PHQ-9とは?9項目・0〜27点で抑うつ症状を評価します
PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)は、過去2週間の抑うつ症状を9項目で確認し、0〜27点で症状の程度を評価する自己記入式質問紙です。うつ病のスクリーニングと抑うつ症状の重症度評価に用いられます。
各項目を0〜3点で採点し、合計点から0〜4点、5〜9点、10〜14点、15〜19点、20〜27点の5段階で症状レベルを整理します。ただし、PHQ-9の点数だけでうつ病を診断するものではありません。
特に重要なのは、「10点以上=うつ病確定」と考えないことと、自傷・希死念慮に関する項目を合計点とは別に確認することです。本記事では、PHQ-9の評価方法、採点、10点以上の意味、身体疾患患者での解釈、安全上の注意まで順に整理します。
PHQ-9の評価方法と採点|過去2週間を0〜3点で回答する
PHQ-9では、過去2週間に各症状がどの程度の頻度でみられたかを確認します。9項目をそれぞれ0〜3点で採点し、得点を合計して0〜27点を算出します。
日本不安症学会が公開するPHQ-9日本語版(2018)では、回答頻度に対して0点、1点、2点、3点を割り当て、9項目の合計点から症状レベルを判定します。質問項目とは別に、症状によって仕事、家事、対人関係などの日常生活がどの程度困難になっているかを確認する欄もあります。
※表は横にスクロールできます。
| 合計点 | 症状レベル | 結果を見るときのポイント |
|---|---|---|
| 0〜4点 | 軽微 | 低得点でも、臨床上気になる変化や安全上の問題があれば個別に確認する |
| 5〜9点 | 軽度 | 症状内容と生活・活動への影響をあわせて確認する |
| 10〜14点 | 中等度 | スクリーニング上重要な範囲だが、点数だけで診断しない |
| 15〜19点 | 中等度〜重度 | 症状、生活機能、身体疾患や薬剤などの背景も含めて評価する |
| 20〜27点 | 重度 | 高得点のみで診断を確定せず、必要な専門評価につなげる |
実際の評価では、ブログ上の説明だけで質問票を再現せず、日本不安症学会が公開するPHQ-9日本語版と使用方法を確認してください。PHQ-9日本語版(2018)には、無断転載・改変・電子媒体への使用を禁止する旨が明記されています。
PHQ-9が10点以上ならどう見る?診断確定ではありません
PHQ-9の10点以上は、抑うつ症状をさらに評価するうえで重要な目安ですが、「10点以上=うつ病」と診断する基準ではありません。
日本のプライマリケア患者を対象としたJ-PHQ-9の検証研究では、10点以上をカットポイントとした場合、大うつ病性障害に対する感度は90.5%、特異度は76.6%でした。また、より大規模な個人参加者データのメタ解析でも、半構造化診断面接を基準とした場合、10点以上は感度と特異度のバランスがよい標準的なカットポイントとして示されています。
10点以上の読み方
「うつ病が確定した」と考えるのではなく、抑うつ症状が一定程度みられる可能性を踏まえて、症状の内容、日常生活への影響、身体疾患、薬剤、環境変化などを確認し、必要な追加評価につなげます。
感度や特異度は対象集団や診断面接の方法によって変わるため、10点を絶対的な境界として扱うのではなく、スクリーニング結果と臨床像をあわせて判断することが重要です。
自傷・希死念慮に関する項目は合計点とは別に安全確認する
自傷・希死念慮に関する項目に該当する回答がある場合は、PHQ-9の合計点とは別に安全性を確認します。合計点が低いことを理由に、「自殺リスクは低い」と判断することはできません。
国立がん研究センターの「がん医療における自殺対策の手引き」でも、PHQ-9などの自記式尺度だけによる希死・自殺念慮の評価は不十分な可能性があり、必要な患者では医療従事者が面接で直接評価することの重要性が示されています。
PT・OT・STなどが自傷・希死念慮を示唆する回答を確認した場合は、PHQ-9だけで評価を完結させず、施設の手順に沿って主治医、看護師、心理職、精神保健の専門職などへつなげます。現在の自傷意思や切迫した危険が疑われる場合は、通常の再評価を待たず安全確保を優先します。
安全面は合計点と分けて考えます
PHQ-9合計点 → 抑うつ症状の程度を把握
自傷・希死念慮に関する回答 → 合計点とは別に安全性を確認
切迫性が疑われる → 施設の緊急対応手順に沿って専門評価・安全確保へ
身体疾患患者では睡眠・食欲・疲労をどう解釈する?
