身体活動量は目的に合わせて測定方法を選ぶ
身体活動量は、精度を優先するなら活動量計や加速度計、生活内容や活動の目的まで把握するなら質問紙や行動記録を用います。臨床では、どちらか一方だけで判断せず、客観的な測定値と本人・家族から得た生活情報を組み合わせる方法が実用的です。この記事では、身体活動量を評価したいPT・OT・STに向けて、ウェアラブル、質問紙、行動記録、病棟観察の違いと使い分け、測定条件、記録例、再評価時の注意点を整理します。
この記事の結論
- 日ごとの活動量を客観的に測る:活動量計・加速度計
- 活動の種類や生活背景を把握する:質問紙・聞き取り
- 病棟内での離床状況を確認する:行動記録・観察
- 介入前後を比較する:同じ機器・装着位置・測定期間で再評価
身体活動量の評価項目や臨床での位置づけを整理したい場合は、先にリハビリ評価ハブを確認すると、評価全体の中で本記事を位置づけやすくなります。

身体活動量の測定方法は4つに分けられる
身体活動量の測定方法は、活動量計・加速度計、質問紙、行動記録、直接観察の4つに分けると整理しやすくなります。
| 測定方法 | 把握しやすい項目 | 強み | 注意点 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 活動量計・加速度計 | 歩数、活動時間、活動強度、座位時間 | 連続的かつ客観的に記録しやすい | 機器や装着位置で結果が変わる | 介入前後の比較、退院後の活動把握 |
| 質問紙 | 活動の頻度、時間、種類、座位時間 | 低コストで広く実施できる | 想起誤差や回答者の主観が入る | 外来、地域、集団調査、初回スクリーニング |
| 行動記録・活動日誌 | 活動した時間帯、内容、症状、環境 | 活動量が増減した理由を確認できる | 記入負担があり、記録漏れが起こる | 自主練習、生活指導、症状との関連確認 |
| 直接観察・病棟情報 | 離床、移動、病棟ADL、介助状況 | 機器がなくても日常行動を把握できる | 観察できない時間帯を見落としやすい | 入院、施設、認知機能低下、機器装着困難例 |
どの方法にも長所と限界があります。測定機器があるかどうかだけで選ぶのではなく、「何を知りたいのか」「誰に測るのか」「再評価に使うのか」を先に決めることが重要です。
活動量計・ウェアラブルは客観的な経時変化に向いている
活動量計やウェアラブルは、歩数や活動時間を連続的に記録し、日ごとの変動や介入前後の変化を確認したい場合に向いています。
機器によって表示項目は異なりますが、主に次のような情報を確認できます。
- 1日歩数
- 活動時間
- 消費エネルギー量
- 座位・不活動時間
- 軽強度活動時間
- 中高強度活動時間
- 心拍数
- 睡眠時間
ただし、市販のウェアラブルデバイスと研究用加速度計は同じものではありません。市販機器は日常的に使いやすい一方、活動強度を判定するアルゴリズムが非公開の場合があり、機種変更によって数値の意味が変わることがあります。
歩数は分かりやすいが、歩数だけでは不十分
歩数は患者さんにも説明しやすく、再評価にも使いやすい指標です。一方、歩数だけでは座位時間、活動強度、立位活動、上肢活動、家事などを十分に捉えられません。
例えば、1日3,000歩から4,000歩へ増えていても、残りの時間をほとんど座って過ごしている可能性があります。反対に、歩数が少なくても、立位での家事や車椅子駆動、上肢を使う生活活動が増えていることもあります。
そのため、歩数を見るときは次の項目を一緒に確認します。
- 装着時間
- 座位・不活動時間
- 軽強度活動時間
- 中高強度活動時間
- 活動した時間帯
- 実際に行った生活行為
高齢者や低速歩行では歩数が正確に出ないことがある
高齢者、歩行速度が遅い人、すり足歩行の人、歩行器を使用する人では、手首や腰の動きが小さくなり、実際の歩数より少なく記録されることがあります。
