DESIGN-R2020 採点方法|7 項目と合計点

臨床手技・プロトコル
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DESIGN-R®2020 の採点方法(まず結論)

DESIGN-R®2020 は、褥瘡の状態を 7 項目( D・E・S・I・G・N・P )で整理し、「今どれくらい重いか」「治ってきているか」を共通言語で追跡する評価法です。採点のコツは、各項目を “なんとなく” で付けずに、測り方(測定条件)と観察語を固定し、チーム内でブレを減らすことです。

本記事では、合計点( 0〜 66 点)を作る 6 項目の考え方、深さ( D )の DTI( DDTI ) DU の扱い、I(炎症/感染)の I3C の読み方まで、臨床で「迷うところ」に寄せて整理します。正確な採点表の原典は日本褥瘡学会の資料を参照しつつ、ここでは “採点を運用に落とす” 視点でまとめます。

DESIGN-R®2020 とは

DESIGN-R®2020 は、日本褥瘡学会が示す褥瘡の重症度・治癒過程の評価スケールです。褥瘡を 深さ( Depth )滲出液( Exudate )大きさ( Size )炎症/感染( Inflammation / Infection )肉芽( Granulation )壊死( Necrotic tissue )ポケット( Pocket )の 7 項目で表現し、状態を経時的に追います。

臨床では、同じ褥瘡でも「見え方」が職種や経験でズレやすいのが難点です。DESIGN-R®2020 を使うと、観察 → 記録 → 介入(除圧・体位・活動・創管理)→ 再評価を “点数と言語” で揃えやすくなり、多職種連携の質が上がります。

2020 改定で押さえる 2 点( DDTI と I3C )

改定 DESIGN-R®2020 の要点は、深さ( D )に「 DTI(深部損傷褥瘡)疑い= DDTI 」が加わったこと、そして炎症/感染( I )に「 I3C(臨界的定着疑い)」が明示されたことです。どちらも「見逃すと悪化しやすいのに、判断が割れやすい」領域を、運用として拾いやすくした変更です。

PT 視点では、DDTI は除圧・ずれ対策を “最優先” に引き上げるサイン、I3C は創面調整と滲出液管理を強化し、短い間隔( 24〜 48 時間)で再評価するサインとして捉えると、採点がそのまま行動に直結します。

採点の流れ(迷いを減らす手順)

採点は「 7 項目を順番に付ける」より、測定条件を固定してから付けるほうがブレません。おすすめは、①体位・光源・清拭後のタイミングを揃える → ②まず D(深さ)と I(炎症/感染)で “危険側” を拾う → ③ E・S・G・N・P を同一条件で測る、の順です。

特に Size( S )と Pocket( P )は、体位が変わると数値が動きます。「いつ・どの体位で・誰が・どう測ったか」をセットで残すと、再評価で “良くなった/悪くなった” を誤判定しにくくなります。

DESIGN-R®2020 の採点フロー(チームで揃えるための最小セット)
順番 まず見るもの ポイント 記録のコツ
1 準備(条件固定) 同一体位・同一タイミング(清拭後など)で評価 体位、測定者、前処置(洗浄・清拭)をメモ
2 D(深さ)・I(炎症/感染) DDTI/DU、I3C の “拾い上げ” を優先 疑い所見を具体語で(例:ぬめり、硬結、疼痛)
3 E・S・G・N・P 測り方がズレる項目ほど先にルール化 長径×短径、交換頻度、割合など “数える軸” を固定
4 合計点( 6 項目) D は合計に入れず、別枠で表記 表記例でチームの書式を統一

7 項目の評価ポイント( “採点の軸” だけ押さえる )

ここでは採点表そのものを丸写しせず、現場で迷いが出やすい「見方・測り方・詰まりどころ」を整理します。採点表の原典(点数表)は、必ず日本褥瘡学会の資料で確認してください。

“点数を当てる” ことよりも、同じ条件で繰り返し測れて、介入判断が揃うことが目的です。PT は、採点を除圧・ずれ対策・活動量・座位時間などの設定に落とし込めると強いです。

D:深さ( Depth )

深さは「創内で一番深い部分」で評価し、改善して創底が浅くなっても “相当の深さ” として追います。2020 改定で重要なのは、 DTI 疑い( DDTI )と、壊死で判定不能な DU を “迷ったまま放置しない” 運用にすることです。

PT が押さえるべきは、DDTI の所見(紫〜暗赤色調、硬結、疼痛、泥のような浮遊感、温度変化など)を拾ったら、除圧とずれ対策を即日で強化し、短期で再評価できる体制にする点です。

E:滲出液( Exudate )

滲出液は創環境の “今” を反映しやすく、湿潤コントロールと直結します。評価は、一般にガーゼ/被覆材を貼付した場合の交換頻度と量感を軸に判断します(採点表の基準は原典参照)。

