FABER テストの見方|鼠径部痛・殿部痛で読む

評価
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FABER テストは“痛みの部位”で次の評価を決める

FABER( Patrick )テストは、股関節を屈曲・外転・外旋位にして疼痛や可動域差をみる整形外科テストです。臨床で大切なのは、陽性か陰性かだけで終わらせず、鼠径部痛・殿部痛・外側痛のどこに症状が出たかを記録し、次の評価につなげることです。

この記事では、FABER テストの 30 秒手順、痛み部位別の読み分け、次に追加する確認、記録テンプレ、よくある失敗を整理します。股関節内病変、仙腸関節、腰椎、外側股関節痛を 1 回のテストで断定せず、評価の入口として使える形に落とし込みます。

股関節テストの順番を先に固定すると、FABER の解釈が安定します。

整形外科テストの全体像を見る

関連:股関節の整形外科テスト一覧 / 次に読む:FADIR テスト

やり方は 30 秒|圧を強めず部位を確認する

FABER は、背臥位で評価側下肢を 4 の字にして、膝を床方向へゆっくり誘導します。強く押し込むほど陽性が出やすくなるため、実務では最小圧で、どこに痛みが出るかを確認します。

FABER テスト:最短手順と観察ポイント(成人・一般)
手順 操作 観察 記録の型
① 体位 背臥位。反対側骨盤を軽く固定する 骨盤回旋、腰椎代償 骨盤代償(有 / 無)
② 4 の字 評価側足部を反対膝上へ置く 開始肢位での痛み 開始肢位痛(部位)
③ 誘導 膝を床方向へゆっくり誘導する 鼠径部 / 外側 / 殿部の痛み FABER:鼠径部痛(+)
④ 停止 痛み急増、防御、術後制限で止める 中止理由 痛み急増のため中止

痛み部位で読む|鼠径部・殿部・外側で仮説を分ける

FABER は股関節だけをみるテストではありません。鼠径部痛なら股関節内の関与、殿部〜仙腸関節付近の痛みなら SIJ / 腰椎由来、外側痛なら外側股関節痛の関与も考えます。ただし、FABER 単独で病態を確定せず、追加評価で仮説を絞ります。

FABER テストの痛み部位別に鼠径部痛・殿部痛・外側痛から次の評価を整理した図版
FABER テストは、痛みの場所から仮説を立てて次の評価へつなげると解釈しやすくなります。
FABER テストの痛み部位別:仮説と次の確認
痛みの部位 優先する仮説 次に行う確認 注意点
鼠径部深部 股関節内の関与 FADIR、Scour、内旋 ROM 関節内病変を疑う入口にする
殿部〜仙腸関節付近 SIJ / 腰椎由来の関与 疼痛誘発テスト群、腰椎スクリーニング 単独で SIJ と断定しない
外側・大転子周囲 外側股関節痛の関与 Trendelenburg、片脚立位時痛、圧痛 歩行時痛との一致を確認する
痛みなし・左右差のみ 可動域差 条件固定で ROM 比較 病態確定には使わない

股関節テスト全体の並べ方は、股関節の整形外科テスト一覧で確認できます。

症例ミニケース|鼠径部痛なら関節内評価へ進める

50 代男性。右股関節周囲痛と歩行時痛を主訴に来院。FABER で右鼠径部に再現痛があり、殿部痛はありませんでした。骨盤代償は軽度で、最小圧でも同部位の痛みが再現されました。

症例ミニケース:FABER から次の確認へつなぐ流れ
場面 所見 解釈 次の一手
FABER 右鼠径部痛(+)、殿部痛(-) 股関節内の関与を優先 FADIR / Scour / 内旋 ROM
追加評価 FADIR で同部位痛、内旋 ROM 制限 関節内由来の可能性が高まる 負荷調整と再評価条件を統一
共有 痛み部位、代償、中止基準を記録 チームで同じ条件を再現しやすい SOAP の A に反映

再現性を上げる|膝の高さより骨盤代償を先にそろえる

FABER では膝の高さや左右差を記録することがありますが、骨盤回旋や腰椎代償が混ざると比較の意味が崩れます。まず骨盤代償を確認し、同じ体位・同じ圧・同じ停止基準で再評価できる形にします。

FABER の再現性を上げる条件固定
項目 そろえる条件 記録例
体位 背臥位、反対側骨盤の固定 背臥位・骨盤固定下で実施
最小圧で疼痛部位を確認 最小圧で右鼠径部痛再現
停止基準 痛み急増、防御、術後制限 疼痛増悪のため誘導中止

