CAREガイドラインの使い方|症例報告13項目と書き方

制度・実務
記事内に広告が含まれています。

CAREガイドラインは症例報告で確認する13項目の報告指針

CARE(CAse REport)ガイドラインは、症例報告に必要な情報を抜けなく、透明性のある形で報告するためのガイドラインです。CARE公式の2013 Checklistは、タイトルから患者の視点、インフォームド・コンセントまで13項目で構成されています。

PT・OT・STが症例報告を書くときも、CAREを最後のチェックだけに使うのではなく、「この症例で何を伝えるかを決める→タイムラインを作る→評価・介入・転帰をつなぐ→13項目で抜けを確認する」という流れで使うと整理しやすくなります。

この記事では、CARE公式13項目の役割と、リハビリテーション職が各項目へ何を整理すればよいかを解説します。症例報告全体の構成や抄録の作り方から確認したい場合は、症例報告・学会抄録の書き方を先に確認してください。

この記事のポイント:CAREは「この形なら採択される」という基準ではありません。症例報告に必要な情報の完全性・透明性を高めるための報告ガイドラインです。実際に投稿・演題登録するときは、CAREとあわせて学会・雑誌・施設の規定を確認します。

CAREガイドライン13項目|症例報告に何を書くか

CARE公式Checklistでは、症例報告を13項目に分けて確認します。まずは13項目の全体像を押さえ、どの情報が自分の原稿に対応するのかを確認します。

以下の「症例報告で確認すること」はCARE公式文の転載ではなく、PT・OT・STが原稿を確認しやすいように整理した実務上のポイントです。提出時はCARE公式Checklistと投稿先規定を確認してください。

CARE 2013の13項目とPT・OT・ST向け実務確認ポイント
No. CARE項目 症例報告で確認すること
1 Title
タイトル
症例の中心となる診断・介入・現象などが伝わり、症例報告であることを識別できるタイトルになっているか確認します。
2 Key Words
キーワード
診断、介入など症例の中心を表す語と、症例報告を示す語を投稿規定に合わせて選びます。
3 Abstract
抄録
症例の独自性、主要な所見、診断・介入・転帰、症例から得られる主な学びが短くつながっているか確認します。
4 Introduction
序論
この症例を報告する意味や独自性を、必要な背景文献とともに簡潔に示します。
5 Patient Information
患者情報
個人を特定できる情報を避けながら、主訴・症状、関連する既往歴や生活背景、過去の介入などを主題に必要な範囲で整理します。
6 Clinical Findings
臨床所見
症例の主題を理解するために必要な身体所見・臨床所見を選びます。評価結果を網羅的に並べること自体が目的ではありません。
7 Timeline
タイムライン
発症、受診・入院、評価、介入開始、介入変更、再評価、転帰などを時系列で追える形に整理します。
8 Diagnostic Assessment
診断評価
診断・評価方法、診断上の課題、検討した鑑別、診断、必要に応じた予後関連情報を整理します。リハ評価と医学的診断を混同しないことが重要です。
9 Therapeutic Intervention
治療・介入
何を行ったかだけでなく、介入量、期間、頻度、段階づけ、途中で変更した場合の内容と理由を追えるようにします。
10 Follow-up and Outcomes
経過・転帰
臨床家・患者によるアウトカム、再評価結果、介入の実施状況や忍容性、有害または予期しない事象を確認します。
11 Discussion
考察
症例の強みと限界、関連文献との関係、結論へ至る根拠、この症例から得られる主な学びを区別して整理します。
12 Patient Perspective
患者の視点
患者本人が介入や経過、結果をどのように捉えたかという視点を確認します。記載方法は投稿先の規定にも従います。
13 Informed Consent
インフォームド・コンセント
症例報告の公表に必要な同意について、投稿先・施設の規定に沿って確認し、必要な記載や書類を準備します。
CARE症例報告の13項目と書く順番。投稿規定の確認、主題、タイムライン、患者情報・臨床所見・診断評価、介入、経過・アウトカム、考察・患者の視点・同意、CARE13項目の最終確認までを示す図
図:CARE公式13項目と、PT・OT・STが症例報告を書くときの整理順序

