障害福祉分野の処遇改善は「対象拡大」と「上乗せ対象の違い」を分けると理解しやすいです
2026 年 6 月の障害福祉サービス等報酬の期中改定では、処遇改善まわりが大きく動きます。PT・OT・ST にとって大事なのは、「障害福祉分野で働いていれば自動で一律に上がるのか?」ではなく、自分の職場が加算を算定するか、どの職種まで配分対象に含めるか、上乗せ分まで関係するのかを切り分けて確認することです。
結論からいうと、今回の改定では処遇改善加算の対象が福祉・介護職員のみから障害福祉従事者へ拡大されました。そのため、障害福祉分野で働く PT・OT・ST も対象になり得ます。ただし、月 0.3 万円相当の上乗せ措置は福祉・介護職員向けなので、「対象拡大」と「追加上乗せ」は同じ話ではありません。
制度対応を「読むだけ」で終わらせたくない方へ
処遇改善は、点数表の確認だけではなく「自分の職場でどう配分されるか」まで見て初めて意味が出ます。働き方や環境まで含めて整理したい方は、PT 向けガイドも先に見ておくと判断しやすいです。
2026 年 6 月に何が変わるのか
今回の障害福祉分野の処遇改善で押さえたいのは 3 点です。1 つ目は、処遇改善加算の対象が「福祉・介護職員のみ」から「障害福祉従事者」へ広がることです。2 つ目は、幅広く月 1.0 万円( 3.3 %)相当の賃上げを実現する措置が示されていることです。3 つ目は、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員には、さらに月 0.3 万円( 1.0 %)相当の上乗せ措置があることです。
つまり、今回の改定は「全員一律に同じ上がり方」ではありません。まずは広く対象を広げ、その上で一部には追加上乗せを設ける構造です。介護報酬側の全体像と比較しながら整理したい方は、2026 年 6 月の介護報酬臨時改定|訪問リハ × 処遇改善もあわせて読むと違いが見えやすくなります。
表は横にスクロールして確認してください。
| 変更点 | 内容 | PT・OT・ST への意味 |
|---|---|---|
| 対象拡大 | 福祉・介護職員のみから障害福祉従事者へ拡大 | 障害福祉分野で働く療法士も対象になり得る |
| 引上げ分 | 月 1.0 万円( 3.3 %)相当の賃上げ措置 | 給与改善の原資が広く届く可能性がある |
| 上乗せ分 | 生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に月 0.3 万円( 1.0 %)相当 | 療法士が自動で上乗せ対象とは限らない |
| 新規対象サービス | 計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援にも処遇改善加算を新設 | 相談支援系で働く専門職にも影響が広がる |
PT・OT・ST は対象になるのか
ここがいちばん知りたいところだと思います。一次情報では、今回から対象を障害福祉従事者に拡大すると明記されています。一方で、PT・OT・ST という職種名が個別に一覧化されているわけではありません。そのため実務では、障害福祉サービス事業所や障害児支援の現場で働く療法士が、事業所の算定と賃金配分の設計の中で対象に含まれるかを確認する、という見方が安全です。
言い換えると、「障害福祉分野で働く PT・OT・ST なら必ず同じ額が上がる」とは言い切れません。処遇改善は、事業所がどの加算区分を算定するか、どの職種まで配分対象にするか、既存の給与テーブルをどう見直すかで、体感が変わるからです。だからこそ、求人票や人づての話より、勤務先の算定有無と配分方針を先に確認する方が確実です。
「月 1.0 万円」と「月 0.3 万円」は同じ話ではありません
今回の処遇改善で誤解されやすいのが、月 1.0 万円相当の賃上げ措置と、月 0.3 万円相当の上乗せ措置を同じように読んでしまうことです。前者は、福祉・介護職員のみならず障害福祉従事者を対象にした「引上げ分」です。後者は、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員を対象にした「追加上乗せ」です。
そのため、障害福祉分野の PT・OT・ST が知っておきたいのは、「対象拡大で原資の対象には入り得る」一方で、「追加の 0.3 万円分まで当然に入るとは限らない」ということです。ここを分けずに話すと、給与明細を見たときに「思ったほど増えていない」と感じやすくなります。
| 項目 | 月 1.0 万円相当 | 月 0.3 万円相当 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 今回の引上げ分 | 追加の上乗せ分 |
| 主な対象 | 障害福祉従事者まで拡大 | 生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員 |
| PT・OT・ST の見方 | 対象に入り得るかを勤務先で確認 | 自動で対象になるとは考えない |
| 確認したいこと | 算定区分、配分方針、対象職種 | 上乗せ要件と対象職種の扱い |
どの職場で確認が必要か
今回のテーマは、病院勤務の療法士よりも、障害福祉サービス事業所や障害児支援、相談支援に近い職場で働く方に直結しやすいです。特に、児童発達支援や放課後等デイサービス、生活介護、自立訓練、相談支援など、障害福祉分野の事業所で療法士が配置されている職場では、「自分は福祉・介護職員ではないから関係ない」と早合点しない方が安全です。
