自主トレは「多いほど良い」わけではありません
自主トレは、退院後や生活期の活動量を保つうえで重要です。ただし、回数や時間を増やせば必ず良くなるわけではありません。特に高齢者や疾患後の患者さんでは、疲労・痛み・息切れ・翌日の活動量低下が出ている場合、自主トレの量や強度を見直す必要があります。
大切なのは「頑張らせること」ではなく、生活の中で安全に続けられる量へ調整することです。自主トレをやりすぎる患者さんには、努力を否定せずに「休むこともリハビリの一部」と説明し、体調・痛み・翌日の反応を見ながら負荷量を決めます。
自主トレをやりすぎると起こりやすい問題
自主トレのやりすぎで問題になるのは、その場の疲れだけではありません。翌日に離床量が落ちる、食事量が減る、痛みが増える、眠気が強くなるなど、生活全体の活動量が下がることがあります。
特に「本人は真面目に取り組んでいるのに、結果として動けなくなる」パターンは見落とされやすいです。自主トレの効果は、実施量だけでなく、実施後の回復・睡眠・食事・翌日の動きまで含めて判断します。
| 確認項目 | 見直したいサイン | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 疲労 | 翌日まで強く残る、日中の眠気が増える | 回数・時間を減らし、休息日を入れる |
| 痛み | 運動後に痛みが増える、歩行や移乗が悪化する | 種目・可動域・負荷を見直す |
| 息切れ | 会話が続かない、回復に時間がかかる | 強度を下げ、分割して実施する |
| 生活 | 食事量低下、入浴やトイレ動作がつらい | 生活動作を優先し、自主トレ量を調整する |
「頑張りすぎる患者」が生まれる理由
自主トレをやりすぎる背景には、単なる理解不足だけでなく、不安や焦りがあります。「早く歩けるようになりたい」「家族に迷惑をかけたくない」「動かないと悪くなる」と感じている患者さんほど、必要以上に回数を増やしてしまうことがあります。
そのため、説明では「やりすぎです」と止めるよりも、「続けるために量を整えましょう」と伝える方が受け入れられやすいです。努力を認めたうえで、疲労や痛みが出ない範囲に調整することが、結果的に回復を支えます。
自主トレ量を調整するときの考え方
自主トレ量は、回数だけで決めないことが重要です。実施中の息切れ、痛み、表情、ふらつき、実施後の疲労、翌日の活動量を合わせて見ます。特に高齢者では、当日はできても翌日に反動が出ることがあります。
目安としては「実施後に少し疲れるが、休めば回復する」「翌日の生活動作が落ちない」「痛みが増えない」範囲が安全に続けやすい量です。運動の効果は積み上げで出るため、短期間で詰め込むより、継続できる量を守ることが大切です。
負荷量を見直したいサイン
自主トレ後に、いつもと違う強い疲れ、めまい、ふらつき、胸部症状、強い痛み、息切れがある場合は、継続よりも中止・相談を優先します。体調不良時に無理をして実施すると、転倒や症状悪化につながる可能性があります。
自主トレ指導では、実施メニューだけでなく「やめる目安」も一緒に伝えることが重要です。
| 継続しやすい状態 | 負荷を見直したい状態 |
|---|---|
| 翌日に疲労が残らない | 翌日ぐったりしている |
| 痛みが増えない | 運動後に痛みが強くなる |
| 会話できる程度の息切れ | 息切れが強く回復に時間がかかる |
| 食事・睡眠が保てる | 食欲低下や眠気が増える |
| 生活動作が保てる | トイレ・移乗・歩行が普段より不安定になる |
家族へ説明するときのポイント
家族には「自主トレを増やすほど良い」と伝わっていることがあります。しかし、患者さんの体力や疾患、痛み、睡眠、栄養状態によって適量は変わります。家族説明では、回数を増やすことより、生活動作が保てる量で続けることを強調します。
説明例としては、「運動後に少し疲れる程度ならよいですが、翌日にぐったりする場合は量が多いサインです」「休む日を作ることも、長く続けるために必要です」と伝えると理解されやすいです。
現場の詰まりどころ
現場で難しいのは、患者さんの努力を否定せずに負荷量を下げる場面です。「頑張っているのに止められた」と受け取られると、信頼関係が崩れることがあります。
そのため、声かけは「やめましょう」ではなく、「良い取り組みなので、明日も動ける量に整えましょう」とします。記録では、実施量だけでなく、疲労・疼痛・翌日の活動量・家族への説明内容まで残すと、チームで判断を共有しやすくなります。
記録に残すときの書き方
自主トレのやりすぎが疑われる場合は、「本人が多く実施している」だけではなく、実施後の反応を記録します。疲労、疼痛、息切れ、ふらつき、翌日の活動量低下、家族の関わり方まで書くと、負荷量調整の根拠が明確になります。
記録例としては、「自主トレを予定回数以上に実施。翌日に下肢疲労感が強く、歩行時ふらつきあり。本人へ翌日の活動量を保てる範囲で実施するよう説明し、回数を半量へ調整」など、事実・反応・説明・変更点をセットで残します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
自主トレは毎日やった方がいいですか?
毎日実施すること自体が悪いわけではありません。ただし、疲労や痛みが翌日に残る場合は、回数や強度を減らす、休息日を入れる、生活動作を優先するなどの調整が必要です。
痛みがあっても続けてよいですか?
軽い張り程度で、実施後に悪化しない場合は経過を見ながら調整します。一方で、痛みが増える、歩行や移乗が悪くなる、夜間痛が強くなる場合は、種目や負荷を見直します。
疲れていても少しは動いた方がいいですか?
体調によります。強い倦怠感、めまい、ふらつき、息切れ、発熱、食欲低下がある場合は無理に行わず、休息や医療者への相談を優先します。軽い疲労であれば、回数を減らして短時間にする方法もあります。
家族が自主トレを増やしたがる場合はどう説明しますか?
「多くやること」より「翌日も生活動作が保てること」が大切だと説明します。疲労や痛みが出ている場合は、家族にもサインを共有し、回数を増やすより安全に続ける方針を確認します。
休むと筋力が落ちませんか?
長期間の不活動は避けたいですが、体調不良時や疲労が強い日の休息は必要です。休息を入れながら継続できる量に調整する方が、結果的に活動量を保ちやすくなります。
次の一手
自主トレのやりすぎを防ぐには、メニューを渡すだけでなく、実施後の反応を確認する仕組みが必要です。まずは、翌日の疲労・痛み・活動量を確認し、必要に応じて回数・強度・休息日を調整してください。
関連して、リハビリを中止した場面の記録は リハビリ中止時の記録、拒否や中断がある場面は リハビリ拒否時の記録 もあわせて確認すると、チーム内で判断を共有しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023. https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
- 厚生労働省. 身体活動・運動を安全に行うためのポイント. https://www.mhlw.go.jp/content/001195872.pdf
- Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. doi:10.1136/bjsports-2020-102955
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