症例報告を書く順番|最初に主題とタイムラインを固定する

CAREの13項目は、完成原稿に必要な情報を確認するための枠組みです。実際に原稿を作るときは、掲載順どおりに最初から文章を書くより、先に症例で伝えたい内容とタイムラインを整理してから各項目へ落とし込む方が、評価・介入・結果のつながりを確認しやすくなります。

PT・OT・STの症例報告では、次の順番を実務上の整理方法として使えます。これはCARE公式13項目そのものではなく、CAREを原稿作成へ落とし込むための補助的な手順です。

  1. 投稿先の規定を確認する:字数、構成、倫理・同意、図表、抄録形式などを先に確認します。
  2. この症例で伝えたい1点を決める:珍しい症例であることだけでなく、評価、介入、経過、転帰のどこに報告価値があるのかを言語化します。
  3. タイムラインを作る:発症・入院・評価・介入開始・変更・再評価・転帰を先に並べます。
  4. 患者情報・臨床所見・診断評価を整理する:主題の理解に必要な情報を選び、関係の薄い評価結果は増やしすぎないようにします。
  5. 介入とアウトカムを対応させる:何を、どの程度、なぜ行い、その後何がどう変化したのかを追える形にします。
  6. 考察・患者の視点・同意を確認する:結果から言える範囲と限界を整理し、Patient PerspectiveとInformed Consentも確認します。
  7. 抄録を最後に整える:本文で確定した主題、主要所見、介入、転帰、学びを投稿規定の形式へ圧縮します。

PT・OT・STで特に迷いやすい5つのポイント

CAREの13項目はすべて確認対象ですが、リハビリテーションの症例報告では、とくにタイムライン、診断評価、介入量、アウトカム条件、患者の視点をどう書くかで迷いやすくなります。

1.タイムラインは評価と介入の前後関係が分かるようにする

タイムラインでは、日付を並べること自体ではなく、症例の経過を読み手が追えることが重要です。

発症日、入院日、初期評価、介入開始、重要な介入変更、再評価、退院・転帰など、主題を理解するために必要な出来事を並べます。日付の扱いは、個人識別への配慮と投稿先規定を確認しながら統一します。

実務上の確認:タイムラインを読んだだけで、「いつ評価し、いつ介入し、いつ結果を確認したのか」が追えるかを見直します。

2.Diagnostic Assessmentとリハ評価を混同しない

CAREのDiagnostic Assessmentには、診断方法、診断上の課題、鑑別、診断、必要に応じた予後情報などが含まれます。

PT・OT・STが実施した機能評価をすべて「診断」と表現するのではなく、医学的診断、鑑別に関する情報、リハビリテーション評価を区別して記載します。たとえば筋力、歩行、嚥下、ADLなどの評価は、症例の主題にどう関係する所見なのかを明確にすると読み手が理解しやすくなります。

3.介入は名称だけでなく量・期間・変更理由まで残す

「歩行練習を実施した」「嚥下訓練を行った」だけでは、読み手が介入内容を十分に追えません。

症例の主題に必要な範囲で、介入の種類に加えて、頻度、期間、負荷・難易度、段階づけなどを整理します。途中で介入内容を変更した場合は、何が変わり、なぜ変更したのかも確認します。

すべての訓練を日誌のように列挙するのではなく、「何を狙い、何を行い、どのように調整したか」が分かる情報を優先します。

4.結果は数値だけでなく測定条件をそろえる

Follow-up and Outcomesでは、臨床家が評価した結果だけでなく、可能な場合には患者が評価した結果、フォローアップ時の検査結果、介入の実施状況・忍容性、有害または予期しない事象も確認します。

リハビリテーションでは、同じ評価値でも装具、歩行補助具、介助量、酸素投与、食形態、測定環境などが異なれば単純比較できないことがあります。

前後を比較するときは、主題に直結するアウトカムを優先し、測定条件が比較可能かまで確認します。

5.Patient Perspectiveを結果の付け足しにしない

CAREではPatient Perspectiveが独立した項目です。これは、医療者側の評価結果だけでは拾えない、患者本人から見た治療・介入・経過の意味を示すための視点です。

