CAS-JPとは?大腿骨近位部骨折の評価・3-day CAS

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CAS-JPとは?3つの基本動作から術後早期の移動能力を見る評価

CAS-JP(Japanese version of the Cumulated Ambulation Score)は、ベッド周囲の移動・椅子からの立ち座り・屋内歩行という3つの基本的な移動能力を、介助の必要性から簡潔に評価する尺度です。

1日の評価は各項目0〜2点、合計0〜6点です。大腿骨近位部骨折術後では、術後1〜3日目の得点を合計した3-day CAS(0〜18点)も、術後早期の移動能力を整理する指標として研究されています。

CAS-JPの基本

対象:基本移動能力
評価項目:3項目
各項目:0〜2点
1-day CAS:0〜6点
3-day CAS:術後1〜3日目の合計 0〜18点
主な研究対象:大腿骨近位部骨折術後

CAS-JPの3つの基本移動、各0〜2点、1-day CAS 0〜6点、3-day CAS 0〜18点の流れを整理した図
CAS-JPは3つの基本移動を各0〜2点で評価し、1日の0〜6点と術後1〜3日の3-day CAS 0〜18点で早期回復を追います。

CAS-JPは、術後早期に「まだTUGを安全に完遂できない」「詳細なバランス評価を行う前に、まず基本移動の回復を追いたい」といった場面で使いやすい評価です。

評価尺度全体から目的に合う指標を探したい場合は、
評価ライブラリ
もあわせて確認してください。

CAS-JPは公式の日本語版|原版を独自翻訳して使わない

CAS-JPは、原版CASを国際的な手順に沿って日本語へ翻訳・逆翻訳し、原著者の確認を経て作成された正式な日本語版です。

2020年の日本語版作成研究では、大腿骨近位部骨折術後患者50例を対象に評価者間信頼性が検証され、3つの項目と合計点のいずれでも高い一致が示されました。

正式なCAS-JPを使用する:日本語版のマニュアル・スコアシートはCAS-JP作成論文の付録に掲載されています。本記事では尺度全文や正式な採点マニュアルを転載せず、評価の構造と臨床での解釈を整理します。

院内で独自に設問や採点条件を書き換えると、研究で検証されたCAS-JPとは異なる評価になる可能性があります。実際の採点では正式な日本語版を確認してください。

CAS-JPの3項目|ベッド・立ち座り・屋内歩行を評価する

CAS-JPの特徴は、術後早期から必要になる3つの基本移動動作だけに評価対象を絞っていることです。

CAS-JPで評価する3つの基本移動
項目 見る動作 臨床で確認したい点
ベッド移動 ベッドへの出入りを含む基本移動 人の介助や声かけが必要か
立ち座り 肘掛け椅子からの立位・着座 一連の動作を自立して遂行できるか
屋内歩行 必要な歩行補助具を用いた屋内移動 人的介助・声かけの有無

CAS-JPは、歩行だけを評価する尺度ではありません。ベッド周囲の移動から立ち座り、屋内歩行までをまとめて「基本移動」として見ることがポイントです。

そのため、術後翌日に歩行距離がまだ短い患者でも、ベッド周囲動作や立ち座りの回復を含めて経時的に追いやすくなります。

CAS-JPの採点|0・1・2点は人的介助の必要性で整理する

各項目は0〜2点で評価します。採点で重要なのは、動作速度や歩行距離ではなく、人による身体介助や声かけを必要とするかという視点です。

CAS-JPの0〜2点を理解するための基本構造
点数 基本的な考え方
2点 人による介助や声かけを必要とせず遂行できる
1点 人による介助または声かけなどを必要とする
0点 人が介助してもその活動を遂行できない

3項目を合計し、1日のCASは0〜6点となります。6点は3つの基本移動すべてで人的介助・声かけを必要としない状態を示し、低得点ほど基本移動に人的支援を要することを表します。

歩行補助具=減点ではありません:CASでは必要な補助具の使用が想定されています。杖や歩行器を使っているかだけで点数を決めず、人的介助・声かけの必要性を正式な採点基準に沿って判断します。

また、日本語版作成時には履物の扱いについても検討され、履物を履く動作そのものはCASの自立性判定へ含めない整理がされています。病棟ごとの履物の違いで採点が変わらないよう、正式なマニュアルに沿って条件をそろえることが重要です。

