結節間溝の触診方法|大結節・小結節の確認から記録まで

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結節間溝の触診方法|位置と探し方の結論

結節間溝は、上腕骨近位部の大結節と小結節の間にある骨性の溝で、上腕二頭筋長頭腱が走行します。触診では、肩峰前縁を目印に上腕骨近位部へ進み、両結節の位置関係から溝を探します。指腹を軽く当てたまま肩関節を内外旋し、骨性ランドマークの動きを確認することがポイントです。

この記事では、新人PT・OT向けに、触診時の肢位、指の置き方、軽い内外旋による位置確認、触れないときの修正方法、圧痛の解釈、記録例を解説します。重要なのは、結節間溝の位置を推定することと、長頭腱の病態を判断することを区別することです。触診だけで診断を確定せず、次の評価へつなげます。

結節間溝の触診手順|5ステップで確認する

結節間溝の触診は、「肢位を整える→肩峰前縁を確認する→大結節・小結節の間を探す→軽い内外旋で確認する→左右差と圧痛を記録する」の順で進めます。最初から痛い場所を強く押さず、骨性ランドマークから位置を絞ることが基本です。

1.肩の力を抜き、上腕を体側に置く

患者は座位または背臥位とし、上腕を体側に置いて肩の力を抜きます。肘を約90°屈曲し、前腕と上肢を必要に応じて支持すると、肩周囲の筋緊張を抑えながら確認しやすくなります。

肩関節は中間位から軽度内旋位など、疼痛なく保持できる位置を起点とします。結節間溝は上腕骨とともに向きが変わるため、肢位によって触れやすさも変化します。特定の肢位だけを正解とせず、可動域と疼痛に応じて調整してください。

2.肩峰前縁から上腕骨近位部へ指を移す

まず肩峰前縁を触れ、その下方にある上腕骨近位部へ指を移します。肩峰は肩甲骨の一部であり、大結節と小結節は上腕骨にあるため、触れている骨が異なることを意識します。

示指または中指の指腹を用い、上腕骨近位部の前外側に軽く触れます。肩峰の直下で軟部組織を押し続けるのではなく、上腕骨の骨性の硬さを確認しながら位置を調整します。

3.大結節と小結節の間にある溝を探す

大結節は上腕骨近位部の外側寄り、小結節は前内側寄りに位置します。結節間溝は、これら2つの結節の間にあります。

上腕骨近位前面に指腹を軽く当て、骨性の隆起とその間のくぼみを探します。外側の大結節を手がかりに、前内側に位置する小結節との間を確認するイメージです。

ただし、小結節や溝の輪郭が明瞭に触れない場合もあります。両結節を確実に触れられることを前提にせず、骨の位置関係から候補部位を絞ります。

4.軽い内外旋で指の下の動きを確認する

結節間溝と考えた位置に指腹を軽く当てたまま、肩関節を小さく内旋・外旋させます。必要に応じて検者が前腕を支持し、痛みのない範囲でゆっくり他動的に動かします。

このとき確認するのは、上腕骨の回旋に伴って、骨性の隆起や溝の候補位置が指の下を移動するかどうかです。回旋位によって触れやすさが変わる場合もありますが、個人差や開始肢位を考慮します。

前腕の回内・回外だけで確認しないことも重要です。前腕を回す動きと、肩関節で上腕骨を内外旋する動きは異なります。確認したいのは上腕骨近位部の回旋です。

また、骨性の隆起が動いたことは、上腕骨側のランドマークを触れている手がかりになりますが、結節間溝内の長頭腱を正確に同定できた証明にはなりません。

5.健側との違いと圧痛を確認する

結節間溝の候補位置を確認したら、健側と患側を比較します。触診位置、骨性の硬さ、圧痛の有無、普段の肩前面痛との一致を確認してください。

圧痛を比較する場合は、可能な範囲で指の位置と押す強さをそろえます。健側にも圧痛が出る場合があるため、患側だけに生じる特徴なのか、普段の症状が再現されているのかを区別します。

位置が不明瞭な場合は、無理に押し続けず、「結節間溝相当部」「正確な位置同定は困難」と記録します。

結節間溝の触診ポイント。肩峰前縁・大結節・小結節・結節間溝の位置関係、指の置き方、肩関節内外旋による確認手順を示した図版
図1 結節間溝の位置と触診手順。肩峰前縁、大結節、小結節の位置関係から結節間溝の候補を探し、軽い肩関節内外旋で骨性ランドマークの動きを確認します。図は位置関係を理解するための模式図です。触診による位置同定には限界があり、圧痛だけで長頭腱障害を確定することはできません。

