発熱が起こる仕組みを図解|サイトカイン・PGE2・視床下部の働き

臨床手技・プロトコル
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発熱はなぜ起こる?体温が上がる仕組み

発熱は、感染や炎症に伴う免疫反応が脳の体温調節機構へ伝わり、身体が目標とする体温(設定値)が一時的に高くなることで起こります。身体が無秩序に熱くなるのではなく、熱を作る反応と熱を逃がさない反応が働いて体温が上昇します。

中心となるのは、炎症性サイトカイン、プロスタグランジンE2(PGE2)、視床下部の体温調節回路です。設定値が上がると寒気やふるえが起こり、設定値が下がると発汗や皮膚血管拡張によって体温が低下します。

この記事では、発熱の生理学的メカニズム、寒気・ふるえ・発汗が起こる理由、発熱と高体温の違いを解説します。さらに、理学療法士などのリハビリ職が臨床で確認したい観察所見も整理します。

この記事の結論

発熱の基本的な流れは、感染・炎症 → 炎症性サイトカイン → PGE2 → 視床下部の体温調節回路 → 熱産生の増加・放熱の抑制 → 体温上昇です。寒気は体温を上げる反応、解熱時の発汗は体温を下げる反応として理解できます。

なお、発熱時のリハビリ実施・延期判断については、発熱・感染疑い時の初期対応5分フローで具体的に整理しています。

発熱のメカニズム|サイトカイン・PGE2・視床下部

発熱は、末梢の炎症情報が脳へ伝わり、体温調節に関わる神経回路の活動が変化することで起こります。特に、PGE2が視床下部のEP3受容体を介して作用する経路が重要です。

発熱の仕組みと3段階の体温変化を示す図。感染・炎症からサイトカイン、PGE2、視床下部への作用を経て体温が上昇する流れと、上昇期・高温期・解熱期における設定値と実際の体温の推移を示す
図:発熱のメカニズムと3段階の体温変化。感染・炎症に伴うサイトカインやPGE2の作用によって体温調節が変化し、上昇期には寒気・ふるえ、解熱期には発汗などがみられます。下段の体温曲線と温度は説明用の模式図であり、個々の患者の経過や診断基準を示すものではありません。

① 感染・炎症によってサイトカインが放出される

細菌やウイルスなどの病原体、あるいは組織損傷に伴う刺激を免疫細胞が認識すると、炎症反応が始まります。

発熱に関係する代表的な炎症性サイトカインには、次のものがあります。

  • インターロイキン1(IL-1)
  • インターロイキン6(IL-6)
  • 腫瘍壊死因子(TNF)

これらのサイトカインは炎症反応を調節するとともに、脳へ発熱シグナルを伝える過程に関与します。

② PGE2の産生が促される

全身性炎症に伴う発熱では、炎症性サイトカインが脳血管内皮細胞の受容体に作用し、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)やプロスタグランジンE合成酵素などを介してPGE2の産生を促す経路が重要です。

ただし、すべての発熱が脳血管内皮細胞でのPGE2産生だけで説明できるわけではありません。炎症の部位や状況によっては、末梢由来の炎症シグナルやPGE2が関与する可能性も検討されています。

したがって、PGE2は発熱を引き起こす重要なメディエーターですが、その産生部位や情報伝達経路は炎症の状況によって異なる場合があります。

③ PGE2が視床下部のEP3受容体に作用する

PGE2は、視床下部の視索前野に存在するEP3受容体を介して神経回路の活動を変化させます。

その結果、脳幹や交感神経系などを介した熱産生・放熱調節が変化し、身体は通常より高い体温を維持する方向へ働きます。

ここでいう「体温の設定値」は、体温調節の働きを理解するための生理学的な概念です。脳内に単一の温度が数値として保存されているという意味ではありません。

④ 熱産生が増え、放熱が抑えられる

体温調節回路の活動が変化すると、身体は熱を作り、逃がさない方向へ反応します。

発熱時に起こる主な身体反応
反応 役割
ふるえ 骨格筋の反復的な収縮によって熱を作る
皮膚血管収縮 皮膚血流を減らして放熱を抑える
行動による保温 布団をかける、身体を丸めるなどして熱損失を減らす

