身体活動量の評価が重要な理由|SB・LPA・MVPAを臨床で活かす

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身体活動量の評価が重要な理由

リハビリテーションでは、筋力、関節可動域、歩行速度、 ADL などを評価する機会は多い一方で、「患者さんが実際にどれだけ動いて生活しているか」を十分に評価できていないことがあります。リハビリ室では歩けるものの、病棟や自宅では座っている時間が長い、退院後に活動量が落ちる、外出が減るといったケースは臨床でよく経験します。

身体活動量の評価は、「できる能力」だけでなく、生活の中で実際に行っている活動を把握するために重要です。特に、座位行動時間( SB )、軽強度活動時間( LPA )、中〜高強度活動時間( MVPA )に分けて見ると、歩数だけでは見えにくい不活動や生活活動の不足を整理しやすくなります。

若手 PT・OT・ST のキャリア整理にも

身体活動量のように「生活を評価する視点」は、職場の教育体制や症例経験によって深まり方が変わります。今の環境で評価・介入の幅を広げたい方は、キャリアの整理にもつなげてみてください。

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SB・LPA・MVPAとは?

身体活動量は、活動強度を示す METs をもとに分類されます。一般的には、 1.5 METs 以下を座位行動( SB )、 1.6〜2.9 METs を軽強度活動( LPA )、 3.0 METs 以上を中〜高強度活動( MVPA )として扱います。これは活動の量だけでなく、どの程度の強さで身体を動かしているかを捉える考え方です。

2024 Adult Compendium of Physical Activities では、活動を METs に基づいて整理しており、座位行動、軽強度、中等度、高強度などの分類が示されています。臨床では厳密な METs 計算だけを目的にするのではなく、患者さんの 1 日の過ごし方を「座っている時間」「生活の中で軽く動いている時間」「息が上がる程度に動いている時間」に分けて考えることが実用的です。

身体活動量をSB・LPA・MVPAで整理する図版
身体活動量は歩数だけでなく、座位行動、軽強度活動、中〜高強度活動に分けて見ると生活の改善点を整理しやすくなります。
SB・LPA・MVPA の分類と臨床での見方
分類 目安 活動例 臨床で見るポイント
SB 1.5 METs 以下 座位、臥位、テレビ視聴、読書 不活動、廃用、フレイルリスク
LPA 1.6〜2.9 METs ゆっくり歩く、立位活動、軽い家事 生活活動量、離床、役割活動
MVPA 3.0 METs 以上 速歩、階段、運動、息が上がる活動 運動耐容能、心肺機能、運動習慣

なぜ歩数だけでは不十分なのか

歩数はわかりやすく、患者さんにも説明しやすい指標です。しかし、歩数だけでは座位時間の長さや活動強度の違いを十分に把握できません。たとえば、リハビリ時間にまとまって歩いていても、それ以外の時間をほとんど座位・臥位で過ごしていれば、 1 日全体としては不活動が残っている可能性があります。

逆に、歩数は多くなくても、食事、洗面、更衣、トイレ、台所作業、屋内移動などの LPA が増えている患者さんもいます。この場合、歩数だけを見ると変化が小さく見えても、生活行動としては改善している可能性があります。身体活動量を評価するときは、「何歩歩いたか」だけでなく、「どの強度の活動を、どれくらい行っているか」を見ることが重要です。

身体活動量評価を臨床で活かす視点

身体活動量の評価は、退院支援、生活期リハビリ、フレイル予防、サルコペニア対策、内部障害リハビリなど、幅広い場面で活用できます。特に重要なのは、評価結果を単なる数値で終わらせず、介入方針に変換することです。

たとえば、 SB が長い患者さんでは離床機会を増やす、 LPA が少ない患者さんでは生活動作や家事活動を目標にする、 MVPA が少ない患者さんでは運動耐容能や自主トレの設定を検討する、といった使い方ができます。身体活動量は、機能評価と生活評価をつなぐ指標として使いやすい評価項目です。

身体活動量評価から考える介入方針
評価で見えた課題 考えられる背景 介入の方向性
SB が長い 離床不足、日中臥床、活動意欲低下 離床時間、座位中断、日課づくり
LPA が少ない 生活動作が少ない、役割がない 屋内歩行、立位 ADL 、家事動作
MVPA が少ない 運動耐容能低下、運動習慣なし 速歩、階段、運動処方、自主トレ
活動が一部時間帯に偏る 生活リズム不良、日中活動不足 午前・午後の活動分散、予定表作成

