FADIRテストのやり方|陽性所見とFAIの解釈

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FADIRテストは何を見る?|陽性だけでFAIとは診断できない

FADIRテスト(Flexion・Adduction・Internal Rotation)は、股関節を屈曲・内転・内旋して、普段の股関節痛が再現されるかを確認する疼痛誘発テストです。とくに鼠径部・股関節前方の症状が再現された場合はFAI syndrome(FAIS)などを考える材料になりますが、FADIR陽性だけでFAISや関節唇病変を確定することはできません。

臨床では、陽性・陰性だけで終わらせず、「普段の症状と一致するか」「どこに痛みが出たか」「内旋ROMや骨盤代償はどうか」を記録し、病歴や動作所見などと統合して解釈します。本記事では、FADIRのやり方から陽性所見、陰性の意味、次に確認する項目まで整理します。

先に結論:FADIRは「陽性ならFAIS」と決める検査ではありません。2023年の非関節炎性股関節痛Clinical Practice Guideline(CPG)では、FADIR・FABERが陰性の場合にFAISではない可能性を考えるための臨床評価として使用できるとされています。

FADIRテストのやり方|屈曲・内転・内旋で症状を確認する

FADIRでは、背臥位で股関節を屈曲させ、そこから内転・内旋方向へ誘導します。目的は限界まで押し込むことではなく、検査肢位によって患者の普段の症状が再現されるかを確認することです。

FADIRテストの基本手順
手順 操作 確認すること
① 開始肢位 背臥位とし、骨盤と下肢の状態を確認する 安静時痛、防御反応、左右差
② 屈曲 股関節を屈曲させる 屈曲のみで症状が出るか
③ 内転・内旋 屈曲位から股関節を内転・内旋方向へ誘導する 症状再現、疼痛部位、骨盤代償
④ 結果確認 患者に普段の症状との一致を確認する 「いつもの痛み」か、別の刺激感か

股関節屈曲角度や内転量を機械的に固定するより、同じ条件で症状・ROM・代償を比較できることが重要です。強く押し込まないと陽性にならないという考え方ではなく、症状が明確に再現された時点で、それ以上刺激を増やす必要があるかを判断します。

FADIRテストの結果を症状再現、疼痛部位、ROM、骨盤代償、病歴や動作所見と統合して解釈する図版
FADIRテストは、症状再現・疼痛部位・ROM・代償を他の臨床所見と統合して解釈します。

FADIR陽性とは?|普段の症状が再現されたかを確認する

FADIRでは、検査肢位によって患者が普段感じている股関節周囲の痛みが再現されるかが重要です。とくに鼠径部や股関節前方の症状再現はFAISなどを考える臨床所見になりますが、疼痛部位だけで原因組織を特定することはできません。

FADIRで確認したい所見と解釈
所見 読み方 記録すること
普段の痛みが再現 陽性所見として臨床仮説に加える 疼痛部位と普段の症状との一致
鼠径部・前方痛 FAISなど股関節由来の症状を考える材料になる 左右、強さ、どの操作で出たか
外側・殿部などの痛み 疼痛部位だけで組織を決めず、他所見と照合する 正確な部位と再現性
内旋ROM制限 関連所見として扱う。FADIR陽性そのものとは分ける ROM、左右差、骨盤代償
クリックのみ 普段の症状との一致がなければ、それだけで陽性・病変確定としない クリックの有無と疼痛の有無

内旋制限だけでFADIR陽性とはしない

内旋ROMの制限は股関節評価で重要ですが、「内旋が硬い=FADIR陽性」ではありません。FADIRによる症状再現と、ROM制限は別の所見として記録すると解釈が整理しやすくなります。

たとえば「FADIRで普段の鼠径部痛を再現し、同時に内旋ROMにも左右差がある」と、「痛みはないが内旋ROMのみ制限している」では意味が異なります。

陽性・陰性をどう解釈する?|単独で確定・除外しない

FADIRは、陽性所見よりも陰性所見がFAISの可能性を下げる材料になり得る点を理解しておくと使いやすくなります。一方、陽性反応はFAIS以外でも生じ得るため、陽性だけで診断を確定することはできません。

2023年の非関節炎性股関節痛CPGでは、FADIRとFABERについて、陰性の場合にFAISではない患者を識別するための臨床評価として使用できるとしています。ただし推奨グレードはCであり、FADIR単独ですべてを除外できるという意味ではありません。

FADIR陽性・陰性の実務的な読み方
結果 考え方 避けたい解釈
陽性 症状・ROM・病歴・動作所見などと合わせてFAIS等の可能性を検討する 「陽性だからFAI」と確定する
陰性 FAISの可能性を下げる材料の1つとして扱う 「陰性だから股関節由来ではない」と完全に除外する
判定困難 強い疼痛、防御、可動域制限など実施条件を記録する 無理に最終域まで動かして陽性・陰性を決める

重要:FAIの形態が画像で確認されることと、FAI syndrome(FAIS)は同義ではありません。Warwick Agreementでは、FAISの診断には症状・臨床徴候・画像所見の組み合わせが必要とされています。FADIRは、そのうち臨床徴候を確認する方法の1つです。