身体疾患がある患者では、PHQ-9の得点と、その得点に影響しうる身体・環境背景を分けて記録することが重要です。リハ対象者では、疼痛、睡眠障害、食欲低下、疲労、活動性低下などが原疾患や治療の影響でも生じます。
一方で、「身体疾患による症状だから」と判断して、該当する項目を独自に減点したり除外したりする方法は避けます。まずPHQ-9を所定の方法で採点し、そのうえで身体疾患、疼痛、不眠、薬剤変更、入院環境などを背景情報として整理します。
例えば、前回より得点が上昇した患者で夜間痛と不眠が増えている場合、「PHQ-9が上昇した」という結果と、「疼痛・不眠の増悪が同時にある」という背景を分けて共有します。これにより、得点変化を単純に抑うつ症状の悪化と断定することを避けられます。
PHQ-9の結果は「得点・安全性・生活機能」の3つで見る
PHQ-9を臨床で使うときは、「得点」「安全性」「生活機能への影響」の3つに分けて結果を見ると整理しやすくなります。
得点では0〜27点と症状レベルを確認します。安全性では自傷・希死念慮に関する回答を合計点とは別に確認します。生活機能では、離床、ADL、自主練習、外出、対人交流、退院後の生活などにどのような影響が生じているかを確認します。
※表は横にスクロールできます。
| 視点 | 確認する内容 | PT・OT・STでの具体例 |
|---|---|---|
| 得点 | 合計点、症状レベル、前回値からの変化 | PHQ-9 12点、前回8点から上昇 |
| 安全性 | 自傷・希死念慮に関する回答、切迫性の有無 | 該当回答を確認し、施設手順に沿って共有 |
| 生活機能 | 症状が活動・参加・日常生活へ与えている影響 | 離床開始の遅れ、自主練習低下、外出機会減少など |
この3つを分ければ、「12点だから問題」「8点だから問題なし」といった単純な二分法を避けやすくなります。
PHQ-9の再評価|点数だけでなく背景の変化も確認する
再評価では、前回との点差だけでなく、その間に何が変わったかを確認します。PHQ-9は経時変化を追う目的にも利用できますが、結果を解釈するときは身体・心理・環境面の変化も重要です。
特に、疼痛の増悪、睡眠状態、急性疾患、薬剤変更、転棟、退院調整、家族関係や生活環境の変化などは、得点の背景として確認しておきます。
カルテでは、専用の配布用紙を作らなくても、次のように短く整理できます。
記録例
PHQ-9:12点(前回8点)。自傷・希死念慮に関する回答について安全面を確認。夜間痛と不眠が前回より増加。午前中の離床開始が遅く、自主練習量も低下。結果と背景をチームで共有し再評価予定。
「点数」「安全面」「背景」「生活・リハへの影響」を分けて残しておくと、次回評価時に何が変化したのかを追いやすくなります。
PHQ-9で迷いやすい5つのポイント
PHQ-9では採点そのものより、得点をどう解釈するかで迷いやすくなります。特に、カットオフ、身体症状、安全面、再評価の扱いを整理しておくと誤解を減らせます。
※表は横にスクロールできます。
| 迷いやすい場面 | 避けたい判断 | 考え方 |
|---|---|---|
| 10点以上 | うつ病と確定する | スクリーニング上の重要な目安として追加評価につなげる |
| 身体症状が多い | 独自に項目を減点・除外する | 所定の方法で採点し、身体疾患や薬剤を背景として解釈する |
| 合計点が低い | 安全面の問題はないと考える | 自傷・希死念慮に関する回答は合計点とは別に確認する |
| 前回より高得点 | 抑うつ症状が悪化したと即断する | 症状内容と身体・心理・環境背景の変化を確認する |
| 高得点 | PHQ-9だけで診断を完結する | 必要に応じて医師・心理職などによる専門評価につなげる |
PHQ-9・HADS・SRQ-Dは目的で使い分ける
PHQ-9を使うかどうか迷っている段階では、先に評価目的を決めます。PHQ-9は抑うつ症状のスクリーニングと重症度把握に用いる尺度ですが、身体疾患患者で身体症状の影響をどのように扱いたいか、不安も同時に評価したいかによって他尺度が候補になることがあります。
PHQ-9、HADS、SRQ-Dの構成や違いを直接比較したい場合は、下の記事で整理しています。
次は尺度の使い分けを確認する
PHQ-9・HADS・SRQ-Dの違いを見るPHQ-9のよくある質問
PHQ-9は何項目・何点満点ですか?
