上田式12段階とBRSの違い|使い分けと換算できない理由
結論として、ブルンストロームステージ(BRS)と上田式12段階片麻痺機能テストは、似た運動回復過程を捉えますが、同じ尺度ではありません。BRSは6段階で回復過程の大枠を整理し、上田式12段階法は、検査課題を用いて片麻痺機能の変化をより細かく段階づけます。
そのため、「申し送りでは必ずBRS」「経過観察では必ず上田式」と固定するのではなく、チーム内で共有されている尺度、評価目的、必要な変化の細かさに応じて選ぶことが重要です。
この記事では、上田式12段階とBRSの違い、臨床での使い分け、機械的に換算できない理由、評価条件のそろえ方、記録例までを整理します。評価項目の全文転載ではなく、臨床で迷いやすい判断に絞って解説します。
上田式12段階とBRSの違いを比較
両者の違いは、単純に「6段階か12段階か」だけではありません。段階を決めるための検査課題、判定方法、上肢・手指・下肢の扱い方が異なるため、数字だけを並べて比較しないことが大切です。
| 比較項目 | BRS | 上田式12段階 | 臨床上のポイント |
|---|---|---|---|
| 段階 | 基本的に6段階 | 12段階 | 段階数だけでなく、判定課題の違いを確認する |
| 基本的な考え方 | 共同運動の出現から分離運動への回復過程を段階づける | 片麻痺の運動回復を検査課題によって細かく段階づける | いずれも中枢性運動麻痺の回復過程を捉える |
| 変化の粒度 | 回復段階の大きな変化を整理しやすい | 段階間の比較的細かな変化を捉えやすい | 必要な判別性に応じて選択する |
| 判定方法 | 各段階に対応する運動の出現状況から判断する | 定められた検査課題の可否をもとにグレードを判定する | 印象だけで判定せず、正式な手順を確認する |
| 部位 | 上肢、手指、下肢を分けて評価する | 上肢、手指、下肢に対応する評価法がある | 部位ごとの回復差を一つにまとめない |
| 向いている運用 | 施設内で広く共有されている場合の初回評価・申し送り・経過観察 | より細かな変化を追いたい場面や統一された検査課題での再評価 | 施設の標準尺度と評価目的を優先する |
| 注意点 | 同じステージ内の小さな変化が数値に反映されない場合がある | 検査条件や判定手順が異なると比較しにくい | 体位、指示、促通、疼痛、疲労を併記する |
どちらを使う?目的別の選び方
尺度を選ぶときは、先に「今回の評価で何を明らかにしたいか」を決めます。BRSと上田式12段階を毎回併用すると評価負担が増えるため、目的のない重複評価は避けます。

| 評価したいこと | 選択肢 | 理由 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 施設内で共通する回復段階を共有したい | 施設で標準化されている尺度 | チーム内で同じ意味として受け取れることが重要 | 「BRS上肢Ⅲ、屈曲共同運動優位」 |
| 回復過程をより細かく追いたい | 上田式12段階 | 検査課題を用いて段階を細分化している | 「上田式上肢グレード6、前回5」 |
| 上肢と手指の回復差を確認したい | 部位別に評価する | 近位部と遠位部で回復状況が異なる場合がある | 「上肢Ⅳ、手指Ⅱ。手指分離が遅延」 |
| 前回からの変化を確認したい | 前回と同じ尺度 | 異なる尺度への変更は変化量の解釈を難しくする | 「前回と同一体位・同一指示で再評価」 |
| 他施設の記録と比較したい | 尺度名と部位を明記する | 「ステージ」「グレード」だけでは尺度が特定できない | 「BRS手指Ⅲ」「上田式下肢グレード7」 |
実務上のポイント:施設でBRSが共通言語になっている場合は、無理に上田式へ変更する必要はありません。上田式12段階を追加する場合は、「追加することで治療方針や再評価の判断が変わるか」を確認します。
PDF記録シートで評価条件をそろえる
上田式12段階とBRSを併用するときは、段階だけでなく、使用した尺度、評価部位、評価条件、判定根拠、前回との差を同じ用紙に残すと、申し送りと再評価がつながりやすくなります。
以下のPDFは、BRSと上田式12段階の使い分け、評価条件、比較記録、次回の確認点をA4・1枚で整理できる自作記録シートです。
このPDFは評価結果と条件を整理するための自作記録シートです。上田式12段階やBRSの正式な検査用紙、原著、認定教材の代替ではありません。
上田式12段階とBRSは換算できる?
