肩甲骨内側縁の触診ポイント【結論】
肩甲骨内側縁の触診は、「背中の内側が痛い」という訴えを、肩甲骨のどの位置に近い所見なのかへ整理するための基準になります。結論からいうと、肩甲棘の内側端を先に確認し、そこから下方へ縦方向の骨の線をたどると、内側縁を見つけやすくなります。
この記事では、肩甲骨内側縁の場所、肩甲棘・下角・脊柱近くの筋との見分け方、触診手順、よくある失敗、記録例まで整理します。診断名を決める記事ではなく、触診で位置をそろえ、次の肩甲骨評価へつなげるための記事です。
肩甲骨まわりの評価を続けて整理する
内側縁だけで判断せず、肩甲棘・下角・肩甲骨全体の動きとセットで確認すると、評価の再現性が上がります。
関連:肩甲棘の触診ポイント
次に確認:肩甲骨下角の触診ポイント
肩甲骨内側縁はどこを指すか
肩甲骨内側縁は、肩甲骨の脊柱側を縦方向に走る骨の縁です。上方では上角、中央付近では肩甲棘の内側端、下方では下角へ続くため、「肩甲骨の内側を縦に走る基準線」として捉えると理解しやすくなります。
触診で重要なのは、背中の内側にある硬い部分を何となく押すことではありません。肩甲棘は横方向、内側縁は縦方向、下角はその終点という位置関係を先にそろえることで、触診の迷いを減らせます。
なぜ肩甲骨内側縁を触診するのか
肩甲骨内側縁を触診する目的は、肩甲骨周囲の痛みや違和感の位置を整理し、次に見る評価を決めることです。内側縁そのものの圧痛なのか、菱形筋群・僧帽筋・肩甲挙筋周囲の張りなのか、肩甲棘や下角寄りの所見なのかを分ける起点になります。
ただし、肩甲骨内側縁の圧痛だけで原因を断定することはできません。肩甲骨運動、肩関節 ROM、頸部・胸郭の動き、左右差、症状の再現性を合わせて確認することで、触診所見を臨床判断につなげやすくなります。
5分で確認する触診フロー
現場では、肩甲棘の内側端を起点にして、内側縁を線として追い、最後に動きで確認する流れにすると迷いにくいです。
| 順番 | 見ること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 座位で肩の力を抜く | 上肢を軽く下垂し、僧帽筋・菱形筋群の過緊張を減らす |
| 2 | 肩甲棘の内側端を取る | 横方向の骨の線を先に確認する |
| 3 | 下方へ縦の線をたどる | 肩甲骨内側縁を、肩甲棘から下角へ続く線として追う |
| 4 | 上角・下角とのつながりを見る | 点ではなく、線の連続性で確認する |
| 5 | 動きで症状変化を確認する | 肩挙上、肩甲骨内外転、左右差を合わせて見る |

肩甲骨内側縁の触診手順
触診は「肩甲棘の内側端を確認する」「そこから下方へたどる」「上角・下角とのつながりを確認する」の順で進めます。
1.肩甲棘の内側端を先に確認する
最初に肩甲棘を内側へたどり、肩甲棘の内側端を確認します。肩甲棘は比較的触れやすい横方向の骨性ランドマークなので、ここを起点にすると内側縁の位置が取りやすくなります。
2.そこから下方へ縦の線をたどる
肩甲棘の内側端から下方へ、指をゆっくり進めます。縦方向に続く限局した骨の縁として触れる部分が肩甲骨内側縁です。筋の張りを強く押し込むのではなく、骨の輪郭を浅く追う意識が大切です。
3.上角・下角とのつながりを確認する
内側縁らしい線を触れたら、上方では上角、下方では下角へつながるかを確認します。1点だけで決めず、線として追えるか、左右差があるか、再現して同じ場所を触れるかを見ます。
肩甲棘・下角・筋との見分け方
肩甲骨内側縁で迷うときは、向きと連続性で見分けます。肩甲棘は横方向、内側縁は縦方向、下角は下端の点として捉えると整理しやすくなります。
| 部位 | 触れ方の特徴 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 肩甲骨内側縁 | 脊柱側を縦方向に走る骨の線 | 肩甲棘の内側端から下角方向へ続く |
| 肩甲棘 | 肩甲骨後面を横方向に走る骨の線 | 横方向にたどれるため、内側縁とは向きが違う |
| 下角 | 肩甲骨下端の角として触れやすい | 線ではなく終点のランドマークとして確認する |
