【図解】発熱はなぜ起こる?炎症反応と体温上昇の仕組み

臨床手技・プロトコル
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発熱はなぜ起こるのか

発熱は、感染や炎症に反応した身体が、脳の体温設定値を一時的に高くすることで起こる防御反応です。

細菌やウイルスなどに免疫細胞が反応すると、サイトカインと呼ばれる情報伝達物質が放出されます。その影響でプロスタグランジンE2(PGE2)が産生され、視床下部にある体温調節中枢へ作用します。

視床下部の体温設定値が上がると、身体は現在の体温を「低すぎる」と判断します。そのため、寒気、ふるえ、皮膚血管の収縮などによって熱を作り、体温を新しい設定値まで上げようとします。

この記事のポイント

発熱は、身体が無秩序に熱くなる現象ではありません。免疫反応によって視床下部の体温設定値が上がり、身体が意図的に熱を作っている状態です。

この記事では、発熱が起こる仕組み、寒気やふるえが生じる理由、解熱時に汗をかく理由、発熱と高体温の違いを整理します。

発熱とは

発熱とは、感染や炎症などをきっかけとして、視床下部の体温設定値が通常より高い位置へ変更された状態です。

体温が高い状態には、発熱だけでなく熱中症などでみられる高体温も含まれます。ただし、両者では体温が上がる仕組みが異なります。

発熱と高体温の基本的な違い
項目 発熱 高体温
体温設定値 高い位置へ変更される 基本的に変更されない
主な仕組み 感染・炎症に伴う免疫反応 熱産生の増加や放熱不足
主な例 肺炎、尿路感染、術後炎症など 熱中症、悪性高熱症など
寒気・ふるえ 上昇期に起こりやすい 典型的ではない

発熱では、身体が高く設定された目標体温へ近づこうとします。一方、高体温では、体温設定値が変わっていないにもかかわらず、熱が身体に蓄積します。

そのため、「体温が高い」という数値だけでは、発熱と高体温を区別できません。発症状況、周囲の環境、感染症状、意識状態、発汗の有無などを合わせて確認する必要があります。

発熱が起こる仕組み

発熱が起こる仕組みを感染・炎症、サイトカイン、PGE2、視床下部、体温上昇と発汗の流れで示した図
感染や炎症からサイトカイン、PGE2、視床下部を経て体温が変化する流れ

発熱は、感染や炎症が起きた直後に体温が直接上がるわけではありません。免疫反応と脳の体温調節機構を介して起こります。

発熱が起こる基本的な流れ
段階 身体で起きること
1.感染・炎症 細菌やウイルスの侵入、組織損傷などによって炎症反応が始まる
2.免疫反応 免疫細胞が反応し、炎症性サイトカインを放出する
3.PGE2産生 炎症性サイトカインの作用により、PGE2の産生が促される
4.視床下部への作用 PGE2が視床下部の体温調節機構に作用する
5.設定値の上昇 身体が目標とする体温が通常より高い位置へ変更される
6.熱産生・放熱抑制 ふるえや血管収縮によって体温を上昇させる

発熱に関係する代表的な炎症性サイトカインには、インターロイキン1、インターロイキン6、腫瘍壊死因子などがあります。

これらのサイトカインは、PGE2の産生を促します。PGE2が視床下部へ作用すると、体温調節中枢が目標とする体温が引き上げられます。

つまり、発熱の中心となる流れは、感染・炎症からサイトカイン、PGE2、視床下部へ情報が伝わることです。

視床下部と体温調節中枢の役割

体温は、主に脳の視床下部によって調整されています。

視床下部は、身体の内部や皮膚から送られる温度情報を受け取り、熱を作る反応と熱を逃がす反応のバランスを調整します。

視床下部が調整する主な体温反応
目的 主な身体反応
体温を上げる ふるえ、筋緊張の増加、皮膚血管収縮、行動による保温
体温を下げる 発汗、皮膚血管拡張、活動量の低下、涼しい環境を求める行動

通常は、熱産生と放熱が釣り合うことで体温が一定範囲に保たれます。

発熱時には、PGE2の作用によって体温設定値が引き上げられます。設定値が上がった直後は、実際の体温がそれまでと同じでも、身体にとっては「目標より低い状態」です。

その結果、身体は体温を上げる反応を開始します。

発熱の3つの段階

発熱の経過は、主に上昇期、高温期、解熱期の3段階に分けて考えると理解しやすくなります。

発熱の3段階と身体反応
段階 体温設定値 起こりやすい反応
上昇期 高い位置へ上がる 寒気、悪寒、ふるえ、皮膚血管収縮
高温期 高い位置で維持される 体温が高い状態、倦怠感、脈拍・呼吸数の増加
解熱期 通常の位置へ下がる 発汗、皮膚血管拡張、体温低下