1-day CASとは?1日の基本移動を0〜6点で追う

1-day CASは、その日の3項目の合計点です。得点範囲は0〜6点となります。

1-day CAS

3つの基本移動を各0〜2点で評価

その日の合計:0〜6点

術後1日目、7日目、14日目など同じ方法で繰り返すことで、「歩けた・歩けなかった」だけでなく、基本移動全体がどの程度自立へ近づいているかを数値で追えます。

2022年の国内研究では、大腿骨近位部骨折術後患者121例を対象に、術後1日、7日、14日、退院時のCAS-JPが評価されました。術後7日・14日・退院時ではBarthel Indexや歩行状態と強い関連がみられ、経時変化を捉える反応性も確認されています。

3-day CASとは?術後1〜3日目を合計して0〜18点で見る

3-day CASは、術後1日目・2日目・3日目の1-day CASを合計した指標です。

3-day CAS

術後1日目 CAS
+ 術後2日目 CAS
+ 術後3日目 CAS
0〜18点

1日の状態だけでは、疼痛、術後疲労、せん妄、循環動態、離床開始時刻などの影響を受けることがあります。3日間を累積することで、術後早期に基本移動がどの程度立ち上がってきたかを整理しやすくなります。

ただし、3-day CASは「18点に近ければ必ず自宅退院できる」といった単独の予後判定尺度ではありません。年齢、受傷前ADL・歩行能力、認知機能、合併症、術式、荷重条件などと組み合わせて解釈します。

3-day CASと歩行予後|国内研究のカットオフはどう見る?

3-day CASは、大腿骨近位部骨折術後の短期的な歩行能力と関連する指標として国内でも検討されています。

2024年に報告された国内単施設の214例を対象とした研究では、術後1〜3日の3-day CASが、術後1週・2週・退院時の歩行能力に関連しました。

国内研究で報告された3-day CASのROC解析上の境界値
評価時点 報告された境界値 アウトカム
術後1週 8.5点 歩行自立
術後2週 7.5点 歩行自立
退院時 6.5点 歩行自立

カットオフを固定基準にしない:上記は特定の国内研究集団におけるROC解析の結果です。CAS-JPそのものに「○点以上なら歩行自立」という共通の公式判定基準が設定されているわけではありません。患者背景や評価時点が異なる集団へ、そのまま当てはめないでください。

実務では、「カットオフを超えたか」だけを見るより、3日間の各日の得点と、どの基本動作で介助が残っているかを確認する方が介入へつながります。

CAS-JPは自宅退院の予測にも使える?単独で退院先は決めない

CAS-JPは、術後早期の基本移動能力から自宅退院の可能性を考える補助情報にもなります。

国内121例の研究では、自宅退院を識別するCAS-JPの能力について、術後7日でAUC 0.73、術後14日でAUC 0.74が報告されています。

一方、退院先は移動能力だけで決まりません。受傷前生活、認知機能、家族介護力、住環境、本人・家族の希望、医学的安定性、利用できる社会資源などが関係します。

CAS-JP=退院判定ではありません:CAS-JPは基本移動能力を数値化する評価です。得点だけで自宅退院・転院・施設退院を決定せず、ADL・認知・環境・介護力などを含めて判断します。

CAS-JPの信頼性・妥当性|日本の大腿骨近位部骨折患者で検証されている

CAS-JPの強みは、日本の大腿骨近位部骨折術後患者を対象に、日本語版の信頼性・妥当性・反応性が検討されていることです。

CAS-JPの国内検証研究
研究 対象 主な結果
Ogawaら 2020 術後大腿骨近位部骨折 50例 高い評価者間信頼性・一致度を確認
Mashimoら 2022 術後大腿骨近位部骨折 121例 妥当性・反応性・自宅退院予測能力を検討

2020年研究では、各項目と合計CAS-JPについて高い評価者間一致が報告されました。2022年研究では、術後7日以降のCAS-JPとBarthel Index、歩行状態との強い関連が確認されています。