| 菱形筋群・僧帽筋 | 面状の張りや圧痛として感じやすい | 骨の縁のような限局した線ではない |
| 脊柱起立筋群 | 脊柱近くで縦に硬く触れやすい | 肩甲骨の動きに合わせて位置関係を再確認する |
触れたあとに確認したいこと
肩甲骨内側縁を触れたら、圧痛の有無だけで終わらせず、症状の位置と動きによる変化を確認します。内側縁そのものの一点圧痛なのか、表層筋の張りなのか、上角・下角方向へ広がるのかを分けます。
さらに、肩関節挙上、肩甲骨の内外転、上方回旋・下方回旋で痛みや違和感が変わるかを確認します。触診所見と運動所見が一致すると、次に評価すべき部位を絞りやすくなります。
よくある失敗と修正ポイント
肩甲骨内側縁の触診で多い失敗は、痛い場所をそのまま骨のランドマークとして決めてしまうことです。圧痛部位から入るのではなく、肩甲棘の内側端から線として追う方が安定します。
| よくある失敗 | 起きていること | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 背中の内側の痛い所を押している | ランドマークではなく圧痛だけを見ている | 肩甲棘の内側端から下方へたどる |
| 肩甲棘と混同する | 横方向の骨を内側縁と思っている | 横方向か縦方向かを確認する |
| 筋の張りを骨だと思う | 菱形筋群や僧帽筋の緊張を拾っている | 強く押し込まず、骨の輪郭を浅く追う |
| 下角だけを触って終わる | 点のランドマークで止まっている | 下角から上方へ線として戻る |
| 1回で決め打ちする | 再現性が確認できていない | 左右差と再触診で同じ場所を確認する |
記録例
記録では、「どこを触ったか」「どの動きで変化したか」「次に何を確認するか」まで残すと、触診所見が評価につながります。
記録例
右肩甲骨内側縁は肩甲棘内側端から下角方向へ触知可能。内側縁中央部に軽度圧痛あり。肩挙上時に同部違和感増強。肩甲骨内転・下方回旋時の左右差を認めるため、次回は肩甲骨運動と頸胸椎可動性を併せて確認する。
現場の詰まりどころ
肩甲骨内側縁は、知識としては分かりやすくても、実際には筋の張りや脊柱近くの硬さと混同しやすい部位です。迷ったときは、よくある失敗を確認し、肩甲棘の内側端から下方へたどる流れに戻ります。
また、触れた場所を「正解」として終わらせず、記録例のように、症状の再現性、動きによる変化、次に見る評価まで残すと臨床で使いやすくなります。
評価が苦手に感じるときは、手順だけでなく学べる環境も大切です。
ランドマークの取り方や記録の型を職場で共有しにくい場合は、学び方や臨床力の伸ばし方も整理しておくと評価が安定しやすくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
肩甲骨内側縁がどうしても分からないときはどうしますか?
いきなり背中の内側を探るのではなく、肩甲棘の内側端を先に確認します。そこから下方へ縦方向にたどると、内側縁を線として捉えやすくなります。
肩甲骨内側縁と肩甲棘はどう見分けますか?
肩甲棘は横方向、肩甲骨内側縁は縦方向です。肩甲棘の内側端を交点として取ると、向きの違いで見分けやすくなります。
肩甲骨内側縁の圧痛があれば筋の問題ですか?
筋由来のことはありますが、圧痛だけでは断定できません。肩甲骨運動、肩関節 ROM、頸部・胸郭の動き、左右差を合わせて確認します。
新人は何とセットで覚えるとよいですか?
肩甲棘、肩甲骨内側縁、下角をセットで覚えると整理しやすいです。点ではなく、肩甲骨後面のランドマークを線で追う意識が役立ちます。
次の一手
まずは健側で「肩甲棘の内側端を取る → 下方へたどる → 下角まで確認する」を3回繰り返してみてください。線として追えるようになると、圧痛部位の記録や肩甲骨運動の評価につなげやすくなります。
肩甲骨後面のランドマークを続けて整理するなら、肩甲棘の触診ポイントを確認し、評価全体へ戻る場合は評価ハブを起点にしてください。
参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