詰まりどころは「湿潤過多(ずれ・汚染)と感染兆候」の混線です。E が高いときは、いきなり感染扱いに飛ぶ前に、ずれ・体位・固定・失禁(汚染)を同時に点検すると、介入が早くなります。

S:大きさ( Size )

大きさは、長径 × 短径で測り、経過を数値で追います。測定条件(体位、創縁の取り方、清拭後のタイミング)を揃えないと、改善・悪化の判断が揺れます。

詰まりどころは「発赤範囲の扱い」「ポケット進展があるときの測り分け」です。S は外表から確認できる範囲を基本に、P は別枠で捉える、と役割分担を決めるとブレにくくなります。

I:炎症/感染( Inflammation / Infection )

I は “治癒が止まる” 原因に直結しやすい項目です。2020 改定で追加された I3C(臨界的定着疑い)は、感染( I3 )に進む前の “怪しいサイン” を拾って、創面調整と滲出液管理を強化するための運用ラベルです。

詰まりどころは、I1(炎症)/I3C/I3 の混線です。「所見」+「次の一手」+「再評価期限( 24〜 48 時間)」をセットで記録すると、様子見が長引きにくくなります。

G:肉芽( Granulation )

肉芽は “治ってきているか” を捉える項目です。良性肉芽が増えるのか、浮腫性で脆弱なのかで、創環境の読みが変わります。深さが浅い/ DDTI の場合など、判定の扱いにルールがあるため、原典に沿って記録します。

PT 視点では、荷重・摩擦・ずれが強いと、肉芽が「増えない/崩れる」方向に寄りやすい点が重要です。座位時間、クッション、移乗方法を “肉芽の質” と一緒に追うと、介入が説明しやすくなります。

N:壊死( Necrotic tissue )

壊死は治癒を止め、感染リスクを上げます。白色(軟化壊死)と黒色(乾燥壊死)で見え方も対応も変わるため、所見を具体語で揃えておくと連携が楽です(点数基準は原典参照)。

壊死が強いほど、深さ( D )の評価が DU になりやすくなります。PT は、創の状態に合わせた活動量調整(痛み・出血・汚染リスク)と、ずれ対策を優先して提案できると、治療側の意思決定がスムーズになります。

P:ポケット( Pocket )

ポケットは “見えない進展” が核心で、再発・治癒遅延の原因になりやすい項目です。評価は一般に、潰瘍全周の面積から潰瘍面積を差し引くなど、決められた手順で行います(具体の算出は原典参照)。

ここがブレると、S(大きさ)が小さく見えても実は悪化している、が起こります。大きさ( S )と同一体位で測る確認手技(綿棒など)と所見を残す、の 2 点を固定すると、再評価の精度が上がります。

合計点( 0〜 66 点)と表記の書き方

DESIGN-R®2020 の合計点は、D(深さ)を除いた 6 項目( E・S・I・G・N・P )を加算して算出します。点が高いほど “重い” という読みが基本ですが、実務では合計点だけでなく、どの項目が足を引っ張っているかを見るのが重要です。

記録は、各項目の記号と点数(大小文字のルールを含む)を並べて残します。D は合計点に入れず別枠で書く点が最大の落とし穴です。表記ルール(大文字/小文字の使い分けを含む)は評価用紙に沿って統一してください。

合計点の考え方(“合計” と “詰まり項目” を分けて読む)
見るもの 意味 臨床での使いどころ PT が提案しやすい介入
D(深さ) 重症度の “階層” を示す(合計点に含めない) 除圧・ポジショニングの優先度決め 支持面の再設定、ずれ対策、座位時間の調整
合計点( E+S+I+G+N+P ) 治癒過程の “推移” を追う カンファで経過を共有、介入の妥当性検証 除圧の効果判定、活動量設定、ADL 方法の見直し
詰まり項目(例:E と I ) 治癒を止めている “原因側” を特定 次の一手を決める(短期で再評価) ずれ・固定・失禁対策、体位の再設計

評価結果を “リハ介入” に落とす( PT の実務)

DESIGN-R®2020 は「評価して終わり」だと伸びません。PT は、点数を支持面(マットレス・クッション)体位変換座位・離床量移乗方法(ずれ)に翻訳し、再評価で効果判定まで回せるのが強みです。

おすすめは、毎回 “ 1 つだけ” 介入仮説を立てることです。例:E が高い → ずれと湿潤の対策をセットで修正 → 48 時間で E と I の動きを見る。こうすると、点数がそのまま PDCA になります。

現場の詰まりどころ(ここで止まると順位も落ちやすい)

検索意図( designr2020 採点方法 )で来た読者が詰まりやすいのは、「DDTI と DU」「I3C の扱い」「S と P の測り分け」です。ここを解消できると、記事の滞在と再訪が伸び、結果として評価も上がりやすくなります。

