Step Test は支持脚安定性と左右差を短時間で見やすい評価です
Step Test は、支持脚に体重を乗せ続けながら、反対側の足を台へ素早く乗せ降ろしすることで、動的バランスと左右差を見やすい評価です。まず全体像を整理したい方は、バランス評価の使い分けを先に見ておくと、どの場面で Step Test を足すべきかが分かりやすくなります。
臨床で迷いやすいのは、TUG では移動全体は見えてもどちらの支持脚が不安定なのかが粗くなりやすく、FSST では切り返し能力は見えても単脚支持の左右差までは整理しにくいことです。Step Test は、その隙間で支持脚安定性と交互 stepping の質を短時間で確認したい場面に向いています。
Step Test とは?
Step Test は、片足ずつ別々に実施し、7.5cm 程度の台へ 15 秒間できるだけ速く足を乗せ降ろしして、その回数を数える1 項目テストです。評価しているのは、単純な脚力だけではなく、支持脚側で姿勢を保ちながら素早く体重移動する能力です。
このテストの強みは、準備が少なく、短時間で終わるのに、支持脚側の安定性、左右差、stepping のぎこちなさが見えやすいことです。歩ける症例でも、片脚支持や方向転換で急に不安定になる人は少なくありません。そうした「歩行全体では埋もれやすい差」を拾いやすいのが Step Test の価値です。
Step Test が向いている場面
Step Test が使いやすいのは、歩行は可能だが、左右差や支持脚の不安定さを整理したい場面です。たとえば、麻痺側立脚でぐらつく、段差前でためらう、方向転換で足が止まりやすい、片脚支持を含む課題で急に質が落ちる、といった症例に向いています。
一方で、起立・歩行・着座まで含めた移動全体を見たいなら TUG、多方向への切り返しを見たいなら FSST の方が向きます。Step Test は、「支持脚にどれだけ体重を預けられるか」「左右差がどれくらいあるか」を補足する追加 1 本として置くと収まりがよいです。
Step Test のやり方と観察ポイント
実施前は、滑りにくい平坦床、固定しやすい台、検者の立ち位置を先にそろえます。検者は転倒回避ができる位置につき、台の高さ、靴、開始肢、声かけを毎回そろえることが大切です。比較に使うなら、条件固定ができていない測定値は解釈しにくくなります。
測定中に見るべきなのは、回数だけではありません。支持脚の膝が沈み込むのか、体幹が大きく揺れるのか、台へ乗せる足のクリアランスが低いのか、後半で速度が落ちるのか、左右差がどこから目立つのかを一緒に観察します。Step Test は回数+短い所見で残すと、再評価で使いやすくなります。
見ておきたい観察ポイント
支持脚側では、荷重保持の安定性、骨盤の傾き、膝折れや過伸展、体幹の側方偏位を見ます。stepping 側では、足部のクリアランス、台への接触、速度、リズムの乱れを見ます。単に「遅い」で終わらせず、支持脚由来か、stepping 側由来かを分けて見ることが大切です。
また、回数が近くても質が違うことがあります。たとえば、健側は滑らかだが患側立脚では体幹動揺が強い、後半だけ著しくペースが落ちる、接触回数が増えるといった違いです。Step Test は、こうした左右差の中身を所見化すると価値が上がります。
記録と解釈のコツ
基本の記録は、右 / 左の回数と、必要なら優先的に見たい側の所見です。臨床では「右 14 回、左 8 回」だけで終わらせず、「左支持で体幹右偏位あり」「後半で接触増加」「患側 stepping でクリアランス低下」といった短い観察語を添えると、再評価や共有に使いやすくなります。
解釈では、絶対値だけでなく左右差を見ます。慢性期脳卒中では、回数が筋力、歩行速度、協調性、バランスと関連する報告がありますが、cut-off は対象によって変わります。したがって、Step Test は「数値で断定する評価」というより、左右差と支持脚の質を定量化する入口として使う方が実務的です。
| 見えた所見 | 考えやすい背景 | 次に足したい評価 |
|---|---|---|
| 左右差が大きい | 支持脚安定性の差、麻痺側立脚の不安定さ | 片脚立位、下肢筋力、歩行観察 |
| 後半で急に失速する | 持久性低下、姿勢制御の破綻、fear of falling | TUG、6MWT、生活場面の聞き取り |
| 接触や引っかかりが多い | クリアランス低下、協調性低下、注意配分の弱さ | FSST、FGA、二重課題の観察 |
| 体幹動揺が大きい | 支持脚荷重の不安定さ、骨盤・体幹制御の弱さ | 静的バランス、重心移動、反応的姿勢制御 |
TUG・FSST・Step Test の使い分け
※スマホでは表を左右にスクロールしてご覧ください。
| 評価 | 主に見やすいこと | 向いている場面 | 補いにくいこと |
|---|---|---|---|
| TUG | 起立・歩行・方向転換・着座を含む移動全体 | 短時間で全体像をつかみたいとき | どちらの支持脚が不安定かの内訳 |
| FSST | 多方向 stepping、切り返し、敏捷性 | 方向転換や多方向移動の質を見たいとき | 単脚支持の左右差の定量化 |