SBが長い患者で見落としやすい問題

SB は Sedentary Behavior の略で、座位行動を指します。SBRN の定義では、覚醒中に座位・臥位・もたれた姿勢で過ごし、エネルギー消費が 1.5 METs 以下の行動として整理されています。単に「運動していない」だけでなく、長時間座っている、ベッド上で過ごしている、日中の離床が少ないといった生活パターンを含みます。

臨床では、リハビリ中の動きが良くても、病棟や自宅で SB が長い患者さんがいます。この場合、歩行能力や ADL 能力が改善していても、廃用、体力低下、フレイル、閉じこもりにつながるリスクがあります。リハビリの時間だけでなく、残りの時間をどう過ごしているかを確認することが大切です。

SB が長い患者で確認したい項目
確認項目 観察・聴取の例
日中の離床 食事以外もベッドから離れているか
座位の中断 長時間座りっぱなしになっていないか
生活リズム 午前・午後に活動機会があるか
活動のきっかけ 役割、予定、声かけで動けるか

LPAは生活再建で最初に増やしたい活動

高齢者や回復期・生活期の患者さんでは、いきなり MVPA を増やすよりも、まず LPA を増やす方が現実的です。 LPA には、ゆっくり歩く、立って洗面する、食器を片付ける、洗濯物をたたむ、近所を短時間歩くなど、生活に近い活動が含まれます。

LPA は「運動」というより、生活の中で自然に増やせる活動です。そのため、退院後の活動量低下を防ぐには、運動メニューだけでなく、日常生活の中に LPA を組み込む視点が重要です。患者さんに「運動してください」と伝えるより、「食後に 3 分立つ」「午前と午後に 1 回ずつ廊下を歩く」「洗面は立位で行う」など、行動として具体化した方が実践につながります。

LPA を増やすための具体例
場面 具体例 狙い
病棟 食事を離床して行う 日中離床の習慣化
ADL 洗面・更衣を可能な範囲で立位化する 生活動作内の活動量増加
在宅 洗濯、配膳、片付けなど役割を作る 家庭内での活動機会づくり
外出 短距離の散歩や買い物を設定する 閉じこもり予防

MVPAはどこまで必要か

MVPA は Moderate-to-Vigorous Physical Activity の略で、中等度から高強度の身体活動を指します。速歩、階段昇降、運動、息が上がる活動などが含まれ、心肺機能、運動耐容能、生活習慣病予防の観点で重要です。

一方で、低活動の高齢者や退院直後の患者さんに対して、最初から MVPA を目標にすると継続が難しいことがあります。臨床では、まず SB を減らし、 LPA を増やし、そのうえで可能な患者さんに MVPA を追加する段階的な考え方が実用的です。 MVPA は重要ですが、すべての患者さんで最初の目標にする必要はありません。

身体活動量はどう評価するか

身体活動量は、活動量計や加速度計を用いると客観的に把握しやすくなります。機器によっては、歩数だけでなく、座位時間、軽強度活動時間、中等度以上の活動時間、時間帯ごとの活動パターンなどを確認できます。

ただし、活動量計がない施設でも、身体活動量の視点は活用できます。病棟観察、生活聴取、家族からの情報、 1 日の過ごし方の聞き取りを組み合わせることで、 SB・LPA・MVPA のおおまかな傾向を把握できます。重要なのは、測定機器の有無ではなく、生活全体を活動量として評価する視点を持つことです。

身体活動量評価で使いやすい情報源
方法 把握しやすい内容 注意点
活動量計 歩数、活動時間、時間帯の傾向 装着忘れや機器差に注意
病棟観察 離床、座位時間、病棟内移動 観察時間帯に偏りが出やすい
生活聴取 家事、外出、日課、役割 自己申告とのズレに注意
家族情報 退院後の生活実態、活動範囲 本人の希望と分けて整理する

身体活動量 簡易評価シート

身体活動量を臨床で使うには、 SB・LPA・MVPA を細かく説明するだけでなく、実際の生活場面に落とし込んで記録できる形にすることが大切です。そこで、病棟・外来・生活期で使いやすいように、 A4 1 枚の「身体活動量 簡易評価シート」を作成しました。

活動量計がある場合は数値の整理に、活動量計がない場合は観察・聴取の整理に使えます。座位時間、離床、屋内移動、生活活動、外出、再評価メモを 1 枚で確認できる構成です。

