- 上田式12段階とは?BRSとの対応・違いから理解する
- 上田式12段階とは|Brunnstrom法を標準化・細分化した評価
- 上田式12段階とBRSの対応早見表
- 上田式12段階とBRSの違い
- 上田式12段階の評価方法|結果を出すまでの流れ
- 上肢・手指・下肢は分けて評価する
- 上田式12段階はBRSへ換算できる?
- 上田式12段階を使うメリット|同じBRS Stage内の変化を捉える
- 再評価ではGradeだけでなく条件をそろえる
- Excel・PDF|上田式12段階とBRS 記録・対応整理シート
- よくある誤解|上田式12段階を使うときの4つの注意点
- rehabilikun Library|脳卒中評価を深く学ぶ2冊
- よくある質問(FAQ)
- 次に確認したい脳卒中評価
- まとめ|対応関係はあるが、単純換算ではない
- 参考文献
- 著者情報
上田式12段階とは?BRSとの対応・違いから理解する
上田式12段階片麻痺機能テストは、Brunnstrom法の回復段階の考え方を基盤に、判定基準を明確化し、片麻痺の変化をより細かく捉えるために標準化された評価法です。そのため、BRS(Brunnstrom Recovery Stage)と無関係な別の尺度ではなく、両者には対応関係があります。
ただし、対応表を使って「BRSⅢだから上田式Grade 5」のように、別尺度の結果を1対1で機械的に換算することはできません。たとえば上肢では、BRS Stage IIIに上田式Grade 3〜6が対応するため、BRSだけから上田式の特定Gradeを決めることはできないからです。
この記事では、上田式12段階とは何か、BRSとの対応関係、評価の進め方、上肢・手指・下肢の扱い、再評価時の記録まで整理します。評価項目の全文は転載せず、臨床で迷いやすい「対応」と「換算」の境界を中心に解説します。
上田式12段階とは|Brunnstrom法を標準化・細分化した評価
上田式12段階は、Brunnstrom法の原理に基づき、片麻痺の回復過程をより明確な基準で評価できるように標準化された方法です。
上田らは1977年の報告で、Brunnstromテストについて、個々の検査課題の可否基準やStageの総合判定が明確でないこと、Stage III〜Vなどでは1つのStageの中に幅広い運動状態が含まれることなどを課題として挙げています。
そこで、多施設共同研究によって検査課題と判定基準を整理し、BrunnstromのStageをさらに細分化したGradeを設定しました。一般に「上田式12段階」「12段階片麻痺回復グレード法」などと呼ばれ、臨床ではGrade 0〜12の数字で結果が記録されます。
最初に押さえるポイント:上田式12段階は「BRSとはまったく別の回復理論」ではありません。Brunnstrom法を土台として、判定条件と回復段階をより細かく整理した評価と理解すると、両者の関係が分かりやすくなります。
上田式12段階とBRSの対応早見表
上肢では、上田式GradeとBRS Stageに一定の対応関係があります。ただし、この表は「既存のBRS結果から上田式Gradeを算出する換算表」ではなく、回復段階の位置関係を理解するための参考対応です。
| 上田式12段階 | BRS | 対応の見方 |
|---|---|---|
| Grade 0 | Stage I | BRSの最初の回復段階に対応する |
| Grade 1〜2 | Stage II | Stage IIの範囲をさらに細かく捉える |
| Grade 3〜6 | Stage III | Stage IIIの幅広い状態を複数Gradeに分ける |
| Grade 7〜8 | Stage IV | Stage IV内の変化を細分化する |
| Grade 9〜11 | Stage V | Stage V内の変化を複数Gradeで表す |