記録用テンプレ|PDF でそのまま使える形にする

FABER の記録は、痛みの有無だけでなく、部位・代償・刺激量・次に確認する評価まで入れると共有しやすくなります。印刷して使う場合は、下の PDF 記録シートを活用してください。

FABER テスト記録シート(A4・PDF)

痛み部位、骨盤代償、刺激量、中止理由、追加評価を 1 枚で記録できます。

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FABER 記録テンプレ(コピペ用)
用途 テンプレ文
基本形 FABER(右):鼠径部痛(+)、殿部痛(-)、骨盤代償(軽度)、最小圧で再現。
殿部痛優位 FABER(左):殿部〜 SIJ 付近痛(+)。単独で断定せず、疼痛誘発テスト群と腰椎スクリーニングを追加。
中止あり FABER(右):誘導中に痛み急増のため中止。中止時点で骨盤代償(有)。再評価は圧を減じて実施予定。
左右差のみ FABER(両側):疼痛再現なし。膝高差(右>左)あり。病態確定せず、条件固定で ROM 比較を継続。

現場の詰まりどころ|よくある失敗を先に避ける

FABER で迷いやすい原因は、テスト手技よりも解釈と記録の不足です。まずは よくある失敗回避チェック を確認し、必要に応じて ROM 検査の条件固定 も合わせて整えます。

よくある失敗

  1. FABER 陽性= SIJ と決め打ちする:痛み部位を優先し、必要時は疼痛誘発テスト群で確認します。
  2. 鼠径部痛で関節内評価に進まない:FADIR、Scour、内旋 ROM を追加します。
  3. 骨盤代償を見落とす:代償が混ざると左右差や疼痛誘発の意味が変わります。
  4. 圧が強すぎる:過剰な刺激で情報が荒れるため、最小圧で確認します。
  5. 記録が陽性/陰性だけ:部位、代償、中止理由まで書きます。

回避チェック

FABER がブレるときの直す順番
順番 確認すること 直し方
① 痛み部位 鼠径部 / 外側 / 殿部 まず場所を言語化する
② 条件 骨盤回旋、腰椎代償 代償が出る前で止める
③ 刺激量 圧が強すぎないか 圧を減らして再確認する

同じところで毎回詰まる場合は、手順だけでなく学べる環境も見直す余地があります。

評価・記録・報告の型を整理したい方は、PT としての学び方や環境の整え方も合わせて確認しておくと、現場で迷いにくくなります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

FABER で殿部が痛いとき、 SIJ が原因で確定ですか?

確定ではありません。殿部〜仙腸関節付近の痛みは SIJ / 腰椎由来の関与を示唆しますが、単一テストでの決め打ちは避けます。疼痛誘発テスト群と腰椎スクリーニングで候補を狭めます。

鼠径部が痛い場合、FABER は何を示しますか?

股関節内の関与を優先して疑います。FADIR、Scour、内旋 ROM を加えて、関節内由来の可能性が高まるか確認します。

左右差だけで病態は判断できますか?

判断できません。左右差は可動域差の把握には使えますが、病態確定には不十分です。体位、圧、骨盤代償の条件をそろえて比較します。

FABER と FADIR はどちらを先に行うべきですか?

実務では、FABER で疼痛部位の方向性を確認し、鼠径部痛が優位なら FADIR を追加して股関節内の関与を絞る流れが使いやすいです。

次の一手

FABER は単独で完結させず、股関節テスト全体の流れと記録の型に接続すると運用しやすくなります。


参考文献

  • Nejati P, Safarcherati A, Karimi F. Accuracy of the Diagnostic Tests of Sacroiliac Joint Dysfunction. J Chiropr Med. 2020;19(4):218-227. PubMed Central
  • Saueressig T, Owen PJ, Kent P, et al. Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(9):422-431. doi:10.2519/jospt.2021.10469. DOI
  • Bagwell JJ, Snibbe J, Gerhardt M, Powers CM. The reliability of FABER test hip range of motion measurements. Int J Sports Phys Ther. 2016;11(7):1101-1105. PubMed Central
  • Buchanan P, Vodapally S. Successful Diagnosis of Sacroiliac Joint Dysfunction. Cureus. 2021;13(9):e18153. doi:10.7759/cureus.18153. PubMed Central

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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