ICF 修飾子( 0–4・ 8 / 9 )の決め方(結論)|基準軸を 1 本に固定する
ICF の修飾子( qualifier )は、同じコードでも「どの程度できるか」を数値で揃えるための仕組みです。ところが現場では、距離で判定する人、介助量で判定する人、実施頻度で判定する人が混在し、同じ患者でも 1 週間で点が上下してしまうことがあります。
本ページは「修飾子を正確に暗記する」よりも、評価者間でブレない運用に焦点を当てます。まずは 0–4 の判断基準を 1 本に固定し、次に 8 / 9 の扱い(情報不足と適用外)を統一するだけで、ICF 記載の品質が上がります。
まずは早見表| 0–4 と 8 / 9 を「運用ルール」で揃える
修飾子は「公式の文言」を丸暗記するより、施設内で“同じものさし”で判定できることが重要です。以下は、PT が病棟・外来・在宅で使いやすいように距離/介助量/時間のいずれかに寄せて運用できるよう整理した早見表です。
| 値 | 意味(運用の芯) | 判定の例(距離/介助量/時間) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 0 | 問題なし/支障なし | 距離:目標距離を安定して達成/介助量:見守り不要/時間:標準範囲で完了 | 「条件」を一緒に書く(杖あり等) |
| 1 | 軽度の問題(少し遅い・少し不安) | 距離:達成できるが速度低下/介助量:声かけ 1 回程度/時間:少し延長 | ブレやすいので根拠を 1 行添える |
| 2 | 中等度の問題(条件がそろえば可能) | 距離:目標の半分程度で休憩/介助量:軽介助が必要/時間:大きく延長 | 「どの条件で可か」を明確にする |
| 3 | 重度の問題(実施はできるが大きな支援が必要) | 距離:数 m で停止/介助量:中等度以上の介助/時間:途中で中断が多い | 安全管理(転倒リスク等)もセットで記載 |
| 4 | 完全な問題(実施不能) | 距離:実施できない/介助量:全介助でも成立しない/時間:開始できない | 「できない理由」を 1 つに絞って書く |
| 8 | 情報不足(評価していない/記録がない) | 評価機会がない、データ欠損、記録未回収 | 次回の評価予定を一言添える |
| 9 | 適用外(その活動をそもそもしない) | 文化・役割・生活様式として対象外 | 「対象外の理由」を短く明示する |
最初に決める 1 つだけ| 0–4 を何で判定するか(基準軸)
現場の詰まりどころは、0–4 を「距離」「介助量」「時間」のどれで判定しているかが人によって違うことです。まずは施設内で、コード群ごとに基準軸を 1 本にします。
おすすめは、PT が扱うことが多い領域では距離(移動)と介助量(ADL)の 2 本に寄せ、時間は補助指標として書く運用です。基準軸が決まると、同じ患者の縦断比較が成立しやすくなります。
| 領域(例) | 推奨の基準軸 | 補助で書くと強い情報 |
|---|---|---|
| 歩行・移動(屋内外) | 距離( m )+必要な休憩 | 速度、段差、補助具、見守り |
| 起居・移乗 | 介助量(見守り/軽介助/中等度/全介助) | 手すり、ベッド高さ、疼痛 |
| セルフケア | 介助量 | 自助具、手順の理解、疲労 |
| 外出・買い物など複合課題 | 距離(活動範囲)または介助量(同行の要否) | 交通手段、時間帯、環境因子 |
ICF の書き順や記載例まで一気に整えるなら、親記事(実務版)で「 d → b / s → e → 修飾子」の型をまとめています。続けて読む:ICF の書き方・記載例(実務版)
8 と 9 の使い分け|情報不足と適用外を混ぜない
よくある失敗は、評価していない項目に 9 を付けてしまうことです。8 は「データがない」、9 は「対象外」と役割が違います。ここを混ぜると、次回以降の再評価で「改善したのか、そもそも見ていなかったのか」が読めなくなります。
運用としては、8 を見たら“次回の評価予定”を 1 行、9 を使うときは対象外の理由を短く添えるだけで、チーム内の誤解が減ります。
Performance / Capacity を揃える|条件の書き方テンプレ
同じ活動でも、普段の環境(Performance)と能力(Capacity)で点が変わります。ここも「どちらを主に書くか」を施設内で揃えると、カルテの読みやすさが上がります。
おすすめは、日常の支援設計に直結するPerformance を主にしつつ、能力の伸びを見たいときだけ Capacity を併記する運用です。両方を書く場合は、条件をテンプレ化するとブレません。
| 区分 | テンプレ | 例 |
|---|---|---|
| Performance | 普段の環境(補助具/支援者/場所)+結果 | 屋内は T 字杖+見守りで 30 m 可 |
| Capacity | 能力評価の条件(最良条件/評価場面)+結果 | 平坦路・評価者見守りで 50 m 可 |
| 差の説明 | 差を生む要因(疲労/不安/環境)を 1 つ | 帰宅後は疲労で速度低下し休憩が増える |
5 分で回す運用フロー|「基準軸 → 条件 → 根拠 1 行」
迷いを減らす最短手順は、①基準軸を決める → ②条件を固定する → ③根拠を 1 行で残すです。修飾子を“点数だけ”で残すほど、後から解釈が割れます。
