表在感覚の10点法と5回法の違い|やり方・使い分け・記録例

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表在感覚の10点法と5回法は「何を数値化するか」が違う

表在感覚の評価で使われる「10点法」と「5回法」は、同じ意味の点数ではありません。10点法は、基準部位の感覚を10としたときに、評価部位でどの程度の強さに感じるかを相対的に表す臨床的な運用です。一方、5回法は同じ条件で複数回確認し、刺激を検出した回数や、正解のある課題で正答した回数を記録します。

重要なのは、10点法・5回法を疾患横断で共通する標準化尺度のように扱わないことです。この記事ではPT・OTが臨床で迷いやすい、10点法と5回法の違い、やり方、使い分け、記録方法、結果を解釈するときの注意点を整理します。

表在感覚検査全体の手順を先に確認したい方へ

触覚・痛覚・温度覚の検査方法や評価前の確認事項は、表在感覚の評価手順でまとめています。

10点法と5回法の違い|まずここを区別する

10点法と5回法の大きな違いは、知覚した強さを比較するのか、複数試行での反応を数えるのかです。10点法の「6/10」と5回法の「3/5」は、分数として大小を比較できる数値ではありません。

表在感覚の10点法と5回法の違い
項目 10点法 5回法
主に見るもの 同一刺激に対する知覚の相対的な強さ 複数試行での検出・識別反応
代表的な回答 「基準を10とすると6くらい」 「5回中3回感じた」など
記録例 右手背 6/10(参照:左手背) 右下腿外側 3/5(検出課題)
使いやすい場面 同一条件で相対的な変化を追いたい 反応の一貫性を複数試行で確認したい
注意点 基準部位そのものが正常とは限らない 検出回数と正答回数を混同しない
一律の正常値 この臨床的運用自体に共通カットオフを置かない 5/5=正常、4/5=軽度低下などと一律判定しない
表在感覚の10点法と5回法の違いと記録方法。10点法は基準部位との相対的な感覚強度、5回法は複数試行での検出回数または正答回数として整理し、標準尺度とは区別して使うことを示す図。
図:表在感覚の10点法・5回法の違いと記録の考え方。10点法は相対的な知覚強度、5回法は複数試行での反応を記録し、検査条件をそろえて比較します。

ポイント:10点法・5回法は、すべての疾患で共通して使用する標準化尺度として扱うものではありません。脊髄損傷など、疾患・目的に応じた標準評価が定められている場合は、その公式手順と採点基準を優先します。

10点法と5回法はどう使い分ける?

どちらを使うかは、「10点法の方が優れている」「5回法の方が正確」という関係ではなく、今回の評価で何を確認したいかで決めます。特に、経過比較では前回と同じ方法・同じ刺激条件をそろえることが重要です。

10点法・5回法を選ぶときの考え方
確認したいこと 検討しやすい方法 理由
反対側や基準部位に比べて、どの程度弱く感じるか 10点法 相対的な知覚強度として表現しやすい
前回より知覚の強さが変化したか 10点法 同一条件なら経時的な比較材料にしやすい
刺激に気づく反応が安定しているか 5回法 複数試行で反応のばらつきを確認できる
「何点」と数値で答えることが難しい 5回法を検討 合図など簡単な反応方法を設定しやすい
脊髄損傷など標準化された判定が必要 疾患固有の標準評価 10点法・5回法へ独自に置き換えない

患者の理解、注意、失語、覚醒状態などによっては、どちらの方法でも結果の信頼性が下がります。「答えやすい方法を選んだ」だけで終わらず、その数値が本当に感覚機能を反映しているかを確認しながら解釈します。

10点法のやり方|基準部位との相対的な強さを記録する

10点法では、基準とする部位の感覚を10としたときに、評価部位で同じ刺激をどの程度の強さに感じるかを答えてもらいます。ここで数値化しているのは刺激そのものの強さではなく、患者が知覚した相対的な強さです。

