障害福祉の処遇改善2026でPT・OT・STは対象になる?
2026年6月の障害福祉サービス等報酬改定では、処遇改善加算の対象が福祉・介護職員以外にも拡大されました。理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)も、賃金改善の配分対象に含まれます。2026年4月9日の公式Q&Aには、3職種が明記されています。
ただし、対象職種に含まれることと、全員の給与が一律に上がることは別です。実際の支給額は、勤務先の加算算定状況や配分方針によって異なります。この記事では、月1万円相当と3千円相当の違い、対象となる職場、支給時期、勤務先への確認方法を、厚生労働省・こども家庭庁の通知に沿って整理します。
まず押さえたい結論
- PT・OT・STは配分対象に含まれる:2026年4月9日の公式Q&Aで明記されています。
- 月1万円相当は全員への一律支給ではない:制度上の賃上げ措置と個人の支給額を区別します。
- 月3千円相当は別の上乗せ措置:事業所の算定区分と配分方針を確認します。
- 6月分が6月給与に入るとは限らない:公式Q&Aでは6月・7月・8月の支給例が示されています。
公式Q&AでPT・OT・STが明記されています
2026年4月9日付「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」の問2-1-2では、処遇改善加算の配分対象に、福祉・介護職員以外の全職種が含まれることが示されています。
例示された職種には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のほか、医師、看護職員、機能訓練担当職員、相談支援専門員なども含まれます。
したがって、「PT・OT・STという職種だから処遇改善の対象外になる」という理解は正しくありません。一方、実際に個人へいくら配分するかは、事業所の賃金改善計画や配分方法を確認する必要があります。
月1万円相当と3千円相当の違い|全員に1万3千円が支給されるわけではありません
2026年改定で示された月1万円相当と月3千円相当は、対象と位置づけが異なります。どちらも制度上の賃上げ措置を説明する金額であり、個人への一律支給額ではありません。
| 比較項目 | 月1万円相当 | 月3千円相当 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 幅広い障害福祉従事者に対する賃上げ措置 | 生産性向上や協働化に取り組む事業者への上乗せ措置 |
| 政策上の主な対象 | 福祉・介護職員を含む障害福祉従事者 | 該当事業者の福祉・介護職員を中心とする上乗せ |
| PT・OT・STの見方 | 配分対象職種に含まれる | 該当する上乗せ区分の算定と、実際の配分方針を確認する |
| 個人への支給額 | 一律1万円とは限らない | 一律3千円とは限らない |
| 確認すること | 勤務先の算定区分・賃金改善対象・支給方法 | 上乗せ区分の算定有無・要件・配分方法 |
※厚生労働省・こども家庭庁の2026年改定資料、3月31日通知、4月9日Q&Aをもとに整理しています。表中の「月1万円相当」「月3千円相当」は個人別の保証額ではありません。

療法士への配分は可能ですが、職場の完全な自由ではありません
公式Q&Aの問2-1-1では、福祉・介護職員、とくに経験・技能のある福祉・介護職員の処遇改善を重視しながら、事業所内での柔軟な配分を認めています。
一方、問2-6では、一部の職員や事業所に賃金改善を集中させるなど、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこととされています。
つまり、療法士への配分は制度上認められていますが、職種ごとに必ず同額を支給する決まりではありません。職場がどのような考え方で配分しているかを確認することが重要です。
どの勤務先が対象?障害福祉・障害児支援・相談支援を確認します
PT・OT・STが対象になるかを確認するには、職種名だけでなく、勤務先が運営するサービスと処遇改善加算の算定状況を確認します。
障害福祉サービスや障害児支援で働く療法士は、今回の制度を確認する必要があります。従来の対象サービスに加え、2026年6月から相談支援の一部サービスにも処遇改善加算が新設されました。
| 勤務先・サービス | 確認ポイント |
|---|---|
| 生活介護・自立訓練 | 勤務先が算定する処遇改善加算の区分と療法士への配分 |
| 就労支援系サービス | 対象サービスの種類、算定状況、勤務職種と配分方針 |
| 児童発達支援・放課後等デイサービス | 障害児支援の処遇改善加算と、PT・OT・STへの配分 |
| 計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援 | 2026年6月から新設された処遇改善加算の算定有無 |
| 病院・診療所の医療保険による診療 | 障害福祉サービス等報酬とは制度が異なるため、別の処遇改善制度を確認 |
| 介護保険サービス | 介護報酬側の処遇改善制度を確認 |
相談支援については、今回新たに計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援が加算対象に加わりました。ただし、対象サービスだからといって、すべての事業所が自動的に加算を取得するわけではありません。
病院や介護事業所との兼務では所属先を確認します
同一法人が病院、介護保険サービス、障害福祉サービスを運営している場合もあります。この場合、法人名が同じであることだけでは、どの制度の処遇改善が適用されるか判断できません。
公式Q&Aの問2-7では、障害福祉サービスと介護サービスを兼務する場合の賃金計算について、原則として常勤換算による按分が想定されています。
兼務している療法士は、所属事業所、勤務割合、給与計算上の扱いを人事担当者へ確認するとよいでしょう。
給与はいつ上がる?6月分が6月給与に入るとは限りません
