患者では疾患や治療内容がさまざまなため、一律の数値だけで中止条件を決めないことも大切です。血圧、心拍数、SpO2などについて個別の指示がある場合は、その条件を優先して患者さん・家族へ共有します。

退院後の運動で共有する中止・相談条件
状況 例 基本対応
開始前から体調が悪い 発熱、強い倦怠感、普段と違う息切れ、強い疼痛など 無理に開始せず、休養や必要な相談を優先する
運動中に異変が出た 胸痛、動悸、めまい・ふらつき、冷や汗、強い痛み、強い息切れなど 運動を中止し、安全な姿勢で状態を確認する
症状が強い・続く 安静にしても改善しない症状、意識状態の異常など 事前に示された連絡先への相談や、状態に応じた救急対応を優先する
翌日まで悪化が残る 疲労や疼痛が強く残る、生活動作が普段より低下する 次回の時間・頻度・強度を見直す

「痛かったらやめてください」だけでは、本人によって判断が変わります。どんな症状ならその場で中止するのか、休めば再開できるのか、誰へ相談するのかまで決めておくと、自宅での判断がそろいやすくなります。

頻度・時間・強度は患者さんの言葉に変換する

退院後の運動指導では、FITTなどの専門用語をそのまま説明する必要はありません。患者さんには、「週何日」「1回何分」「どれくらいの強さ」「何をするか」へ変換して伝えます。

特に強度は、心拍数などの数値だけでなく、「会話ができる程度」のように本人が自宅で再現できる言葉を併用すると扱いやすくなります。より詳しいRPE・心拍・Talk testの使い分けは、運動強度の記事で確認してください。

退院後に伝える運動条件の具体化
項目 決める内容 患者さんへの伝え方の例
頻度 週に何日、1日に何回か 「まず週4日から始めましょう」
時間 1回何分行うか 「1回10分を目安にしましょう」
強度 息切れ・会話・RPEなど 「会話できるくらいの速さにしましょう」
種類 実際に行う活動 「家の前の平坦な道を歩きましょう」
休憩 連続が難しい場合の分割方法 「疲れる前に休み、短く分けても構いません」

退院時の説明例

「退院後は、まず家の前の平坦な道を10分、週4日から始めましょう。会話ができるくらいの速さを目安にします。胸痛や強い息切れ、めまいなどが出たら中止してください。7日ほど実施したら、できた日数と疲れ・痛みの残り方を確認して次の量を決めましょう。」

これはあくまで説明の型です。実際の頻度・時間・強度は、退院時の能力や医学的条件に合わせて個別に設定します。

23・15メッツ・時は「退院直後のノルマ」ではない

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上、高齢者は週15メッツ・時以上行うことが推奨されています。具体例として、成人では歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、高齢者では1日40分以上が示されています。

ただし、これは健康づくりのための推奨量です。退院直後の患者さんに対して、23または15メッツ・時を一律の初期目標として課すものではありません。ガイド自体も、個人差を踏まえて可能なものから取り組み、今より少しでも多く身体を動かすことを基本としています。

23・15メッツ・時と退院後の個別目標の使い分け
対象 健康づくりの参考目安 退院時の使い方
成人 3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上 到達可能な人の中長期的な参考値として扱う
高齢者 3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上 身体機能や転倒リスクを踏まえ、無理のない量から始める
低活動・退院直後 推奨値の達成だけを目的にしない 現在量から少し増やせる活動を具体化する

家事や屋内移動も身体活動に含まれますが、週23・15メッツ・時の計算では活動ごとの強度を区別する必要があります。メッツ・時の計算自体を確認したい場合は、23メッツ・時の計算方法と早見表を参照してください。

最後に「家でどうやるか」を本人・家族の言葉で確認する

説明した内容は、「分かりましたか?」と尋ねるだけでは、自宅で再現できるか判断しにくいことがあります。そこで、指導の最後に本人または家族から、自宅での実施方法を説明し返してもらうと、認識のずれを見つけやすくなります。

確認したいのは知識テストではありません。「明日から家ではどうしますか?」と尋ね、活動・頻度・時間・強度・中止条件が本人の言葉で説明できるかを確認します。

退院前に本人・家族へ確認する質問例
確認したいこと 質問例 確認ポイント
活動 「家では何を増やしますか?」 具体的な活動を答えられる
量 「週何日、1回どれくらいやりますか?」 頻度と時間が一致している
強度 「どのくらいの強さで行いますか?」 自分で強さを判断できる
中止条件 「どんな時は止めますか?」 主な中止症状を説明できる
相談先 「困った時は誰に相談しますか?」 連絡先や対応方法を把握している

