- P/F比とは?まず計算式と数値の見方
- FiO₂は%ではなく小数に変換してP/F比を計算する
- P/F比300・200・100はどう見る?ARDSの酸素化区分
- P/F比を出す前にFiO₂をどう確認する?酸素デバイス別の注意点
- SpO₂が保たれていてもP/F比が低いことがある
- S/F比とは?P/F比との違いと2024年Global Definition
- P/F比は測定条件をそろえて比較する
- P/F比を臨床で使うときは「数字+呼吸状態」で判断する
- ケースで練習|P/F比を計算する
- P/F比でよくある間違い|計算より前提条件を確認する
- P/F比のFAQ
- まとめ|P/F比は「PaO₂÷FiO₂」、FiO₂の条件まで確認する
- 参考文献・一次情報
- 著者情報
P/F比とは?まず計算式と数値の見方
P/F比(PaO₂/FiO₂ ratio)は、動脈血酸素分圧(PaO₂)を吸入酸素濃度(FiO₂)で割り、酸素化の程度を整理する指標です。計算するときの最重要ポイントは、FiO₂ 40%なら「40」ではなく「0.40」で割ることです。たとえばPaO₂ 80mmHg、FiO₂ 40%なら「80 ÷ 0.40=200」となり、P/F比は200です。
P/F比はARDS(急性呼吸窮迫症候群)の酸素化評価にも使われ、200<P/F比≤300、100<P/F比≤200、P/F比≤100という境界があります。ただし、P/F比だけでARDSと診断することはできません。発症時期、胸部画像、肺水腫の原因、呼吸補助条件など、定義を構成する他の条件と合わせて判断します。
P/F比の計算式
P/F比 = PaO₂(mmHg)÷ FiO₂
例:PaO₂ 80mmHg / FiO₂ 40%
FiO₂ 40% → 0.40
80 ÷ 0.40 = P/F比 200

| P/F比 | ARDSの酸素化重症度区分 | 注意 |
|---|---|---|
| 200超〜300以下 | 軽症の酸素化範囲 | P/F比のみでARDSとは診断しない |
| 100超〜200以下 | 中等症の酸素化範囲 | |
| 100以下 | 重症の酸素化範囲 |
重要:P/F比は「酸素化がどの程度保たれているか」を整理する指標であり、単独の診断基準ではありません。また、FiO₂の見積もりが不正確ならP/F比も不正確になります。PaO₂だけでなく、採血時の酸素デバイス・FiO₂・流量・呼吸補助条件をセットで確認してください。
呼吸評価全体の位置づけを確認したい場合は、
呼吸理学療法の評価項目|順番・使い分け
から整理すると理解しやすくなります。
FiO₂は%ではなく小数に変換してP/F比を計算する
P/F比の計算では、FiO₂を0〜1の小数で扱います。40%なら0.40、50%なら0.50、100%なら1.00です。ここを間違えるとP/F比が100分の1になってしまうため、式を覚えるより先に「%を100で割る」と整理しておくとミスを防げます。
室内気のFiO₂は約0.21です。そのため、室内気でPaO₂ 100mmHgなら「100 ÷ 0.21≒476」となります。酸素投与中は、採血時点のFiO₂を確認して同じように計算します。
| FiO₂表示 | 計算に使う値 | PaO₂ 80ならP/F比 |
|---|---|---|
| 21% | 0.21 | 約381 |
| 30% | 0.30 | 約267 |
| 40% | 0.40 | 200 |
| 50% | 0.50 | 160 |
| 60% | 0.60 | 約133 |
| 80% | 0.80 | 100 |
| 100% | 1.00 | 80 |
計算ミス防止:FiO₂ 40%なら「40」ではなく「0.40」です。%表示を100で割ってからPaO₂を割ります。
P/F比300・200・100はどう見る?ARDSの酸素化区分
P/F比の300・200・100は、ARDSの酸素化重症度を分類するときの重要な境界です。2012年のBerlin Definitionでは、200<P/F比≤300を軽症、100<P/F比≤200を中等症、P/F比≤100を重症としました。2024年のGlobal Definitionでも、挿管ARDSにおけるP/F比の3区分は維持されています。
ただし、この表は「P/F比200なら中等症ARDS」と単独で診断するためのものではありません。ARDSでは急性発症、両側性陰影、心原性肺水腫などで十分説明されないこと、呼吸補助条件なども確認します。挿管ARDSのGlobal Definitionでは、各重症度カテゴリーでPEEP 5cmH₂O以上が必要です。
| 区分 | P/F比 | S/F比 Global Definition |
|---|---|---|
| 軽症 | 200超〜300以下 | 235超〜315以下 |
| 中等症 | 100超〜200以下 | 148超〜235以下 |
| 重症 | 100以下 | 148以下 |
