PHQ-9 運用プロトコル(結論:同条件で “ 取り直せる設計 ” が価値)
PHQ-9 は、抑うつのスクリーニングを数値で共有し、経時変化を同条件で再評価できるのが強みです。点数だけを残して終わる運用では、臨床判断やチーム共有につながりにくくなります。
本記事は、項目文を掲載せず、実施 → 採点 → 解釈 → 記録 → 共有 → 再評価を最短で回す “ 運用の型 ” に絞って整理します。まずは手順を固定し、次に背景情報を揃えて再評価の精度を高めます。
PHQ-9 はいつ使う?(使いどころの整理)
PHQ-9 は「入口で拾う」と「経過で追う」を 1 本で回しやすい尺度です。外来フォロー、一般病棟、回復期で、同じ尺度を繰り返し使いたい場面に向いています。
運用を安定させるコツは、実施条件(時間帯・形式・同席者)を固定し、前回との差を同じ前提で比較することです。尺度選択で迷う場合のみ、比較記事で候補を決めてから運用に入ると混乱しません。
5 分で回す:実施 → 採点 → 解釈 → 記録 → 共有 → 再評価
PHQ-9 を “ 使える情報 ” に変えるには、合計点だけでなく実施条件と背景をセットで残すことが重要です。次回の再評価条件まで同時に決めると、運用が止まりにくくなります。
- 実施(1 分):自己記入か面接か、同席者、実施タイミング(治療前後・午前/午後)を固定します。
- 採点(1 分):合計点を算出し、急変・大きな変化がある場合は背景要因(疼痛・睡眠・薬剤変更・環境変化)を確認します。
- 解釈(1 分):点数の大小だけで断定せず、「何が点数を押し上げたか」を併記します。
- 記録(1 分):下のテンプレ 4 点セットでカルテ・共有メモに残します。
- 共有と再評価(1 分):報告先と再評価日・条件を決め、同条件で取り直します。
記録テンプレ(コピペ用:4 点セット)
“点数だけ残す” を防ぐため、以下の 4 点を固定項目として記録します。テンプレ化すると伝達のばらつきが減り、次回比較が速くなります。
- 実施条件:実施日/タイミング(例:午前リハ前)/形式(自己記入 or 面接)/同席者/補助の有無
- 点数:PHQ-9 合計(0–27)+今回の変化(前回との差)
- 背景メモ:疼痛、息切れ、睡眠、薬剤変更、環境変化(転棟/退院調整)
- リハへの影響:離床の遅れ、自主練の不成立、参加・外出の低下 など(観察で具体化)
再評価の 1〜2 週運用フロー(図版)
現場の詰まりどころ/よくある失敗(OK / NG 早見表)
PHQ-9 は “測る” より “回す” が難しい尺度です。次の 2 点を先に押さえると運用が安定します。
記録の書式を統一したい場合は、心理・メンタル評価ハブの関連手順も合わせて参照すると、チーム内の共有ルールを揃えやすくなります。
※表は横にスクロールできます。
| テーマ | NG(起きがち) | OK(こう直す) | 比較判断(可/不可) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 点数の独り歩き | 合計点だけで断定する | 臨床像+背景(痛み・睡眠・環境)と併読 | 条件一致なら可 | 背景メモを 1 行で固定 |
| 条件がバラバラ | 毎回タイミング・形式が違う | 同条件で再評価(タイミング/形式/同席者) | 不可(再固定後に比較) | 実施条件テンプレで固定 |
| 共有不足 | 点数を残すだけで報告されない | 点数+背景+リハ影響の 1 セットで共有 | 判定不能(共有先で解釈が割れる) | 報告先と期限を記載 |
| 身体症状の影響 | 疼痛・不眠が強い日の点数をそのまま比較 | 背景を点検し、同条件で取り直して評価 | 保留〜不可 | 「比較可/不可」のメモ |
| 再評価が止まる | 初回だけで終わる | 再評価日・条件をその場で決める | 判定不能(次回予定が必要) | 次回予定(日時/条件) |
再評価のタイミング(現場で決めやすい目安)
再評価は「同条件で取り直せる」ことを最優先にします。運用上は、①環境が大きく変わったとき(転棟・退院調整・薬剤変更)、②参加・活動が落ちたとき、③介入の節目(1〜2 週間)で再評価を設定すると判断しやすくなります。
スコアが動いたときほど、背景(痛み・睡眠・環境)をセットで点検してから次の対応を決めると、チームの納得感が上がります。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
10 点を超えたらどう対応すべきですか?
点数だけで断定せず、背景(痛み・睡眠・環境変化)とリハへの影響(参加・離床・自主練)をセットで整理して共有します。再評価は同条件で取り直せるように、日時と条件を決めておくと運用が安定します。
身体症状が強い患者さんだと点数がブレませんか?
ブレます。だからこそ背景メモ(疼痛・睡眠・薬剤変更)を残し、比較は同条件で行います。背景が大きく違う回は無理に比較せず、条件を揃えて取り直すほうが有用です。
前回より点数が上がったが、背景要因が明らかな場合は?
トレンド悪化と即断せず、比較を一旦保留します。背景要因(不眠増悪、疼痛増加、薬剤変更、転棟など)を明記し、条件再固定後に再測定して比較可否を判定します。
外来と入院で運用を変える必要はありますか?
大枠は同じです。入院では環境変化が多いため「実施条件の固定」と「再評価の先決め」を重視し、外来では記録テンプレを固定して前回との差を追える形にします。
他尺度(HADS や SRQ-D)と併用したほうが良いですか?
目的が明確な場合は有効です。ただし漫然と増やすと整理コストが上がるため、まず主尺度 1 つで開始し、必要時のみ補助尺度を追加する運用が破綻しにくいです。
次の一手(回遊)
参考文献
- Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606–613. DOI: 10.1046/j.1525-1497.2001.016009606.x
- Manea L, Gilbody S, McMillan D. Optimal cut-off score for diagnosing depression with the Patient Health Questionnaire (PHQ-9): a meta-analysis. CMAJ. 2012;184(3):E191–E196. DOI: 10.1503/cmaj.110829
- Spitzer RL, Kroenke K, Williams JBW, Löwe B. A brief measure for assessing generalized anxiety disorder: the GAD-7. Arch Intern Med. 2006;166(10):1092–1097. DOI: 10.1001/archinte.166.10.1092
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