  1. 基準部位を決める
    反対側の同一部位などを基準候補とします。ただし、基準側にも感覚障害が疑われる場合は「健側=正常」と決めつけません。
  2. 評価する刺激をそろえる
    触覚なら使用物品、接触方法、部位などをできるだけ一定にします。
  3. 基準部位を提示する
    「こちらの感じ方を10とします」など、基準を患者と共有します。
  4. 評価部位へ同じ条件で刺激する
    「基準を10とすると、こちらはどのくらいに感じますか」と確認します。
  5. 基準部位と条件を一緒に記録する
    数字だけでなく、参照部位・刺激・体位などを残します。

「健側を10」とする前に基準側を確認する

10点法で最も注意したいのが、反対側を自動的に正常とみなさないことです。両側性の末梢神経障害、脊髄病変、広範な感覚障害などでは、反対側にも感覚異常が存在する可能性があります。

その場合、「右6/10、左10/10」と記録できても、左側が健常者と同等の正常感覚であることまで証明したわけではありません。10点法は、あくまで設定した基準に対する患者内の相対比較として解釈します。

過敏や異常感覚を0〜10へ無理に押し込めない

10点法は感覚低下の程度を相対的に表現するときには使いやすい一方、刺激を通常より強く感じる過敏、痛みを伴う感覚、しびれなどの異常感覚を単純な0〜10だけで表すと情報が不足します。

たとえば「左を10とすると右6/10」に加えて、必要なら「接触時にしびれを伴う」「刺激後も違和感が残る」「反対側より強く感じる」など、感覚の質も別に記録します。

10点法のカルテ記録例

10点法の記録例
場面 記録例
基本例 触覚:右手背 6/10(参照:左手背)。同一刺激で比較。
経時比較 右前腕触覚 8/10(前回6/10、参照:左前腕)。評価条件は前回と同様。
質的変化あり 右下腿外側 5/10(参照:左同部位)。接触時にしびれ感を伴う。
基準側にも異常疑い 左右とも感覚低下が疑われ、反対側を正常基準とした10点法での比較は困難。

5回法のやり方|検出回数と正答回数を区別する

5回法という言葉を使う場合は、まず5回の何を数えているのかを明確にします。毎回刺激を与えて「感じたら合図してください」と確認する課題と、複数の選択肢から答える識別課題では、「3/5」が表す意味が異なります。

検出回数と正答回数は同じではない

5回法で区別したい「検出」と「正答」
課題 何を数えるか 記録例
毎回同じ刺激を提示し、感じたら合図する 刺激を検出・反応できた回数 右下腿外側 3/5(触覚検出)
鋭い/鈍いなど、正解のある刺激を識別する 正しく識別した回数 sharp/dull識別 4/5

したがって、「5回刺激して3回反応した」結果を、そのまま「3/5正答」と記録するのは避けます。検出課題なら検出回数、識別課題なら正答回数として記録すると、あとから結果を読み返したときにも意味が明確になります。

5回行う場合の基本的な進め方

  1. 何を評価する課題か決める
    刺激の検出なのか、刺激の種類を区別する識別課題なのかを決めます。
  2. 回答方法を確認する
    「感じたら『はい』と言う」「手を挙げる」など、患者が実行可能な方法をそろえます。
  3. 刺激条件をできるだけ一定にする
    評価部位、刺激方法、接触条件、体位などをそろえます。
  4. 施設や検査目的に沿った方法で複数試行する
    「5回」という回数そのものを普遍的な標準手順とはみなさず、使用する方法の目的を明確にします。
  5. 検出回数または正答回数として記録する
    分母だけでなく、どの課題を行ったのかを併記します。

5回法のカルテ記録例

5回法の記録例
場面 記録例
触覚の検出 右下腿外側:触覚検出 3/5、左同部位 5/5。同条件で実施。
反応が不安定 右手背:触覚検出 3/5。反応遅延あり、後半で注意低下を認める。
識別課題 右前腕:刺激識別 4/5。誤答1回。
評価条件の影響あり 触覚検出 2/5。覚醒度に変動あり、感覚障害の程度判定は保留し再評価予定。

5/5なら正常?4/5なら軽度低下?|一律のカットオフにしない

5回法で特に避けたいのが、「5/5=正常」「4/5=軽度低下」「3/5=中等度低下」などの独自基準を、そのまま一般的な重症度分類として使用することです。

同じ4/5でも、刺激方法、回答方法、患者の注意状態、課題が検出なのか識別なのかによって意味が変わります。1回の失敗が真の感覚低下とは限らず、逆に5/5でも刺激が強すぎれば軽度の感覚低下を拾えない可能性があります。