| Grade 12 | Stage VI | より高い回復段階に対応する |

この対応を見ると、上田式12段階の特徴が分かります。たとえばBRSでは同じStage IIIでも、上田式ではGrade 3〜6に分かれます。BRSでStageが変わっていなくても、上田式では回復過程の変化がGradeとして表れる可能性があります。
注意:上の表と図版は上肢における対応関係を整理したものです。この対応をそのまま手指や下肢へ当てはめたり、BRSから特定の上田式Gradeを逆算したりしないでください。必要な尺度は、それぞれの正式な検査手順で評価します。
上田式12段階とBRSの違い
両者の最大の違いは、「6段階か12段階か」だけではなく、回復段階をどの程度細かく、どのような判定手続きで表すかにあります。
| 比較項目 | BRS | 上田式12段階 |
|---|---|---|
| 基本的な位置づけ | 共同運動の出現から分離運動へ至る回復過程をStageで整理する | Brunnstrom法の原理を基盤に、検査・判定を標準化して細分化する |
| 結果の表現 | Stage I〜VI | Grade 0〜12 |
| 変化の粒度 | 回復過程の大枠を把握しやすい | 同じBRS Stage内の変化をより細かく捉えられる |
| 判定 | 各Stageに対応する運動状態から判断する | 規定された検査課題の結果をもとにGradeを決定する |
| 結果の共有 | 施設内で共通言語として使用されている場合に共有しやすい | 経過をより細かく記録したい場合に情報量を増やせる |
| 注意点 | 同一Stage内の変化が数字に表れない場合がある | 正式な検査条件をそろえずGradeだけ比較しない |
上田式12段階の評価方法|結果を出すまでの流れ
上田式12段階は、対象部位に対応した規定の検査課題を実施し、その結果からGradeを判定します。単に患者の動きを見た印象だけで0〜12の数字を付ける評価ではありません。
- 評価する部位を決める:上肢・手指・下肢を分けます。
- 規定された検査課題を実施する:開始肢位、運動課題、判定条件を正式な資料で確認します。
- 各課題の結果を判定する:可能・不可能だけでなく、規定された達成条件に沿って判定します。
- 結果からGradeを決める:個々の検査結果を総合し、対応するGradeを記録します。
- 評価条件と判定根拠を残す:再評価で同じ条件を再現できるようにします。
本記事では著作権と評価法の正確性を考慮し、各検査課題や判定文を全文転載していません。実際に評価する際は、原著・専門書などで正式な検査方法を確認してください。
「Gradeだけ覚える」は避けます。上田式12段階の価値は数字の細かさだけではなく、規定された検査課題と判定基準によって、回復過程をできるだけ再現性高く捉えることにあります。
上肢・手指・下肢は分けて評価する
上田式12段階では、上肢・手指・下肢を一つの数字へまとめず、部位ごとに結果を記録します。近位部と遠位部、上肢と下肢で回復状態が異なることは珍しくないためです。
1977年の標準化研究では上肢・下肢の片麻痺回復グレードが整理され、その後、1985年には手指機能テストの標準化が報告されています。
| 部位 | 主に確認すること | 記録の考え方 |
|---|---|---|
| 上肢 | 共同運動から分離運動へ向かう上肢運動の回復 | 「上田式 上肢Grade○」と部位を明記する |
| 手指 | 手指・手関節を含む運動機能の回復 | 上肢Gradeと一つにまとめない |
| 下肢 | 下肢における運動麻痺の回復 | 上肢とは独立して結果を記録する |
たとえば「上肢Grade 8、手指Grade 5」のように差がある場合、その差自体が臨床上の重要な情報になります。一つの代表値にまとめてしまうと、部位ごとの回復差が失われます。
上田式12段階はBRSへ換算できる?