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臨床での使い方

身体活動量評価は、数値を記録して終わるものではありません。評価結果をもとに、生活場面で何を増やすか、何を減らすか、どの時間帯に介入するかを考えることが重要です。

たとえば、午前中は活動できるが午後は長時間座位になる患者さんでは、午後に短い離床機会を作ることが介入になります。退院後に外出が減りそうな患者さんでは、歩数目標だけでなく、買い物、庭仕事、洗濯、地域活動など、生活役割に結びつけた LPA の設定が有効です。

身体活動量評価を介入につなげる例
評価結果 解釈 介入例
SB が長く LPA が少ない 日中の離床・生活動作が不足 食事離床、立位 ADL 、病棟内移動を設定
LPA はあるが MVPA が少ない 生活活動はあるが運動強度が不足 速歩、階段、屋外歩行を段階的に追加
午前だけ活動が多い 活動時間帯に偏りがある 午後の短時間散歩や家事課題を設定
退院後に活動が減る見込み 役割・外出機会が不足 家族と日課・役割・外出先を具体化

よくある失敗

身体活動量評価でよくある失敗は、歩数や運動時間だけを見てしまうことです。歩数が増えていても、長時間の座位が続いていれば、生活全体の不活動は残っている可能性があります。

また、活動量を増やす指導が抽象的になりすぎることもあります。「もっと動きましょう」ではなく、「朝食後に 5 分立つ」「午後に 1 回廊下を歩く」「洗濯物をたたむ」など、生活行動に変換することが重要です。

身体活動量評価でよくある失敗と修正例
よくある失敗 問題点 修正例
歩数だけを見る 座位時間や活動強度が見えにくい SB・LPA・MVPA に分けて見る
運動だけを増やす 生活の中で継続しにくい まず LPA を増やす
数値だけで判断する 生活背景や役割を見落とす 生活聴取・家族情報と合わせる
目標が抽象的 患者さんが実行しにくい 時間・場面・行動を具体化する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

SB とは何ですか?

SB は Sedentary Behavior の略で、座位行動を指します。一般的には、覚醒中に座位・臥位・もたれた姿勢で過ごし、エネルギー消費が 1.5 METs 以下の行動として整理されます。

LPA と MVPA の違いは何ですか?

LPA は軽強度活動、 MVPA は中〜高強度活動です。 LPA はゆっくり歩く、立位活動、軽い家事など生活に近い活動で、 MVPA は速歩、階段、運動など息が上がりやすい活動です。

高齢者では何から増やすとよいですか?

まずは SB を減らし、 LPA を増やす視点が現実的です。いきなり運動量を増やすより、離床、立位 ADL 、屋内歩行、家事など、生活の中で続けやすい活動を増やすことが重要です。

活動量計がないと評価できませんか?

活動量計があると客観的に把握しやすくなりますが、必須ではありません。病棟観察、生活聴取、家族情報、 1 日の過ごし方の確認でも、 SB・LPA・MVPA の視点は活用できます。

歩数目標は使わない方がよいですか?

歩数目標は有用です。ただし、歩数だけでは座位時間や活動強度を把握しにくいため、 SB・LPA・MVPA と組み合わせて解釈すると、より臨床に活かしやすくなります。

次の一手

身体活動量評価を臨床で使う場合は、まず「座っている時間を減らす」「生活の中で軽く動く時間を増やす」「必要に応じて中等度以上の活動を追加する」という順番で整理すると実践しやすくなります。

活動量の評価や生活指導を深めたい一方で、職場の教育体制や記録文化に課題を感じる場合は、環境面の整理も重要です。リハ職向けの職場環境チェックシートもあわせて活用してください。


参考文献

  • Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, Barreira TV, Hastert M, Kracht CL, Schuna JM Jr, Cai Z, Quan M, Tudor-Locke C, Whitt-Glover MC, Jacobs DR Jr. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. DOI: 10.1016/j.jshs.2023.10.010
  • Tremblay MS, Aubert S, Barnes JD, Saunders TJ, Carson V, Latimer-Cheung AE, et al. Sedentary Behavior Research Network (SBRN) – Terminology Consensus Project process and outcome. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017;14(1):75. DOI: 10.1186/s12966-017-0525-8
  • Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, Borodulin K, Buman MP, Cardon G, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. DOI: 10.1136/bjsports-2020-102955
  • Compendium of Physical Activities. 2024 Adult Compendium. https://pacompendium.com/adult-compendium/

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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