| Step Test | 支持脚安定性、左右差、交互 stepping の質 | 片脚支持や麻痺側立脚の差を見たいとき | 移動全体や多方向課題の網羅 |
整理すると、TUG は全体把握、FSST は多方向切り返し、Step Test は支持脚安定性と左右差です。歩けるが患側立脚が不安、段差前で詰まる、方向転換の前段階を見たい、といった場面では Step Test を足すと全体像が整いやすくなります。
現場の詰まりどころとよくある失敗
Step Test で多い失敗は、回数だけを見て終わることです。同じ 10 回でも、片方は滑らか、もう片方は体幹を大きく使って何とか達成している、ということがあります。Step Test は、数値だけではなく質を記録して初めて実務に生きます。
もう 1 つ多いのは、条件固定が甘いことです。台の高さ、靴、開始肢、声かけ、見守り位置が毎回違うと、再評価の比較が難しくなります。Step Test は簡便ですが、簡便だからこそ条件をそろえないとぶれやすい評価です。
| 場面 | OK | NG |
|---|---|---|
| 記録 | 右 / 左回数と所見をセットで残す | 回数だけ記録して終える |
| 解釈 | 左右差と質を重視する | cut-off だけで断定する |
| 再評価 | 台高、靴、声かけ、開始肢を固定する | 条件を毎回変えたまま比較する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Step Test は何をいちばん見やすいですか?
支持脚に体重を預け続ける安定性と、左右差です。歩行全体では埋もれやすい片脚支持の弱さを、短時間で確認しやすいのが強みです。
TUG とどちらを先にやればよいですか?
まず全体像を見たいなら TUG が向きます。移動全体は把握できていて、次に「どちらの支持脚が不安定か」を見たいなら Step Test を足すと整理しやすいです。
FSST と何が違いますか?
FSST は多方向への切り返しや stepping の敏捷性を見やすい評価です。Step Test は、単脚支持を伴う weight shift と左右差の整理により向いています。
Alternate Step Test と同じですか?
似ていますが、文献や現場で名称と測り方が少し異なることがあります。この記事では、7.5cm 台へ 15 秒間の回数を数える Step Test を主に扱っています。秒で測る AST を使う職場では、実施条件と記録法を混同しないことが大切です。
次の一手
Step Test は、支持脚安定性と左右差を短時間で見たいときの追加 1 本として使いやすい評価です。次に迷いやすいのは、「全体像を先に取るか」「多方向課題まで広げるか」です。
- 評価の全体像から整理したい:バランス評価の使い分け
- 移動全体を短時間で見たい:TUG の評価方法
- 多方向 stepping まで見たい:FSST 運用プロトコル
参考文献
- Hill KD, Bernhardt J, McGann AM, Maltese D, Berkovits D. A new test of dynamic standing balance for stroke patients: reliability, validity and comparison with healthy elderly. Physiother Can. 1996;48(4):257-262. DOI: 10.3138/ptc.48.4.257
- Mercer VS, Freburger JK, Chang SH, Purser JL. Step Test scores are related to measures of activity and participation in the first 6 months after stroke. Phys Ther. 2009;89(10):1061-1071. DOI: 10.2522/ptj.20080368
- Hong SJ, Goh EY, Chua SY, Ng SS. Reliability and validity of Step Test scores in subjects with chronic stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(6):1065-1071. DOI: 10.1016/j.apmr.2011.12.022
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- Chung MML, Ng SSM. Reliability and validity of Alternate Step Test times in subjects with chronic stroke. J Rehabil Med. 2014;46(10):969-974. DOI: 10.2340/16501977-1877
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


