表在感覚と深部感覚の違い【比較・鑑別の当たり】
「しびれがある」と言われたとき、まず表在感覚(触覚・痛覚・温冷覚)を厚く見るのか、深部感覚(位置覚・振動覚)を先に当てるのかで、見逃しやすいポイントが変わります。本記事は “神経解剖の暗記” ではなく、臨床で迷わないための比較・使い分けに絞って整理します。
感覚検査を “どの順で、何を、どこまでやるか” の全体フローから確認したい場合は、感覚検査の実施手順まとめを先に読むと、この記事の使いどころがはっきりします。
結論:先に見るのはどっち?(最短の判断)
迷ったら、まず表在感覚で「左右差と範囲」をざっくり掴み、その後に深部感覚で「動作に直結する低下」を拾うのが実務的です。表在は “分布(皮膚)” が見えやすく、深部は “転倒・巧緻性・歩行” に直結するため、セットで回すと抜けが減ります。
ただし、ふらつき・暗所で悪化・足がどこにあるか分からない訴えが強い場合は、深部感覚(位置覚・振動覚)を早めに当てると “介入の当たり” が早くなります。
| 臨床の入り口 | まず当てたい | 理由 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 「しびれ」や “触った感じが変” が主訴 | 表在感覚 | 分布(範囲)を掴みやすい | 左右差 → 領域 → 深部へ |
| 暗所でふらつく/足元が不安 | 深部感覚 | 位置覚低下は歩行・立位に直結 | 位置覚 → 振動覚 → 表在へ |
| 巧緻性低下(手がうまく使えない) | 深部感覚 | 指の位置が曖昧だと操作が崩れる | 位置覚+識別系へ |
| 強い痛みやアロディニアが前景 | 表在感覚 | 痛覚・触覚の “過敏” を拾う | 刺激量を最小化して短く |
違いを 1 枚で整理(定義・代表テスト・所見の意味)
表在感覚は皮膚表面の情報(触れる・痛い・冷たい)を中心に、深部感覚は身体の位置や動きの情報(どこにあるか・どう動いたか)を中心に扱います。臨床的には、表在は分布の読み取り、深部は動作障害の説明に強い、という役割分担で捉えると回しやすいです。
| 項目 | 表在感覚 | 深部感覚 | 臨床での “当たり” |
|---|---|---|---|
| 代表的な感覚 | 触覚・痛覚・温冷覚 | 位置覚・振動覚(運動覚を含む) | 歩行・巧緻性には深部が効きやすい |
| 検査の狙い | 左右差/範囲(分布)を掴む | 姿勢・運動制御の根拠を掴む | 表在で “どこ” → 深部で “なぜ動けない” |
| ベッドサイドでの例 | 綿・指腹・ピン(最小刺激) | 母趾の上下、音叉( 128 Hz など) | 説明が長いほど誤反応が増える |
| 結果の書き方 | 左右差+範囲(例:前腕橈側で低下) | 位置覚:正答 / 試行、振動覚:減弱 / 消失 | 「条件(開眼/閉眼)」を必ず添える |
10 分で回す順番(スクリーニング → 深掘り)
最初から全部を細かくやると、患者の注意が切れて “評価の精度” が落ちます。まずは 10 分で回せる型を持ち、必要なときだけ深掘りするのが安全です。
| 手順 | 何を見る? | コツ | 記録 |
|---|---|---|---|
| ① 予告と練習 | 反応様式(言う/合図) | 説明は 1 文、練習は 2 回で切る | 反応方法を 1 行で残す |
| ② 表在(触覚 → 痛覚/温冷) | 左右差と範囲 | 同じ刺激・同じ圧・同じ順番 | 分布(どこが低下か) |
| ③ 深部(位置覚 → 振動覚) | 動作に直結する低下 | 閉眼で統一、関節は最小可動域で | 正答 / 試行、減弱/消失 |
| ④ 識別系(必要時) | 皮質感覚(立体・二点など) | 疲れてきたら翌日に回す | “実施可否” も含める |
所見の読み方(鑑別は “断定” ではなく当たりを付ける)
感覚所見は、単独で病変部位を断定するためというより、追加評価(反射・筋力・協調性・歩行観察)をどこに寄せるかの “当たり” を付けるために使うと実務で役立ちます。表在が目立つのか、深部が目立つのかで、優先する観察が変わります。
| 見え方 | まず疑うこと | 次に足す評価 | 現場メモ |
|---|---|---|---|
| 表在の左右差が強い | 分布(神経・皮節)の確認 | 痛み・皮膚状態、筋力、反射 | “どこからどこまで” を優先して書く |
