退院後の運動指導|身体活動量の目安と安全管理

臨床手技・プロトコル
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退院後の運動指導は「量・強度・反応」を決める

退院後の運動指導で大切なのは、「がんばって歩きましょう」ではなく、どれくらいの量を、どの強度で、どんな反応なら続けるかを患者さんと共有することです。目標が曖昧なままだと、実施量が増えず、疲労・疼痛・息切れが出たときの判断もぶれやすくなります。

この記事では、PT / OT が退院前後の指導で使いやすいように、身体活動量の目安、安全管理、強度設定、FITT、7 日レビュー、記録の型までを整理します。23 Ex の計算そのものではなく、退院後にどう運動を続けてもらうかを決めるための記事です。

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このページで答えること・答えないこと:退院後の運動指導の役割整理
区分 扱う内容 深掘りしすぎない内容
このページで答えること 退院後の身体活動量の目安、安全管理、強度設定、FITT、7 日レビュー、記録の型 疾患別リハの詳細プロトコル、個別の運動負荷試験、厳密な運動処方の代替
兄弟記事へ逃がすこと 23 Ex をどう計算するか、活動量計で何を見てどう増やすか METs 一覧の網羅、活動量計データの詳細な読み方

まず決めるのは「週合計」と「止める条件」です

退院後の運動指導では、最初に週合計の目安中止・相談の条件を決めると運用が安定します。数値目標だけを渡すと、達成できない日が出た時点で中断しやすくなります。反対に「止める条件」を先に共有しておくと、患者さんも家族も安心して継続しやすくなります。

国内では、成人は 3 METs 以上の身体活動を週 23 メッツ・時以上、高齢者は週 15 メッツ・時以上が一つの目安です。ただし、退院直後は基準値の達成よりも、今より少し増やし、7 日単位で合計を確認することを優先します。

身体活動量の目安は成人と高齢者で分けて考える

身体活動量は、成人と高齢者で目安を分けると説明しやすくなります。成人は 23 Ex / 週、高齢者は 15 Ex / 週を目安にしつつ、生活活動・移動・運動を合算して考えます。退院後は「散歩だけ」を運動と考えず、家事や屋内移動も活動量として拾うことが重要です。

一方で、低活動・疼痛・息切れ・転倒リスクがある場合は、数値目標をそのまま押しつけません。まずは座位時間を分断し、短時間の立位・屋内歩行・生活動作を増やすところから始めます。

退院後の身体活動量の目安:成人・高齢者での使い分け
対象 目安 現場での伝え方 注意点
成人 3 METs 以上の身体活動を週 23 メッツ・時以上 歩行・家事・移動を合算し、週合計で確認する 最初から達成を迫らず、現在量から段階的に増やす
高齢者 3 METs 以上の身体活動を週 15 メッツ・時以上 座りっぱなしを減らし、短時間でも活動を増やす 筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動も組み合わせる
低活動・虚弱傾向 基準値より「今より少し増やす」を優先 立つ、屋内を歩く、家事の回数を増やす 疲労・疼痛・息切れの残り方を見て調整する

5 分フローで退院後の運動指導を組み立てる

退院後の運動指導は、細かい運動メニューから入るより、安全確認 → 現在量 → 週目標 → 1 回量 → 7 日レビューの順に決めると迷いません。ここを固定すると、患者さんへの説明、家族への共有、カルテ記録が同じ流れになります。

特に重要なのは、運動を増やす前に「中止・相談のサイン」を共有することです。症状が出てから説明するのではなく、開始前に止める条件を合意しておくと、退院後の自己判断による無理を減らせます。

