表在感覚は 10 点法と 5 回法を目的で選ぶ
表在感覚の評価では、同じ「触れる/刺す」検査でも、10 点法で強さを追うのか、5 回法で反応の安定性を確認するのかで、記録の意味が変わります。この記事では、PT / OT が迷いやすい 10 点法と 5 回法の違いを、目的・手順・記録例・よくある失敗まで整理します。
結論は、経過の変化量を追うなら 10 点法、軽微な左右差や見落としを減らしたいなら 5 回法です。読み終えると、「今日の評価ではどちらを主法にするか」「カルテにどう残すか」「次回比較で何をそろえるか」が決めやすくなります。
結論:変化量なら 10 点法、見落とし対策なら 5 回法
最初に決めるのは、評価の目的です。前回から良くなったかを追いたい場面では 10 点法、感じる/感じないの反応が揺れる場面では 5 回法が使いやすいです。どちらも万能ではないため、患者の理解度、注意、失語、疼痛、恐怖反応を見ながら選びます。
| 状況 | 主法 | 理由 | 記録で残すこと |
|---|---|---|---|
| 週単位・月単位で回復過程を追う | 10 点法 | 前回との差を数値で比較しやすい | 参照部位、評価部位、点数 |
| 軽度の左右差を見落としたくない | 5 回法 | 反応の有無を複数回で確認できる | 正答回数、左右差、刺激条件 |
| 患者が「何点か」を答えにくい | 5 回法 | Yes / No や合図で回答しやすい | 反応方法、正答回数、注意の揺れ |
| 疼痛や恐怖が強く反応が不安定 | 10 点法を慎重に | 痛みと感覚低下が混ざりやすい | 疼痛・恐怖反応、刺激の強さ |
A4 記録シートをダウンロード
10 点法と 5 回法を臨床で使い分けるには、点数や回数だけでなく、参照部位・刺激条件・反応方法・解釈メモを同じ型で残すことが重要です。以下の A4 記録シートは、表在感覚評価の条件と結果を 1 枚で整理できるように作成しています。
表在感覚 10 点法・5 回法 比較記録シート(A4)
主法の選択、実施前にそろえる条件、10 点法 / 5 回法の結果、解釈・比較メモを記録できます。印刷して病棟・外来・訪問での再評価にも使いやすい形式です。
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違いは「強さを点数化」か「反応を回数化」か
10 点法と 5 回法の違いは、評価している対象にあります。10 点法は感覚の強さを数値化し、5 回法は刺激に気づけた回数を数値化します。そのため、同じ「低下」でも、10 点法の 6 / 10 と 5 回法の 3 / 5 は同じ意味ではありません。
| 項目 | 10 点法 | 5 回法 | 使い分けの視点 |
|---|---|---|---|
| 評価の狙い | 感覚の強さを 0〜10 で表す | 刺激に気づいた回数を 5 回中で表す | 変化量か、検出の安定性か |
| 回答形式 | 「健側を 10 とすると何点ですか」 | 「感じたら合図してください」 | 数値化が難しければ 5 回法 |
| 記録例 | 右手背 6 / 10(参照:左手背) | 右手背 3 / 5(左 5 / 5) | 分母を必ず書く |
| 弱点 | 参照部位が変わると点数がブレる | 刺激タイミングが雑だと当たり外れになる | 検査条件の固定が必須 |
10 点法のやり方:参照部位を固定して変化を追う
10 点法は、参照部位を 10 として評価部位の感覚を何点で感じるかを確認します。もっとも大切なのは、毎回同じ参照部位・同じ刺激・同じ説明で実施することです。参照が変わると、点数の変化が「感覚の変化」ではなく「基準の変化」になります。
- 参照部位を決める(例:健側の同一部位、または感覚が保たれている部位)
- 刺激の種類を決める(例:綿、指腹、ピンなどを混在させない)
- 参照部位を「10」と説明し、評価部位の感覚を 0〜10 で答えてもらう
- 左右差がある場合は、参照→評価→参照の順番を固定する
10 点法の記録例
| 評価対象 | 記録例 | 補足するとよい情報 |
|---|---|---|
| 触覚 | 右手背 8 / 10(参照:左手背) | 刺激:綿、閉眼、接触約 1 秒 |
| 痛覚 | 右前腕 5 / 10(鋭い感覚が弱い) | 疼痛訴え、恐怖反応の有無 |
| 左右差 | 右 6 / 10、左 10 / 10(同部位) | 同じ順番で再評価したか |
5 回法のやり方:同条件で 5 回行い正答回数を残す
5 回法は、同じ刺激を 5 回行い、感じた回数や正答回数を記録する方法です。軽微な感覚低下や注意の揺れがある患者では、1 回だけの反応よりも結果を整理しやすくなります。数値化が苦手な患者でも、合図や Yes / No で実施しやすい点が強みです。
- 反応方法を決める(例:「感じたらはいと言う」「手を挙げる」)
- 評価部位に同じ刺激を 5 回実施する
- 刺激の間隔と強さをできるだけ一定にする
- 5 回中の正答回数を記録し、必要に応じて反対側も同条件で行う
5 回法の記録例
| 評価対象 | 記録例 | 補足するとよい情報 |
|---|---|---|
| 触覚 | 右下腿外側 2 / 5(左 5 / 5) | 閉眼、反応遅延あり |
| 痛覚 | 右前腕 3 / 5(鈍い) | 刺激を避ける反応なし |
| 所見まとめ | 右上肢で触覚・痛覚ともに低下傾向 | 運動麻痺、注意、疼痛とあわせて解釈 |
現場の詰まりどころ:ズレる原因は検査条件にある
感覚検査で結果がズレる原因は、患者側の反応だけではありません。検者側の刺激の圧、接触時間、参照部位、説明文言が毎回変わると、10 点法でも 5 回法でも比較が難しくなります。院内で共有するなら、まず「参照部位」と「刺激条件」を固定することが優先です。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