※S/F比によるGlobal Definitionの分類はSpO₂ 97%以下の場合に使用します。表は酸素化重症度の境界を示したもので、ARDS診断には他の定義項目も必要です。
P/F比を出す前にFiO₂をどう確認する?酸素デバイス別の注意点
P/F比の精度は、分母であるFiO₂の確からしさに左右されます。人工呼吸器やHFNO(HFNC)のようにFiO₂設定値を確認できる状況と、低流量鼻カニュラなど実際の吸入酸素濃度が呼吸パターンの影響を受けやすい状況を同じように扱わないことが重要です。
低流量鼻カニュラでは、「1L/分なら24%、2L/分なら28%」のような目安が使われることがありますが、実測FiO₂には個人差があり、呼吸の速さや口呼吸などでも変化します。そのため、流量から推定したFiO₂でP/F比を計算した場合は、推定値を使ったP/F比であることを記録しておくと解釈しやすくなります。
| 状況 | FiO₂の確認 | 記録 |
|---|---|---|
| 室内気 | 0.21を使用 | 室内気 |
| 人工呼吸器 | 採血時の設定FiO₂を確認 | FiO₂+PEEP等 |
| HFNO / HFNC | 設定FiO₂と流量を確認 | FiO₂+流量 |
| 低流量鼻カニュラ等 | FiO₂は推定になりやすい | デバイス+流量+推定条件 |
「鼻カニュラ○L=FiO₂○%」を絶対値にしない
低流量酸素では実際に吸入されるFiO₂が変動します。P/F比を記録するときは、PaO₂だけでなく酸素デバイス・流量・FiO₂が実測または設定値なのか、推定なのかまで残すと再評価しやすくなります。
PaO₂・PaCO₂・pHなど血液ガス全体の読み方は、
血液ガス(ABG)の読み方|PT向け3手順
で整理しています。
SpO₂が保たれていてもP/F比が低いことがある
SpO₂が95〜100%だからといって、酸素化能が十分とは限りません。重要なのは、どのFiO₂でそのSpO₂を維持しているかです。高いFiO₂を必要としてSpO₂を保っている患者では、室内気や低いFiO₂で同じSpO₂を保てる患者と比べて、酸素化障害が強い可能性があります。
たとえばPaO₂が80mmHgで同じでも、室内気FiO₂ 0.21ならP/F比は約381ですが、FiO₂ 0.50ならP/F比は160です。PaO₂の数字だけを見ると同じ80mmHgでも、必要としている酸素濃度を組み合わせると意味が大きく変わります。
| PaO₂ | FiO₂ | P/F比 |
|---|---|---|
| 80mmHg | 0.21 | 約381 |
| 80mmHg | 0.40 | 200 |
| 80mmHg | 0.50 | 160 |
したがって、酸素化を申し送るときは「SpO₂ 96%です」だけでなく、「HFNC FiO₂ 50%・40L/分でSpO₂ 96%」のように酸素条件までセットにすると、状態を共有しやすくなります。
S/F比とは?P/F比との違いと2024年Global Definition
S/F比(SpO₂/FiO₂ ratio)は、SpO₂をFiO₂で割って酸素化を整理する指標です。動脈血採血によるPaO₂を必要とするP/F比に対し、S/F比はパルスオキシメータのSpO₂を使用します。
2024年に公表されたGlobal Definition of ARDSでは、PaO₂が得られない状況にも対応するためS/F比が正式に取り入れられました。酸素化の基準としてS/F比315以下を使用できますが、条件としてSpO₂は97%以下である必要があります。SpO₂が98〜100%では酸素解離曲線の上部が平坦になるため、Global DefinitionではS/F比を有効な判定値として扱いません。
S/F比の計算式
S/F比 = SpO₂(%)÷ FiO₂
例:SpO₂ 94% / FiO₂ 40%
94 ÷ 0.40 = S/F比 235
Global DefinitionでS/F比を使うときの条件
- SpO₂が97%以下である
- パルスオキシメータの波形・装着状態を確認する
- 体位・FiO₂・酸素流量変更後は、安静にして少なくとも30分あけて評価する
- 異常ヘモグロビン血症が疑われる場合はパルスオキシメトリによる診断を避ける
- S/F比だけではARDS診断は完結しない
非挿管ARDSもGlobal Definitionに含まれる
Global Definitionでは、HFNOを30L/分以上で使用している患者や、一定条件のNIV・CPAP使用患者も「非挿管ARDS」の対象になり得ます。非挿管ARDSの酸素化基準はP/F比300以下、またはSpO₂ 97%以下でS/F比315以下です。
これは「P/F比300以下ならARDS」という意味ではありません。発症時期や両側性陰影など、他の定義項目を満たしたうえで使用する酸素化基準です。
S/F比の注意:SpO₂ 98〜100%の患者にS/F比を当てはめてGlobal Definitionの重症度を判定しないでください。2024年Global DefinitionではS/F比はSpO₂ 97%以下の場合に用います。