同じ発熱中でも、患者さんが今どの段階にいるかによって、寒気、皮膚温、発汗などの所見は変わります。

体温の数値だけでなく、悪寒や発汗などの変化も確認すると、発熱の経過を捉えやすくなります。

発熱時に寒気やふるえが起こる理由

発熱の上昇期に寒気やふるえが起こるのは、身体が体温を高い設定値まで上げようとしているためです。

たとえば、実際の体温が37℃であっても、視床下部の設定値が39℃へ上がれば、身体は現在の37℃を「寒い」と判断します。

そのため、次の反応が起こります。

  • 皮膚血管の収縮:皮膚から逃げる熱を減らす
  • ふるえ:筋肉を細かく収縮させて熱を作る
  • 悪寒:寒いと感じ、衣類や布団で身体を温めようとする
  • 皮膚温の低下:末梢血管の収縮によって手足が冷たくなることがある

したがって、寒気があるからといって、身体の深部体温が低いとは限りません。むしろ、これから体温が上昇する段階でみられることがあります。

臨床での見方

悪寒やふるえが強い時点では、体温がまだ上昇途中の可能性があります。測定した体温だけでなく、その後の推移も確認します。

解熱時に汗をかくのはなぜか

感染や炎症反応が落ち着いたり、解熱薬が作用したりすると、視床下部の体温設定値が通常の位置へ戻ります。

設定値が下がると、今度は現在の体温が目標より高い状態になります。身体は余分な熱を外へ逃がすため、発汗と皮膚血管の拡張を起こします。

解熱時に起こる反応
反応 役割
発汗 汗が蒸発するときに熱を奪い、体温を下げる
皮膚血管拡張 皮膚の血流を増やし、体表から熱を逃がす
熱産生の低下 ふるえや筋緊張が減り、身体が作る熱を減らす

発汗が多い場合は、水分と電解質が失われます。特に高齢者や経口摂取量が少ない患者さんでは、脱水、血圧低下、頻脈などに注意が必要です。

発熱にはどのような意味があるのか

発熱は、感染に対する身体の防御反応の一つです。

体温が上昇することで、一部の病原体が増殖しにくくなり、免疫細胞の働きが促進される可能性があります。

ただし、体温が高ければ高いほどよいわけではありません。発熱によって代謝量や酸素消費量が増え、心拍数や呼吸数が上昇します。

心肺機能が低下している患者さん、高齢者、脱水がある患者さんでは、発熱による身体的負担が大きくなる場合があります。

発熱は「防御反応」と「身体への負担」の両面があります

発熱そのものを一律に悪い反応と捉えるのではなく、原因、体温の高さ、持続時間、全身状態を合わせて評価します。

発熱が起こる主な原因

発熱の原因は感染症だけではありません。

発熱を起こす主な原因
原因 主な例 確認したい所見
感染 肺炎、尿路感染、創部感染など 咳、痰、呼吸状態、排尿症状、創部所見
非感染性炎症 手術後、外傷、自己免疫疾患など 疼痛、腫脹、発赤、手術後の経過
薬剤 薬剤熱など 薬剤の開始・変更時期、皮疹、他の症状
悪性腫瘍 腫瘍熱など 発熱の経過、体重減少、基礎疾患
中枢神経障害 脳損傷後の中枢性発熱など 神経症状、感染所見の有無、発症経過

脱水は体温上昇を助長することがありますが、脱水だけで典型的な炎症性発熱の機序が生じるとは限りません。暑熱環境や熱中症による体温上昇は、体温設定値が上がる発熱とは分けて考えます。

発熱時に脈拍や呼吸数が増える理由

体温が上がると、身体の代謝が活発になり、酸素消費量や二酸化炭素産生量が増加します。

そのため、全身へ酸素を運ぶために心拍数が増え、二酸化炭素を排出するために呼吸数が増えることがあります。

発熱時に確認したいバイタル変化
項目 変化する理由・注意点
脈拍 代謝亢進や脱水によって増加しやすい
呼吸数 酸素需要や二酸化炭素産生の増加、肺炎などで増加する
血圧 脱水や末梢血管拡張、循環不全によって低下することがある
SpO2 発熱だけでは大きく低下しにくいが、肺炎などがあると低下する
意識状態 高齢者や重症感染では、傾眠やせん妄などの変化が現れることがある

体温だけを確認していると、呼吸状態や循環状態の悪化を見落とす可能性があります。発熱時は、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2、意識状態をセットで確認します。