退院後の運動指導 5 分フロー。中止サイン確認、現在量の把握、週目標、FITT、7 日後の再評価を整理した図版
退院後の運動指導は、安全確認から 7 日後の再評価までを 1 つの流れで整理します。
退院後の運動指導 5 分フロー:説明・処方・記録をそろえる型
手順 決めること 確認する言葉 記録例
1. 安全確認 中止・相談のサイン 胸痛、強い息切れ、めまい、冷汗、強い痛みはないか 中止基準を本人・家族へ説明済み
2. 現在量 今の歩行時間・活動量 普段は 1 日どれくらい歩けているか 屋内歩行 5 分程度、外出は週 1 回
3. 週目標 7 日で積む量 まずは週合計を少し増やす 週 5 日、各 10 分歩行を目標
4. 1 回量 頻度・強度・時間・種類 会話できる強さで、短時間から始める 中強度下限、10 分 / 回、屋外平地歩行
5. 再評価 翌日の反応と週合計 疲労・疼痛・息切れが翌日に残るか 7 日後に週合計と症状反応を確認

退院後の運動指導 5 分フロー記録シート

退院後の運動指導を、安全確認・現在量・週目標・FITT・7 日レビューの順に書き残せる A4 記録シートです。退院前カンファレンス、訪問リハ初回、外来フォロー、家族説明の前後で、指導内容をそろえる用途に使えます。

PDF は印刷して使うことを前提に、記入欄を広めにしています。記事本文で考え方を確認し、実際の説明・記録ではこのシートに「量・強度・反応・次回調整」を残すと、次回の見直しがしやすくなります。

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安全確認から 7 日レビューまでを 1 枚で整理できます。印刷して手書き記録にも使えます。

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安全管理は「続ける条件」と「止める条件」を分ける

退院後の運動では、続けてよい反応と止めるべき反応を分けて伝えることが大切です。軽い疲労や息の弾みは運動反応として起こり得ますが、胸部症状、冷汗、強い息切れ、めまい、失神感、鋭い痛みは安全側に倒して中止・相談を優先します。

中止基準は専門職だけが知っていればよいものではありません。本人と家族が同じ言葉で判断できるように、退院前に短く共有しておくと、在宅での不安と無理な継続を減らせます。

退院後の運動で止める・相談するサイン:本人と家族へ共有する最小セット
カテゴリ 止めるサイン その場の対応 再開前に見直すこと
循環器・呼吸 胸痛、冷汗、強い息切れ、動悸が続く 運動を中止し、安静で症状を確認する 強度、時間、休憩の入れ方、受診相談の必要性
神経症状 めまい、失神感、急なふらつき、しびれの増悪 座位または臥位で休み、転倒を防ぐ 実施環境、見守り、歩行場所、再開条件
疼痛・整形 鋭い痛み、翌日まで残る痛み、腫脹や熱感の増加 負荷を下げる、または一時休止する フォーム、距離、速度、頻度、疼痛記録

強度はトークテストと RPE でそろえる

強度設定は、退院後の自己管理で最もぶれやすい部分です。心拍数や活動量計が使える場合でも、まずはトークテスト RPE で言葉をそろえると、患者さんが再現しやすくなります。

目安は「息は弾むが会話はできる」程度です。会話が途切れる、翌日に強い疲労が残る、痛みが増える場合は、強度を上げるのではなく、回数・時間・休憩を先に調整します。

退院後の運動強度の伝え方:トークテストと RPE の使い分け
強度 会話の目安 使いどころ 調整の考え方
低強度 楽に会話できる 退院直後、低活動、疼痛・息切れが不安な場合 頻度を増やし、座位時間を分断する
中強度 息は弾むが会話はできる 歩行練習、散歩、生活活動の活動量アップ 週合計を見ながら時間を少しずつ増やす
高強度寄り 会話が続けにくい 体力が十分で、医師指示や評価上も問題が少ない場合 退院直後は優先せず、必要時のみ慎重に扱う

評価は「量・強度・反応」の 3 つに絞る

退院後の運動指導では、評価項目を増やしすぎるより、毎回同じ項目を確認する方が継続しやすくなります。最小セットは、量、強度、反応の 3 つです。

量は週合計の分数または Ex、強度はトークテストまたは RPE、反応は翌日の疲労・疼痛・息切れの残り方で確認します。必要に応じて歩行速度、6 分間歩行、TUG などを追加し、生活場面への波及を確認します。

