認知症ケア加算 1 / 2 / 3 の違い【比較・使い分け】|病院の体制で選ぶ
認知症ケア加算は、「加算 1 が上位で、加算 2 / 3 は下位」と単純に選ぶ制度ではありません。実務では、認知症ケアチームを専任で組めるか、病棟単位で研修・記録・せん妄対策を継続できるかで、現実的に届け出る区分が変わります。
この記事では、認知症ケア加算 1 / 2 / 3 の違いを比較表で整理し、届出前に確認したい体制・研修・記録・監査対応までをまとめます。あわせて、選び方を整理しやすい図版と、届出前チェックシートも掲載しています。
結論:加算 1 はチーム型、加算 2 / 3 は病棟標準化型で選ぶ
加算 1は、専任医師・専任看護師・退院調整等に関わる職種を含む認知症ケアチームを中核に、病棟巡回やカンファレンスを回す区分です。院内の相談窓口と質改善の仕組みを作れる病院に向いています。
加算 2 / 3は、病棟側の研修配置、マニュアル、せん妄対策、記録運用を標準化して回す区分です。専任チームの組成が難しい場合でも、病棟単位で継続できる体制があれば現実的な選択肢になります。
認知症ケア加算 1 / 2 / 3 の違い|施設基準を 1 表で確認
最初に、加算 1 / 2 / 3 の違いを比較表で固定します。スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 比較項目 | 加算 1 | 加算 2 | 加算 3 |
|---|---|---|---|
| 基本設計 | 認知症ケアチームを中核に院内支援を行う | 専任医師または専任看護師を中心に病棟運用を標準化する | より小規模な体制で、研修・手順・記録を整える |
| 中核体制 | 専任医師、専任看護師、退院調整経験を有する職種等によるチーム | 専任の常勤医師または専任の常勤看護師 | 加算 2 より簡素な体制で運用 |
| 病棟配置 | チームが病棟を横断して支援 | 病棟ごとの研修看護師配置が重要 | 病棟での研修・手順・記録の維持が重要 |
| ラウンド・カンファ | 病棟巡回、カンファレンス、助言を継続 | 定期的な把握と助言を中心に運用 | 簡便でも記録に残る運用が必要 |
| マニュアル | 院内手順として整備しておきたい | 身体的拘束、鎮静目的薬物、せん妄対策を含めて整備 | 同左 |
| せん妄対策 | アセスメントと対応方策に組み込む | リスク因子確認と対策チェックを運用 | 同左 |
| 身体的拘束実施日 | 所定点数の 100 分の 40 に相当する点数で算定 | ||
| 併算定の注意 | 認知症ケア加算を算定した場合、せん妄ハイリスク患者ケア加算は別に算定できない | ||
使い分けの判断基準|届出前に 3 点で決める
選定は「高い区分を狙う」よりも、「届け出た後に運用を維持できるか」で判断します。次の 3 点を確認すると、加算 1 / 2 / 3 の選び方が整理しやすくなります。
1. 認知症ケアチームを専任で組めるか
専任医師、専任看護師、退院調整に関わる職種などでチームを組み、病棟巡回や助言を継続できる場合は、加算 1 が候補になります。チームを作れても勤務実態や記録が残らない場合は、監査で説明しにくくなります。
2. 病棟ごとの研修配置を維持できるか
加算 2 / 3 では、病棟側で研修・手順・記録を継続できるかが重要です。人員が不足しやすい病棟では、届出時点だけでなく、異動・退職・夜勤体制を含めて維持可能かを確認します。
3. ラウンド・助言・解除検討を記録で追えるか
どの区分でも、実施した内容が記録で追えないと「やっているのに説明できない」状態になります。ラウンド、カンファレンス、身体的拘束の必要性、解除検討、せん妄対策を同じ流れで記録できるようにしておくと運用が安定します。関連:認知症ケアチーム施設基準のセルフチェック
届出前チェックシート|不足を A4 1 枚で確認する
加算区分を決めたあとに、体制・研修・記録・身体的拘束実施日の扱いを一覧で確認できる A4 チェックシートを用意しました。院内の打ち合わせ、届出前の確認、監査前の見直しに使いやすいよう、書き込み欄を広めにしています。
中身をプレビューする
現場の詰まりどころ|研修・記録・拘束日の扱いで止まりやすい
認知症ケア加算で詰まりやすいのは、制度理解そのものよりも、院内運用を説明できる形に落とせていない場面です。特に、研修記録、ラウンド・助言記録、身体的拘束実施日の扱いは、事前に見直しておきたいポイントです。