対応関係はありますが、別尺度の測定値を1対1で置き換える意味での「換算」は避けます。ここが最も混同しやすいポイントです。
BRSから上田式Gradeを逆算しない
たとえば上肢BRS Stage IIIには、上田式Grade 3〜6が対応します。
そのため、カルテに「BRS上肢III」とだけ書かれていても、そこから上田式Gradeが3・4・5・6のどれなのかは決められません。上田式Gradeが必要なら、上田式の検査手順に従って改めて評価します。
上田式からBRSを見る場合も「参考対応」と考える
上田式Grade 7〜8であれば、上肢ではBRS Stage IVに対応する位置づけを確認できます。ただし、BRSとして正式な評価結果が求められる場面では、「上田式Grade 8だからBRS IV」と記録だけを書き換えるのではなく、BRSの基準でも評価しておく方が明確です。
経過観察では同じ尺度を継続する
前回が上田式なら今回も上田式、前回がBRSなら今回もBRSを基本にすると、変化の意味を解釈しやすくなります。
途中で尺度を変更すると、「患者の運動機能が変化した」のか「尺度の粒度が変わった」のかが分かりにくくなります。尺度を追加・変更する場合は、変更した理由を記録しておきます。
整理すると:「BRSと上田式には対応関係がない」ではなく、「対応関係はあるが、BRSの1つのStageに複数の上田式Gradeが含まれるため、機械的な1対1換算には使えない」と理解するのが適切です。
上田式12段階を使うメリット|同じBRS Stage内の変化を捉える
上田式12段階の大きな利点は、BRSのStageだけでは数字に表れにくい回復過程の変化を、より細かく記録できることです。
原著では、BRS Stage IIIなどは含まれる運動状態の幅が広く、同じStage内でも初期と完成に近い状態では機能的な差が大きいことが問題として挙げられています。
たとえば、前回も今回もBRS Stage IIIであれば、BRS上は数字が変わりません。一方、上田式でGrade 3からGrade 5へ変化していれば、同じBRS Stage IIIに相当する範囲内でも経過をより細かく表現できます。
ただし、上田式の数字が細かいからといって、常にBRSより優先する必要はありません。施設でBRSが共通尺度として標準化されている場合や、大きな回復段階を共有することが目的なら、BRSを継続する合理性があります。
| 評価目的 | 考え方 |
|---|---|
| 施設内で回復段階を共通言語として共有したい | 施設で標準化されている尺度を優先する |
| 同じBRS Stage内の変化を細かく追いたい | 上田式12段階を検討する |
| 前回との変化を確認したい | 前回と同じ尺度・同じ条件で再評価する |
| 他施設へ結果を伝えたい | 尺度名・部位・StageまたはGradeを明記する |
再評価ではGradeだけでなく条件をそろえる
前回との差を見る場合は、同じ尺度を使うだけでなく、体位・開始肢位・指示・促通などの評価条件も可能な範囲でそろえます。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 尺度・部位 | 上田式かBRSか、上肢・手指・下肢のどこか |
| 体位・開始肢位 | 前回と同じ条件で開始できているか |
| 指示方法 | 口頭指示、デモ、繰り返し説明などの条件 |
| 促通・身体誘導 | 触覚刺激、誘導、代償の制御などを行ったか |
| 当日の状態 | 疼痛、疲労、覚醒、注意など評価へ影響し得る要因 |
| 判定根拠 | 何が可能になったか、どこが判定境界だったか |
記録例
上田式12段階の記録例
上田式12段階:上肢Grade 7、手指Grade 5。上肢は前回Grade 6から改善。前回と同一体位・同一指示で評価。肩痛はなく、促通なし。
BRSを併記する場合の記録例
上田式上肢Grade 7、BRS上肢IV。両尺度をそれぞれの基準で評価。前回上田式Grade 6から改善を認めた。
「Stage III」「Grade 7」のように数字だけを残すより、尺度名・部位・評価条件・前回差を短く残した方が、次回評価や他職種への共有につながります。
Excel・PDF|上田式12段階とBRS 記録・対応整理シート
上田式12段階とBRSの結果、評価条件、前回との差を1枚で整理できる記録シートを作成しました。上肢のBRSとの参考対応も確認できますが、機械的な換算に使うシートではありません。
上田式12段階とBRS 記録・対応整理シート
評価部位、上田式Grade、BRS Stage、評価条件、前回差、判定根拠、次回確認点を整理できます。