退院後の運動指導で固定する評価項目:量・強度・反応の 3 点
評価項目 見る内容 記録例 次の判断
週合計の分数、歩数、Ex 歩行 10 分× 5 日、週合計 50 分 回数または時間を少し増やす
強度 会話の可否、RPE、息切れ 会話可能、RPE 11〜13 程度 強すぎる場合は速度や坂道を調整
反応 翌日の疲労、疼痛、息切れの残り方 翌日疲労は軽度、疼痛増悪なし 残る場合は時間・頻度・休憩を再設計

処方は FITT を最小の言葉に変換する

退院後の運動処方は、FITT をそのまま専門用語で説明するより、いつ・どの強さで・何分・何をするかに変換すると共有しやすくなります。最初は時間や強度を大きく上げるより、実施回数を確保する方が継続しやすいです。

特に退院直後は、1 回 30 分を目標にするより、10 分を 1〜3 回に分ける方が現実的な場合があります。週合計が見えるように記録し、7 日ごとに増量可否を判断します。

退院後の運動処方の最小版:FITT を患者さんに伝わる言葉へ変換する
FITT 決める内容 患者さんへの伝え方 記録例
Frequency(頻度) 週に何日行うか まずは週 3〜5 日を目標にしましょう 週 5 日実施
Intensity(強度) どの程度の強さか 会話はできるが息は弾む程度です 中強度下限、RPE 11〜13
Time(時間) 1 回何分行うか 最初は 10 分でもかまいません 10 分 / 回、1 日 1〜2 回
Type(種類) 何を行うか 歩行、屋内移動、家事、階段、筋力・バランス練習を組み合わせます 屋外平地歩行+立ち上がり練習

フォローは 7 日単位で「増やす・維持・下げる」を決める

退院後は日ごとの体調差が大きいため、1 日できなかったことを失敗としない設計が必要です。おすすめは、7 日単位で週合計を確認し、増やす・維持する・下げるの 3 択で調整する方法です。

増量の順番は、原則として回数 → 時間 → 強度です。先に強度を上げると中断しやすいため、まずは「途切れず続く量」を作り、その後に時間や強度を調整します。

7 日レビューの判断基準:増やす・維持・下げるの使い分け
7 日後の状態 判断 次の調整 記録例
症状増悪なし、週合計が達成 少し増やす 実施日を 1 日増やす、または 1 回 5 分延長 週 50 分達成。次週は週 60 分へ
実施できたが疲労が残る 維持する 同じ量で 1 週間継続し、休憩を調整 疲労残存あり。量は維持
疼痛・息切れ・不安で中断 下げる 時間を短縮し、低強度・分割実施へ戻す 翌日痛あり。10 分→ 5 分× 2 回へ変更

疾患別の注意は「開始時・中止時・増量時」で整理する

退院後の運動指導では、疾患ごとに細かい禁忌を並べすぎるより、開始時・中止時・増量時の 3 点で整理すると実務に落とし込みやすくなります。主治医指示や退院時サマリーを確認したうえで、安全側から始めます。

心疾患、呼吸器疾患、整形疾患では、同じ中強度でもリスクの出方が異なります。症状が出たときに「何を下げるか」を決めておくと、完全中止ではなく再設計につなげやすくなります。

疾患別の注意点:開始時・中止時・増量時の最小整理
区分 開始時 中止・相談を優先するサイン 増量時のコツ
心疾患 主治医指示、内服、当日の体調を確認する 胸部症状、冷汗、強い息切れ、動悸の遷延 強度より先に回数・時間を調整する
呼吸器疾患 息切れの基準、休憩方法、呼吸法を確認する 会話困難な呼吸苦、回復遅延、めまい、強い倦怠感 短時間運動+休憩のインターバルで週合計を積む
整形疾患・疼痛 疼痛部位、誘発動作、翌日痛の有無を確認する 鋭い痛み、翌日まで残る痛み、腫脹や熱感 速度・距離・段差を分けて調整する