上田式12段階のグレードを、BRSのステージへ1対1で機械的に換算することは避けます。両者は関連する運動回復過程を評価しますが、段階数だけでなく、検査課題と判定手続きが異なるためです。
たとえば、12段階を単純に2つずつまとめて6段階に変換しても、個々の検査課題の達成状況や共同運動・分離運動の特徴は反映されません。また、上肢、手指、下肢では評価内容も異なります。
| 理由 | 起こり得る問題 | 代わりに行うこと |
|---|---|---|
| 検査課題が異なる | 同じ数字でも確認した運動が一致しない | 尺度名と判定した課題を記録する |
| 段階の境界が異なる | 12段階を単純に半分へまとめてもBRSにならない | それぞれの正式な基準で判定する |
| 部位ごとの評価内容が異なる | 上肢、手指、下肢の回復差が失われる | 部位ごとに結果を記載する |
| 評価条件の影響が残る | 換算後の数字だけでは変化の理由が分からない | 体位、指示、促通、疼痛、疲労を併記する |
チーム共有で最低限残す項目
- 尺度名:BRSまたは上田式12段階
- 評価部位:上肢、手指、下肢
- 段階:ステージまたはグレード
- 判定根拠:可能だった運動、困難だった課題
- 評価条件:体位、開始肢位、口頭指示、促通の有無
- 変動要因:疼痛、疲労、注意、覚醒、時間帯
再評価でそろえたい6つの条件
前回との差を評価する場合は、使用する尺度だけでなく、評価条件をそろえる必要があります。とくに随意運動が不安定な時期は、体位や指示の違いが結果へ影響します。
| 条件 | 確認内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 体位 | 背臥位、座位、立位など | 端座位、足底接地 |
| 開始肢位 | 肩・肘・前腕・股関節・膝関節などの位置 | 肩関節内転位、肘屈曲位から開始 |
| 指示 | 指示文、デモ、反復説明の有無 | 口頭指示1回、デモなし |
| 促通・介助 | 触覚刺激、誘導、代償抑制の有無 | 促通なし、体幹代償のみ軽く制御 |
| 当日の状態 | 疼痛、疲労、覚醒、注意、服薬状況 | 肩痛NRS3、午後で軽度疲労あり |
| 判定者 | 評価者または複数評価者での確認 | 担当PTが評価、境界例は主任と確認 |
記録例|数字だけで終わらせない
段階だけを記録すると、次回評価で「なぜその段階だったか」が分かりません。尺度名、部位、段階、判定根拠、評価条件を短くまとめます。
BRSの記録例
BRS:上肢Ⅲ、手指Ⅱ、下肢Ⅳ。上肢は屈曲共同運動が随意的に可能だが、共同運動から外れた運動は困難。端座位、促通なしで評価。
上田式12段階の記録例
上田式12段階:上肢グレード7。前回グレード6。指定課題の遂行が可能となったが、速度低下と体幹側屈による代償を認める。前回と同一体位・同一指示で評価。
状態変動がある場合の記録例
BRS上肢Ⅳ相当の運動を認めたが、肩痛NRS5と疲労により再現性が低い。今回の段階のみで改善・悪化を判断せず、疼痛軽減後に同条件で再評価する。
rehabilikun Library|BRSと上田式12段階を深く学ぶ2冊
BRSや上田式12段階は、段階の数字だけを覚えるよりも、検査の目的、判定根拠、ほかの脳卒中評価との関係を理解することが重要です。評価の基本と脳卒中評価指標を補える2冊を選びました。
臨床評価の基本から整理するなら:PT臨床評価ガイド
評価の目的、検査結果の解釈、問題点の統合まで、理学療法評価の全体像を確認したい人に向いています。
BRSと上田式を直接確認するなら:セラピストのための 脳卒中評価指標の解釈と活用
BRSと上田式片麻痺機能テストの両方を収載し、脳卒中で用いる評価指標の選び方と結果の解釈を確認できる書籍です。
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現場の詰まりどころ|よくある失敗と対策
上田式12段階とBRSで起こりやすい失敗は、段階だけを記録する、異なる尺度の数字を換算する、上肢と手指を一つにまとめる、評価条件が毎回異なることです。
| 失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 「ステージⅢ」だけを記録する | 尺度名と評価部位が分からない | 「BRS上肢Ⅲ」のように尺度名と部位を書く |
| 12段階を単純に6段階へ換算する | 検査課題と段階境界の違いが失われる | 両尺度をそれぞれの正式な基準で判定する |
