ブローカ野・ウェルニッケ野の場所|失語症とMCAの関係

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ブローカ野・ウェルニッケ野の場所を失語症と結びつける

ブローカ野は主に優位半球の下前頭回後方部、ウェルニッケ野は側頭葉後部を中心とする言語関連領域です。失語症を理解するときは、場所を暗記するだけでなく、発話の流暢性、言語理解、復唱などの症状と結びつけることが重要です。

この記事では、ブローカ野・ウェルニッケ野の場所、ブローカ失語とウェルニッケ失語の違い、MCA領域との関係、リハ職が臨床で確認したい順番を整理します。脳画像と失語症状の対応を学びたいPT・OT・ST向けの記事です。

このページの位置づけ

このページは、脳ランドマークシリーズの言語中枢編です。脳の各部位を横断的に調べたい場合は、解剖ランドマーク辞典から関連する脳解剖記事を確認できます。

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失語症では2つの場所と3つの症状をまず押さえる

失語症の脳部位を整理するときは、ブローカ野・ウェルニッケ野の場所と、自発話・理解・復唱の3項目を対応させると理解しやすくなります。

ブローカ野は主に発話産生に関わる前頭葉の領域、ウェルニッケ野は主に音声言語の処理に関わる側頭葉後部の領域として説明されます。いずれも多くの場合は優位半球にあり、脳卒中ではMCA領域の病変と関連します。

失語症ランドマークで最初に押さえる言語関連領域
言語関連領域 主な場所 関わりやすい機能 障害時に目立ちやすい特徴
ブローカ野 優位半球の下前頭回後方部 発話産生、文法処理など 非流暢、努力性発話、発話量低下
ウェルニッケ野を含む側頭葉後部 優位半球の上側頭回後部周辺 音声言語の処理、語彙・意味処理など 理解障害、錯語、会話の不一致

ただし、言語機能はこの2か所だけで完結するものではありません。角回、縁上回、側頭葉の広い範囲、前頭葉、白質線維などがネットワークとして働くため、症状を一つの部位だけで決めつけないことが大切です。

ブローカ野は優位半球の下前頭回後方部にある

ブローカ野は、主に優位半球の下前頭回後方部に位置し、Brodmann area 44・45付近として説明されます。

脳表では前頭葉外側面の外側溝付近にあり、中心前回より前方に位置します。一般的には左半球にありますが、言語優位半球には個人差があるため、必ず左側と断定できるわけではありません。

ブローカ野を含む前頭葉言語ネットワークが障害されると、発話量が少ない、言葉が途切れる、短い文になる、発話に努力を要するといった特徴が現れやすくなります。ただし、発話障害の程度はブローカ野だけでなく、周辺皮質、運動関連領域、島皮質、白質線維などを含む病変範囲にも左右されます。

ブローカ野を確認するときのポイント
項目 確認内容
主な場所 優位半球の下前頭回後方部
代表的な区分 Brodmann area 44・45付近
関わる機能 発話産生、統語・文法処理など
目立ちやすい症状 非流暢、努力性発話、発話量低下
血管支配との関係 MCA上枝領域を中心に考える

ウェルニッケ野は優位半球の側頭葉後部を中心に見る

ウェルニッケ野は、古典的には優位半球の上側頭回後部、Brodmann area 22付近に位置する言語理解の中枢として説明されます。

ただし、現代の言語研究では、言語理解を上側頭回後部の一点だけで説明することは困難とされています。臨床では、上側頭回後部を中心に、中側頭回、側頭頭頂接合部などを含む広い言語ネットワークとして捉えるほうが適切です。

この領域を含む病変では、発話量が保たれて流暢に聞こえても、質問と回答がかみ合わない、単純な指示を理解できない、錯語が多いといった症状が現れることがあります。そのため、「話しているから理解も保たれている」と判断しないことが重要です。