結節間溝はどこ?大結節・小結節との位置関係

結節間溝を見つけるには、肩前面で触れる骨性ランドマークを区別することが重要です。特に、上腕骨側の大結節・小結節と、肩甲骨側の肩峰・烏口突起を混同しないようにします。

結節間溝と周囲ランドマークの位置関係
部位 位置の特徴 触診時の確認ポイント
肩峰前縁 肩甲骨の前上方にある骨性ランドマーク 上腕骨近位部を探す出発点として使用する
大結節 上腕骨近位部の外側寄りにある隆起 上腕骨の回旋に伴って位置が変わる
小結節 上腕骨近位部の前内側寄りにある隆起 大結節との位置関係を確認する
結節間溝 大結節と小結節の間にある骨性の溝 軽い内外旋で骨性の溝の候補位置を確認する
烏口突起 肩甲骨の前上方から突出する骨性ランドマーク 上腕骨の回旋と一体には動かないことを手がかりに区別する

烏口突起と結節間溝は、どちらも肩前面から触れるため混同しやすい部位です。上腕骨の内外旋に伴って触れている骨性隆起が移動するかを確認すると、両者を区別する補助になります。ただし、肩甲骨も同時に動く場合があるため、上腕骨の回旋をなるべく独立して確認します。

また、結節間溝は骨性の構造であり、上腕二頭筋長頭腱はその内部を走行する軟部組織です。図版では位置関係を分かりやすく表現していますが、実際の触診で骨の溝と腱そのものを明確に区別できるとは限りません。

結節間溝の触診精度と限界

結節間溝の位置を推定できることと、上腕二頭筋長頭腱を正確に触知できることは同じではありません。触診には位置のずれが生じる可能性があるため、「触れた感覚」だけで長頭腱の位置や病態を断定しないことが重要です。

McDevittらの2020年の研究では、理学療法士が無症状者32人の両肩を2つの肢位で触診し、超音波で位置を検証しました。長頭腱の触診正確率は全体で45.7%(117/256回)であり、比較した2肢位間に統計学的に有意な差は認められませんでした。

この研究は、無症状の若年成人を対象とした特定条件下の結果です。肩関節に疼痛や変形がある患者、高齢者、術後患者などに同じ数値をそのまま適用できるわけではありません。

したがって、臨床では骨性ランドマークを丁寧に確認しながらも、位置が曖昧な場合は不確実性を残して記録します。正確な位置確認が必要な場面では、施設の体制や職種の役割に従い、超音波などによる確認を検討します。

結節間溝が触れないときの修正方法

結節間溝が触れないときは、押す力を強くするのではなく、肢位・筋緊張・指の位置・内外旋の方法を見直します。強い圧迫は疼痛や防御性収縮を生じさせ、かえって位置を確認しにくくする可能性があります。

結節間溝が触れないときの原因と修正ポイント
困っていること 修正方法
肩前面の骨が分からない 肩峰前縁へ戻り、上腕骨近位部の硬さを確認し直す
三角筋前部を触ってしまう 上肢を支持して筋緊張を減らし、表層から骨性の硬さへ触診位置を調整する
大結節と小結節を区別できない 軽い内外旋による上腕骨の動きを確認し、位置関係から溝を推定する
内外旋しても位置が分からない 前腕の回内外だけになっていないか確認し、肩関節で上腕骨を小さく回旋させる
圧痛が強く触診を続けられない 深い圧迫を中止し、問診・視診・可能な範囲の運動評価へ切り替える
何度試しても位置が曖昧 正確な位置同定は困難と記録し、必要に応じて指導者や医師へ相談する

触診できないこと自体を異常所見として扱う必要はありません。筋量、皮下組織、疼痛、浮腫、可動域制限などの影響を考慮し、触診の確実性を区別して記録します。

結節間溝に圧痛があるときの解釈

結節間溝相当部の圧痛は、上腕二頭筋長頭腱や周囲組織の関与を考える手がかりです。しかし、圧痛だけで長頭腱炎や腱症を確定することはできません。疼痛の局在と、普段の症状・負荷時痛との一致を確認します。

限局した圧痛がある場合

結節間溝相当部に限局した圧痛があり、患者が普段訴える肩前面痛と一致する場合は、長頭腱周囲の関与を考慮します。

追加評価では、発症様式、上肢の反復使用、肩関節の自動・他動ROM、肘屈曲や前腕回外の抵抗運動などによる症状の変化を確認します。ただし、これらの負荷時痛も単独では長頭腱病変に特異的ではありません。