毎回同じところで詰まる場合は、個人の努力だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無も影響します。
よくある失敗|原因と対策を記録の型に落とす
通りにくい運用は、実施の有無よりも「誰が、いつ、何を判断し、次にどうしたか」が残っていないことが原因になりやすいです。
| 失敗パターン | 起きる理由 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 研修はあるが対象・内容が曖昧 | 参加者、テーマ、事例検討、改善反映が残らない | 年 1 回以上の研修を固定し、事例検討とセットで残す | 日時/対象者/テーマ/参加者/次回課題 |
| ラウンド・助言が口頭で終わる | 担当、期限、再評価が不明になる | 提案→担当→期限→結果を同一テンプレにする | 助言内容/担当者/期限/再評価結果 |
| せん妄対策が別運用で分断する | 認知症ケアとせん妄対策の記録がつながらない | 入院早期のリスク確認を同じ記録枠に統合する | リスク因子/対策/効果確認 |
| 身体的拘束の解除検討が薄い | 必要性と解除に向けた判断が追えない | 実施日ごとに必要性と解除検討を記録する | 開始日/実施日/必要性/解除検討/代替策 |
監査セルフチェック|届出前に不足を見える化する
監査対応では、説明のうまさよりも、基準と記録が一致していることが重要です。最低限、次の項目を確認しておくと、加算区分ごとの不足が見えやすくなります。
| 確認項目 | 加算 1 | 加算 2 | 加算 3 | 院内で揃えるもの |
|---|---|---|---|---|
| 中核者の体制 | 認知症ケアチームの職種・専任性 | 専任医師または専任看護師 | 研修・手順で運用を担保 | 辞令/勤務表/研修修了証/名簿 |
| 病棟配置 | チームが病棟を支援できる体制 | 病棟ごとの研修看護師配置 | 病棟ごとの研修・手順の維持 | 配置表/病棟別名簿/異動時の補充ルール |
| ラウンド・助言 | 巡回・カンファレンス・助言を継続 | 定期把握と助言を実施 | 記録で継続性を担保 | ラウンド記録/助言記録/改善ログ |
| せん妄対策 | 認知症ケアの評価と対応に組み込む | リスク因子確認と対策チェックを実施 | 同左 | チェックリスト/対応記録/効果確認 |
| 身体的拘束 | 実施日は所定点数の 100 分の 40。必要性と解除検討を追える記録が必要 | 拘束開始・継続・解除検討・代替策の記録 | ||
| 院内研修 | 定期的に実施し、病棟へ展開 | 年 1 回以上の研修・事例検討 | 同左 | 開催記録/参加者名簿/資料/議事録 |
届出様式|加算 1 と加算 2 / 3 で使う様式を分ける
届出では、加算 1 と加算 2 / 3 で確認する様式が異なります。先に様式を固定してから、体制・研修・記録の不足を洗い出すと準備しやすくなります。
- 加算 1:様式 40 の 10
- 加算 2 / 3:様式 40 の 11
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
加算 1 が難しい場合、加算 2 / 3 は妥協ですか?
妥協ではありません。加算 1 はチーム型、加算 2 / 3 は病棟標準化型です。専任チームを無理に組むより、病棟で研修・記録・せん妄対策を継続できる区分を選ぶ方が実務的です。
身体的拘束を実施した日の算定はどうなりますか?
身体的拘束を実施した日は、所定点数の 100 分の 40 に相当する点数で算定します。実施の有無だけでなく、必要性、代替策、解除検討を日ごとに追える記録が重要です。
せん妄ハイリスク患者ケア加算と併算定できますか?
認知症ケア加算を算定した場合、せん妄ハイリスク患者ケア加算は別に算定できません。実務では、せん妄リスク確認と対策を認知症ケアの記録に統合しておくと分断を防ぎやすくなります。
PT は認知症ケア加算でどこに関与できますか?
PT は離床、移動、転倒予防、活動性、環境調整などの非薬物的な関わりを具体化しやすい職種です。カンファレンスでは、提案だけで終わらせず、担当者・期限・再評価まで記録に残すと貢献が見えやすくなります。
次の一手|比較で区分を決めたら、様式と総論で運用を固める
参考文献
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