本人だけで管理が難しい場合は、家族や支援者にも同じ条件を共有します。特に中止条件については、本人と家族で判断が食い違わないようにしておくことが重要です。

フォローでは「実施量・強度・反応・次回調整」を見る

退院時に決めた運動量は、固定するものではありません。本記事では、実務上わかりやすい初回確認単位として7日程度を例にしていますが、7日が一律のガイドラインという意味ではありません。病態やフォロー体制に応じて、より早く確認する場合も、長い間隔で確認する場合もあります。

見直すときは、できた・できなかっただけで判断せず、量・強度・身体の反応を確認します。そのうえで、次回は「増やす・維持する・下げる」のどれにするかを決めます。

退院後フォローで確認する4項目
項目 確認内容 記録例
量 何日・何分実施できたか 10分歩行を週4日実施
強度 会話、RPE、息切れなど 会話可能、強い息切れなし
反応 運動中・運動後・翌日の疲労や疼痛 翌日に疲労・疼痛の増悪なし
次回調整 増やす・維持・下げる 次週は1回時間を10分から15分へ変更

増量するときは、頻度・時間・強度を一度にすべて変えるより、まず1つの条件だけを変更すると、症状が変化したときに原因を振り返りやすくなります。反対に、疲労や疼痛、息切れが増えた場合は、実施量を維持または減らし、必要に応じて専門職へ相談します。

よくある失敗は「目標だけ渡して判断条件を渡さない」こと

退院後の運動指導では、運動メニューの種類よりも、患者さんが自宅で判断できる条件が不足していることで継続が止まりやすくなります。特に次のような指導は見直します。

退院後の運動指導で起こりやすい失敗と修正例
よくある失敗 問題点 修正例
「たくさん歩く」とだけ伝える 量が人によって変わる 週何日・1回何分まで決める
23・15メッツ・時をそのまま目標にする 退院時の能力や疾患が反映されない 現在量から増やせる活動を先に設定する
中止条件を伝えない 無理な継続や過度な不安につながる 止める症状と相談方法をセットで伝える
一度に多くの条件を変える 何が症状に影響したか分かりにくい 次回は変更する条件を1つに絞る
説明だけで終了する 本人の理解とのずれに気づきにくい 最後に本人・家族の言葉で説明してもらう

退院指導のゴールは、運動の知識を多く伝えることではありません。本人・家族が「今日は行うか」「どこまで行うか」「いつ止めるか」「次にどう調整するか」を判断できる状態を作ることが重要です。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

退院後は週23メッツ・時を必ず達成する必要がありますか?

必ずしも退院直後から達成させる必要はありません。週23メッツ・時は成人の健康づくりにおける推奨量であり、退院患者の個別処方そのものではありません。退院時の活動量、身体機能、疾患、症状、医師指示などを踏まえ、現在より少し増やせる活動から始めます。

高齢者は週15メッツ・時を目標にすればよいですか?

週15メッツ・時は高齢者の健康づくりにおける参考目安です。厚生労働省のガイドでも、推奨量に満たない場合でも少しでも身体活動を行うことが推奨されています。身体機能が低い場合や転倒リスクがある場合は、安全性を優先して個別に設定します。

退院後は1日何分歩けばよいですか?

すべての退院患者に共通する歩行時間はありません。まず退院時点で安全に行えている量を確認し、症状や翌日の反応を見ながら時間や頻度を調整します。「何分歩くか」だけでなく、どこを歩くか、どの強さで歩くか、中止条件もセットで決めます。

家事や屋内移動も身体活動に含まれますか?

含まれます。身体活動には、運動だけでなく家事、移動、仕事などの生活活動も含まれます。ただし、週23・15メッツ・時を計算するときは活動ごとの強度を確認する必要があります。

7日ごとに必ず運動量を増やしますか?

必ず増やすわけではありません。7日程度は本記事で示す実務上の見直し例です。実施量、運動時の強度、疲労・疼痛・息切れなどの反応を確認し、「増やす・維持する・下げる」から判断します。病態によってはより早い確認が必要です。

次の一手

退院後の運動指導では、まず増やす活動を1つ決め、中止条件と頻度・時間・強度を患者さんの言葉で具体化するところから始めます。23・15メッツ・時は参考目安として位置づけ、現在量から安全に増やせる条件を優先します。

退院前には「家ではどのように行いますか?」と確認し、退院後は実施量・強度・反応を見ながら次の条件を1つずつ調整してください。


参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2023. PDF
  2. 厚生労働省. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:身体活動・運動を安全に行うためのポイント. Web
  3. World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: World Health Organization; 2020. Web
  4. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. doi: 10.1136/bjsports-2020-102955

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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