つまり、発熱は体温が上がった結果として視床下部が反応するだけではなく、体温調節回路の変化によって熱産生と放熱のバランスが変わり、体温が上昇する現象です。

発熱の3段階|上昇期・高温期・解熱期

発熱の経過は、上昇期・高温期・解熱期の3段階で整理すると理解しやすくなります。各段階では体温調節の状態が異なり、寒気・ふるえ・発汗などの所見も変化します。

ただし、すべての患者さんが典型的な3段階を明確に示すわけではありません。解熱薬の使用や原因疾患、体温調節機能などによって経過は異なります。

発熱の3段階と身体反応
段階 体温調節の状態 主な身体反応
上昇期 設定値が高くなる 寒気、ふるえ、皮膚血管収縮、末梢冷感
高温期 高い設定値に近づく 体温上昇、倦怠感、頻脈など
解熱期 設定値が通常へ戻る 発汗、皮膚血管拡張、体温低下

上昇期:寒気やふるえが起こる

上昇期に寒気やふるえが起こるのは、身体が通常より高い体温を目標としているためです。

例えば、実際の体温が37℃であっても、体温調節の設定値がそれより高い位置へ変化すると、身体は熱を増やす方向へ反応します。

その結果、皮膚血管が収縮して手足が冷たくなり、ふるえによって熱産生が増えます。

したがって、寒気や末梢冷感があるからといって、深部体温が低いとは限りません。むしろ、体温が上昇する過程でみられることがあります。

高温期:体温が高い状態で維持される

実際の体温が高い設定値に近づくと、上昇期の強い寒気やふるえが軽減することがあります。

一方、体温が高い状態では代謝負荷が増え、倦怠感、心拍数の増加、呼吸数の増加などがみられる場合があります。

寒気がなくなったことだけでは、感染や炎症が改善したとは判断できません。

解熱期:発汗によって熱を逃がす

炎症反応の変化や解熱薬の作用などによって体温の設定値が下がると、現在の体温が目標より高い状態になります。

身体は皮膚血管を拡張させ、発汗などによって熱を逃がします。汗が蒸発するときに体表から熱が奪われ、体温低下につながります。

ただし、発汗は必ず起こるわけではなく、発汗の有無だけで解熱期を判断することはできません。

大量の発汗がある場合は、水分・電解質の喪失や血圧低下に注意が必要です。特に高齢者や経口摂取量が少ない患者さんでは、解熱後も全身状態を確認します。

発熱と高体温の違い|熱中症との関係

発熱と高体温は、どちらも体温が高くなる状態ですが、体温調節の設定値が上昇するかどうかが基本的な違いです。

発熱と高体温の違い
項目 発熱 高体温
体温設定値 上昇する 基本的に上昇しない
主な仕組み 炎症シグナルによる体温調節反応の変化 熱産生の増加や放熱不足による熱の蓄積
代表例 肺炎、尿路感染、非感染性炎症など 重症熱中症、悪性高熱症など
寒気・ふるえ 上昇期にみられることがある 設定値上昇による典型的な反応ではない
対応の基本 原因と全身状態を評価し、必要な治療を行う 原因に応じて迅速な冷却などを行う

熱中症は高体温だけを意味するわけではない

熱中症は、暑熱環境や身体活動などに伴って生じる健康障害の総称です。熱疲労、熱失神、熱けいれん、熱射病などが含まれ、必ずしもすべての病態で著しい高体温を示すわけではありません。

特に熱射病は、重度の高体温や中枢神経機能障害などを伴う生命に関わる状態です。

発熱と高体温は仕組みが異なりますが、体温の数値や発汗の有無だけで確実に区別することはできません。感染症状、暑熱曝露、運動歴、服薬状況、意識状態などを合わせて確認します。

臨床上の注意:重症熱中症が疑われる場合

暑熱曝露や運動後の体調不良に意識障害などを伴う場合は、通常の発熱として経過観察せず、直ちに活動を中止し、救急要請や迅速な冷却などの緊急対応を優先します。発汗していることだけで重症熱中症を否定してはいけません。

発熱の原因|感染症以外でも起こる?