療養病棟では、歩行器歩行や介助歩行を行っていても、市販の腕時計型デバイスでは歩数として十分に検出されないことがあります。その場合、「歩数が少ない=歩いていない」と判断せず、歩行時間、移動距離、離床回数、病棟スタッフからの情報を組み合わせます。
質問紙は活動内容と生活背景の把握に向いている
質問紙は、どのような活動を、どのくらいの頻度・時間で行っているかを把握したい場合に向いています。
代表的な身体活動質問紙として、IPAQやGPAQなどがあります。質問紙では、歩行、中等度活動、高強度活動、仕事、移動、余暇、座位時間などを一定の形式で確認できます。
| 確認領域 | 質問例 | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 頻度 | 週に何日行ったか | 活動習慣の有無を確認する |
| 時間 | 1日あたり何分行ったか | 活動量を定量化する |
| 強度 | 息が弾む活動だったか | LPA・MVPA相当の活動を推定する |
| 活動内容 | 歩行、家事、仕事、運動のどれか | 介入可能な生活場面を探す |
| 座位時間 | 1日に何時間座っていたか | 長時間の不活動を把握する |
質問紙の利点は、機器では分かりにくい「何をしていたのか」を確認できることです。歩数が増えた理由が散歩なのか、買い物なのか、家事なのかを把握できれば、退院支援や生活指導につなげやすくなります。
一方、本人の記憶や認識に左右されます。数日前の活動時間を正確に思い出すことは難しく、活動を多めに回答したり、座位時間を少なく回答したりする可能性があります。認知機能低下がある場合は、家族や病棟スタッフからも情報を得ます。
ウェアラブルと質問紙は代替ではなく補完関係にある
ウェアラブルと質問紙は、どちらか一方を正解とするのではなく、異なる情報を補い合う方法として使います。
| 比較項目 | ウェアラブル・活動量計 | 質問紙・聞き取り |
|---|---|---|
| 客観性 | 比較的高い | 回答者の記憶や認識に左右される |
| 連続測定 | 得意 | 詳細な連続測定は難しい |
| 活動内容 | 詳細は分かりにくい | 仕事、家事、移動、運動を区別できる |
| 導入費用 | 機器購入・管理が必要 | 比較的低コスト |
| 装着・実施負担 | 装着忘れ、充電、紛失に注意 | 回答時間と理解力が必要 |
| 再評価 | 同条件なら経時比較しやすい | 同じ質問と想起期間を使う必要がある |
例えば活動量計で「夕方の活動量が少ない」と分かっても、数値だけでは原因を判断できません。質問紙や聞き取りを追加すると、「午後は疲労が強い」「家族が不在で外出しない」「昼食後から長時間テレビを見ている」といった背景が分かります。
つまり、活動量計はどれくらい動いたかを捉え、質問紙は何を、なぜ行ったかを捉える方法です。
測定方法は3つの質問で選ぶ
身体活動量の測定方法に迷ったら、測定目的、対象者の能力、再評価の必要性の順に判断します。
身体活動量測定の3ステップ
STEP 1:何を知りたいか
- 歩数や活動時間を知りたい → 活動量計
- 活動の種類や生活背景を知りたい → 質問紙・聞き取り
- 病棟内の離床状況を知りたい → 行動記録・直接観察
STEP 2:本人が測定に対応できるか
- 装着・充電・管理ができる → ウェアラブルを検討
- 質問を理解し、活動を思い出せる → 質問紙を検討
- 自己管理や回答が難しい → 家族情報・病棟観察を追加
STEP 3:再評価するか
- 介入前後を比較する → 同一機器・同一条件で測定
- 生活の変化を確認する → 同じ質問と期間で再聴取
- 日内変動を見る → 時間帯別の活動記録を追加
複数の方法を使う場合も、すべての指標を集める必要はありません。臨床判断に必要な指標を絞り、継続できる方法を選ぶことが重要です。
再評価では測定条件をそろえる
身体活動量の変化を比較するには、測定機器より先に測定条件をそろえる必要があります。
