歯科連携が弱い施設でも回る:口腔ケアの「依頼導線」を 1 本に固定する
口腔管理体制を整えるとき、多くの現場で詰まるのが「歯科・歯科衛生士へ相談したいのに、入口が曖昧で動けない」問題です。院内に歯科がない、関与が薄い、窓口が複数ある――この状態だと、依頼が遅れて誤嚥性肺炎リスクの高いケースほど抜けやすくなります。
本記事では、歯科連携が弱い施設でも回るように、①窓口を 1 つ、②依頼条件を 5 行、③添付情報を 1 行に固定し、「誰が・いつ・どこへ・何を添えて」依頼するかを標準化します。
結論:固定するのは「入口 1 本」だけで十分です
歯科連携が弱い場合でも、最初に固定すべきは入口(窓口)を 1 本にすることです。依頼条件と添付情報を短く統一すれば、院内の誰が見ても同じ判断で動けるようになります。
逆に、入口が複数のままだと「誰がやるか分からない」「依頼理由が曖昧」「返答が共有されない」が連鎖し、口腔ケアが属人化します。まずは本ページのテンプレをそのまま採用し、 1 週間で運用を安定させてください。
現場の詰まりどころ:なぜ依頼が遅れるのか
依頼が遅れる原因は、スキル不足ではなく「決めごと不足」であることが多いです。特に次の 3 つが重なると、口腔管理体制の評価が上がりません。
- 窓口が複数で、担当が曖昧(看護/リハ/栄養/相談員など)
- 依頼条件が言語化されておらず、ケースごとに迷う
- 添付情報が統一されておらず、歯科側が判断しにくい
この 3 つを、次の章で「 1 本化」します。
依頼導線の作り方:窓口・条件・添付情報を固定する
導線設計は複雑にしない方が回ります。窓口 1 名(または 1 役割)に固定し、依頼条件と添付情報をテンプレ化してください。最初は “ 100 点” より “回る 60 点” を優先して OK です。
ステップ 1 :窓口(入口)を 1 つに固定
おすすめは、日常ケアとの接続が強い看護(病棟)を窓口に固定する方法です。リハが主導する場合も、窓口は 1 つに寄せます。
- 窓口:病棟の担当(例:リンクナース、委員会担当、担当看護師など)
- 依頼の実行:窓口がテンプレを貼り付け、外部連携先へ連絡
- 返答の反映:窓口が「決定事項」だけを所定欄へ記録して共有
ステップ 2 :依頼条件を 5 行で固定
「何となく気になる」だと、忙しい時に後回しになります。依頼条件は 5 行に絞り、院内掲示や委員会資料にそのまま貼れる形にします。
| 依頼条件( 5 行で固定) | 補足(迷った時) |
|---|---|
| 義歯の不適合(痛み/不安定/外れやすい) | 食事量低下、咀嚼困難、口腔痛がある場合 |
| 強い口腔乾燥、舌苔・汚れが強い | 加湿、口腔保湿、清掃頻度を見直しても改善しない |
| 口腔痛・出血・口内炎が続く | ケアの中止基準にも関わるため早めに相談 |
| 食事中のむせ、湿声が増えた | 嚥下評価の再検討と並行して口腔環境も点検 |
| 誤嚥性肺炎の既往、再燃が疑わしい | 痰・ SpO_{2}・全身状態の変化を添付する |
ステップ 3 :添付情報を「 1 行」テンプレに固定
依頼時に必要なのは長文ではなく、歯科側が判断しやすい要点です。口腔・嚥下・呼吸をまとめて「 1 行」テンプレに固定します。
| 項目 | 記載例( 1 行に束ねる) |
|---|---|
| 口腔 | 乾燥(強/中/弱)、汚れ(舌苔)、義歯(適合/不適合)、疼痛(あり/なし) |
| 嚥下 | 湿声(あり/なし)、むせ(食事中)、食事量( 10 割〜 0 割) |
| 呼吸 | 痰(多い/少ない)、 SpO_{2}(例: 92–94% で変動) |
| 束ねた 1 行 | 例)湿声あり/痰多い/ SpO_{2} 92–94% で変動/食事量 5 割/口腔乾燥強い |
返答後に崩さない:決定事項の共有と更新ルール
依頼が通っても、返答が共有されないと運用は戻ります。返答後は「決定事項」だけを短く残し、更新する人を固定してください。
- 残すもの:対応(何をするか)、注意点(禁忌・中止)、次回条件(再評価の目安)
- 残さないもの:経緯の長文、推測、やり取りのログ(必要なら別管理)
- 更新担当:窓口(入口)に固定
よくある失敗(OK/NG 早見)
導線が崩れる典型パターンを先に潰します。特に「窓口が複数」「依頼理由が長文」「返答が共有されない」の 3 点は、最優先で修正してください。
| よくある失敗 | NG の状態 | OK の型 | 最短の直し方 |
|---|---|---|---|
| 窓口が複数 | 看護・リハ・栄養が各自で依頼し、責任が曖昧 | 窓口 1 つ、依頼テンプレ 1 枚 | 委員会で「入口担当」を 1 名( 1 役割)に固定 |
| 依頼理由が長文 | 文章は丁寧だが要点が掴めず判断が遅い | 依頼条件 5 行+ 1 行所見 | テンプレに貼り替え、自由記載を最小化 |
| 添付情報がバラバラ | 口腔だけ、嚥下だけ、呼吸だけで判断材料が欠ける | 口腔+嚥下+呼吸を 1 行で束ねる | 「 1 行所見」テンプレを全員が使う |
| 返答が共有されない | 個人のメモで終わり、翌週に同じ迷いが再発 | 決定事項だけ短く残し、更新担当を固定 | 窓口が “決定事項欄” を更新する運用に統一 |
現場の詰まりどころ:ここから自己解決する(必須 3 段)
ここは “読ませるゾーン” です。迷ったら、先にこの 3 つだけ見てください(原則ボタン無し)。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 院内に歯科がない場合、まず何から決めればいいですか?
A. まずは「外部の連携先(協力歯科/訪問歯科/かかりつけ等)」を 1 つに固定し、院内の窓口を 1 つに寄せてください。連携先が複数でも、入口(窓口)は 1 本にすると回りやすくなります。
Q2. 依頼条件は施設ごとに違いますか?
A. もちろん差はありますが、最初は “共通で迷いにくい 5 行” に絞る方が失敗しません。運用が安定してから、施設の事情(物品、担当、外部連携先の条件)に合わせて微調整すると安全です。
Q3. 添付情報はどこまで書けば十分ですか?
A. 長文より、歯科側が判断しやすい要点が重要です。口腔・嚥下・呼吸を 1 行に束ねるだけで、依頼の往復が減り、対応が早くなります。
Q4. 返答の共有がうまくいきません。どうすれば良いですか?
A. 返答は「決定事項だけ」を短く残し、更新担当(窓口)を固定してください。共有の置き場所がバラバラだと再発します。まず “ 1 箇所に寄せる” を優先すると改善しやすいです。
次の一手
最後に、意思決定の三段で揃えます。
- 運用を整える:口腔管理体制の施設基準(運用+記録の最小セット)
- 共有の型を作る:A4 テンプレ(自己点検/ラウンドメモ)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
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参考文献
- 厚生労働省. 令和 6 年度 診療報酬改定 関連資料(リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の取組の推進). 公式資料
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


