直接嚥下訓練と間接嚥下訓練の違いは「食物を用いるか」
直接嚥下訓練と間接嚥下訓練の基本的な違いは、訓練中に食物を用いるかどうかです。直接嚥下訓練は食物を用いて実際の摂食嚥下場面を練習し、間接嚥下訓練は食物を用いず、嚥下に関わる機能へ働きかけます。
ただし、「間接訓練を終えてから直接訓練へ進む」という一方向の関係ではありません。直接訓練を安全に実施できるかを評価したうえで、必要な機能課題があれば間接訓練を併用します。この記事では、PT・OT・ST・看護師などが、直接と間接の違いを理解し、どちらを選ぶか、いつ併用するかを判断できるよう整理します。
結論:食物を用いる訓練が直接嚥下訓練、食物を用いず嚥下関連機能へ働きかける訓練が間接嚥下訓練です。どちらか一方を選び続けるのではなく、評価結果と対象者の状態に応じて組み合わせます。
| 比較項目 | 直接嚥下訓練 | 間接嚥下訓練 |
|---|---|---|
| 食物 | 用いる | 用いない |
| 主な役割 | 実際の摂食嚥下を行いながら、安全性・効率・食べ方を確認する | 嚥下に関係する口腔・咽頭・呼吸・筋力・感覚などの機能へ働きかける |
| 組み立て方 | 食形態、一口量、姿勢、ペースなどを対象者に合わせて調整する | 評価で明らかになった機能課題に合わせて訓練法を選ぶ |
| 主な注意点 | 誤嚥・窒息などを含むリスクを踏まえ、開始条件と訓練中の反応を確認する | 「とりあえず体操」にせず、改善したい機能と訓練内容を対応させる |
| 関係 | 二者択一ではなく、状態に応じて併用・往復する | |
ここで重要なのは、手技名だけで直接・間接を判断しないことです。たとえば姿勢調整や嚥下手技は、実際の食物摂取場面で用いることもあります。まず「食物を用いているか」を確認し、そのうえで何を目的に行っているかを整理すると混同しにくくなります。
直接と間接はどちらを選ぶ?まず直接訓練を実施できる状態か判断する
選択の第一段階は、間接訓練が必要かどうかではなく、食物を用いた直接訓練を安全に実施できる状態かを判断することです。直接訓練は食物を用いるため、摂食嚥下機能だけでなく、覚醒、姿勢、口腔内、呼吸状態、気道防御、疲労などを含めて判断します。
いずれか1項目だけで直接訓練の可否を決めるものではありません。必要に応じて嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)などの評価結果も含め、対象者ごとに開始条件を検討します。直接訓練の開始条件や具体的な進め方は、直接嚥下訓練の開始基準と進め方で詳しく整理しています。

図版の見方:STEP 2に示した口腔内、姿勢、呼吸、覚醒、疲労などは、直接訓練を検討するときの確認視点です。「すべて満たせば直接訓練を開始できる」という一律の公式開始基準を示したものではありません。疾患、全身状態、嚥下評価結果、施設の運用を含めて個別に判断します。
直接訓練を安全に実施する条件が整っていない場合は、無理に食物を用いるのではなく、評価・環境調整と並行して間接訓練を検討します。一方、直接訓練が可能になったからといって、間接訓練が自動的に不要になるわけではありません。
使い分けは「直接が可能か」→「間接を併用するか」の2段階で考える
直接と間接の使い分けは、2段階にすると整理しやすくなります。まず食物を用いた訓練を実施できる状態かを判断し、次に、直接訓練だけでは十分に扱えない機能課題が残っているかを確認します。
| 段階 | 確認すること | 考え方 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 食物を用いた直接訓練を安全に実施できる状態か | 難しい場合は、評価・環境調整・間接訓練を組み合わせて直接訓練の条件を整える |
| STEP 2 | 直接訓練だけでは不足する機能課題があるか | 課題があれば、その所見に対応する間接訓練を併用する |
間接訓練では、口腔器官運動、咽頭期に関連する訓練、呼吸・咳嗽に関する訓練、筋力訓練など、目的によって選択肢が変わります。訓練名から選ぶのではなく、評価した機能課題から逆算することが重要です。具体的なメニューと選び方は、間接嚥下訓練の種類と選び方で整理しています。
直接と間接は「間接→直接」の一方向ではなく併用できる
間接嚥下訓練は、直接訓練を始める前だけに行うものではありません。日本摂食嚥下リハビリテーション学会のeラーニングでも、間接訓練は発症直後から用いられ、経口摂取が可能となった後にも行われることがあるとされています。
つまり、直接訓練を開始した後も、そこで明らかになった機能課題に対して間接訓練を組み合わせることがあります。直接訓練で反応を確認し、その結果から間接訓練の目的を修正するという往復も考えられます。
| 状態 | 組み立て方 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 直接訓練の安全性をまだ確認できない | 評価・環境調整+間接訓練 | 直接訓練を急がず、食物を用いるための条件を整える |
