結論|胸痛は「止める→観察→ECG→報告→記録」で固定します
リハビリ中の胸痛で新人 PT が迷いやすいのは、胸痛の正体を当てようとして「いま介入を続けるか、止めるか」の判断が遅れる場面です。まずは診断ではなく、中止 → 観察 → 12 誘導 ECG の確認 → SBAR で報告 → 記録の順番を固定します。
この記事では、胸痛が出た直後に PT が現場で使える 5 分フローに絞って整理します。詳しい心電図読影や疾患鑑別は深掘りせず、当日の離床・運動を 通常/軽負荷/延期へ落とし込む判断の型をそろえます。
新人 PT の急変対応をまとめて確認
胸痛だけでなく、バイタル異常・息切れ・離床中止の判断まで、まず全体像を押さえたい場合はこちらです。
この記事で決めること|胸痛を当日判断に落とし込む
この記事で決めるのは、胸痛の診断名ではなく、リハビリを 続ける/負荷を下げる/延期するのどれにするかです。痛みの強さだけで判断せず、随伴症状・バイタル推移・ECG確認・報告内容をセットでそろえます。
- 胸痛が出た直後の 5 分フロー
- 通常/軽負荷/延期の 3 段階判断
- SBAR 報告と記録の最小テンプレ
新人向け 5 分フロー|胸痛を見たら順番を変えない
胸痛対応は、毎回確認順が変わるほど抜けが増えます。まず運動・離床を止めて安静を確保し、痛みの特徴、随伴症状、バイタル推移、12 誘導 ECG の確認状況をそろえてから報告します。

- 中止:運動・離床を止め、安静を確保する
- 観察:部位、放散、強さ、持続、冷汗、悪心、呼吸苦を確認する
- バイタル:HR、BP、SpO2、RR の推移を見る
- ECG:12 誘導 ECG の実施状況と共有所見を確認する
- 報告・記録:SBAR で相談し、当日判断と次の条件を残す
当日判断は 3 段階|通常/軽負荷/延期で揃える
胸痛は「痛みが軽いから大丈夫」と判断すると危険です。痛みの性質、随伴症状、バイタル変化、安静後の変化を見て、当日の対応を 3 段階に分けます。
| 区分 | 見るポイント | 対応 | 報告 |
|---|---|---|---|
| 通常 | 一過性、随伴症状なし、バイタル安定 | 低負荷から再開し、短時間で再評価 | 申し送りで共有 |
| 軽負荷 | 再現性あり、不安が強い、軽い息切れを伴う | 強度を下げ、休息と観察を増やす | 先輩または看護師へ早めに共有 |
| 延期 | 安静時も持続、放散痛、冷汗、悪心、呼吸苦、BP低下など | 離床・運動は中止し、安静で相談する | 医師へ至急相談 |
確認する聞き方|痛みを報告できる情報に変える
胸痛は、患者さんの表現だけでは情報が散りやすくなります。報告で必要になる項目に沿って、短く確認します。
- どこが痛いか:胸部、背部、左肩、顎、上腹部など
- いつから、どのくらい続くか:開始時刻と持続時間
- どんな痛みか:圧迫感、締め付け、刺すような痛みなど
- 広がるか:左肩、背部、顎などへの放散
- 一緒にある症状:冷汗、悪心、呼吸苦、めまい、不安感
報告テンプレ|SBAR で 20 秒以内に伝える
胸痛の報告では、「胸が痛いです」だけでは次の行動が決まりません。状況、背景、評価、提案を短くそろえると、医師・看護師への相談が速くなります。
| 区分 | 例文 |
|---|---|
| S:状況 | 「離床中に胸痛が出たため、現在は中止して安静にしています。」 |
| B:背景 | 「既往は〇〇で、直近の HR / BP / SpO2 はこの推移です。」 |
| A:評価 | 「放散痛と冷汗があり、安静後も残るため延期相当と判断しました。」 |
| R:提案 | 「12 誘導 ECG の確認と、追加指示が必要か相談したいです。」 |
記録の型|所見・判断・次の条件を 1 行で残す
記録では、胸痛の有無だけでなく、当日判断と次回再開条件まで残します。これにより、翌日以降の担当者が同じ基準で再評価しやすくなります。
記録例:離床中に前胸部圧迫感あり。冷汗なし、SpO2 変動なし、BP 128/72、HR 86。安静にて軽快したため本日は軽負荷へ変更。再発時は中止し、12 誘導 ECG 確認を依頼する。
現場の詰まりどころ|胸痛は「続ける理由」を先に探さない
胸痛対応で詰まりやすいのは、予定したリハビリを完遂しようとして、止める判断が遅れることです。まず 5 分フロー を固定し、「痛みが軽いから続ける」を避けます。
- 痛みが軽いことだけで継続してしまう
- 当日判断が記録に残らず、翌日の再評価につながらない
- 報告が症状だけで終わり、次の指示確認まで届かない
胸痛対応は個人の注意力だけでなく、相談しやすい教育体制や記録文化にも左右されます。新人期の学び方や環境の整え方は、PT キャリアガイドを見るで確認できます。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 胸痛が出たら、まず何を優先しますか?
A. まず運動・離床を中止して安静を確保します。そのうえで、痛みの特徴、随伴症状、バイタル推移、12 誘導 ECG の確認状況をそろえ、SBAR で報告します。
Q2. 痛みが軽いときも中止しますか?
A. 軽い痛みでも、初回出現、再現性あり、放散痛、冷汗、悪心、呼吸苦、バイタル変化がある場合は一度中止して確認します。
Q3. 12 誘導 ECG は PT が読めないといけませんか?
A. 新人期は、まず「読み切る」よりも、ECG が必要な場面で実施状況を確認し、所見をチームに共有する流れを回せることが重要です。
Q4. 記録には何を残せばよいですか?
A. 痛みの特徴、随伴症状、バイタル推移、当日判断、次回再開条件を残します。
Q5. 胸痛が落ち着いたら再開してよいですか?
A. 安静で軽快しても、随伴症状やバイタル変化がある場合は自己判断で再開しません。施設ルールに沿って相談し、再開条件を確認してから低負荷で再評価します。
次の一手|胸痛対応をチームの共通語にする
まずは、胸痛が出たら「中止 → 観察 → ECG → 報告 → 記録」の順番を、チーム内で共有してください。
- 全体像:新人 PT の臨床基本まとめ
- すぐ実装:バイタル異常の初期対応(新人)
- 深掘り:12 誘導 ECG の読み方(新人)
参考文献
- Gulati M, Levy PD, Mukherjee D, et al. 2021 AHA/ACC Guideline for the Evaluation and Diagnosis of Chest Pain. J Am Coll Cardiol. 2021;78(22):e187-e285. doi:10.1016/j.jacc.2021.07.053. DOI
- Amsterdam EA, Wenger NK, Brindis RG, et al. 2014 AHA/ACC Guideline for the Management of Patients With Non-ST-Elevation Acute Coronary Syndromes. J Am Coll Cardiol. 2014;64(24):e139-e228. doi:10.1016/j.jacc.2014.09.017. PubMed
- Ibanez B, James S, Agewall S, et al. 2017 ESC Guidelines for the management of acute myocardial infarction in patients presenting with ST-segment elevation. Eur Heart J. 2018;39(2):119-177. doi:10.1093/eurheartj/ehx393. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