| 深部が強く低下(特に下肢) | 姿勢制御の破綻(立位/歩行) | 閉眼立位、足部位置、協調性 | 暗所で悪化するかを必ず聞く |
| 表在は保たれ、深部だけ怪しい | 位置覚・振動覚の取りこぼし注意 | 評価手順の再標準化 → 再検 | 検者誤差が出やすい領域 |
| 疼痛・恐怖で反応が不安定 | “感覚低下” ではなく回避反応 | 刺激量を落とす、休息、説明短縮 | 「実施条件で変動」も所見 |
現場の詰まりどころ(ここで精度が落ちる)
多いのは、①説明が長い、②刺激条件が揃わない、③開眼/閉眼が混ざる、の 3 つです。特に深部感覚は、患者が “推測で答える” とそれっぽい結果になり、見落としやすくなります。条件を固定して短く回すことが最優先です。
よくある失敗( OK / NG 早見)
| NG | なぜ起きる? | OK(修正) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 表在と深部の順番が毎回違う | 注意・疲労で反応が揺れる | 順番固定(表在 → 深部) | フローを 1 行でテンプレ化 |
| 位置覚で関節を大きく動かす | 他の感覚で “当てられる” | 最小可動域で上下のみ | 「母趾:最小可動域」など条件を書く |
| 閉眼が徹底できていない | 視覚で補正される | 閉眼で統一(必要時はアイマスク) | 開眼/閉眼を必ず併記 |
| 痛覚で強刺激から入る | 恐怖・回避で “低下” に見える | 触覚で練習 → 最小刺激で短く | 「疼痛で反応不安定」も所見 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 表在感覚と深部感覚、どちらから測るのが安全ですか?
原則は表在(触覚)で練習してから深部が安全です。反応方法が揃うと、深部(位置覚)の誤反応が減ります。ふらつきや暗所での悪化が強い場合だけ、深部を早めに当てます。
Q2. 深部感覚(位置覚)の “正答率” はどう記録すればいいですか?
おすすめは試行回数を決めて “正答 / 試行” で残す方法です(例:母趾 3 / 5 )。毎回同じ回数にすると、経過比較がしやすくなります。
Q3. 表在は正常なのに、歩行だけ不安定です。深部感覚は必ず低下していますか?
必ずではありません。筋力、協調性、前庭、注意、疼痛などでも歩行は崩れます。ただし深部感覚は動作に直結するため、短時間でも位置覚(母趾)と振動覚を入れると “見落とし” が減ります。
Q4. 検査中に患者が “推測で答える” のをやめさせるコツはありますか?
「分からなければ “分からない” で大丈夫」と最初に伝え、練習を 2 回だけ行います。さらに、刺激間隔を一定にし、説明を 1 文に固定すると推測が減ります。
次の一手(迷わない導線)
- 上位まとめ:神経学的評価の全体像に戻る → 神経学的評価ハブ
- 手順の型:感覚検査の 10 分フロー → 感覚検査の実施手順まとめ
- 各論:表在感覚の具体手技(触覚・痛覚) → 表在感覚の評価手順( PT 向け )
参考文献
- Chong PS, Cros DP. Technology literature review: quantitative sensory testing. Muscle Nerve. 2004;29(5):734-747. DOI: 10.1002/mus.20053(PMID: 15116380)
- Reimer M, Forstenpointner J, et al. Sensory bedside testing: a simple stratification approach for sensory phenotyping. PAIN Reports. 2020;5(3):e820. DOI: 10.1097/PR9.0000000000000820(PMID: 32903958)
- Han J, Waddington G, Adams R, et al. Assessing proprioception: A critical review of methods. J Sport Health Sci. 2016;5(1):80-90. DOI: 10.1016/j.jshs.2014.10.004(PMID: 30356896)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

