表在感覚と深部感覚の違い【比較・使い分け】
「しびれ」「触った感じが変」という訴えでは、表在感覚(触覚・痛覚・温冷覚)と深部感覚(位置覚・振動覚)をどう使い分けるかで、見逃しやすい点が変わります。この記事は、定義の暗記ではなく、臨床で迷わない比較に絞って整理します。
結論はシンプルです。まず表在感覚で左右差と範囲をつかみ、その後に深部感覚で動作に直結する低下を拾うと、評価の抜けが減ります。
結論:先に見るのはどっち?(最短判断)
迷ったら、表在感覚を先、深部感覚を次が基本です。表在は分布をつかみやすく、深部は歩行や巧緻性への影響を説明しやすいからです。
ただし、暗所で悪化するふらつきや「足がどこにあるか分からない」訴えが強い場合は、深部感覚(位置覚・振動覚)を先行すると介入の当たりが早くなります。
| 臨床の入り口 | まず当てたい | 理由 | 次の一手 | 再評価タイミング(急性期/回復期/在宅) |
|---|---|---|---|---|
| しびれ・触覚異常が主訴 | 表在感覚 | 左右差と範囲を把握しやすい | 分布確認→深部へ | 急性期:毎日~状態変化時/回復期:週 1–2 回/在宅:2–4 週ごと+訴え変化時 |
| 暗所でふらつく・足元不安 | 深部感覚 | 位置覚低下が立位/歩行に直結 | 位置覚→振動覚→表在へ | 急性期:立位・歩行レベル変更前後/回復期:週 1–2 回/在宅:訪問ごと簡易確認+月 1 回定量 |
| 手先の不器用さが前景 | 深部感覚 | 指の位置情報低下で操作が崩れる | 位置覚+識別系へ | 急性期:上肢機能訓練の節目ごと/回復期:週 1 回/在宅:2–4 週ごと(家事課題の変化時は前倒し) |
| 疼痛・アロディニアが前景 | 表在感覚 | 過敏性の把握が優先 | 最小刺激で短時間実施 | 急性期:疼痛変動時に都度/回復期:週 1 回+負荷変更時/在宅:2–4 週ごと+増悪時 |
違いを 1 枚で整理(定義・代表テスト・所見の意味)
表在感覚は「皮膚表面の情報」、深部感覚は「身体の位置・動きの情報」を扱います。臨床では、表在は分布の読み取り、深部は動作障害の説明に強い、という役割分担で考えると回しやすくなります。
| 項目 | 表在感覚 | 深部感覚 | 臨床での当たり |
|---|---|---|---|
| 代表感覚 | 触覚・痛覚・温冷覚 | 位置覚・振動覚(運動覚含む) | 歩行・巧緻性には深部が効きやすい |
| 検査の狙い | 左右差/範囲を把握 | 姿勢・運動制御の根拠把握 | 表在で「どこ」→深部で「なぜ」 |
| ベッドサイド例 | 綿・指腹・ピン(最小刺激) | 母趾位置覚・音叉(128 Hz 等) | 説明を短くし誤反応を減らす |
| 結果の書き方 | 左右差+範囲(例:前腕橈側で低下) | 正答/試行、減弱/消失 | 開眼/閉眼など条件を併記 |
10 分で回す順番(スクリーニング→深掘り)
最初から細かく実施すると注意が切れ、評価精度が落ちます。まずは 10 分で回す型を固定し、必要時のみ深掘りする運用が安全です。
| 手順 | 何を見る? | コツ | 記録 |
|---|---|---|---|
| ① 予告と練習 | 反応様式(口頭/合図) | 説明 1 文、練習 2 回で終了 | 反応方法を 1 行で残す |
| ② 表在(触覚→痛覚/温冷) | 左右差と範囲 | 刺激条件を統一 | 分布を具体語で残す |
| ③ 深部(位置覚→振動覚) | 動作に直結する低下 | 閉眼で統一・最小可動域 | 正答/試行、減弱/消失 |
| ④ 識別系(必要時) | 皮質感覚 | 疲労時は分割実施 | 実施可否も記録 |
所見の読み方(断定ではなく当たりを付ける)
感覚所見は、単独で病変部位を断定するためではなく、追加評価の優先順位を決めるために使うと実務で機能します。表在優位か深部優位かで、次に寄せる評価が変わります。
| 見え方 | まず疑うこと | 次に足す評価 | 現場メモ |
|---|---|---|---|
| 表在の左右差が強い | 神経/皮節分布の確認 | 痛み、皮膚状態、筋力、反射 | 境界を言語化して記録 |
| 深部低下が強い(特に下肢) | 姿勢制御の破綻 | 閉眼立位、協調性、歩行観察 | 暗所悪化の有無を確認 |
| 表在は保たれ深部が怪しい | 位置覚/振動覚の取りこぼし | 手順再標準化→再検 | 検者誤差に注意 |
| 疼痛・恐怖で反応不安定 | 回避反応の混入 | 刺激量低減、休息、説明短縮 | 条件依存の変動も所見 |
現場の詰まりどころ(精度が落ちるポイント)
感覚検査で崩れやすいのは、説明の長文化、刺激条件の不統一、開眼/閉眼の混在です。深部感覚は特に推測回答が混ざりやすいため、条件固定が最優先です。
よくある失敗(OK / NG 早見)
| NG | なぜ起きる? | OK(修正) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 順番が毎回違う | 注意・疲労で反応が揺れる | 表在→深部で固定 | フローを定型文で残す |
| 位置覚で可動域が大きい | 代償手掛かりが増える | 最小可動域で上下のみ | 条件(関節・方向)を併記 |
| 閉眼が徹底できない | 視覚補正が入る | 閉眼統一(必要時アイマスク) | 開眼/閉眼を明記 |
| 痛覚を強刺激で開始 | 恐怖・回避が増える | 触覚練習→最小刺激 | 反応不安定の理由も記録 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 表在感覚と深部感覚、どちらから測るのが安全ですか?
基本は表在感覚(触覚)からです。反応様式をそろえたあとに深部感覚へ進むと、位置覚の誤反応が減ります。ふらつき・暗所悪化が強い場合のみ、深部を先行します。
Q2. 位置覚はどう記録すると経過比較しやすいですか?
試行回数を固定し、正答/試行で残すのが実務的です(例:母趾 3/5)。同じ条件で繰り返すほど比較しやすくなります。
Q3. 表在が正常でも歩行が不安定なことはありますか?
あります。筋力・協調性・前庭・注意・疼痛などの影響も大きいです。短時間でも位置覚と振動覚を追加すると見落としが減ります。
Q4. 推測回答を減らすコツはありますか?
「分からないは可」であることを先に伝え、説明を 1 文に固定します。練習は 2 回までにし、刺激間隔を一定にすると推測が減ります。
次の一手(迷わない導線)
- A(全体像):評価ハブ
- B(すぐ実装):感覚検査の実施手順まとめ
参考文献
- Chong PS, Cros DP. Technology literature review: quantitative sensory testing. Muscle Nerve. 2004;29(5):734-747. DOI: 10.1002/mus.20053(PMID: 15116380)
- Reimer M, Forstenpointner J, et al. Sensory bedside testing: a simple stratification approach for sensory phenotyping. PAIN Rep. 2020;5(3):e820. DOI: 10.1097/PR9.0000000000000820(PMID: 32903958)
- Han J, Waddington G, Adams R, et al. Assessing proprioception: A critical review of methods. J Sport Health Sci. 2016;5(1):80-90. DOI: 10.1016/j.jshs.2014.10.004(PMID: 30356896)
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