P/F比は測定条件をそろえて比較する
P/F比を経時的に比較するときは、数字だけでなく測定条件をそろえることが重要です。PaO₂が変化していなくても、FiO₂やPEEP、体位、呼吸補助条件が変わればP/F比の意味も変わります。
2024年Global Definitionでは、ARDSの酸素化評価について、患者が安静な状態で、体位・FiO₂・流量を変更してから少なくとも30分後に血液ガスまたはSpO₂を測定するよう示しています。これはARDS定義上の条件ですが、臨床で経過比較するときにも「何の条件で測ったか」を固定・記録する重要性を示しています。
| 項目 | 記録する内容 | 理由 |
|---|---|---|
| PaO₂ | 採血値・採血時刻 | 分子となる値 |
| FiO₂ | 設定値または推定値 | 分母となる値 |
| 酸素デバイス | 人工呼吸器・HFNO・NIVなど | FiO₂の意味が異なる |
| 呼吸補助条件 | PEEP・CPAP・HFNO流量など | 酸素化へ影響する |
| 体位・タイミング | 仰臥位・腹臥位、設定変更後など | 前回との比較条件をそろえる |
P/F比を臨床で使うときは「数字+呼吸状態」で判断する
P/F比は酸素化を整理するのに有用ですが、リハビリテーションや病棟での安全判断をP/F比だけに任せることはできません。同じP/F比でも、呼吸数が安定して会話できる患者と、頻呼吸・努力呼吸が増悪している患者では臨床的な意味が異なります。
特にPT・OT・STが離床や活動を検討する場面では、P/F比の値そのものから「実施可能・中止」を機械的に決めるのではなく、酸素条件と呼吸状態の変化をセットで確認します。
最低限そろえたい観察項目
- P/F比と、そのときのFiO₂・酸素デバイス
- SpO₂と目標範囲
- 呼吸数と呼吸パターン
- 努力呼吸・会話の途切れ・呼吸困難
- PaCO₂・pHなど換気と酸塩基平衡
- 意識、血圧、脈拍など全身状態
- 安静や負荷中止後の戻り方
記録例
「ABG:PaO₂ 80mmHg、HFNC FiO₂ 0.40・40L/分、P/F比200。SpO₂ 94%、RR 26回/分。離床前に呼吸仕事量と設定変更の有無を再確認。」
ケースで練習|P/F比を計算する
P/F比は「FiO₂を小数にする → PaO₂を割る」の2手順で計算します。まず数字を出し、その後でFiO₂や呼吸補助条件を確認する癖をつけると、単なる計算問題から臨床判断へつなげやすくなります。
ケース1|PaO₂ 80mmHg・FiO₂ 40%
FiO₂:40% → 0.40
計算:80 ÷ 0.40 = P/F比 200
整理:100超〜200以下の境界に該当します。ただし、これだけで中等症ARDSとは診断しません。
ケース2|PaO₂ 90mmHg・FiO₂ 30%
FiO₂:30% → 0.30
計算:90 ÷ 0.30 = P/F比 300
整理:P/F比300です。酸素デバイス、FiO₂の確からしさ、呼吸補助条件を確認して解釈します。
ケース3|PaO₂ 60mmHg・FiO₂ 60%
FiO₂:60% → 0.60
計算:60 ÷ 0.60 = P/F比 100
整理:P/F比100以下の境界です。呼吸状態やARDSの他の診断条件も含めて速やかに評価します。
ケース4|SpO₂ 94%・FiO₂ 40%
FiO₂:40% → 0.40
計算:94 ÷ 0.40 = S/F比 235
整理:SpO₂が97%以下なので、2024年Global DefinitionではS/F比を酸素化評価に使用できる条件です。ただし、ARDS診断には他の条件も必要です。
P/F比でよくある間違い|計算より前提条件を確認する
P/F比で多い失敗は、割り算そのものよりFiO₂や測定条件の取り違えです。特に「FiO₂を40のまま入れる」「鼻カニュラ流量から推定したFiO₂を正確な値として扱う」「P/F比だけでARDSと診断する」の3つは避けたいポイントです。
| 間違い | 修正 | 記録 |
|---|---|---|
| FiO₂ 40%を40で割る | 0.40へ変換する | FiO₂ 0.40 |
| PaO₂だけを見る | FiO₂とセットで見る | PaO₂+FiO₂ |
| 低流量酸素のFiO₂を固定値扱い | 推定値であることを意識する | デバイス+流量 |
| P/F比200=ARDSと断定 | 他の診断条件を確認する | 呼吸補助・画像・経過 |
| SpO₂ 98%でS/F分類 | Global Definitionでは97%以下で使用 | SpO₂+FiO₂ |
P/F比のFAQ
P/F比で迷いやすい「FiO₂の入力」「P/F比200の意味」「PaO₂がない場合」「鼻カニュラ使用中のFiO₂」についてまとめます。基本は、計算結果だけでなく測定条件までセットで確認することです。