発熱は感染症だけでなく、非感染性炎症、薬剤、悪性腫瘍などでも起こります。原因によって必要な検査や治療は異なります。

発熱の主な原因と確認したい所見
原因 代表例 確認したい情報
感染症 肺炎、尿路感染、創部感染 咳、痰、呼吸状態、排尿症状、創部所見
非感染性炎症 術後炎症、外傷、自己免疫疾患 発症経過、疼痛、腫脹、発赤
薬剤 薬剤熱 薬剤の開始・変更時期、皮疹、随伴症状
悪性腫瘍 腫瘍に関連する発熱 基礎疾患、体重変化、発熱の経過
中枢神経障害 脳損傷後の中枢性発熱 神経学的所見、発症時期、感染など他原因の評価

脳卒中後に発熱がみられた場合でも、直ちに中枢性発熱と判断することはできません。感染症など他の原因を十分に評価する必要があります。

また、脱水は体温上昇や循環状態の悪化に関与することがありますが、脱水だけで典型的な炎症性発熱の機序が生じるとは限りません。

発熱が身体に与える影響|脈拍・呼吸数・代謝

発熱には免疫防御に関わる側面がある一方、代謝や心肺機能への負担を増やす側面もあります。

体温上昇に伴って代謝活動や酸素消費量が増加することがあり、心拍数や呼吸数も増える場合があります。ただし、変化の程度は患者さんの状態によって異なります。

発熱時に確認したい生理学的変化
項目 起こりうる変化 注意点
代謝 エネルギー消費・酸素需要の増加 全身の消耗、栄養状態
脈拍 頻脈 脱水、疼痛、不整脈、感染なども考慮
呼吸数 増加 肺炎、低酸素血症、代謝性異常なども考慮
血圧 脱水や循環障害に伴う低下 普段の血圧との差、末梢循環
SpO2 原因疾患により低下する場合がある 呼吸器疾患や換気・酸素化の問題
意識 傾眠、せん妄、反応性の変化 重症感染、低酸素、脱水などを考慮

発熱そのものが必ずSpO2を低下させるわけではありません。また、頻脈や頻呼吸を「熱があるから」と説明してしまうと、肺炎や循環不全などを見落とすおそれがあります。

発熱は身体にとってよい反応なのか

発熱は免疫反応の一部であり、一部の病原体の増殖抑制や免疫機能の調整に関与する可能性があります。

一方、発熱に伴う代謝負荷の増加は、高齢者、心肺機能が低下している患者さん、脱水や低栄養がある患者さんなどにとって負担となる場合があります。

したがって、発熱を一律に有害と捉えることも、熱を下げないほうがよいと決めつけることも適切ではありません。解熱薬の使用や原因疾患の治療は、患者さんの状態に応じた医学的判断が必要です。

リハビリ場面で発熱を確認したときの観察ポイント

リハビリ場面では、発熱の段階を推測するだけでなく、体温の推移と意識・呼吸・循環の変化を組み合わせて確認することが重要です。

体温が高いという理由だけで実施可否を一律に決めず、医師の指示、施設の基準、感染対策、原因疾患、全身状態を踏まえて判断します。

発熱の段階・観察所見・次の行動
状況 観察所見 次の行動
体温上昇中が疑われる 悪寒、ふるえ、末梢冷感 体温の推移、感染を疑う症状、全身状態を確認する
高温が持続している 倦怠感、頻脈、頻呼吸 意識・呼吸・循環を評価し、負荷の可否を確認する
解熱中が疑われる 発汗、皮膚血管拡張、体温低下 水分摂取量、血圧、脈拍、めまいを確認する
解熱後も症状が残る 頻呼吸、SpO2低下、強い倦怠感 発熱だけが原因と考えず、運動を進めずに医療者へ共有する
急な全身状態の悪化 意識障害、呼吸困難、血圧低下など 活動を中止し、施設の緊急対応手順に従って速やかに対応する