FADIR陽性後に何を確認する?|固定の「次の2テスト」にはしない

FADIR陽性後に必ずScour、Log rollという固定順で進む必要はありません。次に何を確認するかは、患者の症状と評価仮説に応じて選びます。

少なくとも、以下の情報とFADIRの結果を照合します。

  • 病歴:発症時期、誘因、外傷歴、症状経過
  • 症状:鼠径部・前方・外側・殿部などの分布、普段の誘発動作
  • ROM:屈曲、内旋を中心とした左右差と症状
  • 動作:歩行、しゃがみ込み、方向転換、競技動作などでの症状再現
  • 他の身体所見:必要に応じてFABER、Scour、Log rollなど
  • 画像所見:FAISなどが疑われ、医学的評価が必要な場合に医師の診断と合わせて確認

つまり、FADIRの役割は「次のテストを自動的に決めること」ではなく、現在の症状が股関節の特定肢位で再現されるかという情報を臨床推論へ加えることです。

股関節の整形外科的テストをどの順に選ぶか迷う場合は、股関節の整形外科的テストの選び方で、主訴からテストを選択する全体像を確認できます。

FADIRとFABERの違い|肢位と症状再現を分けて考える

FADIRとFABERはいずれも股関節周囲の症状を確認する疼痛誘発テストですが、肢位が異なります。どちらも疼痛部位だけから特定の組織を確定する検査ではありません。

FADIRとFABERの基本的な違い
項目 FADIR FABER
主な肢位 屈曲・内転・内旋 屈曲・外転・外旋
主に確認すること 肢位による普段の股関節痛の再現 肢位による症状再現と可動性
FAIS評価での位置づけ 臨床徴候の1つ 臨床徴候の1つ
注意点 陽性単独で診断せず、症状・ROM・他所見と統合する

FABERの手順、陽性所見、鼠径部痛・殿部痛などの解釈は、FABERテストのやり方と陽性の見方で詳しく整理しています。

FADIRの記録方法|「陽性」だけで終わらせない

再評価で比較するには、FADIR陽性・陰性だけでなく、どの条件で、どこに、どの症状が出たのかを残します。

記録例

右FADIR:鼠径部に普段と同様の疼痛を再現。左は同症状なし。右股関節内旋ROMに左右差あり、終末域で骨盤代償を認める。

この記録であれば、FADIRの症状再現と内旋ROM制限を混同せず、次回も同じ観点で比較できます。

記録する項目は、次の4点程度に絞ると実務で使いやすくなります。

  • 左右どちらに実施したか
  • 普段の症状が再現されたか
  • 疼痛部位はどこか
  • ROM制限、骨盤代償、防御反応などの関連所見

ROMそのものを再評価指標として使う場合は、測定肢位や骨盤条件をそろえることが重要です。ROM測定条件の考え方はROM検査の実施・記録方法で確認できます。

よくある失敗|FADIRを「押し込む検査」にしない

FADIRで避けたいのは、反応を出すこと自体が目的になってしまうことです。重要なのは、再現された症状が患者の普段の訴えと一致するかです。

FADIRで起こりやすい失敗と修正方法
よくある失敗 問題点 修正
最終域まで強く押す 非特異的な疼痛を誘発しやすい 症状再現と反応を確認しながら操作する
陽性・陰性だけ記録する 再評価や臨床推論に使いにくい 症状一致、疼痛部位、ROM、代償を残す
内旋制限を陽性とする 疼痛誘発とROM所見が混在する 症状再現とROMを別々に記録する
陽性ならFAISと判断する FADIRの特異度の限界を無視してしまう 病歴・臨床所見・必要時の画像所見を統合する
疼痛部位だけで原因組織を決める 外側痛・殿部痛などを単純に組織へ対応させてしまう 症状分布を記録し、他の評価で仮説を検証する

中止・相談を考える場面|テストより安全確認を優先する

鋭い痛みの急増や強い防御反応が生じる場合は、反応を確認するために無理に操作を続けません。また、外傷後の著しい疼痛や荷重困難など、通常のスペシャルテストより医学的評価を優先すべき所見がある場合は、FADIRの陽性・陰性を決めることを優先しないようにします。

FADIRはあくまで臨床評価の一部です。症状経過や他所見と整合しない場合は、検査結果に患者像を合わせるのではなく、評価仮説そのものを見直します。

よくある質問

FADIRで実際に迷いやすい点を簡潔に整理します。

FADIRが陽性ならFAI syndrome(FAIS)ですか?

いいえ。FADIR陽性はFAISを考える臨床所見の1つですが、単独では確定できません。FAISは症状、臨床徴候、画像所見を組み合わせて診断します。

FADIRが陰性ならFAISを除外できますか?

完全に除外できるわけではありません。ただし、2023年のClinical Practice Guidelineでは、FADIRやFABERが陰性の場合はFAISではない患者を識別するための材料として使用できるとされています。

内旋ROMが硬ければFADIR陽性ですか?

内旋制限だけではFADIR陽性とはしません。FADIRによる普段の症状再現と、ROM制限・骨盤代償などの所見は分けて記録します。

FADIR陽性のあとにScourやLog rollは必須ですか?

必須の固定セットではありません。病歴、疼痛部位、ROM、動作所見などから評価仮説を立て、必要に応じて追加するテストを選びます。

次の一手

FADIRは単独で診断するためのテストではなく、股関節の症状を再現し、他の所見と統合するための評価です。陽性・陰性だけを見るのではなく、「普段の症状と一致するか」「ROMや動作所見と整合するか」まで確認してください。

  • 股関節テスト全体から選びたい:主訴や評価目的から必要な整形外科的テストを整理する
  • 反対方向の誘発肢位も確認したい:FABERの手順と症状再現を確認する

参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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