圧痛が広範囲にある場合

肩前面の広い範囲に圧痛がある場合や、烏口突起周囲・肩峰前外側にも疼痛を認める場合は、結節間溝だけに原因を限定しません。回旋筋腱板、肩峰下組織、関節唇、その他の肩前面組織など、複数の疼痛源を考慮します。

また、結節間溝相当部に圧痛がない場合でも、長頭腱病変を完全に否定できるわけではありません。触診の位置精度と臨床検査の診断精度には限界があるためです。

長頭腱病変の診断精度に関するシステマティックレビューでは、個々の臨床検査の有用性には限界があり、超音波検査の方が病変の確認・除外に役立つことが報告されています。ただし、画像所見のみで疼痛の原因を確定するものではなく、病歴や身体所見と合わせた解釈が必要です。

触診を中止・医師へ相談する場面

外傷直後で骨折や脱臼が疑われる場合、明らかな変形、急激な筋力低下、著しい安静時痛などがある場合は、深い触診を優先せず、医師による評価を優先します。

また、触診中に強い疼痛が出現・増悪した場合や、患者が継続を希望しない場合は、その場で中止します。触診を最後まで行うことよりも、安全に評価できる範囲を判断することが重要です。

結節間溝の触診でよくある失敗

結節間溝の触診では、痛い場所をそのまま溝と判断することや、触れている軟部組織を長頭腱と決めつけることに注意します。特に以下の3点は、位置同定と症状の解釈を分けるうえで重要です。

1.痛い場所から触診を始めてしまう

肩前面に圧痛があると、その場所を繰り返し押して位置を確認したくなります。しかし、圧痛点と結節間溝が一致しているとは限りません。まず肩峰前縁と上腕骨近位部から位置を確認し、その後に圧痛の局在を整理します。

2.上腕骨の回旋を確認していない

骨性の隆起を触れた段階で大結節や小結節と判断すると、烏口突起や周囲の軟部組織と混同する可能性があります。痛みのない範囲で軽い内外旋を行い、上腕骨側のランドマークを触れているか確認します。

3.結節間溝の位置と長頭腱障害を同一視する

結節間溝の位置を推定できても、長頭腱の正確な触知や病態の特定ができたとは限りません。記録では「骨性の溝を推定した所見」と「疼痛や運動負荷による所見」を分けます。

結節間溝触診の記録例

記録では、触診時の肢位、確認したランドマーク、位置同定の確実性、圧痛、左右差、次の評価を残します。「結節間溝に圧痛あり」だけで終わらせず、判断の根拠を短く残すと再評価につながります。

位置を推定できた場合

架空症例:右肩前面痛

座位、上腕体側位で右上腕骨近位前面を触診。肩峰前縁から大結節・小結節の位置関係を確認し、軽度内外旋で結節間溝相当部を推定。同部位の圧迫時痛NRS 5/10、左側0/10。普段の右肩前面痛とおおむね一致。抵抗下肘屈曲でも前方痛を認めるため、肩関節ROMおよび他の疼痛誘発所見を追加評価する。

位置同定が不明瞭な場合

架空症例:肩前面に広範囲の圧痛がある場合

右肩前面に広範囲の圧痛あり。肩峰前縁から上腕骨近位部を確認したが、結節間溝の正確な位置同定は困難。疼痛増悪を避けるため深部触診は実施せず。烏口突起周囲にも圧痛を認め、他の肩前面組織を含めて評価継続とする。

上記は記載形式を示すための架空例です。実際のカルテには、確認していない所見や実施していない検査、測定していない数値を記載しないでください。

次の一手|結節間溝を確認したあとに何を見るか

結節間溝を触診したあとは、「骨性ランドマークの位置をどの程度確認できたか」「圧痛が普段の症状と一致するか」「運動や負荷で痛みが変化するか」を整理します。位置同定が不明瞭な場合は、強い圧迫を繰り返さず、他の評価手段を検討してください。

上腕二頭筋長頭腱の走行や疼痛評価を詳しく確認したい場合は、上腕二頭筋長頭腱の触診方法へ進んでください。肩甲骨側と上腕骨側のランドマークを混同しやすい場合は、烏口突起の触診ポイントで位置関係を確認できます。

結節間溝の触診は、正確な位置を探すこと自体が最終目的ではありません。位置の確実性と症状の再現性を区別し、次に必要な評価や相談を判断するために活用します。


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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。記事では、医学的根拠と実務上の解釈を区別し、評価から次の判断へつなげられる情報提供を心がけています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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