たとえば歩行距離が延びたという評価結果だけでなく、「自宅内を自分で移動できるようになった」「食事場面への不安が減った」など、患者が変化をどのように捉えたかは症例の理解を補います。

ただし、患者の言葉をどのように収集・記載するかは症例ごとに異なります。CARE項目であることを確認したうえで、投稿先・施設規定や同意の範囲に沿って扱います。

CAREと投稿規定は別|両方を確認する

CAREの13項目を確認すれば、そのままどの学会・雑誌にも投稿できるわけではありません。

CAREは症例報告に必要な報告事項を整理するガイドラインであり、実際の提出では投稿先ごとに定められた字数、見出し形式、図表数、参考文献、倫理・同意の記載、利益相反などの規定にも従います。

CAREと投稿先・施設規定の役割の違い
確認するもの 主な役割 提出前に見るポイント
CAREガイドライン 症例報告で必要な情報の完全性・透明性を確認する 13項目に重要な抜けがないか
学会・雑誌の投稿規定 その投稿先で受け付けられる形式を定める 字数、構成、図表、参考文献、提出ファイルなど
施設の規定 院内・施設内で必要な手続きや情報管理を定める 同意、倫理審査の要否、個人情報、院内承認など

原稿を書き終えてから規定へ合わせると、大幅な削除や構成変更が必要になることがあります。症例報告を始める段階で、CAREと投稿先・施設規定を並べて確認しておくと修正しやすくなります。

症例報告では、患者のプライバシーを守り、必要な同意を確認することが重要です。氏名、イニシャル、患者番号などの識別情報を不用意に掲載せず、写真や経過の組み合わせから個人が特定される可能性にも注意します。

CAREではInformed Consentが13項目の1つです。症例報告を作成するときは、患者情報の非識別化と、公表に必要な同意の扱いを投稿前に確認します。

一方、倫理審査が必要かどうか、どの同意書を使うか、どこまで匿名化するかを一律に決めることはできません。学会・雑誌によって指定の同意書がある場合もあるため、投稿先と所属施設の規定を最優先で確認してください。

注意:「症例報告だから倫理上の確認は不要」と自己判断せず、原稿作成前に投稿先・施設の手続きと同意の扱いを確認してください。

CARE対応 症例報告 執筆・提出前確認シート

CAREの13項目を原稿へ落とし込むときに使えるよう、「CARE対応 症例報告 執筆・提出前確認シート」を作成しました。

公式CARE Checklistを転載したものではなく、13項目の名称を軸に、PT・OT・ST向けの実務確認ポイントを独自に整理したシートです。CARE13項目に加えて、主題、タイムライン、介入量、主要アウトカム、Patient Perspective、Informed Consent、投稿先規定を確認できます。

CARE対応 症例報告 執筆・提出前確認シート

編集しながら使う場合はExcel版、印刷して確認する場合はPDF版を利用できます。


Excel版を開く・保存する


PDF版を開く・印刷する

重要:本シートはCARE公式Checklistを置き換えるものではありません。提出時はCARE公式版と、投稿先・所属施設の規定を必ず確認してください。

CAREを使うときに起こりやすい5つのズレ

CAREを確認していても、13項目へ情報を埋めること自体が目的になると、症例の主題が伝わりにくくなります。とくに次の5つは提出前に確認しておきたいポイントです。

  • 評価結果をすべて載せる:主題との関係が薄い所見まで並べると、重要な結果が埋もれます。症例の理解に必要な情報を優先します。
  • 介入名だけを書く:介入の量・頻度・期間・変更理由がなければ、実際に何を行ったのか追いにくくなります。
  • タイムラインと本文が一致しない:介入開始や再評価の時点を本文とタイムラインで照合します。
  • 結果から因果関係まで断定する:一症例で確認できた変化と、その介入が原因だったという解釈は分けて考えます。
  • CAREだけを確認して投稿規定を見ない:CARE、投稿先規定、施設規定はそれぞれ役割が異なります。