ウェルニッケ野を含む側頭葉後部を確認するときのポイント
項目 確認内容
古典的な場所 優位半球の上側頭回後部
代表的な区分 Brodmann area 22付近
関わる機能 音声言語の処理、語彙・意味処理など
目立ちやすい症状 理解障害、錯語、発話内容の不整合
血管支配との関係 MCA下枝領域を中心に考える
ブローカ野とウェルニッケ野の場所を示した失語症ランドマーク図。ブローカ野は前頭葉後部、ウェルニッケ野は側頭葉後部を中心に示している。
ブローカ野は前頭葉、ウェルニッケ野は側頭葉後部を確認する。ただし、実際の言語機能は周辺領域を含むネットワークとして捉える。
ブローカ失語とウェルニッケ失語の見分け方を比較した図。自発話、理解、復唱の順に確認し、ブローカ失語は非流暢と努力性発話、ウェルニッケ失語は流暢な発話と理解障害、錯語が特徴であることを示している。
失語症は、自発話・理解・復唱を分けて確認し、病変部位だけでなく実際の症状と脳画像を照合する。

ブローカ失語とウェルニッケ失語は流暢性と理解で見分ける

ブローカ失語とウェルニッケ失語の違いは、まず発話の流暢性と言語理解を分けて確認すると整理しやすくなります。

ブローカ失語では非流暢で努力性の発話が目立ち、聴理解は発話に比べて保たれやすい傾向があります。ウェルニッケ失語では発話は流暢でも、理解障害や錯語が目立ちます。

ブローカ失語とウェルニッケ失語の基本的な違い
確認項目 ブローカ失語 ウェルニッケ失語
関連しやすい場所 優位半球の前頭葉言語領域 優位半球の側頭葉後部言語領域
自発話 非流暢で発話量が少ない 流暢で発話量が多いことがある
発話努力 目立ちやすい 目立ちにくい
聴理解 比較的保たれやすい 障害されやすい
錯語 みられることがある 目立ちやすい
病識 比較的保たれることがある 乏しいことがある
関連する血管領域 MCA上枝領域 MCA下枝領域

この表は典型例を整理したものです。実際には病変範囲、発症時期、重症度、白質損傷などによって症状が混在するため、流暢性だけで失語型を確定しないようにします。

ブローカ野・ウェルニッケ野はMCA領域と一緒に確認する

脳画像では、言語関連領域の場所とMCAの上枝・下枝を対応させると、症状を予測しやすくなります。

MCAは前頭葉、頭頂葉、側頭葉の外側面を広く支配します。優位半球のMCA上枝領域では非流暢性失語、下枝領域では流暢性失語が問題になりやすく、主幹部などの広範な病変では表出・理解の両方が重度に障害される可能性があります。

MCA病変と言語症状を対応させる目安
病変の見方 想定する言語症状 臨床で確認すること
MCA上枝領域 発話量低下、努力性発話、非流暢性 自発話、呼称、文の長さ、発話開始
MCA下枝領域 理解障害、錯語、流暢だが内容がかみ合わない 単純指示、会話理解、語の選択
広範な優位半球MCA領域 表出・理解ともに重度の障害 全失語の可能性、非言語的な意思表示

ただし、血管支配には個人差があり、脳浮腫、低灌流、白質病変なども症状に影響します。画像上の病変部位だけで失語症状を断定せず、実際の言語反応と照合することが必要です。

臨床では自発話・理解・復唱の順に3分で確認する

リハ場面では、自発話、理解、復唱の順に確認すると、言語症状の全体像を短時間で整理できます。

  1. 自発話を見る:名前、場所、体調などを尋ね、発話量、流暢性、努力性、錯語を確認します。
  2. 理解を見る:「目を閉じてください」「右手を上げてください」など、動作可能な単純指示から確認します。
  3. 復唱を見る:単語、短文の順に提示し、聞き取りと発話の再現が可能か確認します。

その後、呼称、読み、書字、ジェスチャー、Yes・No反応などを追加します。視覚障害、聴力低下、運動麻痺がある場合は、課題への反応を失語症だけで説明しないようにします。

療養病棟での実践ポイント

覚醒状態や聴力が変動する患者では、一度指示が通らなかっただけで理解障害と判断しません。眼鏡・補聴器の使用、覚醒度、疲労、周囲の雑音を整え、短い言葉とジェスチャーを併用して反応を再確認します。