最低限、次の条件を記録します。
- 使用機器・機種
- 装着部位
- 測定期間
- 1日の装着時間
- 入浴・睡眠中の装着有無
- 非装着時間
- 平日・休日の区別
- 体調不良や通院などの特別な予定
- 歩行補助具の使用状況
初回は手首装着、再評価はポケット内というように条件が変わると、活動量の変化なのか測定方法の違いなのか分からなくなります。同じ機器を使っていても、装着時間が短ければ歩数や活動時間は少なく表示されます。
測定日は生活を代表する日を含める
身体活動量には日ごとの変動があります。外来受診日やリハビリ実施日だけを測ると、普段より活動量が多くなる可能性があります。
可能であれば複数日測定し、平日と休日、リハビリ実施日と非実施日など、生活の違いが分かる日を含めます。短期間しか測れない場合は、その日が普段どおりだったかを必ず確認します。
臨床では歩数・強度・座位・生活内容をセットで見る
身体活動量は、歩数だけでなく、活動強度、座位時間、活動内容をセットで見ると介入につながります。
| 視点 | 確認項目 | 介入につながる判断 |
|---|---|---|
| 量 | 歩数、活動時間、移動距離 | 活動機会が不足していないか |
| 強度 | SB、LPA、MVPAの時間 | 軽い活動や運動強度を増やせるか |
| 分布 | 活動する時間帯、連続座位時間 | 長時間の不活動を中断できるか |
| 内容 | 家事、移動、仕事、余暇、運動 | 本人にとって継続可能な活動を選べるか |
SB・LPA・MVPAの定義や活動例を詳しく確認したい場合は、SB・LPA・MVPAによる身体活動量評価をご覧ください。
記録は測定値と解釈を分けて書く
身体活動量の記録では、測定された事実と臨床的な解釈を分けると、再評価や申し送りで使いやすくなります。
記録例
測定条件:腕時計型活動量計を非利き手に7日間装着。入浴・充電時は非装着。平均装着時間13.2時間/日。
結果:平均3,240歩/日。午前中に歩数が集中し、14時以降の活動は少ない。本人聴取では午後に疲労感があり、昼食後はテレビ視聴を中心に過ごしていた。
解釈:午前中の移動機会は保たれているが、午後に長時間の不活動が生じている。総歩数の増加だけでなく、午後の座位時間を短時間の立位・屋内移動に置き換える必要がある。
方針:昼食後に2〜3分の立位または屋内歩行を追加し、同じ装着条件で2週間後に再評価する。
「歩数が少ないため活動量低下」とだけ書くと、原因や介入方法が伝わりません。時間帯、活動内容、症状、環境要因まで添えると、具体的な支援につながります。
よくある失敗は数値をそのまま比較すること
身体活動量評価では、測定条件や対象者の特性を確認せず、表示された数値をそのまま比較する失敗が起こりやすくなります。
| よくある失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 歩数だけで判断する | 座位時間や立位活動を見落とす | 活動強度、時間帯、生活内容を併記する |
| 機種の違う数値を比較する | アルゴリズムの違いが結果に影響する | 同一機器・同一設定で再評価する |
| 非装着時間を確認しない | 活動していても記録されない | 装着時間と外した理由を記録する |
| 質問紙の回答を実測値と同一視する | 想起誤差や社会的望ましさが入る | 客観値ではなく生活背景の情報として扱う |
| 平均値だけを見る | 曜日や時間帯による変動を見落とす | 日別・時間帯別の分布も確認する |
| 健常者の基準をそのまま当てはめる | 疾患、介助量、転倒リスクを無視する | 本人の初回値と安全性を基準に段階的に設定する |
再評価では増えた量より生活の変化を確認する
再評価では、歩数や活動時間が増えたかだけでなく、どの生活場面が変わったかを確認します。
次の順番で確認すると、数値の変化を解釈しやすくなります。