そのため、5回法の結果は試行条件をそろえたうえでの臨床所見の一つとして扱い、分布、左右差、他の感覚モダリティ、運動所見、反射、ADL上の問題などと組み合わせて解釈します。

標準化された感覚評価がある場合は公式手順を優先する

10点法や5回法による臨床的な比較と、疾患・目的ごとに標準化された評価尺度は分けて考えます。

たとえば脊髄損傷の神経学的分類に用いられるISNCSCI(International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury)では、key sensory pointに対してlight touchとpin prickを評価し、所定の採点方法に従います。これを「10点法」や独自の「5回法」に置き換えて分類するものではありません。

使い分けの原則:10点法・5回法は、臨床で患者内の比較や反応の確認に利用する方法として整理します。一方、診断・分類・アウトカム評価などで標準化された手順が定められている場合は、必ずその尺度の公式手順を確認してください。

結果が毎回違うときは感覚以外の条件も確認する

表在感覚検査は患者の主観的な応答を利用するため、結果のばらつきがすべて感覚機能そのものの変化とは限りません。数値が前回と大きく違った場合は、まず刺激条件と患者側の条件がそろっているかを確認します。

表在感覚の結果がばらつくときの確認項目
確認項目 結果への影響 記録例
覚醒状態 眠気が強いと刺激への反応が減る 傾眠傾向あり
注意 持続性注意の低下で後半の反応が不安定になる 後半に反応遅延あり
言語理解 検査指示そのものを理解できていない可能性がある 口頭指示のみでは回答困難
視覚情報 刺激部位を見て回答すると純粋な感覚反応と区別しにくい 視覚遮断下で実施
刺激条件 圧、接触方法、部位が変わると比較できない 前回と同一条件
疼痛・恐怖 刺激を避ける反応と感覚低下を混同することがある 接触時に疼痛訴えあり
皮膚状態 創傷、浮腫、皮膚障害などが刺激の受け取り方に影響する 浮腫部位は別途記録

カルテでは「点数+条件+解釈」を残す

感覚検査の記録で重要なのは、「右6/10」「3/5」だけで終わらせないことです。再評価や他職種との共有を考えると、最低限、評価部位・刺激・基準部位または課題内容・結果・結果へ影響した条件を残します。

10点法の記録テンプレ

[感覚モダリティ]:[評価部位] [点数]/10(参照:[基準部位])。[刺激・条件]。[必要時、質的所見]。

例:触覚:右手背 6/10(参照:左手背)。同一刺激・視覚遮断下で比較。右手背にしびれ感を伴う。

5回法の記録テンプレ

[感覚モダリティ]:[評価部位] [検出または正答][回数]/5。[課題内容・刺激条件]。[反応の特徴]。

例:触覚:右下腿外側 検出3/5、左5/5。同条件で実施。右側で反応遅延を認める。

このように記録しておけば、次回評価で「数字だけ同じだった」「検査方法が違って比較できなかった」という問題を減らせます。

10点法・5回法の結果は分布と他の所見を組み合わせて解釈する

表在感覚の評価では、点数そのものよりもどこに、どの種類の感覚異常が、どのような分布で存在するかが重要です。

たとえば右手背6/10という結果だけでは、末梢神経、神経根、中枢神経系のどこに原因があるかは判断できません。左右差、近位・遠位差、デルマトームとの一致、末梢神経支配領域との一致、運動麻痺や反射、高次脳機能などの所見を組み合わせて局在を検討します。