よくある失敗:OK / NG で修正する
10 点法と 5 回法は、どちらも簡便に実施できますが、簡便だからこそ手順のブレが結果に出やすい評価です。以下の NG を避けるだけでも、再評価時の比較やカンファレンスでの共有がしやすくなります。
| NG | なぜ起きる? | OK(修正) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 毎回、参照部位が違う | 点数の上下が基準移動になる | 参照は同一部位に固定する | 「参照:左手背」などを毎回書く |
| 刺激の圧・時間が一定でない | 5 回法で当たり外れが増える | 接触時間をそろえる | 「接触約 1 秒」など条件を残す |
| 痛みや恐怖を感覚低下として扱う | 回避反応で正答が落ちる | 触覚で練習し、痛覚は最小刺激で短く行う | 「恐怖反応あり」「疼痛訴えあり」を併記 |
| 左右で順番が毎回違う | 注意の揺れで結果がブレる | 参照→評価→参照の順番を固定する | 再評価時も同じ順番で行う |
再現性を上げる:6 つの条件をそろえる
再現性を上げるには、検査前に「何をそろえるか」を決めておくことが大切です。表在感覚の評価では、点数や回数そのものよりも、同じ条件で繰り返せる記録になっているかが臨床での使いやすさを左右します。
| そろえる条件 | 具体例 | 記録の一言 |
|---|---|---|
| 説明文言 | 「感じたら教えてください」を固定 | 理解良好 / 説明再提示あり |
| 参照部位 | 健側手背、健側前腕など | 参照:左手背 |
| 刺激の種類 | 綿、指腹、ピンなどを混在させない | 刺激:綿 |
| 接触時間 | 約 1 秒など | 接触約 1 秒 |
| 体位・視覚遮断 | 背臥位 / 座位、開眼 / 閉眼 | 閉眼、端座位 |
| 記録形式 | 6 / 10、3 / 5 のように分母を固定 | 右手背 6 / 10 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 10 点法と 5 回法は、同じ患者に併用してよいですか?
併用は可能です。ただし、同じ所見として混ぜて解釈すると分かりにくくなります。基本は、入院初期や反応が不安定な時期は 5 回法で左右差を拾い、経過を追う段階では 10 点法で変化量を見る、というように目的を分けると整理しやすいです。
Q2. 5 回法で 4 / 5 と 5 / 5 の差は大きいですか?
まずは刺激条件がそろっているかを確認します。圧、接触時間、刺激間隔が揺れると 4 / 5 になりやすいです。同条件で繰り返しても 4 / 5 が安定する場合は、軽度低下の可能性として、痛覚・温冷覚・運動所見・ADL 場面と合わせて判断します。
Q3. 10 点法で患者が細かい点数を答えられない時はどうしますか?
7 と 8 の違いなどを無理に答えてもらう必要はありません。0 / 2 / 5 / 8 / 10 のように段階を粗くして、同じルールで再評価する方が実務上は使いやすいです。重要なのは、参照部位と説明を固定することです。
Q4. 「低下」「鈍麻」「脱失」はどう使い分けますか?
まずは数値表記を主にします。例として「右手背 6 / 10」「右下腿外側 2 / 5」のように残し、必要に応じて「軽度低下」「著明低下」「脱失疑い」などの補足語を添えます。補足語だけで書くより、分母つきの数値を残す方が共有しやすくなります。
Q5. PDF記録シートはどのタイミングで使うとよいですか?
初回評価、再評価、カンファレンス前の整理に向いています。特に、前回と今回で刺激条件や参照部位が変わりやすい場合は、PDF記録シートに「次回そろえる条件」まで残しておくと、比較のズレを減らしやすくなります。
次の一手
- 全体像から確認する:感覚検査の実施手順まとめ
- すぐ実装する:表在感覚の評価手順
参考文献
- Chong PS, Cros DP. Technology literature review: Quantitative sensory testing. Muscle Nerve. 2004;29(5):734-747. DOI: 10.1002/mus.20053(PMID: 15116380)
- Hales M, Biros E, Reznik JE. Reliability and Validity of the Sensory Component of the ISNCSCI: A Systematic Review. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2015;21(3):241-249. DOI: 10.1310/sci2103-241(PMID: 26363591)
- Reimer M, Forstenpointner J, Hartmann A, Otto JC, Vollert J, Gierthmühlen J, Klein T, Hüllemann P, Baron R. Sensory bedside testing: a simple stratification approach for sensory phenotyping. Pain Rep. 2020;5(3):e820. DOI: 10.1097/PR9.0000000000000820(PMID: 32903958)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