| 上肢と手指を一つの段階で表す | 近位部と遠位部の回復差が分からない | 上肢・手指を分けて記録する |
| 促通後の運動を随意運動として扱う | 評価者間や再評価時に条件がそろわない | 促通・誘導の有無と判定条件を明記する |
| 段階が上がればADLも改善したと判断する | 実用性や代償、感覚障害などが反映されない | FMA、SIAS、STEF、FIMなど目的に応じた評価を併用する |
| 疼痛や疲労を記録しない | 真の変化と一時的な変動を区別できない | 当日の状態を併記し、必要に応じて再評価する |
とくに注意したい3つの誤解
- 12段階はBRSを単純に2倍した尺度ではありません。
- 段階が同じでも、運動の質や実用性が同じとは限りません。
- 運動麻痺の段階だけでは、上肢機能やADL全体を説明できません。
再評価前のチェックリスト
- 前回と同じ尺度を使用しているか
- 上肢、手指、下肢を分けて評価したか
- 体位と開始肢位をそろえたか
- 口頭指示とデモの方法をそろえたか
- 促通や身体誘導の有無を記録したか
- 疼痛、疲労、注意、覚醒状態を確認したか
- 段階の判定根拠を一言残したか
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップすると回答が開きます。
Q1. BRSと上田式12段階はどちらを使えばよいですか?
A. 評価目的と施設内の運用で選びます。施設内でBRSが共通尺度として定着している場合は、BRSで継続する方が比較しやすくなります。より細かな変化を統一された検査課題で追いたい場合は、上田式12段階を検討します。
Q2. 上田式12段階はBRSを細かくした評価ですか?
A. Brunnstromの回復段階の考え方と関連しますが、単に6段階を12段階へ分割したものではありません。上田式には定められた検査課題と判定手続きがあり、独立した評価法として扱います。
Q3. 上田式12段階とBRSは換算できますか?
A. 1対1の機械的な換算は避けます。段階数、検査課題、判定境界が異なるためです。比較が必要な場合は、両方を正式な手順で評価し、尺度名と評価条件を明記します。
Q4. 上肢と手指で段階が異なる場合はどうしますか?
A. 上肢と手指を分けて記録します。近位部の運動が改善していても、手指の分離運動や操作性が遅れている場合があります。一つの数字へまとめないことが重要です。
Q5. 段階が上がれば実用的な上肢機能も改善したと考えてよいですか?
A. 必ずしも一致しません。BRSと上田式は主に運動麻痺の回復段階を評価します。実用性を確認する場合は、実際の物品操作、使用頻度、ADL、感覚、疼痛、認知機能なども評価します。
Q6. 日によって段階が変わる場合はどう記録しますか?
A. 体位、開始肢位、促通、疼痛、疲労、注意状態、時間帯などを併記します。条件差や一時的な変動が考えられる場合は、同じ条件で再評価してから変化を判断します。
次の一手
まとめ|数字を換算せず、目的と評価条件をそろえる
ブルンストロームステージと上田式12段階は、どちらも片麻痺の運動回復過程を評価しますが、段階数、検査課題、判定方法が異なります。
BRSは6段階で回復過程を整理し、上田式12段階は検査課題を用いて、より細かな変化を段階づけます。ただし、BRSが共有用、上田式が経過観察用と一律に決まるわけではありません。施設内の共通尺度と評価目的に合わせて選択します。
再評価では、数字だけを比較せず、尺度名、評価部位、体位、開始肢位、指示、促通、疼痛、疲労、判定根拠を記録してください。両尺度を使用する場合も機械的に換算せず、それぞれの正式な基準で判定することが重要です。
参考文献
- Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi:10.1093/ptj/46.4.357 / PubMed
- 上田敏, 福屋靖子, 間得之, 長谷川恒雄, 佐久間昭. 片麻痺機能テストの標準化―12段階「片麻痺回復グレード」法. 総合リハビリテーション. 1977;5(10):749-766. doi:10.11477/mf.1552103862
- 上田敏, 長谷川恒雄, 安藤一也, 佐久間昭, 楠正. 片麻痺手指機能テストの標準化―12段階手指機能テストおよび5段階上肢能力テスト. リハビリテーション医学. 1985;22(3):143-160. doi:10.2490/jjrm1963.22.143 / J-STAGE
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下、臨床評価