Excel・PDFは、評価結果と条件を整理するための当サイト自作シートです。上田式12段階やBRSの正式な検査用紙、原著、専門書の代替ではありません。また、上肢の対応表は回復段階の位置関係を整理するための参考情報であり、BRSと上田式を機械的に換算する目的では使用しません。
よくある誤解|上田式12段階を使うときの4つの注意点
上田式12段階で特に注意したいのは、「BRSとの対応」と「換算」を同じ意味として扱わないことです。
| 誤解 | 問題点 | 対応 |
|---|---|---|
| BRSを2倍すれば上田式になる | BRSの1つのStageに複数Gradeが対応する | 各尺度を正式な基準で評価する |
| BRSと上田式はまったく無関係 | 上田式がBrunnstrom法を基盤に標準化された経緯を見落とす | 「関連するが同一尺度ではない」と整理する |
| 上肢・手指・下肢を一つのGradeにする | 部位ごとの回復差が分からなくなる | 部位別に結果を記録する |
| Gradeが上がればADLも改善したと判断する | 実用性、感覚、疼痛、認知、活動などは別に評価が必要 | 目的に応じた他の評価と組み合わせる |
上田式12段階もBRSも、片麻痺患者の状態すべてを一つの数字で説明する尺度ではありません。運動麻痺の回復段階と、実際の上肢使用、歩行、ADL、感覚障害などは分けて評価します。
rehabilikun Library|脳卒中評価を深く学ぶ2冊
上田式12段階やBRSを実際に使う場合は、検査手順だけでなく、評価結果を臨床でどう解釈するかまで確認できる資料があると便利です。
理学療法評価を幅広く確認するなら:PT臨床評価ガイド
理学療法で用いる各種評価について、実施方法、注意点、結果の解釈や活用を幅広く確認したいときの参考書です。
脳卒中評価の解釈を深めるなら:セラピストのための 脳卒中評価指標の解釈と活用
脳卒中リハビリテーションで用いる各種評価指標について、検査結果の意味や臨床での活用を整理した書籍です。
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よくある質問(FAQ)
本文で特に迷いやすいポイントを簡潔に整理します。
Q1. 上田式12段階はBRSを細かくした評価ですか?
A. Brunnstrom法の原理を基盤に、検査課題や判定基準を標準化し、Stageをさらに細かいGradeで表せるようにした評価です。ただし、BRSの数字を単純に分割しただけの尺度ではありません。
Q2. 上田式12段階とBRSは換算できますか?
A. 上肢には対応関係がありますが、1対1の機械的換算はできません。たとえばBRS Stage IIIには上田式Grade 3〜6が対応するため、BRS IIIという情報だけでは上田式の特定Gradeを決められません。
Q3. 上肢・手指・下肢は同じGradeで記録しますか?
A. いいえ。上肢・手指・下肢はそれぞれ分けて評価・記録します。回復状況が部位ごとに異なる場合があるため、一つのGradeへまとめません。
次に確認したい脳卒中評価
まとめ|対応関係はあるが、単純換算ではない
上田式12段階は、Brunnstrom法の原理を基盤として、片麻痺の回復過程をより細かく、明確な判定基準で捉えるために標準化された評価法です。
上肢では、Grade 0=BRS I、Grade 1〜2=II、Grade 3〜6=III、Grade 7〜8=IV、Grade 9〜11=V、Grade 12=VIという参考対応があります。
一方で、BRSの1つのStageに複数の上田式Gradeが含まれるため、BRSから特定のGradeを逆算するような機械的換算はできません。必要な尺度は、それぞれの正式な手順で評価します。
再評価では、尺度名、評価部位、GradeまたはStage、評価条件、判定根拠、前回との差を残してください。数字だけでなく「どの尺度を、どの条件で評価した結果か」を共有することが、経過を正しく読むために重要です。
参考文献
- Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi:10.1093/ptj/46.4.357 / PubMed
- 上田敏, 福屋靖子, 間得之, 長谷川恒雄, 佐久間昭. 片麻痺機能テストの標準化―12段階「片麻痺回復グレード」法. 総合リハビリテーション. 1977;5(10):749-766. doi:10.11477/mf.1552103862
- 上田敏, 長谷川恒雄, 安藤一也, 佐久間昭, 楠正. 片麻痺手指機能テストの標準化―12段階手指機能テストおよび5段階上肢能力テスト. リハビリテーション医学. 1985;22(3):143-160. doi:10.2490/jjrm1963.22.143 / J-STAGE
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