リハビリ場面で発熱を確認したときの考え方

発熱がある患者さんに対して、体温だけでリハビリの実施可否を決めることはできません。

体温の推移に加えて、意識、呼吸、循環、倦怠感、食事・水分摂取量、感染を疑う所見などを確認します。

発熱時にリハビリ職が確認したい項目
確認項目 見るポイント
体温の経過 いつから上がったか、上昇中か、解熱傾向か
自覚症状 悪寒、倦怠感、息苦しさ、痛み、めまい
呼吸 呼吸数、SpO2、努力呼吸、咳、痰
循環 脈拍、血圧、顔色、冷汗、末梢冷感
意識 反応性、傾眠、落ち着きのなさ、普段との違い
水分・栄養 飲水量、食事量、尿量、発汗量

意識状態の変化、呼吸数増加、SpO2低下、血圧低下、強い倦怠感などがある場合は、運動を進めず、医師や看護師へ共有します。

発熱時の具体的な延期判断、観察項目、報告方法については、次の記事で5分フローとして整理しています。

発熱時の実際の動き方を確認する

通常・軽負荷・延期の判断、感染サイン、SBAR報告、記録例を確認できます。

発熱・感染疑い時の5分フローを見る

発熱時に注意したいサイン

次の所見を伴う場合は、発熱の原因や重症度を慎重に評価する必要があります。

  • 意識レベルの低下や急な反応性の変化
  • 呼吸数の増加や強い呼吸苦
  • SpO2の低下
  • 血圧低下や著しい頻脈
  • 強い悪寒や急激な全身状態の悪化
  • 水分摂取困難や尿量低下
  • けいれん、項部硬直、強い頭痛
  • 暑熱環境下での意識障害や異常な高体温

特に意識、呼吸、循環に変化がある場合は、体温の高さだけに注目せず、施設の手順に従って速やかに報告します。

発熱を理解するときの注意点

体温が高ければすべて発熱とは限らない

運動直後、暑熱環境、熱中症などでも体温は上昇します。感染や炎症による発熱と、放熱不足による高体温は機序が異なります。

発汗していないから脱水がないとは限らない

高齢者では発汗反応や口渇感が弱い場合があります。飲水量、尿量、血圧、脈拍、口腔内の乾燥などを合わせて確認します。

解熱後すぐに全身状態が回復するとは限らない

体温が低下しても、感染、炎症、脱水、倦怠感などが残っていることがあります。解熱したという理由だけで、直ちに通常負荷へ戻さないことが大切です。

体温だけで重症度を判断しない

高齢者や免疫機能が低下している患者さんでは、重症感染であっても高い発熱を示さない場合があります。普段との違い、意識、呼吸数、血圧などを重視します。

まとめ:発熱は体温設定値が上がることで起こる

発熱は、感染や炎症に対する身体の防御反応です。

免疫細胞から放出されたサイトカインの影響でPGE2が産生され、視床下部へ作用すると、身体が目標とする体温設定値が高くなります。

設定値が上がる上昇期には、寒気、ふるえ、皮膚血管収縮が起こります。設定値が通常へ戻る解熱期には、発汗と皮膚血管拡張によって熱を逃がします。

臨床では、発熱と高体温を分けて考え、体温だけでなく、意識、呼吸、循環、水分摂取量、発熱の経過を合わせて確認することが重要です。

よくある質問

各質問をタップすると回答が開きます。

発熱は身体にとって悪い反応ですか?

発熱は、感染や炎症に対する身体の防御反応の一つです。ただし、代謝量や酸素消費量を増加させるため、心肺機能が低下している患者さんや高齢者では身体的負担になることがあります。

発熱時に寒気がするのはなぜですか?

視床下部の体温設定値が高くなると、現在の体温が目標より低いと判断されるためです。身体はふるえや皮膚血管収縮によって熱を作り、設定された体温まで上げようとします。

熱が下がるときに汗をかくのはなぜですか?

体温設定値が通常へ戻ると、現在の体温が目標より高い状態になります。身体は発汗と皮膚血管拡張によって余分な熱を外へ逃がします。

発熱と熱中症は同じですか?

同じではありません。発熱では視床下部の体温設定値が上がります。熱中症などの高体温では、設定値が変わらないまま、熱産生の増加や放熱不足によって体温が上がります。

発熱時に脈拍や呼吸数が増えるのはなぜですか?

体温上昇に伴って代謝量、酸素需要、二酸化炭素産生量が増えるためです。ただし、肺炎、脱水、循環不全などでも増加するため、発熱だけが原因と決めつけないことが重要です。

発熱があればリハビリは中止ですか?

発熱だけで一律に中止するのではなく、施設基準や医師の指示を前提として、体温の推移、意識、呼吸、循環、倦怠感、水分摂取量などを合わせて判断します。全身状態が悪い場合は無理に実施せず、医師や看護師へ共有します。

次に読みたい記事

発熱の仕組みを理解したあとは、実際の臨床場面で何を確認し、どのように報告するかを整理しておくと判断しやすくなります。


参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

医療機関・介護福祉施設・訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、評価、リスク管理、褥瘡・創傷ケア、脳卒中リハビリテーションなどの情報を発信しています。