EPAとは?臨床実習で学生にどこまで任せるか|監督レベルを解説

制度・実務
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EPAとは?臨床実習で「何を、どこまで任せるか」を考える枠組みです

EPA(Entrustable Professional Activities)は、学習者の知識・技能・態度を個別に採点するのではなく、臨床で行う「仕事」を単位として、どの程度の監督で任せられるかを判断する考え方です。臨床実習では、学生が上手にできたかだけでなく、その業務をその患者・条件で任せてよいかまで考える必要があります。

この記事では、理学療法の臨床実習を想定し、EPAの意味、一般的な5段階の監督レベル、日本理学療法士協会が示す実習生の基本技術の水準との違い、実際の任せ方まで整理します。ポイントは、「EPAの監督レベル」と「学生が実施可能な技術の範囲」を混同しないことです。


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EPAで評価するのは「能力」ではなく、任せられる仕事です

EPAの中心は、複数の能力を使って完結させる専門職としての仕事・責任の単位です。知識、技術、コミュニケーション、安全管理などを別々に見るだけではなく、それらを統合して「この仕事を任せられるか」を判断します。

たとえば「移乗動作の介助技術がある」という能力だけを見るのではなく、患者の状態を確認し、環境を整え、安全に実施し、反応を確認して報告するところまでを仕事のまとまりとして考えます。

コンピテンシーとEPAの違い
観点 コンピテンシー EPA
主に見るもの 知識・技能・態度などの能力 複数の能力を使って行う仕事
中心となる問い 何ができるか この仕事を任せられるか
臨床教育への落とし込み 能力ごとの到達度を捉える 必要な監督の程度を判断する

EPAの監督レベルは一般に5段階で整理されます

EPAでは、「任せる/任せない」の二択ではなく、どの程度の監督が必要かを段階的に捉えます。広く用いられている基本的な枠組みは、観察のみから、直接監督、間接監督、監督なしでの実施、後輩を監督する段階までの5段階です。

ただし、これはすべての臨床実習生がレベル5まで到達すべきという意味ではありません。教育段階、資格制度、職種のルール、患者の状態などによって、実際に許容される監督範囲は異なります。

EPAで用いられる一般的な5段階の監督レベル
レベル 監督の考え方 概要
1 観察のみ 業務は実施せず、指導者の実施を観察する
2 直接監督 指導者がその場で直接監督しながら実施する
3 間接監督 指導者はその場を離れているが、必要時に速やかに対応できる
4 監督なしで実施 直接・間接の監督を必要とせず業務を行う
5 他者を監督 自ら実施するだけでなく、より経験の浅い学習者を監督する

注意:この5段階はEPAにおける一般的な監督の枠組みです。「理学療法学生だからレベル3まで」「実習後半だからレベル4」と機械的に当てはめる基準ではありません。

PT臨床実習では「EPA」と「実施可能な基本技術の水準」を分けて考えます

理学療法の臨床実習で最も重要なのは、EPAの監督レベルだけを見て学生へ業務を任せないことです。まず、その技術を実習生がどの範囲で実施できるのかを確認し、その範囲内でEPAによる任せ方を考えます。

日本理学療法士協会の「臨床実習において実習生が実施可能な基本技術の水準」では、基本技術を水準Ⅰ〜Ⅲに整理しています。これはEPAの5段階とは目的が異なるため、数字を対応させて読み替えるものではありません。

EPAとPT臨床実習の「基本技術の水準」は何が違うか
確認したいこと EPA PT臨床実習の基本技術の水準
中心となる問い この業務を、どの監督で任せられるか 実習生がその技術をどの範囲で実施するか
段階 一般的には監督レベル1〜5 水準Ⅰ〜Ⅲ
判断するとき 学生・業務・患者・状況を踏まえる 協会資料に示された技術と対象状態を確認する

同協会資料では、水準Ⅰは指導者の直接監視下で実習生が実施する項目、水準Ⅱは指導者の補助として実施する項目・状態、水準Ⅲは見学にとどめる項目・状態として整理されています。たとえば基本動作・移動動作・移送介助は、全身状態が安定し、実習生が行うリスクが低い対象では水準Ⅰに含まれています。

