リハ科の物品管理は「買った後」が重要
リハ科の物品は、買って終わりではありません。メジャー、ストップウォッチ、パルスオキシメーター、移乗ベルト、セラバンド、歩行器などは使用頻度が高く、病棟へ持ち出す機会も多いため、管理ルールが曖昧だと「どこにあるか分からない」「壊れている」「充電が切れている」といった問題が起こりやすくなります。
この記事では、リハ科で使う物品の紛失・故障・充電切れを減らすために、物品管理表、貸出ルール、月 1 回点検、棚番号、ラベル管理の考え方を整理します。年度末の物品請求や次年度のリハ室環境整備にもつなげやすいよう、現場でそのまま使える形でまとめます。
リハ科で物品管理が崩れやすい理由
リハ科の物品管理が崩れやすい理由は、共用物品が多く、使用場所が固定されにくいからです。リハ室、病棟、ベッドサイド、屋外歩行、家族指導など、同じ物品を複数の場所で使うため、返却場所や担当者が曖昧だと所在不明になりやすくなります。
さらに、新人や非常勤スタッフが増える時期、電子カルテ導入で記録動線が変わる時期、年度末に物品が入れ替わる時期は、管理ルールが乱れやすくなります。物品そのものを増やす前に、「置き場所」「貸出」「点検」「故障報告」を決めておくことが重要です。
| 原因 | 起こりやすい問題 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 共用物品が多い | 誰が使ったか分からない | 貸出表と返却場所を決める |
| 病棟持ち出しが多い | 病棟に置きっぱなしになる | 病棟貸出用とリハ室用を分ける |
| 保管場所が曖昧 | 探す時間が増える | 棚番号と写真付き配置図を作る |
| 点検担当が曖昧 | 故障や電池切れに気づかない | 月 1 回点検の担当を決める |
| 新人教育に入っていない | 使い方や戻し方が統一されない | 物品ルールを新人オリエンテーションに入れる |
まず整えたい物品管理ルール
物品管理を整えるときは、複雑な台帳を作るよりも、まず「誰でも分かる」「戻しやすい」「点検しやすい」ルールにすることが大切です。棚番号、ラベル、貸出表、点検表、故障報告の 5 つをそろえるだけでも、現場の探し物や紛失は減らしやすくなります。
特に重要なのは、管理ルールを一部のスタッフだけが把握する状態にしないことです。リハ室の見える場所に配置図を置き、共用物品にはラベルを貼り、貸出時は短く記録するだけで、新人や応援スタッフでも動きやすくなります。物品請求の考え方は、リハ科の物品請求リスト でも整理しています。

| ルール | 目的 | 運用例 |
|---|---|---|
| 棚番号 | 戻す場所を明確にする | 評価棚 A、歩行補助具 B、運動用具 C などに分ける |
| ラベル管理 | リハ科の物品と分かるようにする | 物品名、所属、返却場所を貼る |
| 貸出表 | 持ち出し先を追えるようにする | 日付、物品名、貸出先、担当者を記録する |
| 月 1 回点検 | 故障・紛失・電池切れを早めに見つける | 毎月第 1 週に担当者が確認する |
| 故障報告 | 壊れたまま使われるのを防ぐ | 使用中止ラベルを貼り、管理者へ報告する |
なくなりやすいリハ物品一覧
なくなりやすい物品には特徴があります。小さい、軽い、病棟へ持ち出す、複数スタッフが使う、戻す場所が決まっていない物品は紛失しやすくなります。高価な機器だけでなく、メジャーやストップウォッチのような安価な物品も、なくなると評価や記録に影響します。
物品管理表を作るときは、すべての物品を細かく管理するよりも、まず「なくなりやすい物品」「壊れると困る物品」「充電が必要な物品」から優先して管理します。優先順位をつけることで、管理の負担を増やしすぎずに運用できます。
| 物品 | なくなりやすい理由 | 対策 |
|---|---|---|
| メジャー | 小さく、個人ポケットに入りやすい | 評価棚に複数本置き、リハ科ラベルを貼る |
| ストップウォッチ | 歩行評価や病棟評価で持ち出しやすい | 棚番号を決め、使用後返却を徹底する |