| 直接訓練を開始できる | 直接訓練を中心に実施 | 食形態、一口量、姿勢、ペースなどを調整しながら反応を見る |
| 直接訓練で機能課題が明確になる | 直接+間接を併用 | 確認された課題に対応する間接訓練を選ぶ |
| 体調や疲労で直接訓練が難しい | その日の状態に合わせて再評価 | 前回できたことだけを根拠に継続せず、その時点の安全性を確認する |
「直接訓練へ進んだら間接訓練は卒業」「間接訓練を十分行えば必ず直接訓練へ進める」と固定しないことがポイントです。対象者の嚥下機能、全身状態、目標の変化に合わせて比重を調整します。
迷いやすい3つの場面で使い分ける
実際の臨床では、直接か間接かを単独の所見だけで決めないことが重要です。以下は、使い分けの考え方を整理するための例です。個別の開始基準や訓練処方を示すものではありません。
| 場面 | 考え方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 食物を用いた評価・訓練の安全性をまだ確認できない | 直接訓練を急がず、必要な評価と間接訓練を行う | 覚醒、姿勢、口腔内、呼吸、気道防御、嚥下機能など |
| 少量の直接訓練は可能だが、特定の機能課題が残る | 直接訓練を行いながら、課題に対応する間接訓練を併用する | 何が安全性・効率を制限しているか |
| 経口摂取が進んでいる | 経口摂取開始だけを理由に間接訓練を終了しない | 改善させたい機能が残っているか、訓練効果を再評価できているか |
たとえば、直接訓練で食べられる量が増えていても、咳嗽力や口腔機能などに明確な課題が残っている場合があります。その場合は、経口摂取の進行と機能訓練を別々に考えず、目標に応じて組み合わせます。
直接訓練を始めた後も、継続できるかは毎回確認する
直接訓練を開始できたことと、そのまま継続できることは同じではありません。食物を用いる以上、訓練中に状態が変化すれば、その時点で継続・中断・中止を再判断します。
むせ、湿性嗄声、呼吸状態、覚醒、疲労などに変化がみられた場合の具体的な中止・中断判断は、本記事では詳しく扱いません。安全管理を確認したい場合は、嚥下訓練の中止基準を参照してください。
使い分けの要点:「直接か間接か」を訓練名だけで決めるのではなく、食物を用いるか → 直接訓練を実施できる状態か → 直接だけでは不足する機能課題があるかの順で整理すると、選択理由を共有しやすくなります。
よくある質問
Q1. 直接嚥下訓練と間接嚥下訓練は、どちらを先に行いますか?
一律に「間接を先、直接を後」と決めるものではありません。まず評価結果から、食物を用いた直接訓練を実施できる状態かを判断します。直接訓練の安全性を確認できない場合は間接訓練や環境調整を行い、直接訓練が可能な場合は、その中で明らかになった機能課題に応じて間接訓練を併用します。
Q2. 経口摂取が始まったら間接嚥下訓練は不要ですか?
経口摂取が始まったことだけを理由に間接訓練が不要になるわけではありません。経口摂取後も改善したい嚥下関連機能が残っている場合は、評価結果と目標に合わせて間接訓練を併用することがあります。
Q3. 直接嚥下訓練と間接嚥下訓練を同じ日に行ってもよいですか?
対象者の状態と訓練目的に応じて併用することがあります。間接訓練で特定の機能へ働きかけ、直接訓練で実際の摂食嚥下時の反応を確認するなど、それぞれの役割を明確にして組み合わせます。直接訓練は、その時点で安全に実施できるかを確認したうえで行います。
次の一手
A:栄養・嚥下領域の全体像を確認する
栄養・嚥下ハブでは、評価、訓練、食形態、栄養管理などを目的別に整理しています。
B:実施した嚥下訓練を記録へ落とす
嚥下訓練の記録例では、介入理由、実施条件、患者反応、次回方針をどう残すかを整理しています。
参考文献
- 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 摂食嚥下のリハビリテーション総論. eラーニング. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 準備・口腔期に対する間接訓練. eラーニング. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(編). 嚥下障害診療ガイドライン2024年版(第4版). 東京: 金原出版; 2024. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- American Speech-Language-Hearing Association. Adult Dysphagia. Practice Portal. ASHA
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