2026年6月の報酬改定による賃金改善は、必ずしも6月支給の給与に反映されるとは限りません。
2026年4月9日の公式Q&A・問1-8-1では、6月算定分について、6月・7月・8月に支給する3つのパターンが例示されています。
| 支給時期 | 支給方法の例 | 療法士が確認すること |
|---|---|---|
| 6月 | 6月の労働時間をもとに、見込額で6月中に支給 | 6月給与への反映有無 |
| 7月 | 6月の労働時間をもとに、7月中に支給 | 6月分を7月に支給する方式か |
| 8月 | 6月サービス提供分の報酬入金後、8月中に支給 | 報酬入金後の支給方式か |
※上記は公式Q&Aに示された6月算定分の例です。すべての事業所が同じ支給月になるという意味ではありません。
基本給・手当・賞与のどこに反映されるか
処遇改善加算による賃金改善は、基本給、手当、賞与等に反映される場合があります。ただし、算定区分に応じた月額賃金改善要件などがあるため、すべてを一時金で配分してよいわけではありません。
公式Q&A・問1-3では、決まって毎月支払われる手当について説明されています。手当の名称は「処遇改善手当」に限らず、職能手当や資格手当などであっても、所定の条件を満たせば該当し得ます。
そのため、給与明細に「処遇改善手当」という項目が見当たらないだけでは、賃金改善が行われていないとは判断できません。基本給や既存手当の変更、支給時期もあわせて確認する必要があります。
給与明細を確認するときの具体例
例えば、6月分の賃金改善について勤務先から「7月給与に反映する」と説明された場合、6月給与に変更がないことだけで未支給とは判断できません。
また、「基本給の改定で対応する」と説明された場合は、処遇改善手当の新設がなくても、基本給の変更として反映されている可能性があります。
この2例は公式の支給パターンを理解するための説明例であり、特定の勤務先における実際の配分実績を示すものではありません。
勤務先に確認する4項目|算定・配分・方法・時期
自分の給与への影響を確認したい場合は、事業所の管理者や人事担当者に、算定区分、配分対象、支給方法、支給時期の4項目を確認するのが実用的です。
| 順番 | 確認項目 | 質問例 |
|---|---|---|
| 1 | 加算の算定区分 | 2026年6月以降、当事業所はどの処遇改善加算を算定していますか? |
| 2 | 療法士への配分 | PT・OT・STも賃金改善の配分対象に含まれていますか?上乗せ区分の配分はどうなっていますか? |
| 3 | 支給方法 | 基本給、毎月の手当、賞与など、どの賃金項目に反映されますか? |
| 4 | 支給時期 | 6月算定分の賃金改善は、何月支給の給与から確認できますか? |
説明が曖昧な場合は賃金改善の方法を確認します
例えば「療法士は対象外です」「処遇改善は介護職員だけです」と説明された場合、職種名だけで一律に対象外とする制度なのか、勤務先の配分方針として対象に含めていないのかを分けて確認します。
公式Q&A・問2-6では、事業所は賃金改善の方法等を職員に周知し、処遇改善に関する照会があった場合、書面を用いるなどして分かりやすく回答することとされています。
そのため、説明が不十分な場合は、まず勤務先に対象職種、配分方針、支給方法を確認してください。加算の取得だけで個人への支給額が決まるものではありません。
次の一手|自分の給与に反映されているか確認する
障害福祉分野で働くPT・OT・STは、処遇改善加算の配分対象として公式に示されています。ただし、個人への一律支給を意味するものではありません。
まずは勤務先の加算算定区分、療法士への配分、給与への反映方法と時期を確認しましょう。特に、月1万円相当の幅広い賃上げ措置と、月3千円相当の上乗せ措置を混同しないことが重要です。
介護保険サービスで働く療法士は、制度が異なるため、2026年6月の介護報酬改定とPT・OT・STの処遇改善で対象サービスや加算要件を確認してください。
参考文献・公式資料
- 厚生労働省.令和8年度の障害福祉人材の処遇改善等の対応.第53回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料1.2026.公式PDF.
- 厚生労働省,こども家庭庁.令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について.第53回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料2.2026.公式PDF.
- 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長,こども家庭庁支援局障害児支援課長.福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分).障障発0331第1号・こ支障第78号.2026年3月31日.通知PDF(福島県掲載).
- 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課,こども家庭庁支援局障害児支援課.福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版).2026年4月9日.公式Q&A(福島県掲載).
- 厚生労働省.第53回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(持ち回り)資料.2026.公式ページ.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療・介護従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。制度に関する記事では、行政資料や公式通知を確認し、制度上の基準と職場ごとの実務対応を区別して解説しています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

