退院後の運動指導(総論)|身体活動量の目安・作り方・安全管理

臨床手技・プロトコル
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退院後の運動指導(総論)|身体活動量の目安・作り方・安全管理

退院後の運動指導で大切なのは、「がんばれますか?」ではなく、どれくらい(量)・どの程度(強度)を・どんな頻度で続けるかを、患者さんと一緒に再現できる形に落とすことです。目標が曖昧だと、実施量が伸びず、再評価もブレやすくなります。

本記事は、厚生労働省の「運動ガイド 2023 」と「身体活動基準 2013 」を土台に、目安 → 評価 → 処方 → フォローの順で整理します。数値の暗記より、現場で迷わない“型”を優先してまとめます。

指導がブレるときは「評価 → 目標 → 提案」の順番を固定すると一気に整います。 評価 → 目標 → 指導の型を 3 分で復習する( #flow )

まず押さえる結論: “量” は 2 本立てで考える

退院後の目安は、ざっくり(1)メッツ・時( Ex )(2)分( 150–300 分 / 週 など)の 2 つで整理すると迷いません。国内では「 3 METs 以上の身体活動をどれくらい積むか」をメッツ・時で示す枠組みがあり、国際的には WHO が分ベースの目安(中強度 150–300 分 / 週)を示しています。

ただし臨床では、まず“できる量を途切れず積む”ことが最優先です。目標は「達成できた / できない」の二択にせず、週合計が少しずつ増える形に設計します。

推奨の目安(成人/高齢者):運動ガイド 2023 と身体活動基準 2013

退院後の対象は幅広いので、ここでは「成人」と「高齢者」で目安の考え方を整理します。強度はどちらも原則として歩行またはそれと同等以上( 3 METs 以上)を軸にします。

退院後の身体活動量の目安(成人/高齢者):国内ガイドラインの要点まとめ
対象 目安(身体活動) 強度の考え方 補足
成人(おおむね 18–64 歳) 歩行または同等以上( 3 METs 以上)を週合計で確保(例:週 23 メッツ・時など) まずは中強度を中心に、継続できる量へ 生活活動+運動の合算で考える
高齢者 歩行または同等以上( 3 METs 以上)を週合計で確保(例:週 15 メッツ・時など) 座位時間を減らし、活動を細切れでも増やす 筋力・バランスなど多要素な運動を組み合わせる

数値は「達成の可否」を裁くためではなく、指導の共通言語として使います。たとえば「週 23 メッツ・時( 23 Ex )をどう積むか?」は、計算式さえ固定すれば誰でも同じロジックで運用できます。計算だけ先に整えたい場合は、 23 Ex の計算式と早見表を先に押さえるとスムーズです。

強度の決め方:トークテスト + RPE の 2 点で十分

退院後の運動量は、強度が不明確だと「やったつもり」になりやすい一方、上げすぎると中断します。現場で再現しやすいのは、トークテスト(会話) RPE(自覚的運動強度)の併用です。

  • 中強度:息は弾むが会話はできる
  • 高強度:会話が続けにくい(短い返答になる)

心疾患・呼吸器疾患・疼痛がある場合は、主治医指示や施設基準を優先しつつ、まずは中強度の下限から始めると安全側です。

安全管理: “中止基準” を先に共有しておく

退院後は環境が変わり、体調変動も起きます。だからこそ、運動を始める前に「続ける条件」と「止める条件」を合意しておくのが重要です。特に胸部症状、強い息切れ、めまい、冷汗、強い痛みは、本人判断で無理をしやすいので、最初に言語化しておきます。

退院後の運動で “止める” を優先するサイン(例):まず本人と家族へ共有する
カテゴリ サイン(例) その場の対応(例) 次のアクション(例)
循環器・呼吸 胸痛、冷汗、強い息切れ、動悸が止まらない 運動中止、安静、症状確認 必要に応じて受診 / 相談
神経 めまい、ふらつき、失神感、しびれの増悪 転倒予防、座位 / 臥位で休む 再開条件を見直す
整形・疼痛 鋭い痛み、翌日まで残る痛みの増悪 負荷を下げる / 休止 フォーム・量・頻度を再設計

評価: “測るのは 3 つだけ” で回る

指導の効果を見える化するには、測定項目を増やすより固定が大切です。退院後は次の 3 つで十分に回ります。

  • :週合計(分 / Ex )
  • 強度:トークテスト / RPE
  • 反応:翌日の疲労・疼痛・息切れの残り方

加えて、可能なら歩行耐久(例: 6 分間歩行など)や歩行速度(例: 10 m )を定期的に確認すると、日常生活への波及がつかみやすくなります。

処方: FITT(頻度・強度・時間・種類)を “最小” に落とす

処方は難しく考えず、週合計の目安 → 週の分配 → 1 回の設計の順に組むと迷いません。最初は「時間を伸ばす」より、回数を増やす方が継続しやすいです( 10–15 分を細切れで OK )。

退院後の運動処方(最小版): FITT を “書ける形” にして共有する
要素 決め方(例) メモ(例)
Frequency(頻度) 週 3–5 日(まずは回数で積む) できた日を丸で記録
Intensity(強度) 中強度(会話は可 / 息は弾む) RPE 併用で再現性を上げる
Time(時間) 10–30 分 / 回(細切れ可) まずは “続く時間” を優先
Type(種類) 歩行、屋内移動、階段、家事、筋力・バランス 生活活動も合算してよい

フォロー: “ 7 日単位” で週合計を調整する

退院後は日々の体調差が大きいので、日単位で一喜一憂しない方が続きます。おすすめは 7 日単位で見て、週合計が少しでも伸びたら成功とする運用です。

調整は(1)回数 →(2)時間 →(3)強度の順にします。先に強度を上げると中断しやすいので、まずは“途切れない設計”を優先してください。

現場の詰まりどころ: “良い指導” が続かない理由

よくある失敗は、「運動内容」より記録と合意が曖昧なことです。たとえば「歩いてください」だけだと、強度・時間・頻度が人によってバラつき、週合計が伸びません。

  • 詰まり 1:強度が毎回変わる → トークテスト / RPE を固定する
  • 詰まり 2:週合計が見えない → 週 1 回の合計だけ残す
  • 詰まり 3:やり過ぎて反動が来る → 回数から増やす(細切れ可)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

退院後は “運動” だけやればいいですか?

退院後は「運動」だけでなく、生活活動(家事・移動・買い物など)も合算して考える方が続きます。まずは生活活動でベースを作り、足りない分を散歩や速歩で補う設計が現実的です。

毎日できないと意味がないですか?

意味はあります。重要なのは、日単位ではなく週合計で少しずつ増えることです。できない日があっても、次の 7 日で調整できる形にしておくと継続しやすくなります。

強度はどう伝えると分かりやすいですか?

トークテストが最も分かりやすいです。「会話はできるが息は弾む」を中強度の目安にして、できたかを振り返ります。数値が必要なら RPE を併用します。

座りっぱなしが多い人は、まず何から?

最初は “運動” より、座位を分断するところから始めるのが安全です。立って数分動く、家の中を 1 周するなど、小さく始めて頻度を増やします。

次の一手

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023. 2023. PDF
  2. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動基準 2013. 2013. PDF
  3. Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. doi: 10.1136/bjsports-2020-102955
  4. World Health Organization. WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. Web
  5. Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.010

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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