Q. FiO₂ 40%はP/F比の計算で0.4にしますか?
はい。40%は0.40として計算します。たとえばPaO₂ 80mmHgなら、80÷0.40=P/F比200です。40のまま割らないように注意してください。
Q. P/F比200なら中等症ARDSですか?
P/F比200はARDSの酸素化重症度境界では100超〜200以下の範囲に入りますが、P/F比だけでARDSと診断することはできません。発症時期、画像所見、肺水腫の原因、PEEPなど他の条件も確認します。
Q. PaO₂がない場合はP/F比を計算できますか?
PaO₂がなければP/F比は計算できません。2024年Global Definitionでは、SpO₂が97%以下の場合にS/F比を酸素化評価へ使用できるようになりました。ただしP/F比とS/F比は同じ測定値ではなく、それぞれの条件に沿って使用します。
Q. 鼻カニュラ2L/分ならFiO₂ 28%として計算してよいですか?
28%は代表的な目安として使われることがありますが、低流量鼻カニュラで実際に吸入されるFiO₂は呼吸パターンなどで変動します。P/F比へ使う場合は推定FiO₂であることを理解し、デバイスと流量も一緒に記録してください。
Q. S/F比はSpO₂ 98%でも使えますか?
S/F比自体の計算はできますが、2024年Global Definition of ARDSで診断・重症度評価に使用する条件はSpO₂ 97%以下です。SpO₂が98%以上の場合、その定義のS/F比境界には当てはめません。
まとめ|P/F比は「PaO₂÷FiO₂」、FiO₂の条件まで確認する
P/F比はPaO₂をFiO₂で割って求めます。FiO₂ 40%なら0.40として計算し、PaO₂ 80mmHgならP/F比は200です。ARDSの酸素化重症度では300・200・100が重要な境界ですが、P/F比だけでARDSを診断するものではありません。
臨床では、P/F比の数字と同時に「どの酸素デバイス・FiO₂・PEEP・流量・体位で測定したか」を確認します。特に低流量鼻カニュラではFiO₂が推定値になりやすいため、計算結果を過度に精密な値として扱わないことが重要です。
2024年Global Definitionでは、SpO₂ 97%以下の場合にS/F比も酸素化評価へ使用可能になりました。P/F比とS/F比を目的に応じて使い分け、呼吸数・努力呼吸・SpO₂・PaCO₂・全身状態と合わせて判断してください。
P/F比を読む3ステップ
1. PaO₂と採血時のFiO₂を確認する
2. FiO₂を小数へ変換してPaO₂÷FiO₂を計算する
3. 呼吸補助条件・臨床所見とセットで解釈する
参考文献・一次情報
本記事では、P/F比のARDS酸素化区分についてBerlin Definitionと2024年Global Definitionを参照し、FiO₂の扱いについて鼻カニュラで実測されたヒト研究を確認しました。
-
ARDS Definition Task Force, Ranieri VM, Rubenfeld GD, et al. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA. 2012;307(23):2526-2533. doi:10.1001/jama.2012.5669.
PubMed -
Matthay MA, Arabi Y, Arroliga AC, et al. A New Global Definition of Acute Respiratory Distress Syndrome. Am J Respir Crit Care Med. 2024;209(1):37-47. doi:10.1164/rccm.202303-0558WS.
全文 -
Wettstein RB, Shelledy DC, Peters JI. Delivered oxygen concentrations using low-flow and high-flow nasal cannulas. Respir Care. 2005;50(5):604-609.
PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)です。急性期・回復期・療養期・介護福祉領域・訪問リハビリテーションでの臨床経験があり、現在は療養病院で勤務しています。脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に、臨床で迷いやすい評価・判断・記録方法を発信しています。
ガイドラインや原著論文、行政・学会などの一次情報を確認しながら、「数値を覚える」だけでなく、測定条件をそろえ、臨床で判断・共有・再評価できる形へ落とし込むことを大切にしています。本記事ではP/F比の計算式だけでなく、FiO₂の確からしさ、測定条件、S/F比との使い分けまで整理しました。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