また、触覚だけでなく、必要に応じて痛覚、温度覚、位置覚、振動覚などを追加します。感覚検査全体から局在を考える流れは、感覚検査の実施手順まとめで整理しています。

10点法・5回法でよくある失敗

10点法・5回法のよくある失敗と修正方法
NG 問題点 修正
反対側を無条件に「正常10」とする 基準側にも感覚障害がある可能性がある 基準として妥当か確認し、相対比較であることを記録する
刺激方法を毎回変える 前回との数値差を解釈できない 刺激・部位・説明・体位をそろえる
5回刺激した反応をすべて「正答」と書く 検出課題と識別課題が混同される 検出回数か正答回数か明記する
4/5を自動的に「軽度鈍麻」と判定する 共通の重症度基準とは限らない 条件・再現性・他所見と合わせて解釈する
数字だけカルテに残す 次回同じ条件で再現できない 基準部位・課題・刺激条件を併記する
標準尺度を独自の10点法・5回法へ置き換える 標準化された分類・採点ができなくなる 疾患固有の公式手順を優先する

よくある質問

Q1. 表在感覚の10点法は、健側を必ず10にしますか?

必ずしもそうではありません。反対側の同一部位を基準にする運用は分かりやすい一方、両側性の感覚障害では反対側も正常とは限りません。基準側に明らかな感覚異常がないか確認し、10点法は設定した基準との相対比較であることを意識します。

Q2. 5回法で4/5なら軽度の感覚低下ですか?

4/5という結果だけから、一律に「軽度低下」と分類するのは避けます。刺激条件、検出課題か識別課題か、患者の注意や理解、左右差、再現性などを確認し、他の神経学的所見と合わせて解釈します。

Q3. 10点法と5回法を同じ患者で併用してもよいですか?

目的を分けて記録するのであれば、臨床所見として併用することは可能です。たとえば相対的な知覚強度を10点法で確認し、反応の一貫性を複数試行で補足する方法があります。ただし、6/10と3/5を同じ尺度のように比較したり、合算したりはしません。

Q4. 患者が6点か7点か答えられない場合はどうしますか?

細かな数値を無理に答えてもらう必要はありません。患者が安定して回答できない場合は、回答方法を簡単にする、定性的な左右差を併記する、複数試行で反応を確認するなど、評価目的に合わせて方法を調整します。数値の細かさよりも、同じ条件で再評価できることが重要です。

Q5. 脊髄損傷でも10点法や5回法で評価できますか?

補助的な臨床所見として別途記録することと、脊髄損傷の標準化された神経学的分類は分けて考えます。ISNCSCIによる分類が必要な場合は、light touch・pin prickなどについて公式の評価部位・手順・採点方法を使用します。

まとめ|数字より「何を、どの条件で測ったか」を残す

表在感覚の10点法と5回法は、数字の形は似ていますが評価している内容が異なります。10点法は基準部位に対する相対的な知覚強度、5回法は複数試行での検出回数または正答回数として区別すると整理しやすくなります。

臨床では、10点法・5回法そのものを疾患横断の標準尺度として扱わず、評価目的、刺激条件、基準部位、課題内容まで一緒に記録することが重要です。疾患固有の標準評価がある場合は公式手順を優先し、これらの方法は必要に応じた補助的な臨床所見として活用します。


参考文献

  1. American Spinal Injury Association. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury (ISNCSCI) Resources. Available from: https://asia-spinalinjury.org/isncsci-resources/
  2. Chong PST, Cros DP. Technology literature review: quantitative sensory testing. Muscle Nerve. 2004;29(5):734-747. doi: 10.1002/mus.20053.
  3. Hales M, Biros E, Reznik JE. Reliability and Validity of the Sensory Component of the International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury (ISNCSCI): A Systematic Review. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2015;21(3):241-249. doi: 10.1310/sci2103-241.
  4. Reimer M, Forstenpointner J, Hartmann A, et al. Sensory bedside testing: a simple stratification approach for sensory phenotyping. Pain Rep. 2020;5(3):e820. doi: 10.1097/PR9.0000000000000820.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験をもとに、理学療法士を中心とした医療従事者向けに、評価・臨床推論・リハビリテーションに役立つ情報を発信しています。脳卒中・褥瘡などをテーマとした講師登壇経験があります。

臨床では、評価結果を単独の数値として扱うのではなく、患者背景・動作・経時変化と結びつけて次の評価や介入につなげることを重視しています。当サイトでも、一次資料や原著論文を確認しながら、臨床で再現しやすい形に整理して解説します。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハビリテーション、栄養、シーティング、摂食・嚥下、臨床評価

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