また、海外の大腿骨近位部骨折に対する理学療法診療ガイドラインでも、CASはアウトカム評価指標の一つとして取り上げられています。

CAS-JP・TUG・BBS・FIMの違い|評価したいものを分ける

CAS-JPは、TUG・BBS・FIMの代わりになる評価ではありません。それぞれ評価対象が違うため、患者の状態と知りたいことに応じて使い分けます。

CAS-JPと代表的な評価の使い分け
評価 主に見るもの 使いやすい場面
CAS-JP 3つの基本移動と人的介助 大腿骨近位部骨折の術後早期
TUG 起立・歩行・方向転換・着座を含む移動パフォーマンス 一連の移動を安全に遂行できる段階
BBS 静的・動的バランス バランス能力を詳細に確認したい段階
FIM ADL全体に必要な介助量 セルフケア・排泄・移乗・移動・認知まで含めたい場面

CAS-JPより一歩進んで、立ち上がりから3m歩行・方向転換・着座までのパフォーマンスを時間と動作で評価する場合は、
TUGの評価方法
が候補になります。

ADL全体の介助量を確認したい場合は、
FIM総合ガイド
で移乗・移動だけでなくセルフケアや認知項目まで含めて評価します。

CAS-JPはいつ測る?術後早期は毎日の変化を見る

CAS-JPは、術後早期の基本移動の回復を経時的に追うことに向いています

3-day CASを用いる場合は術後1〜3日目を評価します。一方、CAS-JP自体は3日間だけに限定された尺度ではなく、その後も基本移動が自立するまで日々の変化を追うために利用できます。

評価タイミングの考え方

術後1日目:離床開始時の基本移動
術後1〜3日:3-day CASで早期回復を整理
その後:1-day CASで自立までの推移を追う
節目:TUG・歩行速度・ADL評価などへ広げる

ただし、術後の荷重制限、血圧・循環状態、疼痛、意識状態、医師からの離床指示などを無視して評価するものではありません。安全性を優先し、実施できなかった理由も記録します。

記録方法|合計点だけでなく項目別の介助と条件を残す

CAS-JPを再評価へ活かすには、合計点だけでなく、どの項目で人的介助が残っているかを記録します。

同じCAS 4点でも、「ベッド移動は自立したが歩行介助が残る患者」と「3項目すべてに軽い人的関与が残る患者」では、次の介入が異なるためです。

CAS-JPと一緒に残したい記録
記録項目 記録する内容
CAS-JP 各項目と合計点
補助具 杖・歩行器など
人的関与 身体介助・見守り・声かけなど
制限条件 荷重制限・医学的制限など
阻害因子 疼痛・低血圧・疲労・せん妄など

記録例

POD2。CAS-JP合計3点。ベッド移動は見守り、立ち座りは軽度の身体介助、歩行は歩行器を使用し人的介助を要した。疼痛は前日より軽減したが、立位時にふらつきあり。翌日も同条件で再評価する。

上記は記録方法の一例であり、CAS-JPの正式な採点文言ではありません。実際の点数は公式の日本語版マニュアルに従って決定してください。

臨床での使い方|CAS-JPから次の評価へつなげる4ステップ

CAS-JPは、得点を出して終わるのではなく、基本移動の回復状況から次の評価・介入を選ぶ入口として使うと実務につながります。

CAS-JPを使う4ステップ

1. 3つの基本移動を評価する
2. 人的介助が残る動作を特定する
3. 術後1〜3日は3-day CASも確認する
4. 回復に応じてTUG・バランス・ADL評価へ広げる

たとえばCAS-JPで屋内歩行まで人的介助なしに行えるようになった後は、TUGで方向転換を含む移動能力を確認したり、BBSでバランス課題を詳しく評価したりすると、次の介入目標を立てやすくなります。

CAS-JPでよくある失敗|合計点とカットオフだけを見ない

CAS-JPでは、簡単に点数化できるからこそ、合計点だけで患者像を決めないことが重要です。

CAS-JPで避けたい評価のずれ
よくある失敗 確認すること
歩行だけでCASを判断する ベッド・立ち座り・屋内歩行の3項目を確認
歩行器使用だけで減点する 人的介助・声かけの必要性を確認
1日の点数だけで予後を決める 経時変化と患者背景を組み合わせる
研究のカットオフを絶対基準にする 研究対象・時期・アウトカムを確認
独自の採点基準を作る 正式なCAS-JPマニュアルを参照