現場の詰まりどころは「記録と合意」が曖昧なことです

退院後の運動指導でよく詰まるのは、運動内容そのものより、何を達成とするか、何があれば止めるか、次回何を見直すかが曖昧なことです。「歩いてください」だけでは、強度・時間・頻度が人によって変わり、週合計も評価できません。

同じ説明をしても毎回同じ部分で詰まる場合は、本人の理解不足だけでなく、職場側の教育体制、共通フォーマット、相談相手の有無なども影響します。評価・記録・報告の型を整理したい方は、以下も参考になります。

評価・記録の型をまとめて整理したい方へ

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よくある失敗は「強度・週合計・増量順序」のズレです

退院後の運動指導は、良い内容を伝えていても、運用の型がないと続きません。特に、強度が毎回ぶれる、週合計が見えない、時間や強度を急に上げる、の 3 つは中断につながりやすい失敗です。

修正の基本は、評価項目を増やすことではありません。トークテスト、週合計、翌日の反応を同じ言葉で確認し、7 日単位で調整します。

退院後の運動指導で起こりやすい失敗と修正の方向
失敗パターン 起きる理由 修正の方向
強度が毎回ぶれる 「きつすぎない程度」など主観的な説明だけで終わっている トークテストと RPE を毎回同じ言葉で確認する
週合計が見えない 日ごとの実施有無だけを見ている 7 日単位で分数または Ex を合計する
やり過ぎて中断する 時間や強度を先に上げている 回数 → 時間 → 強度の順に増やす

記録は「量・強度・反応・次回調整」の 4 行で残す

退院後の運動指導では、記録が長すぎると続きません。カルテや申し送りでは、量・強度・反応・次回調整の 4 行で残すと、次回の判断につながります。

ポイントは、実施内容だけで終わらせないことです。翌日の疲労・疼痛・息切れを記録し、次回に増やすのか、維持するのか、下げるのかまで書くと指導の再現性が上がります。

退院後の運動指導に使える記録テンプレ:量・強度・反応・次回調整
項目 書く内容 記録例
頻度、時間、週合計 屋外歩行 10 分×週 5 日、週合計 50 分
強度 トークテスト、RPE、息切れ 会話可能、RPE 11〜13、息切れは軽度
反応 翌日の疲労、疼痛、息切れの残存 翌日疲労軽度、膝痛増悪なし
次回調整 増やす、維持、下げる 次週は 10 分× 6 日へ増量予定

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

退院後は運動だけを増やせばよいですか?

運動だけでなく、生活活動も合算して考えます。家事、屋内移動、買い物、階段なども身体活動に含め、週合計で少しずつ増える設計にすると続きやすくなります。

23 Ex / 週を必ず達成させる必要がありますか?

退院直後に必ず達成させるというより、目安として使います。低活動、虚弱、疼痛、息切れがある場合は、現在量を把握し、7 日単位で少しずつ増やすことを優先します。

毎日できないと意味がありませんか?

毎日できなくても意味はあります。日単位ではなく週合計で見て、できない日があっても次の 7 日で調整できる形にしておくと継続しやすくなります。

強度は患者さんへどう伝えると分かりやすいですか?

「会話はできるが息は弾む程度」と伝えると分かりやすいです。数値化したい場合は RPE を併用し、翌日の疲労・疼痛・息切れが残るかも確認します。

座りっぱなしが多い人は何から始めますか?

最初は運動時間を長くするより、座位時間を分断します。立つ、屋内を 1 周する、家事を短時間行うなど、低い負荷で回数を増やすところから始めます。

次の一手


参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023. 2023. PDF
  2. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023 推奨事項一覧. 2023. PDF
  3. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. doi: 10.1136/bjsports-2020-102955
  4. World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. Web
  5. Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.010
  6. 日本循環器学会, 日本心臓リハビリテーション学会ほか. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 2021 年改訂版. 2021. PDF

著者情報

rehabilikun blog 著者アイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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