| パルスオキシメーター | 病棟と共用になりやすい | リハ科用と病棟用を分け、貸出時に記録する |
| 充電器・コード | 端末ごとに混在しやすい | 機器番号とコード番号を合わせる |
| セラバンド | 患者指導や自主練習で持ち出しやすい | 共用分と患者配布分を分ける |
| 移乗ベルト | 病棟やベッドサイドに置き忘れやすい | 病棟貸出用を別管理にする |
物品点検で確認したい項目
物品点検は、細かくやりすぎると続きません。まずは月 1 回、使用頻度が高い物品を中心に、数、破損、電池、清掃、保管場所を確認するだけでも十分です。点検表は、チェック式にして短時間で終わる形にすると継続しやすくなります。
点検の目的は、責任追及ではなく「使いたいときに使える状態」を保つことです。壊れた物品は使用中止にし、電池切れや充電不足は補充・充電ルールを見直します。点検結果は、次年度の物品請求や買い替え理由にも使えます。
| 点検項目 | 確認内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 数 | 台帳上の数と実物が合っているか | メジャー 5 本中 5 本あり |
| 破損 | ひび割れ、断裂、部品外れがないか | 重錘バンド 1 個にマジックテープ劣化あり |
| 電池・充電 | 電池切れ、充電不足がないか | パルスオキシメーター電池交換済み |
| 清掃 | 汚れ、テープ残り、感染対策上の問題がないか | 移乗ベルト清拭済み |
| 保管場所 | 決めた場所に戻っているか | 歩行器 1 台が病棟貸出中 |
貸出管理表に入れたい項目
病棟へ持ち出す物品は、貸出管理表を作ると所在を追いやすくなります。ポイントは、記録項目を増やしすぎないことです。日付、物品名、貸出先、担当者、返却予定、返却確認の 6 項目程度に絞ると、忙しい現場でも使いやすくなります。
貸出管理表は紙でもスプレッドシートでも構いません。大切なのは、誰でも見られる場所にあり、返却時にすぐ確認できることです。病棟貸出が多い物品は、最初から「病棟貸出用」として別枠で管理すると、リハ室用の物品不足を防ぎやすくなります。
| 項目 | 記入例 | 目的 |
|---|---|---|
| 日付 | 2026/04/01 | いつ貸し出したか確認する |
| 物品名 | 移乗ベルト | 貸出物品を特定する |
| 貸出先 | 3 階病棟 | どこにあるか確認する |
| 担当者 | PT 〇〇 | 確認先を明確にする |
| 返却予定 | 当日中/退院時/使用終了時 | 置きっぱなしを防ぐ |
| 返却確認 | 返却済み/未返却 | 返却状況を見える化する |
充電・電池が必要な物品の管理
電子カルテ端末、タブレット、パルスオキシメーター、血圧計、タイマーなどは、充電や電池交換のルールがないと、使いたいときに使えないことがあります。特に朝の業務開始時に充電切れが分かると、記録や評価の流れが止まりやすくなります。
充電物品は、置き場所、充電時間、充電担当、予備電池の場所を決めておくと運用しやすくなります。電子カルテ端末をリハ室で管理する場合は、鍵付き保管庫や配線整理も含めて環境を整えると、紛失・破損・充電忘れを防ぎやすくなります。
| 物品 | よくある問題 | 対策 |
|---|---|---|
| ノート PC | 充電切れ、保管場所の混乱 | 番号管理し、保管庫と充電場所を固定する |
| タブレット | 持ち出し先が分からない | 貸出表と端末番号で管理する |
| 血圧計 | 電池切れ、カフ紛失 | 予備電池とカフ保管場所を決める |
| パルスオキシメーター | 電池切れ、病棟への置き忘れ | リハ科用を明記し、貸出時に記録する |
| タイマー | 電池切れ、所在不明 | 評価棚に固定し、月 1 回点検する |
現場の詰まりどころ:管理担当が曖昧なまま始めない
物品管理でよくある詰まりどころは、「誰かがやるだろう」という状態で始めてしまうことです。担当者が決まっていないと、故障報告、補充、棚卸し、貸出確認が後回しになり、結局いつものスタッフだけが対応する形になりやすいです。