CAS-JPのよくある質問

CAS-JPの点数、3-day CAS、補助具、カットオフについて、臨床で迷いやすい点を整理します。

Q. CAS-JPは何点満点ですか?

1日のCASは6点満点です。3つの基本移動を各0〜2点で評価します。術後1〜3日の1-day CASを合計する3-day CASは0〜18点です。

Q. CAS-JPの評価項目は何ですか?

ベッドへの出入りを含む基本移動、肘掛け椅子からの立ち座り、屋内歩行の3項目です。正式な動作条件と採点基準はCAS-JPの公式マニュアルを参照してください。

Q. 3-day CASとは何ですか?

術後1日目・2日目・3日目のCASを合計した得点です。各日0〜6点のため、3-day CASは0〜18点となります。大腿骨近位部骨折術後の早期移動能力や短期予後との関連が研究されています。

Q. 杖や歩行器を使うと2点にはなりませんか?

補助具を使用していることだけで採点を決める尺度ではありません。CASは人的介助や声かけの必要性が重要な判断軸です。具体的な採点は正式なCAS-JPマニュアルに従ってください。

Q. 3-day CASは何点なら歩行自立できますか?

すべての患者に共通する公式カットオフはありません。国内研究では歩行自立を予測する境界値が報告されていますが、研究集団や評価時点で異なります。年齢、受傷前機能、認知機能、医学的状態などと合わせて解釈してください。

まとめ|CAS-JPは術後早期の「基本移動の立ち上がり」を追う

CAS-JPは、ベッド周囲の移動、椅子からの立ち座り、屋内歩行という3つの基本移動を各0〜2点で評価し、1日の合計を0〜6点で示す尺度です。

大腿骨近位部骨折術後では、術後1〜3日目の得点を合計した3-day CAS(0〜18点)を用いることで、術後早期の基本移動の回復を整理できます。

国内研究でも信頼性、妥当性、反応性、歩行能力や自宅退院との関連が検討されています。一方、特定研究のカットオフだけで歩行予後や退院先を判断するものではありません。

CAS-JPの5ポイント

1. 3つの基本移動を評価
2. 各0〜2点・1日0〜6点
3. 術後1〜3日の合計が3-day CAS
4. 合計点だけでなく介助が残る動作を見る
5. 予後は他の評価・患者背景と合わせて判断

参考文献

  1. Ogawa T, Hayashi H, Kishimoto T, et al. Translation, Inter-rater Reliability, Agreement, and Internal Consistency of the Japanese Version of the Cumulated Ambulation Score in Patients after Hip Fracture Surgery. Prog Rehabil Med. 2020;5:20200030. doi:10.2490/prm.20200030.
  2. Mashimo S, Ogawa T, Kitamura N, et al. Validity, Responsiveness, and Predictive Ability of the Japanese Version of the Cumulated Ambulation Score in Patients with Hip Fracture. Prog Rehabil Med. 2022;7:20220005. doi:10.2490/prm.20220005.
  3. Foss NB, Kristensen MT, Kehlet H. Prediction of postoperative morbidity, mortality and rehabilitation in hip fracture patients: the cumulated ambulation score. Clin Rehabil. 2006;20(8):701-708. doi:10.1191/0269215506cre987oa.
  4. Kristensen MT, Andersen L, Bech-Jensen R, et al. High intertester reliability of the Cumulated Ambulation Score for the evaluation of basic mobility in patients with hip fracture. Clin Rehabil. 2009;23(12):1116-1123. doi:10.1177/0269215509342330.
  5. McDonough CM, Harris-Hayes M, Kristensen MT, et al. Physical Therapy Management of Older Adults With Hip Fracture. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(2):CPG1-CPG81. doi:10.2519/jospt.2021.0301.
  6. 鳥山貴大, 櫻井利康, 富井啓太, 小平博之. 大腿骨近位部骨折患者における日本語版Cumulated Ambulation Scoreと術後短期的な歩行能力の関連性. 理学療法ジャーナル. 2024;58(10):1169-1175.
  7. 竹本麟, 高橋礼奈, 安藤真次, 竹村仁. 大腿骨近位部骨折術後患者の歩行予後予測―Cumulated Ambulation Score(CAS)を用いて―. 大分県理学療法学. 2024;17:28-33. doi:10.32227/oitaptj.17-5.

尺度の利用について:CAS-JPの正式な日本語版マニュアル・スコアシートはOgawaらの日本語版作成論文の付録を確認してください。本記事は尺度全文や公式マニュアルを転載するものではありません。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)です。rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。本記事ではCAS-JPについて、大腿骨近位部骨折術後の基本移動評価、3-day CAS、歩行予後との関係、他の評価尺度との使い分けまで実務で確認しやすい形に整理しました。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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