- 初回と同じ機器・装着条件か
- 装着時間や測定日数に違いがないか
- 体調不良や特別な外出がなかったか
- 歩数・座位時間・活動強度がどう変わったか
- どの時間帯の活動が変わったか
- どの生活行為が増減したか
- 疼痛、息切れ、疲労、転倒不安に変化がないか
活動量が増えていても、疼痛や疲労が悪化している場合は、単純に成功とは判断できません。反対に、総歩数が大きく変わらなくても、長時間座位が分断され、家事や役割活動が再開できていれば臨床的に意味のある変化です。
活動量を増やす前に安全性を確認する
身体活動量の測定結果は、数値目標を一律に押しつけるためではなく、安全に活動を増やす方法を考えるために使います。
次の状態がある場合は、活動量の増加より先に症状と安全性を確認します。
- 胸痛、強い息切れ、動悸
- めまい、ふらつき、失神前症状
- 安静時からの著しい頻脈・徐脈
- 血圧の大きな変動
- 発熱、感染症状、急な全身状態の悪化
- 疼痛や腫脹の増悪
- 転倒や転倒不安の増加
- 活動後に長く残る強い疲労
対象者に疾患や障害がある場合は、一般的な歩数目標より、初回測定値、症状、運動耐容能、生活目標をもとに個別の目標を設定します。
身体活動量の測定方法に関するよくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
身体活動量は何で測るのが最も正確ですか?
自由生活下の活動を客観的に把握するには、研究用加速度計が有力です。ただし、装着部位、解析方法、活動強度の判定基準によって結果が変わります。臨床では、必要な精度、費用、本人の装着能力を踏まえて選びます。
スマートウォッチの歩数は臨床評価に使えますか?
同じ機器と装着条件で経時変化を見る用途には使いやすい指標です。ただし、低速歩行、すり足、歩行器使用などでは歩数が少なく記録される可能性があります。絶対値だけで判断せず、歩行時間や生活状況も確認します。
活動量計がない施設ではどう評価しますか?
質問紙、活動日誌、離床時間、歩行回数、病棟ADL、家族・スタッフからの情報で評価できます。機器がなくても、同じ条件と確認項目で継続的に観察すれば、介入前後の変化を捉えられます。
測定期間は何日必要ですか?
身体活動量には日ごとの変動があるため、可能であれば複数日測定します。平日と休日、リハビリ実施日と非実施日など、異なる生活日を含めると実態を捉えやすくなります。短期間の場合は、その日が普段どおりだったかを記録します。
歩数が増えれば身体活動量は改善したと判断できますか?
歩数の増加だけでは判断できません。装着時間、座位時間、活動強度、活動内容、疼痛、息切れ、疲労も確認します。生活上必要な活動が増え、安全に継続できているかが重要です。
身体活動量は数値と生活場面を組み合わせて評価する
身体活動量の測定方法は、目的に応じて選びます。歩数や活動時間を客観的に比較したい場合は活動量計・加速度計、活動内容や生活背景を把握したい場合は質問紙・聞き取り、病棟での離床状況を確認したい場合は行動記録・直接観察が向いています。
臨床では、ウェアラブルと質問紙を競合する測定方法として扱うのではなく、互いの不足を補う情報として組み合わせます。再評価では、同一機器、同一装着位置、同程度の測定期間をそろえ、歩数だけでなく、座位時間、活動強度、時間帯、生活内容、安全性まで確認しましょう。
次の一手
身体活動量の評価全体を整理する場合は、次の順番で確認すると理解しやすくなります。
参考文献
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著者情報
リハビリくん
療養病院に勤務する理学療法士です。臨床で迷いやすい評価方法や記録の考え方を、現場で使いやすい形に整理して発信しています。
本記事は医療従事者向けの一般的な情報提供を目的としています。個別の評価・運動負荷は、疾患、全身状態、医師の指示、施設基準に応じて判断してください。