失語症は構音障害・発語失行・意識障害と分けて考える

「うまく話せない」という所見だけでは、失語症と構音障害、発語失行を区別できません。

発話しにくい患者で確認したい主な違い
状態 主な問題 確認の手掛かり
失語症 言語の表出・理解・復唱・呼称など 話す以外に、理解、読み、書字にも問題がないか
構音障害 発声・構音運動 言葉の内容や理解は保たれているか
発語失行 発話運動の企画・プログラミング 構音の探索、誤りの非一貫性、発話開始困難がないか
意識・注意の低下 刺激への反応や課題への持続 言語以外の刺激にも反応が不安定ではないか
聴力低下 音声の入力 筆談や視覚提示では理解できるか

PT・OTが移乗や歩行練習を行う際も、指示が通らない原因を失語症だけに限定せず、覚醒、注意、聴力、視覚、失行、認知機能などを合わせて確認します。

よくある失敗は場所だけで失語型を決めること

失語症ランドマークを臨床で活用するには、脳部位を覚えるだけでなく、症状とのずれを確認することが重要です。

  • ブローカ野を「話せない場所」とだけ覚える:発話の流暢性だけでなく、理解、復唱、呼称も確認します。
  • 流暢に話しているため問題ないと判断する:ウェルニッケ失語では、流暢でも会話理解や発話内容に問題がみられます。
  • 病変部位だけで失語型を確定する:実際の症状は病変の広がりや言語ネットワークの損傷によって変わります。
  • 指示が通らない原因をすべて失語症にする:覚醒、注意、聴力、失行、認知機能も確認します。
  • 失語症と構音障害を混同する:言語内容の障害か、発声・構音運動の障害かを分けて考えます。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

ブローカ野は脳のどこにありますか?

ブローカ野は、主に優位半球の下前頭回後方部にあります。一般的には左前頭葉のBrodmann area 44・45付近として説明されます。

ウェルニッケ野は脳のどこにありますか?

古典的なウェルニッケ野は、主に優位半球の上側頭回後部、Brodmann area 22付近に位置すると説明されます。ただし、言語理解には側頭葉や頭頂葉を含む広いネットワークが関わります。

ブローカ失語とウェルニッケ失語の違いは何ですか?

ブローカ失語は非流暢で努力性発話が目立ち、理解は発話に比べて保たれやすい傾向があります。ウェルニッケ失語は発話が流暢でも、理解障害や錯語が目立ちやすい点が異なります。

ブローカ野とウェルニッケ野はMCAのどの枝に関係しますか?

一般に、ブローカ野を含む前頭葉外側面はMCA上枝、ウェルニッケ野を含む側頭葉後部はMCA下枝との関係で整理されます。ただし、実際の症状は病変範囲によって異なります。

失語症は左半球の病変でしか起こりませんか?

多くの人では左半球が言語優位半球であるため、左半球病変で失語症が起こりやすくなります。ただし、言語優位半球には個人差があり、右半球病変で失語症が生じる場合もあります。

ブローカ野・ウェルニッケ野は症状とセットで覚える

ブローカ野は主に優位半球の下前頭回後方部、ウェルニッケ野は古典的には優位半球の上側頭回後部に位置します。

ブローカ失語では非流暢性と努力性発話、ウェルニッケ失語では流暢な発話と理解障害が目立ちやすいことが基本です。ただし、実際の言語機能は広いネットワークによって成り立つため、場所だけで失語型を決めず、自発話、理解、復唱、呼称、読み書きを分けて確認します。

次の一手

言語関連領域を脳画像と結びつけるには、MCAの支配領域と頭頂葉の言語関連領域を続けて確認すると整理しやすくなります。


参考文献

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著者情報

この記事は、脳卒中認定理学療法士・登録理学療法士として脳卒中リハや高齢者リハに関わる筆者が、医療職向けに作成しています。画像診断を行うためではなく、脳画像と臨床症状を結びつけ、リハ評価や安全な意思疎通に活かすための脳ランドマークとして整理しています。