提出前は13項目と原稿の記載箇所を対応させる

提出前チェックでは、「CAREを読んだか」ではなく、13項目それぞれについて原稿のどこに必要情報を書いたかを確認します。

CAREを使った提出前の最終確認
確認 見るポイント
主題 症例で最も伝えたいことがタイトル・抄録・考察・結論でずれていないか
タイムライン 評価、介入、変更、再評価、転帰の前後関係を追えるか
介入 種類だけでなく量・期間・段階づけ・変更理由を必要な範囲で説明しているか
アウトカム 主題に対応する結果があり、比較する場合は測定条件も確認できるか
考察 結果から直接言えることと、文献を踏まえた解釈を区別しているか
患者の視点 Patient Perspectiveの扱いを確認したか
同意・規定 Informed Consent、匿名化、投稿先・施設規定を確認したか

CAREガイドラインでよくある質問

Q1.CAREの13項目はすべて症例報告に書く必要がありますか?

CAREは症例報告の完全性・透明性を確認するための報告ガイドラインです。13項目を確認したうえで、実際の構成や記載方法は投稿先の規定に合わせます。各項目を同じ文章量で書くという意味ではありません。

Q2.CAREの順番どおりに原稿を書き始める必要がありますか?

必要ありません。症例で伝えたいことを決め、タイムラインと臨床情報を整理してから本文を作り、抄録を最後にまとめると、評価・介入・結果のつながりを確認しやすくなります。

Q3.PT・OT・STの評価結果はClinical FindingsとDiagnostic Assessmentのどちらですか?

評価の目的と内容によって整理します。主題に関係する臨床所見はClinical Findingsとして扱えますが、Diagnostic Assessmentには診断方法、診断上の課題、鑑別や診断などが含まれます。リハビリテーション評価を医学的診断と同じ意味で扱わず、原稿内で役割を明確にすることが重要です。

Q4.Patient Perspectiveには何を書けばよいですか?

患者本人が治療・介入や経過をどのように捉えたかという視点を扱います。医療者による評価結果の言い換えではなく、患者側から見た経験や変化を確認します。具体的な収集・記載方法は投稿先・施設規定と同意の範囲に合わせてください。

Q5.CAREを使えば採択されやすくなりますか?

CAREは採択を保証する基準ではありません。症例報告に必要な情報を完全かつ透明性のある形で報告するためのガイドラインです。投稿先の目的、投稿規定、症例の報告価値などは別に確認する必要があります。

次の一手|CAREで抜けを確認したら文章へ落とし込む

CAREで必要な情報を確認した後は、それを投稿規定の字数と構成へ落とし込みます。とくに学会抄録では、CAREの全情報をそのまま詰め込むのではなく、症例の主題に必要な情報を選び、短い文章へ圧縮する必要があります。

背景・目的・症例・評価・介入・結果・考察・結論を実際にどう書くか迷う場合は、学会抄録のパート別例文で文章への落とし込み方を確認してください。


参考文献

  1. Gagnier JJ, Kienle G, Altman DG, Moher D, Sox H, Riley D; CARE Group. The CARE Guidelines: Consensus-based Clinical Case Reporting Guideline Development. J Clin Epidemiol. 2014;67(1):46-51. doi: 10.1016/j.jclinepi.2013.08.003.
  2. Riley DS, Barber MS, Kienle GS, et al. CARE guidelines for case reports: explanation and elaboration document. J Clin Epidemiol. 2017;89:218-235. doi: 10.1016/j.jclinepi.2017.04.026.
  3. CARE Statement. 2013 CARE Checklist. CARE Checklist.
  4. CARE Statement. Writing a Case Report. Writing a Case Report.
  5. EQUATOR Network. The CARE Guidelines: Consensus-based Clinical Case Reporting Guideline Development. EQUATOR Network CARE guideline page.
  6. 大川祐世, 石山すみれ, 松浦悠人, 山下仁. 症例報告のためのCAREガイドライン. 全日本鍼灸学会雑誌. 2025;75(1):93-102. doi: 10.3777/jjsam.75.93.
  7. International Committee of Medical Journal Editors. Protection of Research Participants. ICMJE Recommendations.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール / 編集・引用ポリシー / お問い合わせ