したがって、学生のパフォーマンスが良好だからといって、EPAだけを根拠に直接監視を外すのではなく、養成校・実習施設の方針、実施する技術の範囲、患者の状態を合わせて確認する必要があります。

EPAの仕事単位、一般的な5段階の監督レベル、PT臨床実習で別に確認する実施可能水準と患者条件を整理した図版
図:EPAの監督レベルと、PT臨床実習で別に確認する実施可能範囲の整理

臨床実習用EPAは「仕事・範囲・リスク・判断材料・監督」を決めます

EPAは業務名だけ決めれば完成するわけではありません。正式なEPAを詳細に記述する場合は、業務名、範囲と限界、失敗時のリスク、関連するコンピテンシー、必要な知識・技能・態度、評価情報、期待する監督レベル、一定期間実施しなかった場合の扱いなどを整理する方法が提案されています。

臨床実習で最初からすべてを作り込むと運用が重くなるため、この記事では実習で任せ方を考える最初の整理として、次の5つの問いに圧縮します。これはEPAの公式な5ステップではなく、rehabilikunblogで実習への落とし込み用に整理したものです。

臨床実習でEPAを考える5つの問い
確認 問い 決めること
1. 仕事 何を任せるのか 観察可能な仕事の単位を決める
2. 範囲 どこまで含めるのか 含む業務と含めない業務を明確にする
3. 条件・リスク どの条件なら実施できるのか 患者状態、環境、中止・報告条件を確認する
4. 判断材料 何を見て任せ方を決めるのか 直接観察、報告、記録などの情報を集める
5. 監督 今回はどの程度の監督が必要か 許容される範囲内で監督方法を決める

病棟EPAの例|起居・移乗を「仕事の単位」で考える

EPAでは、単に「移乗ができる」で終わらせず、臨床の仕事としてどこまでを一まとまりにするかを決めます。以下は、理学療法臨床実習へEPAの考え方を落とし込むための例であり、日本理学療法士協会が定めた公式EPAではありません。

起居・移乗をEPAとして整理する例
項目 整理例
仕事の単位 介入前に状態と環境を確認し、起居・移乗を実施し、患者の反応を確認して指導者へ報告する
含める範囲 事前確認、環境調整、介助、実施後の反応確認、報告
実施条件 実習生が実施できる技術・状態の範囲内で、患者ごとのリスクや中止条件を確認する
判断材料 事前確認、安全な介助、状態変化への対応、報告内容などを直接観察する
監督方法 PT臨床実習の実施可能水準を確認したうえで、その患者・場面に必要な監督を設定する

このように整理すると、「移乗が上手だったから次は一人で任せる」といった判断ではなく、何を観察し、どの条件で、どの監督なら任せられるかを指導者間で共有しやすくなります。

「任せる」は学生だけで実施させる意味ではありません

EPAにおけるentrustmentは、必ずしも「一人でやらせる」という意味ではありません。直接監督を付けて任せる段階も、間接監督で任せる段階も含めて、その仕事に必要な監督の程度を決めることが中心です。

また、臨床現場でその都度行う任せ方の判断は、学生の能力だけでは決まりません。患者の状態や複雑さ、業務のリスク、指導者が介入できる状況などによっても変わります。そのため、前日にうまくできた業務でも、患者や条件が変われば監督方法を見直します。

当日の判断と、継続的な判断を分ける

EPAでは、その場で行う一時的なentrustment decisionと、複数の評価情報に基づいて今後も同様の業務を任せられるとする、より正式な判断を区別して考えます。

臨床実習では、1回うまくできたことだけで監督を減らすのではなく、異なる機会での直接観察、報告、記録、限界を認識して相談できるかなどを継続して確認することが重要です。

記録するときの考え方

「EPA名/今回の監督方法/実施条件/判断根拠」を短く残すと、次の指導者が同じ地点から判断しやすくなります。監督レベルの数字だけでなく、どの患者・条件で判断したかを残すことがポイントです。