一方で、同じ PT・OT・ST でも、病院所属か、障害福祉サービス事業所所属か、法人内でどの給与体系に入っているかで扱いは変わり得ます。だから、職種名だけで判断するより、どの制度の報酬で運営されている職場かを先に確認する方が、誤解が少なくなります。
給与明細を見る前に確認したい 4 点
処遇改善は、ニュースを読んだだけでは自分ごとになりにくいテーマです。実務では、勤務先が加算を算定するか、対象職種をどう扱うか、どの賃金項目で反映するか、反映時期はいつかの 4 点を見た方が早いです。ここが曖昧だと、「制度は変わったのに自分の給与がどう動くか分からない」という状態が長引きます。
特に、基本給に入るのか、毎月の手当で調整するのか、一時金的な扱いになるのかは、現場の実感を大きく変えます。まずは人事・管理者・事業所責任者に、下の表の順で確認すると整理しやすいです。
| 確認項目 | 見る場所 | 確認メモ |
|---|---|---|
| 加算を算定するか | 管理者、人事、法人通知 | ex) 2026 年 6 月から算定予定か |
| 自分の職種が配分対象か | 賃金改善計画、説明資料 | ex) PT・OT・ST を対象職種に含むか |
| 反映方法 | 給与規程、給与明細 | ex) 基本給か手当か |
| 反映時期 | 法人説明、就業規則、Q&A | ex) 6 月支給か、後ろ倒しか |
現場の詰まりどころ:よくある失敗は「対象拡大=全員同額」と読んでしまうことです
今回の改定でいちばん起きやすい誤解は、対象拡大と賃金配分を同じものとして読むことです。制度上の対象が広がっても、職場ごとの配分設計が違えば、実際の上がり方は変わります。「対象になり得る」と「必ず同額が上がる」は別です。
もうひとつの詰まりどころは、上乗せ分まで含めて自分も同じだけ増えると思い込むことです。今回の 0.3 万円相当の追加措置は、一次情報上、福祉・介護職員向けの上乗せです。だから、障害福祉分野で働く療法士は、ニュース見出しだけで期待値を上げすぎず、まずは勤務先の説明を確認する方がズレにくいです。
| 誤解 | 実際の見方 | 先に確認したいこと |
|---|---|---|
| 障害福祉分野の PT・OT・ST は全員自動で同じ額が上がる | 対象拡大と配分方法は別 | 勤務先の算定有無と配分方針 |
| 月 1.0 万円と月 0.3 万円はどちらも自分に入る | 0.3 万円分は福祉・介護職員向け上乗せ | 上乗せ対象職種の説明 |
| 6 月施行なら 6 月支給分で必ず反映される | 給与反映は職場ごとにずれることがある | 反映月と賃金項目 |
| 職種名だけで判断できる | 所属制度と事業所の運用確認が必要 | どの報酬体系の職場か |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
障害福祉分野で働く PT・OT・ST は今回の処遇改善の対象ですか?
一次情報では、今回から処遇改善加算の対象を福祉・介護職員のみから障害福祉従事者へ拡大すると示されています。そのため、障害福祉分野で働く療法士は対象になり得ます。ただし、実際の賃金改善は、勤務先が加算を算定するか、どの職種まで配分対象にするかで変わります。
月 1.0 万円相当の賃上げは必ず自分にそのまま入りますか?
そうとは限りません。一次情報は「幅広く月 1.0 万円( 3.3 %)相当の賃上げを実現する措置」としていますが、個人ごとの反映額や反映方法は勤務先の配分設計に左右されます。まずは算定有無と配分方針の確認が必要です。
月 0.3 万円相当の上乗せも PT・OT・ST に関係しますか?
ここは注意が必要です。一次情報では、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に対する上乗せ措置と整理されています。療法士が自動的にこの上乗せまで対象になるとは読まない方が安全です。
相談支援で働く専門職にも影響はありますか?
あります。今回の改定では、これまで処遇改善加算の対象外だった計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援にも新たに処遇改善加算を設けると示されています。相談支援系で働く専門職も、勤務先の算定状況を確認する価値があります。
次の一手
最初にやることは 3 つで十分です。① 自分の勤務先が障害福祉分野のどの報酬体系で動いているか確認する、② 処遇改善加算を算定するか確認する、③ PT・OT・ST が配分対象に入るか確認する、この順番なら迷いにくくなります。
続けて読むなら、訪問リハ × 処遇改善の全体像、リハ職の給料・配置・働き方、介護の給料は 2026 年 6 月に上がる? がつながりやすいです。
参考資料
- 厚生労働省.令和 8 年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について.
- 厚生労働省.令和 8 年度の障害福祉人材の処遇改善等の対応.
- 厚生労働省.第 53 回 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(持ち回り)資料.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