特に 1 と 2 はブレやすいので、根拠は「距離」「介助量」「時間」のどれを採用したかが分かる一言にすると、チームで再現できます。
- 基準軸を 1 本選ぶ(距離/介助量/時間)
- 条件を固定する(補助具、場所、支援者、時間帯)
- 0–4を付ける(迷ったら「安全側」で)
- 根拠 1 行を書く(距離・介助量・時間のどれかに必ず触れる)
- 評価していないなら8、対象外なら9(理由を短く)
よくある失敗( OK / NG )|詰まりどころはここ
現場で起きやすいミスは「点数は付いているのに、条件と根拠がない」パターンです。次の表の NG を潰すだけで、修飾子の信頼性が上がります。
| 場面 | NG(起きがち) | OK(直し方) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 0–4 の判定 | 距離で付けたり介助量で付けたり混在 | コード群ごとに基準軸を 1 本に固定 | 距離/介助量/時間のどれかを必ず書く |
| 8 / 9 | 評価していないのに 9 を付ける | 8=情報不足、9=適用外で使い分け | 8 は次回評価予定、9 は対象外理由 |
| 縦断比較 | 補助具や場所が違い比較できない | 条件(補助具/場所)を固定して追う | 条件をテンプレで揃える |
| 多職種共有 | 点数だけで、介護側が再現できない | 根拠 1 行(距離/介助量/時間)を添える | 安全管理(転倒など)も一言 |
記録テンプレ(コピペ用)|文章を型にすると楽になる
文章を毎回考えるのが負担なら、「条件 → 結果 → 根拠」の順で固定すると入力が早くなります。以下はコピペして使える短い型です。
- Performance:(場所)(補助具)(支援)で(距離/介助量/時間)→ 修飾子( 0–4 )
- Capacity:(評価条件)で(距離/介助量/時間)→ 修飾子( 0–4 )
- 根拠:(疲労/疼痛/不安/環境)により(差が出る要因)
- 8:本日評価なし(理由:__)。次回(__)で確認予定。
- 9:生活様式上 対象外(理由:__)。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 「 1 と 2 」で迷うことが多いです。どう揃えればいい?
迷うポイントが「 1 と 2 」に集中する場合、まず基準軸を 1 本に固定します(距離/介助量/時間)。その上で、境界を「目標の半分で休憩」「軽介助が必要」など施設内の運用ルールとして言語化すると、評価者間で揃いやすくなります。
Q2. 8 と 9 の違いは?
8 は情報不足(評価していない、記録がない)で、9 は適用外(生活様式としてその活動をしない)です。評価していないだけなら 8 にし、次回の評価予定を一言添えると運用が回ります。
Q3. Performance と Capacity は両方書くべき?
日常支援に直結させたいなら Performance を主にし、能力変化を追う必要があるときだけ Capacity を併記する運用が現実的です。両方を書くときは、条件(補助具/場所/支援者)をテンプレで揃えると比較が成立します。
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参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ). Geneva: WHO; 2001. WHO 公式ページ
- Stucki G, Cieza A, Ewert T, et al. Application of the International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ) in clinical practice. Disabil Rehabil. 2002;24(5):281-282. doi: 10.1080/09638280110105222. PubMed
- Stucki G. International Classification of Functioning, Disability, and Health ( ICF ): a promising framework and classification for rehabilitation medicine. Am J Phys Med Rehabil. 2005;84(10):733-740. doi: 10.1097/01.phm.0000179521.70639.83. PubMed
- Ustün TB, Chatterji S, Bickenbach J, Kostanjsek N, Schneider M. The International Classification of Functioning, Disability and Health: a new tool for understanding disability and health. Disabil Rehabil. 2003;25(11-12):565-571. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