PHQ-9は9項目で構成され、各項目を0〜3点で採点するため、合計は0〜27点です。日本語版では0〜4点、5〜9点、10〜14点、15〜19点、20〜27点の5段階で症状レベルの目安が示されています。
PHQ-9は何点からうつ病ですか?
特定の点数だけでうつ病を診断することはできません。10点以上はスクリーニング上重要な目安ですが、診断には症状の内容や経過、身体疾患、薬剤、躁病エピソードなどを含めた臨床評価が必要です。
PHQ-9の10点以上にはどんな意味がありますか?
PHQ-9日本語版では10〜14点が中等度の症状レベルに位置づけられています。また、日本の検証研究では10点以上が大うつ病性障害を拾い上げるカットポイントとして検討されています。ただし、10点以上だけで診断が確定するわけではありません。
PHQ-9が低得点なら自殺リスクも低いですか?
合計点だけでは判断できません。自傷・希死念慮に関する回答は合計点とは別に確認します。該当する回答や臨床上の懸念がある場合は、PHQ-9だけで評価を完結させず、施設の手順に沿って追加評価と適切な職種への共有につなげます。
身体疾患で疲労や不眠がある場合はどう採点しますか?
身体疾患があることを理由に独自に得点を差し引くのではなく、所定の方法で採点します。そのうえで、疼痛、不眠、薬剤、原疾患などの影響を背景情報として記録し、結果を解釈します。
PHQ-9の質問票をブログや院内資料に転載してもよいですか?
PHQ-9日本語版(2018)には、無断転載・改変・電子媒体への使用を禁止する旨が明記されています。質問文を独自に転載・改変せず、日本不安症学会が公開する正式な資料と最新の利用条件を確認してください。
参考文献
- Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606-613. doi:10.1046/j.1525-1497.2001.016009606.x.
- Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, et al. Performance of the Japanese version of the Patient Health Questionnaire-9 (J-PHQ-9) for depression in primary care. Gen Hosp Psychiatry. 2018;52:64-69. doi:10.1016/j.genhosppsych.2018.03.007.
- Negeri ZF, Levis B, Sun Y, et al. Accuracy of the Patient Health Questionnaire-9 for screening to detect major depression: updated systematic review and individual participant data meta-analysis. BMJ. 2021;375:n2183. doi:10.1136/bmj.n2183.
- 日本不安症学会. 不安・抑うつ症状の評価尺度(GAD-7・PHQ-9)について. https://jpsad.jp/manual.html(2026年9月11日閲覧).
- 村松公美子ほか. PHQ-9 日本語版(2018)および使用方法. 日本不安症学会. https://jpsad.jp/other_work/research-2012/files/jpsad_phq9.pdf(2026年9月11日閲覧).
- 国立がん研究センター. がん医療における自殺対策の手引き 2019年度版. 国立がん研究センター公開資料(2026年9月11日閲覧).
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。
脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があり、評価結果を「測って終わり」にせず、臨床判断・記録・多職種連携につなげるための情報整理を重視しています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