EPA運用で迷いやすい3つの境界

EPAで迷いやすいのは、尺度の数字そのものより、「どこまで任せてよいか」の境界です。特に次の3点を分けて考えると、学生の成長と患者安全の両方を扱いやすくなります。

EPAで迷いやすい判断と整理方法
迷いやすい場面 避けたい判断 確認すること
学生が上手にできた 上手だから監督を外す その技術の実施可能水準と複数回の観察結果を確認する
同じ業務を別の患者で行う 前回できたから同じ監督にする 患者状態、難易度、リスク、環境を改めて確認する
指導者によって任せ方が違う 経験や感覚だけで決める 仕事の範囲、判断材料、実施条件、監督方法を共有する

EPAを回すには直接観察とフィードバックを組み合わせます

EPAを設定するだけでは、任せ方の根拠は集まりません。実際の患者対応を観察し、「次に同じ仕事を任せるなら、どの監督が必要か」を判断できる情報を残す必要があります。

そのため、EPAとmini-CEXのような直接観察型の評価は役割が異なります。EPAは何をどの監督で任せるかを考える枠組み、mini-CEXは実際の患者対応を短時間で直接観察し、フィードバックする方法として組み合わせると整理しやすくなります。

よくある質問

EPAの監督レベルは3段階ですか?

EPAそのものに「観察・共同・監督下で実施」という普遍的な3段階が定められているわけではありません。一般的な監督枠組みとしては、観察のみ、直接監督、間接監督、監督なしで実施、他者を監督する5段階が広く用いられています。実際の教育プログラムでは目的に応じた尺度が用いられることがあります。

EPAで「任せる」とは、学生だけで実施させることですか?

いいえ。直接監督下で実施させることもentrustmentの段階に含まれます。「任せる」とは、学生だけに任せることではなく、その業務をどの程度の監督で担当させられるかを判断することです。

PT臨床実習ではEPAとJPTAの基本技術の水準のどちらを見ればよいですか?

役割が異なるため、どちらか一方を選ぶものではありません。まず実習生がその技術をどの範囲で実施できるかを確認し、その範囲内でEPAの考え方を用いて、今回の患者・業務に必要な監督を考えます。

同じ業務なら、患者が変わっても監督レベルは同じですか?

必ずしも同じではありません。entrustmentの判断には学生だけでなく、患者の状態や複雑さ、業務のリスク、周囲の支援体制なども影響します。新しい患者では、その場面に応じて必要な監督を再確認します。

次の一手

EPAの位置づけを臨床教育全体の中で整理したい場合は、臨床教育ハブへ戻るとCCS・EPA・mini-CEX・OMPの役割を確認できます。

EPAを設定したあと、実際の患者対応を短時間で観察して次の学習課題へつなげたい場合は、mini-CEXのやり方・評価項目を確認してください。


参考文献

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  2. ten Cate O, Chen HC, Hoff RG, Peters H, Bok H, van der Schaaf M. Curriculum development for the workplace using Entrustable Professional Activities (EPAs): AMEE Guide No. 99. Med Teach. 2015;37(11):983-1002. doi: 10.3109/0142159X.2015.1060308. PubMed: 26172347.
  3. ten Cate O, Taylor DR. The recommended description of an entrustable professional activity: AMEE Guide No. 140. Med Teach. 2021;43(10):1106-1114. doi: 10.1080/0142159X.2020.1838465. PubMed: 33167763.
  4. ten Cate O, Hennus MP. Entrustable professional activities and entrustment decision-making for competency-based education in the health professions: an introduction. In: ten Cate O, Burch VC, Chen HC, et al, editors. Entrustable Professional Activities and Entrustment Decision-Making in Health Professions Education. 1st ed. London: Ubiquity Press; 2024. doi: 10.5334/bdc.a. NCBI Bookshelf.
  5. 公益社団法人日本理学療法士協会. 臨床実習において実習生が実施可能な基本技術の水準. 2021. PDF.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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