この表は観察と対応を整理するためのものであり、発熱の段階や原因を確定する診断基準ではありません。

体温だけでなく普段との違いを確認する

高齢者や免疫機能が低下している患者さんでは、重症感染であっても高い発熱を示さない場合があります。

そのため、普段の意識状態、呼吸数、血圧、脈拍、食事・水分摂取量、尿量などと比較することが重要です。

特に新たな意識障害、強い呼吸困難、SpO2低下、血圧低下、急激な全身状態の悪化などがある場合は、運動を進めず、速やかな報告や緊急対応を優先します。

リハビリ実施・延期判断は別記事で確認する

本記事は発熱の生理学的な理解を中心としています。実際のリハビリ実施可否は、発熱の原因、感染対策、全身状態、医師の指示、施設基準などを踏まえて判断します。

発熱時の初期対応を5分で確認する

リハビリ前の観察項目、通常実施・軽負荷・延期の考え方、SBAR報告、記録例を整理しています。

発熱・感染疑い時の5分フローを見る

発熱を理解するときのよくある誤解

発熱に関する誤解と正しい理解
よくある誤解 正しい理解
体温が高ければすべて感染性発熱 非感染性炎症や高体温なども考える必要がある。
寒気があるから体温が低い 設定値の上昇に伴い、体温が上昇途中のことがある。
汗をかいたら感染が治った 解熱しても原因疾患が改善したとは限らない。
熱が下がれば通常負荷でリハビリできる 意識・呼吸・循環・倦怠感などの再評価が必要。
高熱でなければ重症ではない 重症感染でも高い発熱を示さない場合がある。

よくある質問

発熱時に寒気やふるえが起こるのはなぜですか?

視床下部の体温調節機構が通常より高い体温を目標とするためです。身体はふるえで熱を作り、皮膚血管収縮によって放熱を抑えます。

解熱すると汗をかくのはなぜですか?

体温の設定値が下がると、現在の体温が目標より高い状態になるためです。発汗や皮膚血管拡張によって熱を逃がします。ただし、必ず発汗するわけではありません。

発熱と高体温はどう違いますか?

発熱は体温調節の設定値が上昇する現象です。一方、高体温は設定値の上昇を伴わず、熱産生の増加や放熱不足によって体温が上昇する状態です。

発熱がなくても感染症の可能性はありますか?

あります。特に高齢者や免疫機能が低下している患者さんでは、感染症があっても典型的な発熱を示さない場合があります。意識、呼吸、循環、食事量など、普段との変化も確認します。

まとめ|発熱は体温調節回路の変化によって起こる

発熱は、感染や炎症に伴う免疫反応が脳の体温調節機構に伝わり、身体が通常より高い体温を維持する方向へ働くことで起こります。

炎症性サイトカイン、PGE2、視床下部のEP3受容体を介した神経回路が重要な役割を担い、上昇期には寒気やふるえ、解熱期には発汗や皮膚血管拡張がみられます。

臨床では、発熱と高体温を区別しながら、体温の数値だけでなく、意識・呼吸・循環・水分摂取量・発熱の経過を合わせて確認することが重要です。

次の一手|発熱時の初期対応を確認する

発熱の仕組みを理解したら、次はリハビリ場面での観察・判断・報告を整理しましょう。

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikunblogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床判断、記録、リスク管理などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動に取り組んでいます。本記事では、発熱の生理学的な仕組みと、臨床で観察すべき変化を区別して解説しています。

保有資格:脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級

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