以下の表は、院内でよく起きる “止まり方” を先回りして整理したものです。迷いを観察軸 → 次の一手 → 再評価期限で固定するのがコツです。

DESIGN-R®2020 の “止まりどころ” と対策(判断→次の一手を固定)
詰まりどころ よくある状態 見直す観察軸 次の一手
DDTI と DU 深さが決められず “様子見” が続く 発生経緯、色調、硬結、疼痛、壊死の覆い方 除圧・ずれ対策を先に強化し、短期で再評価する
I1/I3C/I3 滲出液が多い=感染、と短絡 ぬめり、肉芽の質(浮腫・脆弱)、臭いの質、周囲皮膚 創面調整+滲出液管理、 24〜 48 時間で方向を出す
S と P 表面は小さいのに治らない 体位を揃えた面積測定、ポケット確認の所見 S と P の役割分担を固定し、同一条件で追う

この親記事では全体像を優先しました。採点で特に迷いが出やすい論点は、以下の小記事で判断軸と次アクションを短く整理しています。

(院内共有や新人教育では、ここをセットで読むと “採点の揺れ” が減ります。)

DESIGN-R®2020 の関連小記事(迷いどころ別)
テーマ リンク 読むと解決すること
I3C(臨界的定着疑い) I3C(臨界的定着疑い)の見分け方|所見と 24–48 時間の対応 感染前の “怪しいサイン” を拾い、次の一手を固定できます
DDTI と DU DTI / DU の違いを整理|深さ( D )の迷いを 30 秒で解消 深さで止まる原因をほどき、除圧の優先度を決めやすくなります
P(ポケット)測定 DESIGN-R の P 測定|ポケット面積算出とブレ対策 S と P の測り分けが整理でき、再評価の精度が上がります

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. DESIGN-R®2020 の合計点に D(深さ)は入れますか?

A. 合計点( 0〜 66 点)は、E・S・I・G・N・P の 6 項目を加算して作り、D(深さ)は別枠で表記します。D を合計に入れるとチームで読みがズレやすいので、まず書式を統一してください。

Q2. DDTI と DU は、どちらを書けばよいか迷います。

A. 迷いの本体は「急性期の深部損傷が疑われるのか( DDTI )」と「壊死で深さが見えないのか( DU )」の混線です。発生経緯、色調、硬結、疼痛、壊死の覆い方を揃えて観察し、除圧・ずれ対策を先に強化しつつ短期で再評価できる運用に寄せるのが安全です。

Q3. I3C は “感染” と同じ扱いでいいですか?

A. I3C は「感染前の疑い」を拾って運用を変えるラベルです。いきなり治療方針を感染に寄せるより、創面調整と滲出液管理を強化し、 24〜 48 時間で改善方向が出るかを確認してから、必要なら I3 側へ切り替えるとブレが減ります。

Q4. S(大きさ)と P(ポケット)は、どう測り分けますか?

A. S は外表の長径×短径を同一条件で追い、P は “見えない進展” を別枠で評価します。体位が変わると数値が動くので、毎回同じ体位・同じタイミングで測定し、所見と測定条件をセットで残すと再評価が安定します。

Q5. DESIGN-R®2020 はどれくらいの頻度で再評価しますか?

A. 施設の運用によりますが、状態が動きやすい(滲出液が多い、I3C を疑う、DDTI/DU など)場面では、短い間隔での再評価が有効です。少なくとも「いつ再評価して方向を出すか」を明文化すると、様子見が延びにくくなります。

参考文献

  1. 一般社団法人 日本褥瘡学会 学術教育委員会.改定 DESIGN-R®2020.2020. PDF
  2. 一般社団法人 日本褥瘡学会.褥瘡評価ツール 改定 DESIGN-R®2020(公式). URL
  3. 一般社団法人 日本褥瘡学会.改定 DESIGN-R® 2020 練習問題. PDF
  4. Sanada H, Iizaka S, et al. Clinical wound assessment using DESIGN-R total score can predict pressure ulcer healing: pooled analysis from two multicenter cohort studies. Wound Repair and Regeneration. 2011;19(5):559–567. PubMed.DOI: 10.1111/j.1524-475X.2011.00719.x
  5. 日本褥瘡学会.褥瘡予防・管理ガイドライン 第 5 版.照林社;2022.(Minds) URL

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

DESIGN-R®2020 は、安全の確保 → 観察 → 採点(測定条件固定)→ 介入設計 → 短い間隔で再評価という “臨床のリズム” を作るほど、チームの意思決定が速くなります。まずは D(深さ)と I(炎症/感染)で危険側を拾い、E・S・P の測定ブレを減らすところから始めてみてください。

現場で迷いが続くときは、面談準備チェックと職場評価シートも使える マイナビコメディカルのまとめ(ダウンロード)も合わせて確認しておくと、学び直しと環境調整の両方が進めやすくなります。

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