対策としては、物品ごとに担当者を固定するよりも、月ごとの点検担当を決める方法が現実的です。たとえば「第 1 週に評価物品」「第 2 週に歩行補助具」「第 3 週に電子機器」のように分けると、点検が一人に偏りにくくなります。
| よくある失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 点検が続かない | 項目が多すぎる | 高頻度物品だけ月 1 回確認する |
| 貸出表が書かれない | 記入欄が細かすぎる | 日付・物品名・貸出先・担当者に絞る |
| 故障が放置される | 報告先が曖昧 | 使用中止ラベルと報告先を決める |
| 新人が戻し場所を知らない | 配置図がない | 写真付き配置図をリハ室に掲示する |
| 物品請求に活かせない | 点検結果が残っていない | 不足数・故障数・買い替え候補を記録する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
リハ科の物品点検はどのくらいの頻度で行うべきですか?
まずは月 1 回で十分です。使用頻度が高い物品、病棟へ持ち出す物品、電池や充電が必要な物品を中心に、数・破損・電池・清掃・保管場所を確認します。毎日点検にすると負担が大きく、継続しにくくなります。
物品管理表は紙と Excel のどちらがよいですか?
現場で見やすく、更新しやすい方法を選びます。リハ室内の貸出確認は紙の方が使いやすい場合があります。一方で、年度末の棚卸しや物品請求に活用するなら、Excel やスプレッドシートで一覧化しておくと便利です。
病棟へ貸し出した物品が戻ってこない場合はどうすればよいですか?
まずは貸出先、担当者、返却予定を記録できる仕組みを作ります。頻回に貸し出す物品は、リハ室用と病棟貸出用を分けると、リハ室内の物品不足を防ぎやすくなります。
高価な機器だけ管理すればよいですか?
高価な機器だけでなく、メジャー、ストップウォッチ、パルスオキシメーター、移乗ベルトなど、使用頻度が高い物品も管理対象にします。安価な物品でも、なくなると評価や安全確認が止まるため、現場への影響は大きくなります。
物品管理は誰が担当するのがよいですか?
一人に固定すると負担が集中しやすいため、月ごとの点検担当を決める方法がおすすめです。主任や係が最終確認を行い、日常の貸出・返却は全スタッフで共有する形にすると継続しやすくなります。
次の一手
リハ科の物品管理は、完璧な台帳を作るよりも、まず「なくなりやすい物品」「壊れると困る物品」「充電が必要な物品」から整えることが大切です。棚番号、ラベル、貸出表、月 1 回点検、故障報告の 5 つを決めるだけでも、探す時間や物品不足は減らしやすくなります。
続けて読む:2026 リハ科で準備するべきリハ物品・機器・用具
電子カルテや記録環境を整える場合は、リハ室の PC・保管庫・充電ルールも合わせて見直しましょう。
物品管理や記録業務の工夫だけでは解決しにくい場合は、教育体制、記録文化、人員配置、業務量の偏りも点検が必要です。環境面の詰まりを整理したい場合は、無料チェックシート も活用してください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和 6 年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省. 令和 6 年度診療報酬改定の概要【個別改定事項 I】. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf
- PT-OT-ST.NET. 第 7 部リハビリテーション|令和 6 年診療報酬改定情報. https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-reiwa-6/department/2571
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


